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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

高い 歌声は、のどの 中で 1びょうに 何回 ふるえて いるの?

ソプラノの声帯は、1秒に1000回以上ぶつかっている ── 声の高さは長さや張りでどう変わる?

歌声の高さと声帯 ── 基本周波数、長さと張り、輪状甲状筋、ソプラノの超高音(2024年の高速度撮影)

分野:からだ

ソプラノの 歌手が とても 高い 声を 出す とき、のどの 中の 「せいたい」は、1びょうの 間に 1000回 いじょうも ふるえて いると されて います。

「ふえの ように 鳴る」と いわれて きた 高い 声ですが、ほんとうは ちがう ようです。声の 高さは 何で きまり、歌手は どう 高く するのか。しらべた ことが 分かります。

ソプラノ歌手が最も高い音域で歌うとき、声帯は1秒間に約1000〜1600回ふるえ、ぶつかり合っていました。「笛のように鳴る」と長く言われてきた声ですが、その呼び名は、高音のクラシック唱法の説明としては笛の原理に合わないとされています。

声の高さは何で決まり、歌手はどうやってそこまで上げるのか。声帯の長さ、張り、それを引き伸ばす筋肉、そして超高速度カメラで見えたことが分かります。

プロのソプラノ歌手9人の高音(C6≒1047Hz〜G6≒1568Hz)を超高速度カメラで撮影した2024年の研究では、声帯は1秒に約1000〜1600回ふるえ、互いにぶつかっていた[6]。声の最高音域は「ホイッスルレジスター(笛の声)」と呼ばれてきたが、この呼び名は笛の物理原理を反映していない、と論文は述べる[6]。

では、声の高さは何で決まり、歌手は声帯にどんな操作をしているのか。長さ、張り、輪状甲状筋、計算モデルの順に、複数の資料で確かめたことが分かる。

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1. 「1びょうに 1000回」って、どういう こと?

1. 「夜の女王のアリア」には、1秒に1000回以上のふるえがいる

1. 声の高さは、声帯が1秒間にふるえる回数

オペラに、ソプラノが とても 高い 声で 歌う 有名な 歌が あります。「夜の 女王の アリア」です。この 歌には、1050回を こえる ふるえが 1びょうの 間に いると いわれます[1]。

声は、のどの 中の 二まいの 「せいたい」が ふるえて 出ます。ふるえが はやいほど、高い 声に 聞こえます[1]。

ふつうの 話し声だと、男の 人で 1びょうに 125回ほど、女の 人で 210回ほどです[2]。この 高い 声では、女の 人の 話し声の 5ばい いじょうの はやさで ふるえて いる ことに なります。

では、声の 高さは 何で かわるのでしょう。

高さは「1秒に何回」で決まる

声は、のどの中にある左右2枚の声帯が、息に押されてふるえることで生まれます。ふるえが速いほど高い音になります[1]。1秒間のふるえの回数を、基本周波数(単位はヘルツ、Hz)といいます。

ソプラノが「夜の女王のアリア」を歌うには、1050Hzを超えるふるえが必要だと、アメリカ物理学協会(AIP)の記事は紹介しています[1]。ふつうの話し声は、男性でおよそ125Hz、女性でおよそ210Hzとされます(百科事典的な資料にある目安です)[2]。1050Hzは、女性の話し声の約5倍にあたります(1050÷210)。

そんなに速いふるえを、人は何を変えて出しているのでしょうか。

声の高さは、声帯が1秒間にふるえる回数、すなわち基本周波数(Hz)に対応し、ふるえが速いほど高く聞こえる[1]。AIPの記事によれば、声帯のふるえは男性で通常90〜500Hz、女性で150〜1000Hzであり、ソプラノが「夜の女王のアリア」を歌うには1050Hzを超えるふるえが要る[1]。

話し声の平均は、男性約125Hz、女性約210Hzとされる(Wikipedia由来の目安で、一次資料での照合は限定的)[2]。1050Hzは女性の話し声の約5倍(1050÷210)で、歌唱はこの範囲を大きく超える。では、声帯のどんな性質がこの回数を決めるのか。

2. 声の 高さが 人に よって ちがうのは、なぜ?

2. 声帯が長いほど、ふるえはゆっくりになる

2. 長さと基本周波数 ── 弦のモデルと男女差

まず 「長さ」が 大きく かかわります。せいたいが 長いほど、ゆっくり ふるえて、ひくい 声に なります[2]。

わゴムで 考えて みましょう。長い わゴムは ゆっくり ふるえ、みじかい わゴムは はやく ふるえます。せいたいも、ふるえる 部分が 長いと ひくい 声に なります。ただし 本当の せいたいは ゴムでは なく、しめった やわらかい ものです。

大人の せいたいは、男の 人が 1.75〜2.5センチ、女の 人が 1.25〜1.75センチです。赤ちゃんは、6〜8ミリほどしか ありません[2]。子どもの 声が 高いのは、せいたいが みじかいことが 理由の ひとつだと 考えられます。

男の 人の せいたいは、ふるえる 部分で 女の 人より ふつう 6わりほど 長く、これで 男の 人と 女の 人の 声の ちがいが ほぼ わかると、しらべる ところの せつめいが あります[4]。ちなみに 男子の 声がわりは、べつの メモ「声が ひっくりかえるのは、なぜ?」で しらべて います。

でも、同じ 人が 高い 声も ひくい 声も 出せます。せいたいの 長さは、かえられるのでしょうか。

男女の差は、ほぼ1オクターブ

声帯の基本周波数は、長さ・大きさ・張りの影響を受けます。長いほど低く、張るほど高くなります[2]。声帯を両端で固定した「弦」にたとえた物理モデルでも、長くなると基本周波数は下がり、繊維の張りが増すと上がります[3]。

成人の声帯は、男性で約1.75〜2.5cm、女性で約1.25〜1.75cm、新生児で約6〜8mmとされ[2]、子どもの声が高い理由のひとつと考えられます。ふつうの話し声で、男女の差はおよそ1オクターブです[7]。

音声の研究機関NCVSの解説では、実際にふるえる部分(有効長)が男性のほうが平均で約60%長く、それだけで男女の差をほぼ説明できるとされます[4]。「声帯全体の長さ」ではなく「ふるえる部分の長さ」の話です。なお、資料ごとに声帯の長さの数値が少し違うのは、測り方の違いとみられるので、混ぜて計算しません。

男子の声変わりでこの長さが変わる話は、別のメモで扱っています。ここで気になるのは、同じ人が低い声も高い声も出せることです。声帯の長さは、その場で変えられるのでしょうか。

声帯を両端固定の弦とみなすモデルでは、声帯が長いほど基本周波数は下がり、組織の応力(張り)が増すほど上がる[3]。総説的な記述でも、基本周波数は声帯の長さ・大きさ・張りに左右される[2]。成人の声帯長は男性約1.75〜2.5cm、女性約1.25〜1.75cm、新生児約6〜8mmとされる[2]。

男女差については、NCVSの解説が、実際にふるえる有効長が男性で平均約60%長く、これが基本周波数の男女差をほぼ完全に説明すると述べる[4]。1957年の日本の資料も、話し声の男女差を約1オクターブとし、主に声帯の長さの差によるとする[7]。ただし資料間で声帯長の数値が異なり(同資料の日本人平均は男12.5mm・女9.4mm)、測定法の違いとみて、本文では混ぜていない。思春期の声帯の伸長は別のメモが詳しい。

ところが、同じ人が低い声も高い声も出せる以上、長さは固定ではない。何が、その場で変わるのか。

3. 歌う 人は、せいたいを どう かえる?

3. 声帯を引き伸ばして、張りを上げる

3. 輪状甲状筋による伸長と張り

のどには、せいたいを 引っぱって のばす きんにくが あります。「りんじょうこうじょうきん」と いう 名前です。この きんにくが はたらくと、せいたいの はりが 高まり、声の ふるえが はやく なります[5]。

わゴムを ぴんと 引っぱると、高い 音が 出ますね。それと にた ことが、のどの 中でも 起きて いると 考えられて います。

歌手の 中には、高い 声が 出しにくい 人が います。その ような 歌手を しらべる 研究でも、この きんにくの はたらきが 見られて います[5]。

では、いちばん 高い 声では、のどの 中で 何が 起きて いるのでしょうか。

のどの中のゴムを、ぴんと張る

声帯を引き伸ばして張りを高める筋肉が、輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)です。この筋肉は、声の周波数を上げる役目をもつとされます[5]。高い声が出しにくい歌手を調べた研究でも、この筋肉の働きが注目されています[5]。

輪ゴムを引っぱると音が高くなるのと、方向は同じです。ただし声帯は、ゴムひもと違って、粘膜に包まれた複数の層でできています。

声帯の「厚さ」や「質量」が高さに関わることは、資料の説明にも出てきます。高音で声帯が引き伸ばされて薄くなる、という歌唱指導側の解説もありますが、厚さだけを数値で示した一次資料は、今回は見つけられませんでした。「薄くなるとされる」の範囲にとどめます。

では、歌手が出す最も高い声では、声帯は具体的にどう動いているのでしょうか。

声帯を引き伸ばして張りを高め、声の周波数を上げる筋が輪状甲状筋である[5]。高音が出しにくい歌手を対象とした2020年の研究は、この筋の働きを調べている[5]。弦のモデルの「張りの増加で周波数が上がる」[3]に、生体側の操作として対応する位置づけである。

質量(厚さ)の寄与は、資料上は「大きさ」として一括されている[2]。高音で声帯が伸びて薄くなる、と述べる歌唱指導側の解説もあるが、厚さの説明は仮説的な扱いにとどめる。

では、張りを最大限に上げた声は、声帯のどんな運動として観察されるのか。

4. 「ふえの 声」は、ほんとうに ふえ?

4. 「笛の声」と呼ばれた超高音の、本当のすがた

4. 超高速度撮影が示したこと ── 「ホイッスルレジスター」の呼称を問い直す

ドイツなどの 研究者は、プロの ソプラノ歌手 9人に きょうりょくして もらい、とても 高い 声を 出す ときの せいたいを、ものすごく はやい カメラで うつしました。

すると、せいたいは 1びょうに 1000〜1600回ほど ふるえて、たがいに ぶつかって いました[6]。この 研究で しらべた クラシックの ソプラノの 高い 声では、ふえの ように 空気だけが 鳴る のでは なく、ふだんの 声と 同じ しくみで 出て いました。

この 高さの 声は 「ホイッスルレジスター(ふえの 声)」と よばれて きましたが、この 名前は、クラシックの 高い 声の 出し方の せつめいとしては、ふえの しくみと あわないと、ろんぶんは 書いて います[6]。

コンピューターの けいさんでは、この 高さを 出すには、せいたいを もとの 長さの 1.5ばいほど のばす ことが いるとされました。ただし これは けいさんの 上で ひつような 数で、歌手 みんなが 同じ だけ のばして いると いう 意味では ありません[6]。

この 研究で しらべた のは、クラシックの ソプラノ 9人です。ほかの 歌い方や、ほかの 歌手すべての 声が こうだとは かぎりません。

声帯は、ぶつかり合っていた

ドイツなどの研究チームが、プロのソプラノ歌手9人に協力してもらい、高音(C6≒1047Hz〜G6≒1568Hz)を超高速度カメラで撮影しました。声帯は1秒に約1000〜1600回ふるえ、左右がぶつかり合っていました[6]。ふるえの1回は、1秒の1000分の1(1ミリ秒)前後という短さです。

この最高音域は、「ホイッスルレジスター(笛の声)」と呼ばれてきました。しかし論文は、この呼び名は声の発生では笛の物理原理を反映しておらず、話し声や他の歌と同じ、声帯がふるえてぶつかる仕組みで出している、と述べています[6][1]。

計算で見えた、必要な条件

モデル計算では、この超高音に、輪状甲状筋の強い収縮、声帯の約50%の引き伸ばし(元の長さの約1.5倍)、高い声門下圧(声帯の下から押し上げる息の圧力)が必要とされました[6]。約50%は計算モデルが要求する値で、測定した全員の値ではありません。

この研究の対象は、クラシックのソプラノ9人です。すべての超高音や歌い方の説明とは限りません。

Echternachらは、プロのソプラノ歌手9人のC6(≒1047Hz)〜G6(≒1568Hz)の歌唱を超高速度撮影し、声帯が約1000〜1600回/秒でふるえて衝突していることを示した[6]。これは、通常の声の出し方である筋弾性・空気力学的機構(MEAD、声帯が気流でふるえる仕組み)が、最高音域でも働いているという結果である[6]。

論文は、「ホイッスルレジスター」という呼称が、高音のクラシック唱法における声の発生では、笛の物理原理を反映していないと述べる[6][1]。つまり、この呼称は高音のクラシック唱法の説明としては笛の物理原理を反映していない、という範囲での指摘である。話し声の女性平均約210Hz[2]に対し、1047〜1568Hzは約5.0〜7.5倍(1047÷210、1568÷210)にあたる。

同研究のモデル計算では、この超高音に、輪状甲状筋の強い収縮、声帯のひずみ(引き伸ばし)約50%、高い声門下圧が必要とされた[6]。約50%は計算モデルが要求する値であり、測定された全員の値ではない。また対象はクラシックのソプラノ9人で、あらゆる超高音の説明ではない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

わゴムを 用意して、両手で 持って ぴんと 引っぱり、指で そっと はじいて みましょう。ゆるめた ときと、引っぱった ときで、音の 高さが どう ちがうか 聞きくらべます。わゴムを 顔に 向けない こと、切れて とばないように 引っぱりすぎない ことに、気を つけて ください。

もう ひとつ。のどぼとけの あたりに かるく 手を あてて、ひくい 声から、ゆっくり 高い 声に かえて みます。むりを して 大声を 出さない ように します。

今日できること:輪ゴムを両手で持ち、指でそっとはじいて、ゆるめたときと引っぱったときの音の高さを聞き比べます。輪ゴムは顔に向けず、切れて飛ばないように引っぱりすぎないでください。

もうひとつ、のどぼとけのあたりに軽く手を当てて、低い声から少しずつ高い声に変えてみると、のどの表面に伝わるふるえが手に感じられるか試せます。無理に大声を出したり、のどが痛くなるまで続けたりしないでください。

調べるなら:声の出し方の相談は、音声の専門の医師や歌の先生にしてください。この記事は医療の助言ではありません。

元の研究は、Echternachら(2024)のScientific Reports掲載論文[6]とAIP Inside Scienceの解説[1]が入口になる。いずれも英語だが、9人という対象の限定と、約50%がモデル計算の要求値であるという書き方の慎重さが読み取れる。輪状甲状筋の研究は2020年の論文[5]を参照できる。

厚さ(質量)の影響を数値で示す日本語の新しい医学資料は、今回は確認できていない。探すときは、声帯の質量と基本周波数の関係を扱う音声学の論文を手がかりにするとよい。声の出し方の相談は専門の医師や歌の指導者に。この記事は医療の助言ではない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

資料は、声の高さの一般的な説明・声帯の長さと張りのモデル・高音の高速度撮影の順に使いました。

  1. AIP Inside Science, "The science of hitting the high notes". https://www.aip.org/inside-science/the-science-of-hitting-the-high-notes (声の高さとふるえの回数、通常の範囲)
  2. Wikipedia, "Vocal folds". https://en.wikipedia.org/wiki/Vocal_folds (声帯の長さと話し声の周波数の目安)
  3. 声帯の長さ・応力と基本周波数のモデル論文 (PMC4911068). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4911068 (弦のモデル)
  4. NCVS, "Factors Influencing Fundamental Frequency". https://ncvs.org/?p=8521 (有効長と男女差)
  5. "Difficulty producing high-pitched sounds in singing", Braz J Otorhinolaryngol, 2020 (PMC9422624). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9422624/ (輪状甲状筋の役割)
  6. Echternach et al., Scientific Reports, 2024 (PMC11161605). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11161605/ (ソプラノの高速度撮影とモデル計算)
  7. 看護学雑誌 1957年12月号(医学書院)抄録. https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1661910502 (話し声の男女差)

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