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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

電気でんきは、太い銅どうの 線の 中まで 流れて いるの?

電線の中まで電気は流れているのか ── 周波数で変わる「使われる深さ」

表皮効果と周波数 ── 交流の電流は導体のどこを流れ、電線はそれにどう応えるか

分野:技術

同じ 銅どうの 線でも、電気でんきが 使う ところは、いつも 同じ では ありません。ある 周波数しゅうはすうでは 9ミリの 深さまで 使われ、べつの 周波数しゅうはすうでは 1ミリの 15分の 1ほど しか 使われません。

どうして 電気は、線の 表に あつまって しまう のでしょう。この 記事で、その わけと、それに 合わせた 電線の くふうが 分かります。

同じ銅の線でも、電流が流れる深さは周波数で大きく変わります。50Hzなら約9mmの深さまで使われますが、1MHzでは約0.065mm、1mmの15分の1ほどしか使われません。

なぜ電流は、線の表面に集まるのでしょうか。それに合わせて、送電線や高周波の線はどんな形をしているのでしょうか。理由と、数字の検算と、3つの電線のくふうが分かります。

銅の導体では、電流密度が表面の1/eに下がる深さ(表皮深さ)は、50Hzで約9mmなのに、1MHzでは約0.065mmしかない。周波数が2万倍になると、深さはおよそ141分の1になる[2][3]。

なぜ交流の電流は導体の表面近くに寄るのか。その結果、電線の設計はどう変わるのか。理由、数値の検算、送電線の鋼心・中空導体・リッツ線という3つの対処が分かる。

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1. 太い 線でも、中は 使われ ないの?

1. 電流は、太い線のどこを流れるのか

1. 表皮効果 ── 高周波の電流は、導体の表面に集中する

おうちの 電線を 切ると、中に 細い 銅どうの 線が 見えます。この 線の まん中まで、電気は ぜんぶ 通って いる ように 思えます。

ところが、電気の 向きが 1 びょうの うちに 何回も かわる「交流」では、そう ならない ことが あります。向きの かわる 回数が 多い ほど、電流は 線の 表の ほうに かたまって 流れます。これを「ひょうひこうか」と いいます[1]。

電気の 通る ところが 表だけに なると、線が 実さいより 細く なった のと 同じです。電気が 通りにくく なり、ねつも 出やすく なります[4]。

家庭のコンセントの電気は、向きが1秒間に何十回も入れかわる交流です。日本では50Hzか60Hzです。向きが入れかわる回数を周波数といい、単位はHzです。

この周波数が高くなると、電流は導体の中まで均等には流れず、表面の近くに集まります。これを表皮効果といいます[1]。電流が通る場所が表面だけになると、導体は実質的に細くなったのと同じで、交流に対する電気抵抗が増えます[1][4]。

では、表面に集まるといっても、どのくらいの深さまでが使われるのでしょうか。

家庭用の電気は交流で、日本では50Hzか60Hzである。交流の周波数が高くなると、電流は導体断面に一様には分布せず、表面付近に集中する。これが表皮効果で、周波数が高いほど顕著になる[1]。

電流が流れる領域が表面に限られると、電気が通る実効断面積が減る。結果として交流抵抗は直流より大きくなり、損失と発熱が増える[4]。ただし導体の太さが後述の表皮深さより十分小さければ、この影響は小さい[4]。

では、「表面付近」は具体的にどの深さを指し、周波数でどう変わるのか。

2. 周波数しゅうはすうで、使う 深さは どれくらい かわるの?

2. 銅の線で、使われる深さを数字で見る

2. 表皮深さの数値 ── 銅で50Hzと1MHzを比べる

電気が 使う 深さは、電気の 向きが かわる 回数(周波数しゅうはすう)で きまります。銅どうの 線では、50ヘルツで およそ 9ミリ、1メガヘルツ(50ヘルツの 2万ばい)で およそ 0.065ミリです[2][3]。

9ミリは、ものさしで 9めもり ぶん。0.065ミリは、1ミリを 15こに わけた 1こより、すこし ちいさい くらいです。2万ばいに なった だけで、深さは およそ 140ぶんの 1に なります。

ただし 目安の 数字です。ざいりょうや 温度で、少し かわります。

電流が使う深さは「表皮深さ」とよばれます。表面の電流の強さが約37%(1/e)に下がる深さのことで、それより内側の電流がゼロになるわけではありません[2]。

銅の表皮深さは、資料の表では次のように並びます。50Hzで約9.2mm、10kHzで約0.65mm、100kHzで約0.21mm、1MHzで約0.065mm、10MHzで約0.021mmです[2]。東京大学の補足資料も、50Hzでおよそ9mmとしています[3]。導電率などの仮定で、資料により数%ずれます。

この表を使って、周波数が50Hzから1MHzへ2万倍になったときの深さを割ってみます。9.22mm÷0.0652mm=約141です。2万の平方根もおよそ141なので、深さは周波数の平方根に反比例する、という性質とぴったり合います[2]。周波数が100倍になっても、深さは10分の1にしかならないということです。

では、なぜ電流は表面に寄ってしまうのでしょうか。

表皮深さδは、電流密度が表面の値の1/e(約0.37)になる深さと定義され、δ=√(2ρ/(ωμ))と書ける(ρは抵抗率、ω=2πfは角周波数、μは透磁率)[2]。したがってδは周波数の平方根に反比例し、内側の電流密度は深さとともに連続的に小さくなるだけで、深さδでゼロになるのではない。

銅について、資料の表は50Hzで約9.22mm、10kHzで約0.652mm、100kHzで約0.206mm、1MHzで約65.2µm、10MHzで約20.6µmとしている[2]。東京大学の補足資料も50Hzで約9mmとしていて、ここは二つの資料が合う[3]。高い周波数の値は、表のとおりの目安である。導電率の取り方などで資料により数%ずれ、温度が上がると深さも変わる(100℃の銅で50Hz約10.6mmとする資料もある)。この記事の数値はすべて「約」の目安である。

検算してみる。50Hzから1MHzは周波数が2万倍で、深さは9.22mm÷0.0652mm≒141分の1。√20000≒141.4と一致し、平方根の関係が表の値から確かめられる。同じ表で10kHzから100kHzは10倍で、0.652mm÷0.206mm≒3.17、√10≒3.16とやはり合う。周波数を100倍にしても、深さは10分の1にしかならない。

この「表面に寄る」のは、なぜ起こるのか。

3. どうして 電気は、表の ほうに よるの?

3. 電流を表面へ押し出す、導体の中の逆向きの電流

3. 電磁誘導が内部の電流を打ち消す

電気が ながれると、まわりに じしゃくの 力(じば)が できます。電気の 向きが はやく かわる ほど、この じばも はやく かわります。すると 線の 中に、その かわるのを じゃまする 向きの 電流が 生まれます[3]。

この 生まれた 電流は、まん中では もとの 電流と 反対向きに なって、おたがいを 弱めます。表の ほうでは 弱め合いが 少ないので、電流が のこります[3]。

理由は電磁誘導で説明されます。導体を流れる電流が変わると、そのまわりの磁束も変わります。すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じ、導体の中に渦のような電流(渦電流)が流れます[3]。

導体の中央では、この誘導された電流が、もとの電流と逆向きになって強く弱め合います。表面に近いほど弱め方が小さいため、電流は表面の近くに多く残ります[3]。電流の変化が速い、つまり周波数が高いほど、誘導起電力も大きくなるため、表面への集中がはっきりします。

これは電線の使い道にも関わります。表面しか使われないなら、使われない内側は別の役目に回せるのではないでしょうか。

導体内で電流が時間変化すると、周囲の磁束も変化し、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じて渦電流が流れる。導体の中央では、この誘導された電流Ji(t)が主電流Je(t)と逆向きになり、互いに弱められるため、表面側だけが残る[3]。変化が速いほど誘導起電力は大きく、このため周波数が高いほど表皮深さは浅くなる。

ここで重要なのは、表面が「特別によく流れる場所」なのではなく、内部が打ち消される結果として相対的に表面が残る点である。内部の電流密度が深さとともに連続的に減る、先の定義とも整合する。

表面しか使われないなら、内部は設計上、別の役目に回せる。実際に送電線の構造は、これを利用している。

4. 送電線の まん中に、はがねの 線が 入って いるのは なぜ?

4. 送電線の芯に、鋼線を入れる理由

4. 鋼心アルミより線 ── 強度と導電を分担する構造

高い 鉄とうに かかる 太い 送電線の 多くは、中心に はがねの 線、まわりに アルミの 線を より合わせて あります。この 形を「はがね心アルミより線」と いいます[5]。

はがねは つよくて、線が たるみにくく なります。電気は 表に よるので、おもに 外がわの アルミが 受けもちます[5]。つよさと 電気の 通り道を、中と 外で わけて いるのです。

ただし、中の はがねに 電気が ぜんぜん 流れない、と いう わけでは ありません。「おもに 外がわの アルミ」と 考えて おきましょう。

高電圧の送電線には、中心に鋼線、そのまわりにアルミ線をより合わせた鋼心アルミより線(ACSR)が多く使われます[5]。鋼線は強度を受け持ち、全部アルミ線でつくるより、たるみが小さくなります。

電流は表皮効果で、電気をよく通す外側のアルミ線に集まります[5]。芯の鋼線は電気の通り道としては重くない、という見方です。ただし、芯にまったく電流が流れないわけではなく、規格によっては鋼線の導電率も計算に含めます。「主に外側のアルミ」と読むのが安全です。

鋼心とは反対に、中を「なくす」工夫もあります。

高電圧の送電線では、中心に鋼線、外側にアルミ線を撚った鋼心アルミより線(ACSR)が多い。鋼線が引っ張り強度を受け持つため、全アルミ線の場合より弛みが小さい。一方、電流は表皮効果で、抵抗率の低い外側のアルミに集中する[5]。

この分担は、強度は内部の鋼、導電は外側のアルミ、と役割を分けた設計である。ただし、鋼心に電流が全く流れないとは言えず、規格によっては鋼心の導電率を電流容量の計算に含める[5]。電流が「主に外側のアルミ」を流れる、というのが資料から言える強さである。

表面しか使わないなら、内部を鋼に置きかえる代わりに、内部そのものを減らす選択肢もある。

5. 中が からっぽの 電線も あるの?

5. 中を空っぽにした管状の導体

5. 管状導体 ── 内部を除いて重さと費用を減らす

大きな 電流を 流す ところでは、中が つまった 太い ぼうの かわりに、中が からっぽの 管くだの 形の 線が つかわれる ことが あります[2]。

管くだでも、電気が 通るのは ほとんど 表の ほうです。だから 電気の 通りやすさは あまり かわりません[2]。そのうえ、つかう ざいりょうが 少なくて すむので、おもさも お金も へらせます。

のこる 問いは、細い 線で つくる ほうほうです。

大きな電流を流す導体では、中身の詰まった棒の代わりに、管の形(中空)の導体を使うことがあります[2]。内側にはほとんど電流が流れないので、交流に対する抵抗はほとんど変わらず、材料が減るぶん、重さと費用を下げられます[2]。

ここでは、管状の導体の一般的な利点を説明しています。

では、周波数が1MHzほどにもなったとき、表皮深さは0.065mmしかありません。もっと根本的な手はないでしょうか。

大電流用の導体では、中身の詰まった導体の代わりに管状導体を使うことがある。内側には電流がほとんど流れないため、交流抵抗はほぼ変わらず、重さと費用を減らせる[2]。表皮深さより十分厚い壁をもつ管なら、断面の「使われない部分」だけを除いたことになる。

ここでは、管状導体の一般的な利点を説明する。

数kHzからおよそ1MHzでは表皮深さが1mm以下になる。この領域では、導体を太くするより、細くして数を増やすほうが合理的になる。

6. 細い 線を たくさん たばねると、どう なるの?

6. 細い線を編み合わせるリッツ線

6. リッツ線 ── 素線を細くして表皮効果を避ける

電気の 向きが とても はやく かわる ところでは、「リッツ線」が 使われます。ひとつひとつ 電気を 通さない ものを まいた 細い 線を、たくさん あみ合わせた 線です[2]。

細い 線は、電気が 表に よっても、あまり こまりません。また あみ方を くふうして、電流が どの 線にも ひとしく 分かれる ように します[2]。おなじ 太さの 1本の 線より、電気の 通りにくさが ふえにくく なります。

ただし 線が 太すぎると、かえって あつく なる ことも あります。細さの えらび方が 大切です。

リッツ線は、表面を絶縁した細い素線を多数、決まった形に編み合わせた線です[2]。ドイツ語のLitzendrahtが名前の由来です。

素線が細いと、表皮効果の影響を受けにくくなります。さらに編み方を工夫して、電流がどの素線にも均等に分かれるようにすると、同じ断面積の1本の線に比べ、交流抵抗が増えにくくなります[2]。数kHzから約1MHzの範囲で有効とされます[2]。

素線が太すぎると、単線より発熱が増えることもあるので、素線の太さを選ぶことが大切です。送電線の鋼心、管、リッツ線は、どれも「表面しか使われない」という同じ性質に、別の答えを出しています。

リッツ線は、絶縁した細い素線を多数、慎重に設計した模様で編み合わせた線で、独語のLitzendrahtに由来する[2]。素線の直径が表皮深さより十分小さければ、各素線の内部まで電流が入り、断面を無駄なく使える。また編み方によって電流が素線に均等に分かれるため、同じ断面積の単線より交流抵抗が増えにくい[2]。数kHzから約1MHzの範囲で有効とされる。

限界もある。素線が太すぎる場合は、単線以上に発熱することがある。素線径は、使う周波数の表皮深さを見て選ぶ必要がある。

3つの対処を比べると、鋼心は「使われない中心を別の役目に回す」、管状導体は「使われない中心を省く」、リッツ線は「導体を細くして全体を使い切る」という、表皮深さに対する3通りの答えになっている。

7. だれが この ふしぎに 気づいたの?

7. 表皮効果を最初に書いた人たち

7. 表皮効果を記述したラムとヘヴィサイド

この ふしぎは、1883ねんに、ホレス・ラムと いう 人が 書いた 論文ろんぶんで、はじめて しるされました。まるい 形の 金ぞくの たまに ついての 話でした[2]。

2年あと、1885ねんに、オリバー・ヘヴィサイドと いう 人が、どんな 形の 電気の 通り道にも あてはまる ように ひろげました[2]。

表皮効果は、1883年にホレス・ラムが、球の形をした導体について書いた論文で初めて記述されたとされます[2]。その2年後の1885年に、オリバー・ヘヴィサイドが、どんな形の導体にも当てはまるように一般化しました[2]。

電線の工夫は、この現象が理論として整理されたあとに、使う場面に合わせて形を変えてきたと考えられます。

表皮効果は、1883年にホレス・ラム(Horace Lamb)が球状導体について書いた論文で初めて記述され、1885年にオリバー・ヘヴィサイド(Oliver Heaviside)が任意形状の導体に一般化した[2]。

8. 自分で 数字を たしかめて みよう

8. 電卓で、深さの変わり方を確かめる

8. 平方根の関係を、自分の手で検算する

おうちの 人と 電たくを つかって みましょう。10キロヘルツで 0.65ミリ、100キロヘルツで 0.21ミリです。10ばいに なると、深さは 何ぶんの 1に なって いるでしょう。

こたえは、およそ 3ぶんの 1です。10ばいで 3ぶんの 1、100ばいなら 10ぶんの 1です。

そとの 鉄とうの 送電線は、遠くから 見上げるだけに しましょう。ぜったいに 近づいて さわっては いけません。

電卓があれば、表の数字から自分で確かめられます。10kHzの0.652mmを、100kHzの0.206mmで割ります。約3.17になります。周波数が10倍になると、深さは約3分の1になっている、という計算です。

続けて、10kHzから1MHzへ100倍になったときの深さ(0.652÷0.0652)も求めてみてください。ちょうど10になるはずです。平方根の関係が見えてきます。

外を歩くときは、鉄塔にかかる送電線を遠くから見上げて、より線の形を探してみるのもよいでしょう。近づいたり、触れたりしてはいけません。

表の数値だけで、平方根の関係を自分で検算できる。10kHzの0.652mmを100kHzの0.206mmで割ると約3.17で、√10≒3.16に合う。10kHzから1MHzでは0.652mm÷0.0652mm≒10.0で、√100=10に合う。数値は資料や条件で数%ずれるので、「ぴったり一致」ではなく「近い値になる」ことを確かめる。

さらに調べたい人は、東京大学の電気磁気学補足資料(EM2019-5)や、表皮深さの定義を扱う文献にあたるとよい。δ=√(2ρ/(ωμ))の式に、銅やアルミの抵抗率ρを代入して、自分で表を再現してみることもできる。

屋外で送電線を見るときは、鉄塔から離れた場所から眺めるにとどめる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

表皮効果の定義、表皮深さの数値、仕組み、送電線・管状導体・リッツ線の構造、歴史は、次の資料の記述を使った。

  1. コトバンク「表皮効果」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書) https://kotobank.jp/word/%E8%A1%A8%E7%9A%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C-121391 (定義)
  2. Wikipedia「Skin effect」 https://en.wikipedia.org/wiki/Skin_effect (表皮深さの式と銅の数値、管状導体、リッツ線、歴史)
  3. 東京大学「電気磁気学 補足資料 EM2019-5」 https://www.ee.t.u-tokyo.ac.jp/~tanemura/lecture/EM/hosoku/EM2019-5_hosoku.pdf (理由の説明、50Hzの深さ)
  4. MONOist「損失の解析」 https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1504/14/news015.html (実効断面積と交流抵抗)
  5. Wikipedia「Aluminium-conductor steel-reinforced cable」 https://en.wikipedia.org/wiki/Aluminium-conductor_steel-reinforced_cable (鋼心アルミより線)

なおした ところ

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