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しょうゆは 黒いのに、赤い色って ほんとう?

黒く見えるしょうゆは、なぜ「赤橙色」と呼ばれるのか ── 色と香りを生む6〜8か月

しょうゆの色と香り ── メラノイジンと約300種類の香気成分、諸味の熟成6〜8か月

分野:生きもの

しょうゆは、見た 目は 黒っぽい ですよね。ところが、しょうゆを つくる 人たちの だんたいは、「ひかりに すかすと 赤みの ある だいだい色」と せつめいして います[1]。

黒いのに、赤い。あの かおりも、いったい どこから 来るのでしょう。しょうゆが できる 道のりを、たどって みましょう。

食卓のしょうゆは、ほとんど黒に見えます。ところがしょうゆ業界の団体は、こいくちしょうゆの色を「透明感のある赤橙色」と説明しています[1]。

黒いのに赤橙色とは、どういうことなのでしょう。あの色と香りが、6〜8か月の熟成のあいだにどうやって生まれるのか、分かっていることと、研究者自身が「まだ分からない」と書いていることを分けて見ていきます。

こいくちしょうゆは、日本醤油協会によれば「透明感のある赤橙色」である[1]。見慣れた黒っぽい液体と、この説明とのずれが、このメモの出発点になる。

色は主に熟成中のメイラード反応で生じるメラノイジンによると考えられているが、その化学構造は明らかにできていない[3]。香りの成分は約300種類が知られ[1]、微生物の働きが関わる[2]。協会の解説と、論文・博士論文の要旨を突き合わせて、確かなことと未解明の部分を整理する。

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1. 黒いしょうゆは、なぜ 赤いの?

1. 黒いのに「赤橙色」という説明

1. 協会の記述 ── こいくちしょうゆの色は透明感のある赤橙色

にほんしょうゆきょうかいは、こいくちしょうゆの 色は「すきとおった 赤みの ある だいだい色」と 書いて います[1]。

びんの 中で 黒く 見えるのは、色が こいからだと 思えます。でも、こいから、ひかりが とおりにくいのかも しれません。ここでは、「そう 書かれて いる」ところまでに します。

台所に ある しょうゆを、白い おさらに 少しだけ たらして みると、見え方が かわるかも しれません。あとの 章で、やり方を 書きます。

協会の説明

日本醤油協会のサイトでは、こいくちしょうゆの色は「透明感のある赤橙色」と説明されています[1]。びんやボトルの中では黒っぽく見えても、協会は「透明感のある鮮やかな赤橙色」と説明している、ということです。

黒く見えるわけは

濃いので光が通りにくいのかもしれません。この記事では、協会の「赤橙色」という表現と、身近な黒っぽい見た目とを並べて置いておきます。

日本醤油協会は、こいくちしょうゆの色を「透明感のある赤橙色」と記している[1]。日常的な印象である「黒」と、この記述との間にずれがある点が、色の問題の入口になる。

ただし、なぜ黒く見えるのかを、光の吸収や厚みとの関係で説明した一次資料は、今回の調査では取得できていない。濃度が高く光が通りにくいためだという推測は成り立つが、資料で裏づけたものではないので、本文では扱わない。

2. しょうゆは、どうやって つくるの?

2. 大豆と小麦から、麹と諸味へ

2. 製法 ── 麹づくりと、6〜8か月の諸味の熟成

まず、むした 大豆と、いった 小麦を、ほぼ おなじ くらい ずつ まぜます。そこに 「たねこうじ」を くわえて、こうじを つくります[2]。

こうじは、こうじきんという 小さな いきものが ふえた ものです。できた こうじを しおみずと いっしょに タンクに 入れると、「もろみ」に なります。

もろみは かきまぜながら、やく 六〜八か月、ねかせます[2]。この あいだに、こうじきんや こうぼ、にゅうさんきんが はたらきます。しょうゆの 色や 味、かおりが できるのは、この ねかせて いる 間です[2]。

こうじきんの ちからで、大豆や 小麦の たんぱくしつが 分かれて、やく 二十しゅるいの アミノさんに なります[1]。

麹をつくる

蒸した大豆と炒った小麦を、ほぼ同じ量だけ混ぜ、種麹を加えて麹をつくります[2]。麹は、麹菌が増えたものです。

諸味の熟成

麹を食塩水とともにタンクに仕込むと、諸味になります。これをかき混ぜながら、約6〜8か月ねかせます。麹菌・酵母・乳酸菌などが働いて分解と発酵が進み、しょうゆ特有の色・味・香りが生まれる、と説明されています[2]。期間は約6〜8か月が目安です。

うま味のもと

大豆と小麦のたんぱく質は、麹菌の酵素で分解されて約20種類のアミノ酸になります[1]。この材料が、あとで色にも関わってきます。

日本醤油協会の解説では、こいくちしょうゆは蒸した大豆と炒った小麦をほぼ等量混ぜ、種麹を加えて麹をつくる。これを食塩水とタンクに仕込んだものが諸味で、攪拌を重ねながら約6〜8か月ねかせる。この間に麹菌・酵母・乳酸菌などが働き、分解・発酵・熟成が進んで、色・味・香りが生まれるとされる[2]。熟成期間は約6〜8か月が目安である。

大豆・小麦のたんぱく質は麹菌の酵素で分解され、約20種類のアミノ酸になる[1]。ここで生じるアミノ酸と小麦由来のブドウ糖が、次章の色の材料になる。

3. 色は、ねかせて いる 間に できる

3. 糖とアミノ酸が反応して、色になる

3. メラノイジン ── 主役の色素と、分かっていないこと

色の もとに なるのは、小麦から できる あまい ブドウとうと、大豆の たんぱくしつから できる アミノさんです。ねかせて いる 間に、この 二つが 手を つなぐように はんのうして、色の ついた ものが できます[1]。

この 色の ついた ものを、「メラノイジン」と よびます。ゆっくり、ゆっくり、色が 出て きます。

おどろくのは、この メラノイジンの 形が、まだ よく 分かって いないことです。大きさや 形が そろって いなくて、化学の 形を はっきり 書けない、と 研究者は 書いて います[3]。

メラノイジンという色

しょうゆの色は、小麦から生まれるブドウ糖と、大豆のたんぱく質からできるアミノ酸が熟成中に反応してできる、メラノイジンという物質によるとされています[1]。糖とアミノ酸が反応して褐色になる変化はメイラード反応と呼ばれ、しょうゆの色も主にこれで生じると考えられています[3]。

分かっていないこと

研究者は論文の中で、メラノイジンは大きさや形がそろわない高分子の集まりで、化学構造を明らかにできない、と述べています[3]。つまり、しょうゆの色の主役は、名前は分かっていても、姿がまだはっきりしない物質です。

小さな黄色い色素

同じ研究では、しょうゆから低分子の黄色い色素も一つ取り出されました。ただ、全体の色への寄与は非常に小さいと報告されています[3]。色の全部が説明できたわけではありません。

協会の解説では、しょうゆの色は、小麦由来のブドウ糖と大豆たんぱく質由来のアミノ酸が熟成中に反応して生じるメラノイジンによる[1]。学術論文では、しょうゆの色は主にメイラード反応で生じるメラノイジンによると「考えられている」と、慎重に書かれている[3]。

その論文は、メラノイジンを高分子の不均一な重合体とし、化学構造を明らかにできないとする[3]。同論文では、低分子の黄色色素(DHDMT)がしょうゆから単離・同定されたが、しょうゆ全体の色への寄与は非常に小さいとされる[3]。この色素の研究は科学研究費の課題としても記録されている[4]。

したがって「色の正体はメラノイジンで、すべて解明済み」と書くのは正確でない。主役は分かっているが、その構造は分かっていない、が資料に沿った書き方である。

4. かおりは、どこから 来るの?

4. 約300種類の香りを、微生物がつくる

4. 香気成分 ── 約300種類と、酵母・乳酸菌の寄与

しょうゆの かおりには、やく 300しゅるいの かおりの もとが 入って いると 言われます。りんごや バラ、バニラの ような かおりも 入って います[1]。しょうゆの かおりは、たくさんの かおりが まじった もの、というわけです。

その かおりを つくるのは、こうじきん、こうぼ、にゅうさんきんなどの 小さな いきものたちです[2]。

たとえば、カラメルのような あまい かおりの もとも あります。りょうりで ねつを くわえる まえと あとの あじつけの しるを しらべた 研究で、この かおりが いちばん つよかった、と 書かれて います[5]。

おおさかだいがくの 研究では、もろみに こうぼを 入れた ときと、入れない ときを くらべました。こうぼを 入れた ほうが、かおりの もとが たくさん ふえて いました[6]。

約300種類の香り

本醸造しょうゆに含まれる香りの成分は、りんご、バラ、バニラのような香りも含めて、現在見つかっているだけで約300種類とされています[1]。これらが微生物の働きで調和して、しょうゆ独特の香りになります[1]。

カラメルのような香り

代表的な香り成分の一つにHEMFがあり、カラメルのような甘い香りをもつ物質です。調理で加熱する前後の調味液を調べた研究では、香りへの寄与が最も大きかったのがこのHEMFでした[5]。ただしHEMFだけがしょうゆの香りの全てではありません。

諸味を比べた実験

大阪大学の博士論文の要旨では、醸造の最終週(18週目)の諸味を比べています。酵母を加えた諸味では、検出された133成分のうち47成分が増え、アルコールやエステルなどの香り成分が多く含まれていました。乳酸菌を加えた諸味でも11成分が増え、乳酸菌が香りに関わる可能性が示されています[6]。実験室での比較なので、市販品のすべてに当てはまるとは限りません。

協会の解説によれば、本醸造しょうゆに含まれる香気成分は、りんご・バラ・バニラ様の香りなども含め、現在発見されているものだけで約300種類にのぼる[1]。微生物の働きで調和して独特の香りになるとされる。

代表的な成分の一つがカラメル様のHEMFで、調理加熱の前後の調味液を比べた研究では、香気寄与の指標(FD係数)が最も高かった[5]。HEMFだけが香りの全てでもない。

大阪大学の博士論文(2018)の要旨によれば、醸造最終週(18週目)の試料どうしを比べると、酵母添加区では検出133成分のうち47成分が増加し、アルコール・エステル・フラノンなどの香気成分が多かった。乳酸菌添加区では11成分が増加し、乳酸菌が香りに寄与する可能性が初めて示唆されたと記される[6]。実験室条件での比較であり、市販品全般へ一般化できるとは限らない。

5. 自分でも しらべて みよう

5. 自分でも調べてみたくなったら

5. 自分でも調べてみたくなったら

家に ある しょうゆで、見え方を たしかめる ことが できます。

白い おさらに、しょうゆを 一てきだけ たらして、スプーンの せなかで うすく のばして みましょう。おさらを 明るい まどの ちかくに 持って いって、色を 見ます。あと、コップの 水に 一てき おとして、明るい ほうを 見るのも いいです。おひさまを じかに 見ては いけません。

赤みが 見えるかは、やって みないと 分かりません。見えたら、どのくらい うすいと 赤く 見えたのか、ノートに 書いて みましょう。

ふたを あけて、かおりを かいで みるのも いいです。どんな かおりが まじって いるか、ことばに して みましょう。

にほんしょうゆきょうかいの サイトにも、つくり かたの 話が のって います。

今日できること

白い皿にしょうゆを1滴たらして、スプーンの背で薄く広げ、明るい窓の近くで色を見てみましょう。透明なコップの水に1滴落として、明るいほうにかざす方法もあります。太陽を直接見てはいけません。

赤みが見えるかどうかは、やってみなければ分かりません。見えたら、どのくらい薄いと赤く見えたかを記録してみてください。見えなくても、それは一つの結果です。

もっと調べるなら

日本醤油協会のサイトには、製法と味・香りの解説があります。メラノイジンについては、日本語で読める醸造関係の論文や学会誌の記事も探せます。

今日できること:白い皿にしょうゆを1滴たらし、スプーンの背で薄く広げて明るい窓のそばで見る。透明なコップの水に1滴落として透かす方法もある。太陽を直接見てはいけない。赤みが見えるかは実際に試すまで分からず、出典の「赤橙色」という表現が体験と合うかを確かめる材料になる。

調べるなら:協会の解説[1][2]が入口になる。メラノイジンの構造については[3]の論文、香りについては[5][6]の要旨が公開されている。次に追える問いは、HEMFがしょうゆの中でどんな道すじで生まれるのか、熟成の温度や時間で色の濃さがどう変わるのか、である。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った事実の出典。閲覧日はいずれも2026-09-30。

  1. 日本醤油協会「しょうゆを知る(おいしさ)」 https://www.soysauce.or.jp/knowledge/taste (色・香りの成分数・アミノ酸)
  2. 日本醤油協会「しょうゆを知る(製法)」 https://www.soysauce.or.jp/knowledge/process (製法・熟成期間)
  3. Satoh et al. "Identification of DHDMT as a low-molecular-weight yellow pigment in soy sauce", Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 75(7) https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbb/75/7/75_100867/_article/-char/en (メラノイジンの位置づけ・黄色色素の寄与)
  4. 科学研究費助成事業 課題22300257 https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-22300257 (黄色色素研究の記録)
  5. 日本調理科学会誌 48(4) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/48/4/48_249/_article/-char/ja/ (カラメル様の香り成分)
  6. 原田里紗 博士論文(大阪大学, 2018)要旨 https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/69532/29723_Abstract.pdf (酵母・乳酸菌と香り成分の比較)

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