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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

イカの 血は、いつ 青く なるの?

イカやタコの血が青くなるのは、酸素をつかんだときだけ

イカ・タコの青い血 ── 銅を含むヘモシアニンは、酸素と結合したときに青くなる

分野:生きもの

イカや タコの 血は、青いと いわれます。でも 青いのは、いつも では ありません。酸素さんそを はこんで いない ときは、色が ありません[1]。

どうして、酸素さんそと くっつくと 青く なるのでしょう。エビや カニの 血も 青いのでしょうか。しらべた ことを 見て みると、青い 血の ひみつが 分かります。

イカやタコの血は青い、といわれます。ただ、ずっと青いわけではありません。酸素を運んでいないときは無色で、酸素と結びついた瞬間に青くなります[1]。

なぜ酸素をつかむと色がつくのか。青い血をもつのは、イカやタコだけなのか。辞典、論文の要旨、解説を突き合わせると、銅を使う血の仕組みと、仲間の広がりが分かります。

イカやタコの血が青いのは、酸素を運ぶ色素タンパク質ヘモシアニンが銅を含むためだ。ところがこの色素は、酸素を運んでいないときは無色で、酸素と結合して初めて青くなる[1]。血の色は、常に青いわけではない。

では、なぜ銅が酸素と結合すると色が変わるのか。青い血は頭足類だけのものか。辞典・論文の要旨・解説を突き合わせると、銅の状態と色の関係、節足動物と軟体動物のヘモシアニンの違い、低温の海での調整の例が分かる。

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1. 青は、どんな ときの 色?

1. 色がつくのは、酸素をつかんだとき

1. 銅の状態と色 ── Cu(I)は無色、Cu(II)は青

イカの 血を はこぶ ものは、ヘモシアニンと いいます。この 中には、銅どうが 入って います[1]。

ヘモシアニンは、酸素さんそを はこんで いない ときは、色が ありません。酸素さんそと くっつくと、青く なります[1]。

ここで 色を かえて いるのは、銅どうです。酸素さんそが ない ときの 銅どうは 色が なく、酸素さんそが くっつくと 青く 見えます[2]。

ですから、イカの 体の 中でも、酸素さんそを 手ばなした 血と、もらった 血では、色が ちがうと 考えられます。

青は、酸素と銅が手をつないだ色

ヘモシアニンは、銅を含む酸素運搬のタンパク質です。酸素を運んでいないときは無色で、酸素と結合すると青くなります[1]。

色の理由は、銅の状態にあります。酸素がないとき、銅は色のない状態(Cu(I))です。酸素がくっつくと別の状態(Cu(II))に変わり、青く見えます。酸素の分子は、2つの銅の間にはさまれるように結びつきます[2]。

血の色は、場所によって変わる

この色の変化は、酸素を受け取ったかどうかで決まります。つまり同じイカの体の中でも、酸素をたっぷり運ぶ血と、酸素を手放したあとの血では、色の濃さがちがうことになります。

ヘモシアニンの色は、活性部位の銅の状態で決まる。酸素結合部位は2つの銅イオンからなり、脱酸素状態では+1価、酸素と結合すると+2価をとる[3]。脱酸素型の銅(I)は無色で、酸素が結合した銅(II)型が青色を示す[2]。酸素分子は2つの銅の間にはさまれる形で結合する[2]。ただし出典[2]は解説資料で、反応の詳細までは原論文で確かめる必要がある。

この色の変化は可逆的で、ヘモシアニンは銅2原子に酸素1分子を結びつけ、手放すこともできる[1]。だから血の色は、酸素を受け取った場所(えら)と、手放した場所(組織)で変わりうる。ここから、青い色そのものが「酸素をのせている印」になっていることが分かる。

2. 人の 血と、ちがう ところは?

2. ヘモグロビンよりゆるく酸素をつかむ、銅の色素

2. 酸素結合の強さと銅含量 ── ヘモグロビンとの比較

人の 血は、ヘモグロビンと いう ものを つかって 酸素さんそを はこびます。ヘモシアニンは、ヘモグロビンよりも、酸素さんそを つかむ 力が よわい と いわれます[1]。

つよく つかむ と、手ばなす ときに 大へん です。よわく つかむ ものは、わたしやすい ともいえます。ただし、どちらが よい と いう 話では ありません。

どちらも、からだの すみずみへ 酸素さんそを とどける ための 道具です。それぞれの 生きものに あった やり方で はたらいて います。

つかむ力のちがい

ヘモシアニンは、銅2原子に酸素1分子を結びつけます。酸素との結びつきは、人の血のヘモグロビンより弱いとされています[1]。

結びつきが弱いことは、欠点とはかぎりません。強く握ると放しにくく、弱く握ると放しやすい、という関係があるからです。ただしこれは一般的な説明で、イカやタコが実際にどう得をしているかは、種や水温によって変わります。

銅の量

辞典には、銅の含量が節足動物のヘモシアニンで約0.18%、軟体動物で約0.25%と書かれています[1]。これはタンパク質の中の割合で、血液全体の割合ではありません。

ヘモシアニンは、銅2原子に酸素1分子を可逆的に結合する。酸素との結合はヘモグロビンより弱いとされ[1]、結合の強さは、酸素を受け取る場所と手放す場所の条件しだいで、運搬の効率に関わる。

銅含量は、節足動物のヘモシアニンで約0.18%、軟体動物で約0.25%と報告されている[1]。この値はタンパク質中の含量であり、血液全体の割合ではない。軟体動物のほうが銅の割合が高いことと、酸素運搬の能力の差とを結びつける資料はないため、ここでは数値の紹介にとどめる。

3. 青い 血は、からだの どこを ながれるの?

3. 血管の中を流れる青い血と、イカの3つの心臓

3. 閉鎖血管系と溶解したヘモシアニン ── 3つの心臓

イカや タコの 血は、血の くだの 中を ながれて います[7]。青い ヘモシアニンは、血の 中の 水のような ところに とけて います[4]。

イカには、心臓しんぞうが 三つ あります。二つは えらに 血を おくり、のこりの 一つが、体じゅうに 血を おくります[6]。

えらに 血が 入ると、酸素さんそを もらって 青く なる。そう 考えると、青は、酸素さんそを のせた 血の 目じるしです。

管の中を流れ、色素は液に溶ける

イカやタコは、血が血管の中を流れる閉鎖血管系をもちます。ヘモシアニンは血球の中ではなく、体液に溶けた形で存在しています[7]。節足動物型のヘモシアニンも、血液中に6量体などの大きな集まりとして存在します[4]。

3つの心臓

イカの心臓は3つあります。えらへ血を送る2つのえら心臓の間に、全身へ血を送る心臓があります[6]。

えらで酸素を受け取った血が青くなり、全身に届けられる。この流れを思い浮かべると、青は「酸素を運んでいる最中の血」の色だと分かります。

頭足類の血液は閉鎖血管系を流れ、ヘモシアニンは血球内ではなく体液(血リンパ)に溶けている[7]。節足動物型のヘモシアニンは、各サブユニットが2つの銅原子をもち、酸素1分子と結合する。これが6量体などの形で血液中に存在する[4]。ただし頭足類の濃度など具体的な数値は、資料の制約から本文では扱わない。

イカの循環では、2つの鰓心臓の間に全身へ血を送る心臓があり、合計3つである[6]。鰓で酸素と結合して青みを帯びた血が体心臓から全身へ送られる、という流れになる。同じ資料は、鰓に過酸化水素水をたらすと青白い血液の色が見えると記すが[6]、これは教材での解剖観察の方法で、家庭で試すものではない。

4. 青い 血の なかまは、イカと タコだけ?

4. エビ・カニ・カブトガニにも青い血がある

4. 節足動物と軟体動物 ── 別々に進化した2種類のヘモシアニン

ヘモシアニンは、エビや カニの 血にも あります。カタツムリも、もって います[1]。

カブトガニの 血も 青いと いわれます。この 血は、ばいきんの どくに ふれると かたまる ので、お医者さんの 道具の けんさに 使われます[5]。

ところが、イカの ヘモシアニンと、エビの ヘモシアニンは、かたちが 大きく ちがいます。べつべつに 進化した と 考えられて います[3]。

ちがう 道を たどって、おなじ 銅どうの 血に なった のです。

仲間は海の外にも

ヘモシアニンは、エビ・カニなどの甲殻類と、カタツムリ・タコなどの軟体動物の血に見られます[1]。イカも、一部の甲殻類も、血が青いのはヘモシアニンのためです[5]。カブトガニは、エビやカニではなくクモに近い節足動物で、青い血は細菌の毒素にふれると固まる性質があり、医療機器の検査に使われています[5]。

似ているが、別の発明

軟体動物のヘモシアニンと節足動物のヘモシアニンは、かたちがまったく違います。筑波大学の学生報告は、両者は一次構造から四次構造まで著しく異なり、別の進化の道筋をたどったと考えられる、と述べています[4]。カタツムリ・タコとクモ・サソリで、酸素の結合部位は似ていても、全体のかたちは大きく違います[3]。

似た仕組みが、別々に生まれた例と見られます。

ヘモシアニンは、エビ・カニなどの甲殻類や、カタツムリ・タコなどの軟体動物の血に見られる[1]。一部の甲殻類、イカ、タコの血が青いのはこのためである[5]。カブトガニの青い血は、細菌の毒素にふれると固まる性質があり、医療機器の検査に使われる。ただしカブトガニはエビ・カニの仲間ではなく、クモに近い節足動物である[5]。

では、同じ名前のこの色素は、共通の祖先から受け継いだものか。軟体動物(カタツムリ・タコ)と節足動物(クモ・サソリ)のヘモシアニンは、かたちがまったく異なり、別々に進化したと考えられている[3]。一次構造から四次構造まで著しく異なるという記述もある[4]。2つの銅で酸素を可逆的に結ぶ部位は共通するが、それを組み込むタンパク質の全体像は違う、という関係になる。ただし出典[4]は学生報告の目的欄の記述であり、進化の経路の詳細は示されていない。

5. つめたい 海では、青い 血は どう なるの?

5. 南極のタコは、ヘモシアニン濃度が高いと報告された

5. 低温への調整 ── 南極のタコPareledone charcotiのヘモシアニン濃度

みなみの つめたい 海に すむ タコの 一しゅは、くらべた タコより、青い 血の もとを 多く もって います。酸素さんそを とどける ために、ヘモシアニンを 多くして いる と いわれて います[7]。

つめたい 水の 中では、酸素さんそを 手ばなしにくく なります。そこで この タコは、ヘモシアニンを 多くして、酸素さんそを とどけやすく して いる のです。

ただし これは タコの 研究です。イカは どうなのかは、この 話では わかりません。

濃さを上げるという工夫

南極に暮らすタコ(Pareledone charcoti)は、南東オーストラリアや地中海のタコと比べて、血中のヘモシアニン濃度が少なくとも40%高いと報告されています[7]。冷たい水では、酸素が放しにくくなります。濃度を上げることで、酸素の供給を保っていると説明されています[7]。

2015年の論文の要旨は、ヘモシアニンの性質と濃度の調整などが、ほぼ凍る温度での酸素供給を支えていると述べます[8]。

この「40%」は、比べた他種に対する値で、すべてのタコに当てはまる数字ではありません。また、研究の対象はタコで、イカではありません。

南極のタコPareledone charcotiは、比較された南東オーストラリアと地中海の種より、血中ヘモシアニン濃度が少なくとも40%高い。低温では酸素が放出されにくくなるが、0℃より10℃のほうが酸素を多く放出できたという[7]。

Oellermannらの論文の要旨は、ヘモシアニンの機能の調整と濃度の調整に、高い溶存酸素濃度も加わって、ほぼ凍結する温度での酸素供給を支えていると述べる[8]。つまり低温への適応は、濃度のほかに、酸素の結合しやすさの調整も含む。ただし、比較は3種に限られ、「40%」は他種に対する値である。また対象はタコであり、イカに当てはめるときは「頭足類の仲間では」と範囲を弱めて読む必要がある。出典[7]は研究の解説記事であるため、数値の詳細は要旨と論文で確かめたい。

6. もっと しりたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

図かんや どうがで、イカ、タコ、エビ、カニを さがして みましょう。血が 青い ものは、どれだと 思いますか。ヘモシアニンと いう ことばが のって いるか、見て みます。

でかけて できること

水族館で カブトガニが いたら、ひょうしきを よんで みましょう。どんな ところが、カニと ちがう でしょうか。さわっては いけません。

今日できること

図鑑や動画で、イカ・タコ・エビ・カニ・カブトガニを見比べて、青い血をもつとされる生きものを探してみましょう。ヘモシアニンの説明が載っているかどうかも、手がかりになります。

出かけてできること

水族館でカブトガニを見かけたら、展示の説明を読んでみましょう。カニとどこが違うのか、自分の目で確かめられます。水槽にはふれないでください。

もっと知りたいとき

出典欄にある加藤幸恵さんの2003年の報告(つくば生物ジャーナル)は、日本語で読めます。軟体動物と節足動物のヘモシアニンが、どう違うと書かれているのかを見てみてください。

今日できること

出典[4]の目的欄を読み、節足動物と軟体動物のヘモシアニンの違いがどう書かれているかを確かめる。自分の言葉で言い換えてみると、理解が深まる。

出かけてできること

水族館でカブトガニの展示を探し、解説に「青い血」や検査への利用が載っているか見てみる。水槽には触れない。

資料を読むなら

  • 加藤幸恵 2003(つくば生物ジャーナル)── 節足動物と軟体動物のヘモシアニンの違い
  • Oellermann et al. 2015(Frontiers in Zoology 12:6)── 南極・南東オーストラリア・地中海のタコの比較
  • PDBe「What do snails, spiders, octopods, and the Queen of England have in common?」── ヘモシアニンの構造

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

辞典・解説・論文の要旨をつき合わせて書いた。論文の本文まで読めていないものがある。

  1. コトバンク「ヘモシアニン」 https://kotobank.jp/word/%E3%83%98%E3%83%A2%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%B3-3168899 (ヘモシアニンの定義、色、酸素との結合、銅含量)
  2. LibreTexts Bio-inorganic Chemistry「Haemocyanin」 https://chem.libretexts.org/ (銅の状態と色。解説資料)
  3. PDBe (EBI)「What do snails, spiders, octopods, and the Queen of England have in common?」 https://www.ebi.ac.uk/pdbe/node/22848 (銅の酸化状態、別々に進化したこと)
  4. 加藤幸恵 2003「つくば生物ジャーナル 2(2)」 https://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol2No2/TJB200302199900754.pdf (節足動物と軟体動物の違い、血液中の存在形)
  5. National Geographic「Animal blood comes in a rainbow of colors」 https://www.nationalgeographic.com/animals/article/animal-blood-comes-in-a-rainbow-of-colors (青い血の動物、カブトガニ)
  6. デジタル理科「イカの解剖と内部の構造」 https://www.digirika.tym.ed.jp/wp-content/uploads/ika_kaibou.pdf (イカの3つの心臓、青白い血の観察)
  7. BMC On Biology「Blue blood on ice」 https://blogs.biomedcentral.com/on-biology/2015/03/18/blue-blood-on-ice-blood-pigment-helps-octopods-sustain-oxygen-supply-at-freezing-temperatures/ (頭足類の血、南極のタコ。解説記事)
  8. Oellermann et al. 2015, Frontiers in Zoology 12:6 https://doi.org/10.1186/s12983-015-0097-x (要旨。低温での酸素供給)

なおした ところ

更新履歴

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