1. 天じょうの 石は、なにで できて いるの?
1. 水が溶かした石を、天井に残すしくみ
1. 石灰岩の溶解と方解石の再沈殿
あめの 水は、土の 中を とおる とき、二酸化炭素を すいこんで、すこし すっぱい 水に なります。この 水が、石灰岩を すこしずつ とかします[1]。
とかした 石を ふくんだ 水が 洞窟の 天じょうに とどくと、水から 二酸化炭素が 空気へ にげます。すると、水は 石を もって いられなく なり、炭酸カルシウムが かたまって のこります[1]。これが 鍾乳石です[2]。
しゅわしゅわする のみものの ふたを あけると、あわが 出ますね。あの あわは、水に とけて いた 気体が にげた ものです。洞窟の 天じょうでも、とけて いた 気体が にげて、水が 石を もてなく なります。ただし、ほんとうの 洞窟の 水は、あわを ぶくぶく 出す わけでは ありません。
雨水は土の中を通るとき、二酸化炭素を含んで弱い酸(炭酸)になり、石灰岩を少しずつ溶かします[1]。
その水がしみ出して洞窟の天井に届くと、水に溶けていた二酸化炭素が洞窟内の空気へ逃げます。すると水は炭酸カルシウムを溶かしていられなくなり、方解石という結晶になって固まります[1]。日本語の資料も、石灰岩から溶けた炭酸カルシウムが再び結晶化したものが鍾乳石だと説明しています[2]。
炭酸飲料のふたを開けるとあわが出るのは、溶けていた二酸化炭素が抜けるからです。洞窟の天井でも「溶けていた気体が抜けると、溶かしていられなくなる」という向きは似ています。ただし、洞窟の水がぶくぶくとあわ立つわけではなく、ゆっくり静かに起きる変化です。
2. はじまりは、ほそい ストローの 形
2. 水滴のふちに輪ができ、細い管になる
2. ストロー状鍾乳石の形成
水の つぶが 天じょうから おちる とき、つぶの ふちに そって、石の 小さな わが できます。その わが かべに なり、やがて ほそい くだに そだちます[3]。
この くだは、ストローに にて います。ふとさは 4〜5ミリ くらいと いわれます[4]。水は、この 中を とおって 先から おちて いきます。
天井に水の粒がぶら下がると、その縁に沿って、方解石の小さな輪ができます。輪が壁になり、やがて細い中空の管になります。これが「ストロー状鍾乳石(ソーダストロー)」で、直径はおよそ4〜5mm、1cmに届かない細さといわれます[4]。
この細い管が実際にどれくらい伸びるのか。次の章から数字を見ていきます。
3. 1ねんに、どれくらい のびるの?
3. 平均は年0.1mm前後 ── ただし「平均」の数字
3. 平均値:年0.1mm前後、最速で年3mm
日本の 科学の ページには、「へいきんすると 100ねんで 1センチ ほど」と 書かれて います[2]。1ねんに すると、0.1ミリ ぐらいです。
ウィキペディアの えいごの ページでは、へいきん 0.13ミリ。いちばん はやい ものは、1ねんに 3ミリと 書かれて います[4]。でも 3ミリは、水が ゆっくり たえず とどく ときの、とくべつな れいです。ふつうでは ありません。
ケイビングの 本には、「100ねんで 1センチは、かなり おおざっぱな 数字」と あります。1センチ のびるのに、30ねんから 100ねん いじょうと いう めやすも 書かれて います[6]。
JSTのサイエンスウィンドウは、鍾乳石は平均すると100年でわずか1cmほどしか成長しないと説明します。1年にならすと約0.1mmです[2]。英語版ウィキペディアは、平均を年0.13mmとし、水が絶えずゆっくり供給されるなどの条件では年3mmに達する例もあるとしています[4]。0.13mmは平均、3mmは最速の例で、ふつうの速さではありません。
洞窟のガイド資料は、「100年で1cm」は多くの場所で言われるがかなり大ざっぱな数字で、洞窟内の環境の違いで大きく変わると書いています。1cm伸びるのに、30年から100年以上という目安です[6]。
「平均」は、伸びる速さがどこでも同じという意味ではありません。では、実際にどれくらい場所でちがうのでしょうか。
JSTは、鍾乳石は平均すると100年でわずか1cmほど(年0.1mm)しか成長しないとする[2]。英語版ウィキペディアは平均を年0.13mmとし、炭酸カルシウムとCO₂を多く含む水がゆっくり絶えず供給される場合には最速で年3mmとする[4]。0.13mmで1cmに約77年、3mmなら約3.3年だ。0.13mmは平均、3mmは最速の例で、通常値ではない。
ケイビングガイドは、「100年で1cm」はかなり大まかで、洞窟内の環境で大きく変わるとし、目安を1cmあたり30年〜100年以上とする[6]。ただし、これは二次的な解説資料であり、測定の出典は示されていない。次章では、実測でどれだけ幅が出るかを見る。
4. 1メートル 四方で、10ばい ちがった
4. 306本を測ると、速さが3つに分かれた
4. Coufin洞の306本 ── 年0.92・0.47・0.09mm
フランスの ある 洞窟の 入口ちかくで、1メートル 四方の 天じょうに ある ストローの 形の 鍾乳石、306ぽんを はかった 研究が あります[5]。
すると、のびる はやさは 3つの グループに わかれました。1ねんに へいきん 0.92ミリ、0.47ミリ、0.09ミリです[5]。いちばん はやい グループと おそい グループは、10ばいぐらい ちがいます。
0.09ミリの グループは、1ミリ のびるのに 11ねん ぐらい かかります。0.92ミリの グループは、1ねんで ほぼ 1ミリです。100ねん たつと、0.09ミリは 9ミリ、0.92ミリは 9センチほどに なります。
フランスのVercors(ヴェルコール)地方にあるCoufin洞で、Perrette さんらの研究チームが、入口近くの1m²の天井にある306本のストロー状鍾乳石を測りました。すると、成長速度は3つの群に分かれ、平均でそれぞれ年0.92mm(速い群)、年0.47mm(中間)、年0.09mm(遅い群)でした[5]。
0.92÷0.09は約10なので、最速の群と最遅の群には約10倍の差があります。遅い群は1mm伸びるのに約11年かかり、100年でおよそ9mmです。速い群は1年でほぼ1mm、100年でおよそ9cmになります。
同じ洞窟の、1m四方という狭い範囲のなかの差です。「洞窟が変われば速さが変わる」だけでなく、同じ天井の中でも変わることを、この測定は示しています。
Perrette & Jaillet(2010, Int. J. Speleology 39(2))は、フランス・ヴェルコール地方のCoufin洞の入口付近、1m²の天井にあるストロー状鍾乳石306本を測定した。成長速度は速い群(FGR)平均0.92mm/年、中間群(MGR)0.47mm/年、遅い群(LGR)0.09mm/年の3群に分かれた[5]。
0.92÷0.09≒10.2で、最速群と最遅群の差は約10倍だ。遅い群は1mmに約11年、100年で約9mm、速い群は100年で約9cmに相当する。前章の「平均年0.1mm」は、この遅い群に近い値だが、同じ1m²の中に約10倍速い群が混じっている。
この研究の対象はストロー状鍾乳石で、太い鍾乳石の成長にそのまま当てはまるとは限らない。また、1つの洞窟・1か所の測定であり、他の洞窟に一般化するには他の測定と突き合わせる必要がある。
5. 1875ねんの こうじが、とけいの はりに なった
5. 入口を広げた年が「時計の針」になった
5. 1875年の入口拡張 ── 年代の目印(chronomarker)
いつから のびたのかが わからないと、「1ねんに なんミリ」とは いえません。この 洞窟では、1875ねんに 入口が ひろげられました。すると、鍾乳石の 色が、ちゃ色から 白に かわりました[5]。
この 色の かわりめが、めじるしに なりました。とけいの はりのように、「ここから のびた」と わかる からです。
けんきゅうする 人たちは、この せまい はんいでは ほかの じょうけんが そろって いるので、はやさの ちがいは、水が どれだけ ながれるかの ちがいだと かんがえました[5]。ただ、これは 研究者たちの かんがえで、たしかめられた ことでは ありません。
6. ゆかからも 石は のびる
6. 床から上へ育つ石筍、つながって石柱に
6. 石筍・石柱 ── 天井と床の成長がつながるまで
天じょうから おちた 水は、ゆかにも おちます。すると ゆかから、上へ むかって 石筍が そだちます[1]。
天じょうの 鍾乳石と、ゆかの 石筍が つながると、石柱に なります[7]。
1ねんに 0.1ミリなら、1センチで 100ねん。1メートルなら、その 100ばいで、1まんねん ぐらいに なります。ただし 場所に よって、速さは 大きく ちがいます。
7. 「100ねんで 1センチ」を、手で たしかめよう
7. 紙の厚みで、鍾乳石の時間を手に取る
7. 出口 ── 紙で「年0.1mm」を測る/原典を読む
コピーようしを 100まい かさねて みましょう。ものさしで はかると、1センチ ぐらいに なります。かみの 1まいが 0.1ミリぐらいだと わかります。かみの しゅるいで あつさは ちがうので、ぴったり 1センチでは なくても だいじょうぶです。
その 100まいの たかさが、鍾乳石が 100ねんかけて のびる ぶんと おなじくらいです。かみを 1まい めくる たびに、1ねんぶんの 時間を めくって いるように かんがえて みましょう。
コピー用紙を100枚重ねて、定規で高さを測ってみてください。1cm前後になるはずです(紙の種類で厚さは変わります)。紙1枚がだいたい0.1mmで、平均的な鍾乳石が1年で伸びる長さの目安と重なります。
100枚を1cmとすると、Coufin洞の遅い群(年0.09mm)は、ほぼ同じ100年で約9mmです。速い群(年0.92mm)なら、同じ100年で約9cmなので、紙を90枚以上重ねた高さになります。手元で並べると、10倍の差の大きさが分かります。
原典を読むなら、Coufin洞の論文はオンラインで読めます[5]。英語ですが、要旨だけなら短く、数字が並んでいます。日本語なら、JSTの記事[2]で平均の数字を確かめられます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:米国国立公園局(NPS)の解説、JSTサイエンスウィンドウ、英語版ウィキペディア、ケイビングの解説サイト、洞窟の解説サイト、国際洞窟学雑誌の論文、日本語版ウィキペディアを使った。紙の厚みの計算は、筆者が行った。
- U.S. National Park Service「Growing Speleothems」。 https://www.nps.gov/subjects/caves/growing-speleothems.htm (石灰岩の溶解、方解石の析出、石筍について)
- JST サイエンスウィンドウ「鍾乳洞」。 http://scienceportal.jst.go.jp/stories/20190109_w10/ (鍾乳石ができる仕組みと、平均の成長速度について)
- Showcaves.com「Straw」。 https://www.showcaves.com/english/explain/Speleothem/Straw.html (ストロー状鍾乳石のでき方について)
- Wikipedia「Stalactite」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Stalactite (平均と最速の成長速度、ストロー状鍾乳石の太さについて)
- Perrette, Y. & Jaillet, S., International Journal of Speleology 39(2), 2010. https://digitalcommons.usf.edu/ijs/vol39/iss2/2/ (Coufin洞の306本の測定と、1875年の年代の目印について)
- ケイビングガイドマニュアル「2.04 鍾乳石」。 https://caving-manual.ltt.jp/2024/04/28/post-170/ (「100年で1cm」がおおざっぱな数字であることについて)
- 日本語版ウィキペディア「鍾乳石」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8D%BE%E4%B9%B3%E7%9F%B3 (鍾乳石と石筍がつながって石柱になることについて)
なおした ところ
更新履歴
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