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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

ドアノブで ぱちっと いたいのは なぜ? ── せいでんきの ひみつ

冬のドアノブで、なぜパチッと痛いのか ── 静電気がたまって飛ぶまで

静電気のパチッはなぜ起きるのか ── 歩くだけでたまる電気と、冬の乾いた空気

分野:技術

ドアノブに 指を ちかづけた しゅんかん、ぱちっ。いたい のは、ほんの いっしゅんです。体に でんきが ながれて いる のは、1びょうの 100万ぶんの 1くらいか、それより みじかい じかんだ と いわれて います。

その いっしゅんに、なにが おきて いるのでしょう。どうして 冬に おおくて、ぱちっと くる 日と こない 日が あるのでしょう。あるく だけで 体に たまる 電気の はなしから、かみなりの ことまで、ひとつずつ 見て いきます。

冬のドアノブに指を近づけると、パチッ。ショックのもとになる電流が体を流れていた時間は、百万分の1秒以内だといわれます。1秒を100万に分けたうちの1つ分か、それより短い時間です。

その一瞬に、何が起きているのでしょうか。歩いただけなのに、なぜ電気がたまるのか。なぜ冬に多いのか。同じドアなのに、パチッと来る日と来ない日があるのはなぜか。順番に見ていくと、雷とつながる話と、研究者にもまだ解けていない話が出てきます。

冬のドアノブに指を近づけると、パチッと痛みが走る。ショックを起こす電流が体を流れていた時間は、百万分の1秒以内とされる。

その一瞬に何が起きているのか。歩いただけでなぜ電気がたまるのか。なぜ冬に多く、同じドアでも痛い日と平気な日があるのか。数字と計算を手がかりにたどっていくと、雷と同じ原理にたどりつく一方で、「こすると電気が移る」というしくみそのものに、いまも研究が続いている部分があることが見えてくる。

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1. ぱちっと いたい とき、でんきは どれくらい ながれる?

1. パチッと痛いのは、ほんの一瞬

1. 痛みの正体 ── 数千ボルトと、百万分の1秒

ぱちっと いたい とき、体を でんきが ながれて いる のは、1びょうの 100万ぶんの 1くらいか、それより みじかい あいだ だ と いわれて います[2]。まばたきよりも、ずっと ずっと みじかい じかんです。

体に たまった 電気の 大きさは、「ボルト」と いう たんいで あらわします。3000ボルトくらいに なると、はりで ちくっと さされた ような いたみを 感じます[1]。3000ボルトの あたりから ちくっと かんじ はじめる、と せつめい する 会社の ページも あります[3]。

では、その 電気は、いつ、どこで 体に たまったのでしょう。

研究機関の資料をもとにした表に、体にたまった電気の電圧と、感じ方の関係がまとめられています[1]。2000ボルトでは、指の外側に何か感じる程度で、痛くはありません。3000ボルトになると、針で刺されたようなちくりとした痛みが出て、1万ボルトでは手全体が痛みます。放電の音は約2000ボルトからかすかに聞こえ、4000ボルトごろから火花の光が見えるようになります。

電圧と感じ方の目安として、およそ3000ボルトあたりから刺激を感じはじめる、と説明する企業のページもあります[3]。日本の家庭のコンセントは100ボルトですから、痛みを感じはじめる3000ボルトはその30倍、手全体が痛む1万ボルトは100倍です。それでも、ショックの電流が流れるのは一瞬です。

労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)によると、静電気のショックは、百万分の1秒以内という短い時間に、数ミリアンペアの電流が体を流れることで起こります。0.1ミリアンペア以下の小さな電流なら、時間をかけて流してもショックとしては感じません[2]。痛みの理由は、電圧の高さだけでなく、ごく短い時間に電流が流れることにもあります。

では、この電気は、いつ、どこで体にたまったのでしょうか。

JNIOSH-TR-No.42(2007年)の表を引用したメーカーの解説によると、体の帯電電圧と感じ方の対応は次のとおりである[1]。1,000Vではまったく感じず、2,000Vで指の外側に感じるが痛みはなく、3,000Vで針で刺されたようなちくりとした痛み、4,000Vで深く刺された感じ、10,000Vで手全体の痛み、12,000Vでは手全体を強く打たれた感じになる。放電音はおよそ2,000Vでかすかに聞こえ、4,000V前後で火花の発光が見える[1]。

企業(ベッセル)の解説も、電圧と感じ方の目安として、およそ3kVあたりから刺激を感じはじめるとしており、上の表と大きくは食い違わない[3]。ただし、冬のドアノブの火花そのものの電圧を測った値は、ここでは示さない。日本の家庭用電源は100Vなので、3kVはその30倍、10kVは100倍にあたる。

ただし、痛みの理由は電圧の高さだけではない。JNIOSHの説明では、静電気のショックは、百万分の1秒以内という短時間に数mAの電流が体を通過することで起こる。0.1mA以下の小さな電流なら、時間をかけて流してもショックは感じない[2]。高い電圧と、ごく短時間に流れる数mAの電流が重なったときに、痛みになる。

では、この電気はいつ、どこで体にたまったのか。

2. でんきは、どこから きたの?

2. 歩くだけで、電気は分かれてたまる

2. 摩擦帯電 ── 接触と分離が電荷を分ける

この 静電気せいでんきは、あるく たびに 体に たまります。くつの うらと ゆかが、くっついては はなれ、くっついては はなれる と、電気が プラスと マイナスに わかれて、あるく 人の 体にも たまって いく からです(たまりかたは、ばあいに よって ちがいます)[4]。そのとき、電気を もった 小さな つぶが、かたほうから もう かたほうへ うつる ことが あります。新しい 電気が できる のでは なく、もともと あった プラスと マイナスが、ふたつの ものに わかれて、かたよる のです。

「電気」と いう ことばは、ギリシャの ことばで「こはく」から きて います。こはくは、木の やにが かたまった、きれいな いしです。むかしの 人は、こはくを こすると 小さな ものが くっつく ことに 気づいて いた、と つたえられて います[5]。

体は、電気を ためる バケツの ような ものです。あるく たびに、すこしずつ 水が たまって いきます。ただし ほんとうは、電気は 水では なく、電子の ような、電気を もった 小さな つぶが かかわって います。

人が床の上を歩くと、靴の底が床に触れては離れる動きをくり返します。この接触と分離のたびに、静電気が生まれると、静電気放電の技術団体(EOS/ESD協会)の入門資料は説明しています[4]。「こすって起こすもの」と思われがちですが、触れて離れるだけでも起きます。電気が何もないところから新しくできるのではなく、もともとあったプラスとマイナスが、靴と床に分かれて、片方にかたよるということです。歩く人の体にも、この電気がたまっていきます(どんな経路でたまるかは、条件によって変わります)。

この現象を「摩擦帯電」といいます。ギリシャ語で、「トリボ」は「こする」、「エレクトロス」は「琥珀こはく」という意味です[4]。琥珀は木の樹液が固まった宝石で、こすると軽いものを引きつけます。紀元前600年ごろのタレスが、このことに触れたとされ、1600年にウィリアム・ギルバートが、琥珀を意味するギリシャ語をもとに「エレクトリクス」というラテン語を作りました。英語の「エレクトリシティ」、つまり「電気」という言葉のもとです[5]。

人の体は、電気をためる入れ物にたとえられます[6]。歩くたびに少しずつ電気が入っていく入れ物、というイメージです。ただし本当は、電気は水のような液体ではなく、電子など、電気をもった粒が関わっています。

静電気は、二つの物が接触して離れる(または滑る)と、電荷が分かれて生じる。何が移るのか(電子・イオン・物質のどれか)など、詳しい機構には未解明の点がある。EOS/ESD協会の入門資料は、人が床の上を歩くと、靴底が床に接触してはまた離れることをくり返し、そのたびに静電気が生じると説明している[4]。「こすらないと起きない」ものではなく、接触と分離だけでも起きる。電荷が新しく作られるのではなく、もとからあった正負が二つの物に分かれ、片方にかたよるだけである。

この現象は摩擦帯電(triboelectric charging)と呼ばれる。ギリシャ語で tribo は「こする」、elektros は「琥珀こはく」を意味する[4]。紀元前600年ごろのタレスが、琥珀をこすると物を引き寄せることに触れたとされ、1600年にウィリアム・ギルバートが、琥珀を意味するギリシャ語 elektron をもとに新ラテン語 electricus を作った。これが「電気(electricity)」の語源である[5]。タレス自身の著作は残っておらず、後世の記述による話である。

体にたまる量の見当もつけておく。人体は、静電容量が数十〜100pF程度のコンデンサーとみなされ、放電の試験用モデルには100pFが使われる[6]。電荷量qは静電容量Cと電圧Vの積(q=CV)なので、C=100pFなら1万Vで約1μC、電子の数にしておよそ6兆個の計算になる。100pFは標準モデルの仮定で、実際の値は状況で変わる。また、この全部が一度に流れるとは限らない。

3. ためた でんきは、どうやって とびだすの?

3. 空気が耐えきれなくなる瞬間

3. 空気の絶縁破壊 ── 約3kV/mmという目安と、小さなエネルギー

空気は ふつう、電気を とおしません。でも、体に たまった 電気が ふえて くると、空気が がまん できなく なります。すると、指と ドアノブの あいだの 空気を つきぬけて、ぱちっと ひばなが とびます[7]。

とんで いる 電気の エネルギーは、じつは とても すこし です[6]。ボルトは 大きくても、ふつうの 人の 体を きずつける ほどでは ない、と いわれて います。

ガソリンスタンドには、さわって 電気を にがす シートが あります。ひばなが ガソリンから でる ガスに 火を つけると あぶない からです。かわいた じきに 火事が おきた ことから、しょうぼうちょうは 2001ねんに、気を つけるよう よびかけました[8]。

空気は、ふつうは電気を通さない「絶縁体」です。でも、電圧がとても高くなると耐えきれなくなり、電気の通り道に変わって火花が飛びます。空気が耐えられる強さは、目安として1ミリのすき間あたり約3000ボルトです[7]。単純に計算すると、1万ボルトなら3ミリあまりのすき間を飛べることになります。ただし、指先のようにとがったところでは、計算どおりにならないこともあります。

飛ぶ電気のエネルギーは、意外と小さいものです。体を電気をためる入れ物とみなして計算すると、3000ボルトで約0.45ミリジュール、1万ボルトでも約5ミリジュールです[6]。電圧は高くても、エネルギーはごくわずかなので、健康な人を傷つけるほどではない、と説明されています。

それでも、ガソリンの蒸気があるところでは、火がつくことがあります。乾燥した時期のセルフ式ガソリンスタンドで、体にたまった静電気の火花が蒸気に引火する火災が起きたため、消防庁は2001年(平成13年)に、給油の前に静電気を取り除くことを徹底する通知を出しました[8]。いま多くのスタンドにある静電気除去シートは、そのための備えです。

空気は電気を通さない絶縁体だが、加わる電圧が高くなると耐えきれなくなり、導体のように電気を通して火花が飛ぶ(絶縁破壊)。空気の絶縁破壊の強さは、目安として約3kV/mm(3MV/m)とされる。電極の形やサイズで変わり、気圧が高いと大きくなる[7]。この目安を単純に当てはめると、1万Vなら3mmあまりのすき間を飛べる計算になる。ただし指先のように尖った電極では、計算どおりにならないこともある。

ためた電気のエネルギーも見積もってみる。E=½CV²にC=100pFを入れると、3,000Vで約0.45mJ、10,000Vで約5mJである[6]。電圧は数千〜数万Vと大きいが、エネルギーはごくわずかで、健康な人に害を及ぼすほどではない、と説明されている[6]。ドアノブの痛みは、高い電圧と、一瞬に集中する電流の組み合わせから来る。

ただし、エネルギーが小さくても安全とは限らない。乾燥した時期のセルフ式ガソリンスタンドでは、体にたまった静電気の火花が可燃性の蒸気に引火する火災が起きた。消防庁は2001年(平成13年)に、給油前の静電気除去を徹底する通知を出しており、現在は多くのセルフスタンドに静電気除去シートが置かれている[8]。

4. なぜ 冬に たくさん たまるの?

4. 湿度で、電圧が23倍ちがう

4. 湿度と帯電電圧 ── 「起きない」のではなく「逃げる」

カーペットの 上を あるく ときの めやすで、しつどが ひくい 日は 3まん 5せんボルトくらい、しつどが たかい 日は 1500ボルトくらい だと いう ひょうが あります。23ばいも ちがいます[4]。

しめった 日は、電気が ぜんぜん できない のでは ありません。夏でも、あるけば 電気は できて います。ただ、すぐ にげて しまう のです[4]。しめった 空気の 中では、ものの ひょうめんに、水の つぶが つきます。水は 電気を とおす ので、電気の にげ道に なります[9]。

さっきの バケツで いえば、しめった 日は、そこに 小さな あなが あいて いる ような ものです。水が たまっても、すぐ もれます。かわいた 冬の 日は、あなが ふさがって いて、たまる ばかりです。ただし ほんとうは、水の あなでは なく、水の つぶが 電気の とおり道に なって いるのです。

カーペットの上を歩く人の体の電圧は、目安として、湿度が10〜25%のときに約35000ボルト、65〜90%のときに約1500ボルトです。約23倍の差があります[4]。ビニルの床でも、12000ボルトと250ボルトの差があります。どちらも「典型的な目安」で、この電圧がいつも出るわけではありません。

ここで注意したいのは、湿度が高くても、静電気そのものは起きているということです[4]。変わるのは、たまる量のほうです。湿った空気の中では、物の表面に水の粒や膜がつきます。水は電気を通すので、電気が逃げやすくなります。一般に、相対湿度が65%を超えると、静電気は発生しにくく、発生しても自然に逃げていく目安とされます[9]。

さきほどの入れ物のたとえでいうと、湿った日は底に小さな穴があいていて、入れた電気がすぐ漏れる状態です。乾いた冬の日は穴がふさがって、たまる一方になります。ただし本当は、電気は水のように穴から流れ出るのではなく、水の膜が電子の通り道になっている、ということです。

EOS/ESD協会の表によると、カーペットの上を歩く人の帯電電圧の目安は、相対湿度10〜25%で約35,000V、65〜90%で約1,500Vである。約23倍の差になる。ビニルタイルの床でも12,000Vと250Vの差がある[4]。いずれも典型的な目安で、この電圧が必ず出るわけではない。

注目したいのは、湿度が高くても、帯電そのものは起きている点である[4]。湿度が下げるのは「たまる量」であり、電気の「発生」ではない。湿った空気中では、物の表面に水の粒や膜がつく。水は電気を通すので、静電気が逃げやすくなる。一般に、相対湿度が65%を超えると静電気は発生しにくく、発生しても自然に逃げていくとされる[9]。「湿度が高いと静電気が起きない」というより、「起きたそばから逃げていく」と考えたほうが実態に近い。

5. 部屋の 中は、外より かわいて いるの?

5. 冬の部屋の空気が乾く理由

5. 暖めると相対湿度が下がる ── 東京の1月で計算する

しつどは、その 温度の 空気が ふくめる 水の りょうの うち、どれだけ ふくんで いるか、という わりあいです。つめたい 空気は 水を すこししか ふくめず、あたたかい 空気は たくさん ふくめます[10]。

東京の 1月の 外の 空気の しつどは、へいきんで 51%です[11]。まだ しめって います。でも この 空気を、水を たさず 20どまで あたためると、しつどは 19%ぐらいまで さがる けいさんに なります[12]。水の りょうは おなじ でも、ふくめる りょうが ふえるので、わりあいが へる のです。

じっさいの へやでは、人の いきや りょうりで 水が ふえるので、この 数字 どおりには なりません。それでも、あたためた へやが かわきやすい わけが、これで わかります。

湿度(相対湿度)は、その温度の空気が含める水蒸気の最大量に対して、実際にどれだけ含んでいるかの割合です。空気が含める水蒸気の量は、気温で大きく変わります。1立方メートルあたり、0℃で約4.8グラム、10℃で約9.4グラム、20℃で約17.3グラムです[10]。冷たい空気は、水蒸気を少ししか含めません。

気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、東京の1月は平均気温が5.4℃、平均相対湿度が51%です。8月は26.9℃で74%です[11]。冬の外の空気は、意外と湿っています。

ところが、この外の空気を、水蒸気を足さずに20℃まで暖めると、湿度は約19%まで下がる計算になります[12]。これは、先ほどの表で約35000ボルトの目安が出ていた「10〜25%」の範囲に入ります。実際の部屋では、人の呼吸や調理で水蒸気が加わるので、19%にはなりません。それでも、暖房するだけで湿度が大きく下がることは、この計算からわかります。

相対湿度は、その温度の空気が含める最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)に対する、実際の水蒸気量の割合である。飽和水蒸気量は気温で大きく変わり、0℃で約4.8g/m³、5℃で約6.8、10℃で約9.4、20℃で約17.3である[10]。冷たい空気は、水蒸気を少ししか含めない。

気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、東京の1月は平均気温5.4℃、蒸気圧4.5hPa、平均相対湿度51%である。8月は26.9℃、26.2hPa、74%である[11]。冬の屋外の空気は、思ったほど乾いていない。

この空気に水を足さず、20℃まで暖めたとする。20℃の飽和水蒸気圧は約23.4hPaなので、4.5÷23.4で約19%になる、と計算できる[12]。外の51%が、暖めるだけで約19%まで下がる。19%は、先に見た約35,000Vの目安が出ていた10〜25%の範囲に入る。実際の室内は、人の呼吸や調理で水蒸気が加わるため、この数字どおりにはならない。それでも、暖房するだけで相対湿度が大きく下がることは、この計算で確かめられる。

6. どうして 人に よって ちがう ことが あるの?

6. 感じやすさの差は、どこから来るのか

6. 靴底の電気抵抗 ── 「体質」ではなく、たまった量の差

おなじ ドアノブを さわっても、ぱちっと くる 人と こない 人が います。けんきゅうじょの せつめいでは、体の せいしつの せい では なく、その とき 体に たまって いる 電気の りょうが ちがう から、と いわれて います[2]。

その りょうを きめる 大きな ものが、くつの うらです。電気を とおしにくい ざいりょうの くつの うらだと、たまった 電気が にげられず、たまりやすく なります。とおしやすい ざいりょうだと、にげやすく なります[2]。バケツで いえば、くつの うらが、そこの あなの 大きさを きめて いる ような ものです。

すでに たまって しまった とき、かわで できた ものを もって ドアノブを さわると、電気が ゆっくり ながれて、いたく なく なる ことが ある、とも せつめい されて います[2]。

同じドアノブを触っても、パチッと来る人と来ない人、来る日と来ない日があります。労働安全衛生総合研究所の説明では、この差は体質によるものではなく、体にたまっている静電気の量の違いです。その量を大きく左右するのが、靴の底の材質です[2]。

天然ゴム系の靴底は、電気がとても通りにくく、たまった電気が逃げにくいので、ショックを感じやすくなります。ポリウレタン系やニトリルゴム系の靴底は、電気が通りやすく、たまりにくいので、感じにくくなります[2]。同じ人でも、はく靴がちがうと、パチッと来る強さが変わることがあります。

すでにたまってしまったときは、革製品でドアノブなどに触れると、電気が少しずつ流れて、ショックなく放電できる、とも説明されています[2]。同じ電気でも、一瞬で流せば痛く、時間をかけて流せば痛くありません。

同じドアノブに触れても、パチッと来る人と来ない人がいる。JNIOSHは、この差は体質による個人差ではなく、体にたまっている静電気の量の違いだと説明する。その量を大きく左右するのが、靴底の材質の電気抵抗である[2]。

同じ資料によると、天然ゴム系などの靴底(電気抵抗が1兆Ωを超える)は、たまった電気が逃げにくく、ショックを感じやすい。ポリウレタン系やニトリルゴム系(100万Ω以下)は、電気が逃げやすく、感じにくい[2]。抵抗の開きは100万倍以上にもなる。歩くたびに電気は生じ続けるが、靴底が電気の通り道になっていれば、床のほうへ逃げやすく、体にたまりにくい。湿度のときと同じく、「たまる量」を決めるのは逃げ道の有無である。

すでにたまってしまったときの対処にも、同じ考え方が現れる。JNIOSHは、革製品(電気抵抗は1億Ω程度)でドアノブなどに触れると、ショックなく放電できると説明している。靴底の抵抗が100万〜1億Ω程度の範囲にあれば、静電気はショックなく0.1秒以内に消えるという[2]。すべての靴がこの範囲にあるわけではない。同じ電気でも、一瞬で流せば痛く、時間をかけて流せば痛みは感じない。

7. かみなりも おなじ しくみ?

7. 雷は、同じしくみの巨大版

7. 静電気と雷の共通点

かみなりも、おなじ しくみだ と いわれて います。くもの 中で、氷の つぶが ぶつかって、電気が プラスと マイナスに わかれます。それが たまって、空気が がまん できなく なると、ぴかっと 電気が とびます[13]。

アメリカの きょういくの ページも、ドアノブの ぱちっの はなしから、かみなりの せつめいを はじめて います[14]。ただし、大きさは ぜんぜん ちがいます。かみなりの くわしい はなしは、かみなりの メモに あります。

気象庁は、雷を「大気中で大量の正負の電荷分離が起こり、放電する現象」と説明しています。雲の中で、あられと氷の小さな結晶がぶつかり合って、電気が分かれると考えられています[13]。アメリカのNOAAの教育ページは、ドアノブに触れてパチッとなる静電気の例から、雷の説明を始めています[14]。

電気が分かれて、たまって、空気が耐えきれなくなって飛びます。ここまで見てきた靴とドアノブの流れと、同じ順番です。違うのは大きさです。雲の中の電気の分かれ方や、光と音のずれは、雷のメモで扱っています。

気象庁は、雷を「大気中で大量の正負の電荷分離が起こり、放電する現象」と説明している。雲の中で、あられと氷晶が衝突して電荷が分かれると考えられている[13]。米国のNOAAの教育ページも、ドアノブに触れて火花が飛ぶ静電気の例から、雷の説明を始めている[14]。

電荷が分かれ、たまり、空気が耐えきれなくなって放電する。ここまで見てきた靴とドアノブの流れと、同じ順序である。違いは規模で、雲の中での電荷分離や、光と音のずれは、雷のメモで扱っている。

8. こすると なぜ 電気が うつるの?

8. 「こすると電気が移る」は、まだ全部は解けていない

8. 摩擦帯電の謎 ── モザイク像と、真空中のテープのX線

ここまで、「電気が うつる」と いって きました。でも、なぜ うつるのか、くわしい ことは、まだ ぜんぶは わかって いません[15]。

2011ねんの けんきゅうでは、こすった あとの ひょうめんが、プラスと マイナスの とても 小さな ところが まざった、まだら もようだった、と ほうこく されました[16]。むかしは、かたほうが ぜんぶ プラス、もう かたほうが ぜんぶ マイナスに なる と 考えられて いました。でも、そう かんたんでは なかった ようです。

ここまで「電気が一方から他方へ移る」と説明してきました。でも、何が、なぜ移るのかという詳しいしくみは、まだはっきり決まっていません。摩擦帯電の詳細は、2023年の時点でも、確立した科学ではないとされています[15]。

物を「プラスになりやすい順」に並べた「帯電列」という表があります。でもこれは経験的な並びで、AはBよりプラス、BはCよりプラス、なのにCはAよりプラス、というように、ぐるっと矛盾する組み合わせも見つかっています[15]。

2011年には、こすり合わせた表面を調べた研究(バイテキンらが『サイエンス』誌に発表)が、片方が全部プラス、もう片方が全部マイナスなのではなく、プラスとマイナスの、ごく小さな領域がモザイクのように混ざっていることを示しました[16]。何百年も考えられてきた見方が、書きかえられた形です。

もう一つ、こんな実験もあります。粘着テープを真空の中ではがすと、X線が出たという実験が、2008年に『ネイチャー』誌で報告されています[17]。これは真空の中の実験で、空気のある家の中でテープをはがす場合とは条件がちがいます。

ここまで「電荷が一方から他方へ分かれる」と説明してきたが、摩擦帯電で電子・イオン・物質のどれが、なぜ移るのかという詳細は、2023年時点でも確立した科学ではなく、議論が続いている[15]。物を+になりやすい順に並べた帯電列は経験的な並びで、AはBより+、BはCより+なのに、CはAより+になる、というような矛盾する組も見つかる。一直線の順位では説明しきれない[15]。

2011年、Baytekinらは『Science』誌で、接触帯電した表面には、+と−の、ナノメートル規模の小さな領域がランダムに混ざったモザイク状の電荷分布があると報告した[16]。表面全体が一様に帯電するという想定は、この研究で修正された。ただし、表面全体としては、どちらかの符号にかたよる。モザイクは、その内側の細かい構造の話である。

もう一つの例がある。粘着テープをはがすと、中程度の真空中で、電波や可視光に加えて、ナノ秒単位のX線パルスが出る。X線撮影に使えるほど強かったと、Camaraらが2008年に『Nature』誌で報告している[17]。これは真空中の現象で、空気のある日常でテープをはがす場合とは条件が異なる。

9. じぶんでも たしかめて みたく なったら

9. 自分でも調べてみたくなったら

9. 自分でも調べてみたくなったら

ぱちっと きた 日に、天気よほうで、その 日の しつどを 見て みましょう。冬の 日は、しつどが ひくい 日に おおい でしょうか。そとの しつどと、へやの 中の しつどは、ちがう かも しれません。

おうちの 人と、きしょうちょうの ページで、東京の 1月と 8月の しつどの ひょうを 見くらべる こと も できます[11]。わざと ぱちっと させなくても だいじょうぶです。

冬の空気を暖めると湿度が下がる、という計算は、自分の住む地域でも成り立つでしょうか。気象庁のホームページの平年値の表から、1月の気温と湿度を見つけて、比べることができます[11]。天気予報に出る湿度は、外の空気の値です。部屋の中の湿度は、また別の数字になります。

資料にあたってみるなら、次の3つがあります。

  • 「モザイク」の論文の要旨[16]。何を測って、何がわかったのか。
  • 粘着テープとX線の論文[17]。真空の中で、何を確かめたのか。
  • 消防庁の、セルフスタンドの静電気火災の報告書[8]。乾燥した時期に多いことや、通知の後の件数の変化がわかる表があります。

セルフのスタンドで静電気除去シートを見かけたら、なぜそこにあるのかを、この報告書と重ねてみてください。

自分の住む地域の1月の蒸気圧を、気象庁の平年値の表から探し、20℃の飽和水蒸気圧(約23.4hPa)で割ると、暖房した部屋の湿度の見当がつく[11]。東京の1月の外気(51%)を暖めると約19%になる計算は、その一例である。自分の地域ではどうなるだろうか。天気予報の湿度は屋外の値なので、この計算は、それを暖めた場合の室内湿度の見当をつけるものである。

原典にあたるなら、次の3点が入口になる。

  • Baytekinら(2011)の要旨[16]。モザイクという語がどの測定結果から出てくるのかを読む。
  • Camaraら(2008)[17]。真空中で何を測り、なぜ空気中の日常とは条件が異なるのかを確かめる。
  • 消防庁のセルフスタンドの静電気火災に関する報告書[8]。事故が乾燥した時期に多いことと、通知の前後で件数がどう推移したかの表がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:帯電電圧と感じ方の表(ホーザン、JNIOSH資料の引用)、労働安全衛生総合研究所のコラム、EOS/ESD協会の入門資料、気象庁の平年値と雷の解説、消防庁のセルフスタンド報告書、摩擦帯電と雷についての英語の解説、2本の原著論文を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. ホーザン「静電気対策の森 静電気の基礎」(表は労働安全衛生総合研究所 JNIOSH-TR-No.42, 2007 を引用)。 https://www.hozan.co.jp/esd/foundation/voltage.html (体の帯電電圧と痛みの感じ方、放電の音と光の目安について)
  2. 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH) メールマガジン「静電気ショック!感じやすい人・感じにくい人」(2011)。 https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2011/41-column.html (ショックが起きる時間と電流、靴底の材質による違い、革製品による放電について)
  3. ベッセル「静電気ゼロナビ 静電気とは」。 https://www.vessel.co.jp/esd/esd.php (電圧と感じ方の目安として、およそ3kVから刺激を感じはじめるという点について)
  4. EOS/ESD Association「Fundamentals of Electrostatic Discharge Part One」(2013)。 https://www.esda.org/assets/Documents/FundamentalsPart1.pdf (歩行による帯電、摩擦帯電の語源、湿度と帯電電圧の表について)
  5. "Electricity" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Electricity (琥珀と「電気」という言葉の由来について)
  6. "Body capacitance" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Body_capacitance (人体の静電容量と、放電エネルギーが小さいことについて)
  7. The Physics Factbook「Dielectric Strength of Air」(Alice Hong, 2000)。 https://hypertextbook.com/facts/2000/AliceHong.shtml (空気の絶縁破壊の強さの目安について)
  8. 消防庁「セルフスタンドにおける静電気火災に係る検討」(報告書第4章)。 https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/tuchi1903/pdf/190316ki61_h_4.pdf (乾燥した時期の火災、2001年の通知、静電気除去シートについて)
  9. キーエンス「静電気ドクター 湿度管理」。 https://www.keyence.co.jp/ss/products/static/static-electricity/step/humidity.jsp (湿った空気で静電気が逃げやすくなること、相対湿度65%の目安について)
  10. 「飽和水蒸気量」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』。 https://ja.wikipedia.org/wiki/飽和水蒸気量 (気温ごとの、空気が含める水蒸気の量について)
  11. 気象庁「東京の平年値(年・月ごとの値)」(1991〜2020年)。 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662 (東京の1月と8月の気温・蒸気圧・相対湿度について)
  12. 高知大学「飽和水蒸気圧の表」。 https://www.kochi-u.ac.jp/marine-core/Members_HP/mash/satupress.html (20℃の飽和水蒸気圧の値。19%は、この値と平年値からの計算)
  13. 気象庁「雷」。 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder1-0.html (雷が電荷分離と放電の現象であることについて)
  14. NOAA NESDIS「What Causes Lightning and Thunder?」。 https://www.nesdis.noaa.gov/about/k-12-education/severe-weather/what-causes-lightning-and-thunder (雷の説明を、ドアノブの静電気の例から始めている点について)
  15. "Triboelectric effect" Wikipedia, The Free Encyclopedia。 https://en.wikipedia.org/wiki/Triboelectric_effect (摩擦帯電のしくみが研究中であることと、帯電列の限界について)
  16. Baytekin et al.「The mosaic of surface charge in contact electrification」Science 333 (2011)。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700838/ (接触帯電した表面の、プラスとマイナスのモザイク状の分布について)
  17. Camara et al.「Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick-slip friction in peeling tape」Nature 455 (2008)。 https://www.nature.com/articles/nature07378 (粘着テープをはがすと真空中でX線が出ることについて)

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