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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

潜水艦せんすいかんは、どうして ふかい うみの 水圧すいあつで つぶれないの?

深い海の水圧に、潜水艇はなぜ耐えられるのか ── 球の殻と、輪っか付きの筒

耐圧殻の設計 ── しんかい6500の球形チタン殻と、円筒形殻+リングフレームの高張力鋼

分野:技術

うみは、ふかく もぐるほど、まわりから ぎゅっと おされます。ふかさ 6500メートルでは、指の つめほどの 大きさに、重さ 650キロぐらいの 力が かかる ことに なります。

その うみに、人が のった ふねが もぐります。つぶれない ひみつは、形と、ざいりょうに ありました。

深さ6500mの海では、まわりから、海面より約650気圧ぶんも強い力で押されます。指先ほどの面積1平方センチメートルに、およそ650kgの重さがのるイメージです。

そこへ人が乗った船が潜っていきます。押しつぶされない工夫は、殻の「形」と「素材」にありました。日本の深海調査船「しんかい6500」と、円筒形の潜水艦を見くらべながら、その工夫をたどります。

海中では10m潜るごとに約1気圧ずつ圧力が上がり、深度6,500mでは海面より約650気圧高い[1]。この圧力に耐えつつ、乗員の空間を約1気圧に保つのが耐圧殻たいあつこくである[6]。

このメモでは、しんかい6500の球形チタン合金殻と、縮尺模型の圧壊試験、そして円筒形の潜水艦で使われる輪っか状の補強材と高張力鋼を、JAMSTEC・防衛省規格・解説資料をつき合わせて追う。潜水艦の実際の潜航深度は公表されておらず、数値は書かない。

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1. ふかい うみは、どのくらい おされるの?

1. 10m潜るごとに、1気圧ずつ増える

1. 深度6,500mの圧力 ── 10mごとに約1気圧

うみの 中では、10メートル もぐるごとに、およそ 1気圧きあつずつ 水圧すいあつが ふえます。うえに ある 水の おもさを、からだで うけとめて いるからです。

ふかさ 6500メートルなら、650 ぐらいの 気圧きあつが ふえます。10メートルは、3階だての いえの たかさぐらいです。それが 650こ ぶんです。

海の中では、10m潜るごとに、圧力がおよそ1気圧ずつ上がります。自分より上にある水の重さを、全身で受け止めているためです。10mというのは目安で、深さによって少しずつ変わります。

「しんかい6500」が潜る6,500mでは、海面よりおよそ650気圧増える計算です。1気圧は、1平方センチメートルに約1kgの重さがかかる圧力ですから、指先ほどの面積に650kgほどがかかることになります。3階建ての家の高さがおよそ10mですから、その650個ぶんの水の重さです。より細かい計算では、北緯36度で約656気圧という値も示されています。

海中では10m潜るごとに圧力が約1気圧上がる。自分より上にある水の質量を受け止めているためで、10m=1気圧はあくまで目安である。深度6,500mでは、海面から約650気圧上昇するという概算になり、大気の約1気圧を足すと約651気圧である[1]。

より正確な計算(北緯36°)では、水柱分が約656気圧、合計約657気圧とされる[1]。以下では丸めて「約650気圧」と書く。1気圧は1平方cmに約1kgの重さがかかる圧力なので、650気圧は爪の面積ほどに約650kgである。1平方cm当たりの重さに直せば、手のひらほどの面積(およそ100平方cm)では、およそ65tにもなる。

2. なかの 人は、つぶれないの?

2. 中の人がいる部分は、1気圧のまま

2. 耐圧殻 ── 内部を1気圧に保つ外殻

ふねの 中の 人が いる ところは、じょうぶな 殻からで つつまれて います。この 殻からを 耐圧殻たいあつこくと いいます。

殻からの 中は、じょうぶな かべの おかげで、ふだんと おなじ 1気圧きあつの ままです。そとの 水圧すいあつを、殻からが ぜんぶ うけとめて います。

潜水艇の中で人が乗り込む空間を包む、丈夫な外殻を耐圧殻たいあつこくといいます。外の水圧は殻が受け止めるので、内部はふだんと同じ1気圧に保たれます。

深海の調査船では、チタンなどの丈夫な合金でできた、球にとても近い耐圧殻が使われるとされています。では、なぜ球なのでしょうか。

耐圧殻は、潜水艦や潜水艇で水圧に耐えるための外殻構造で、ふつう乗員が入る空間を指し、内部は1気圧に保たれる[6]。大深度の深海調査船では、チタンなどの合金でできた真球に近い耐圧殻が用いられるという[6]。

この説明は辞書項目であり、以降はJAMSTECの一次資料で、しんかい6500の具体的な設計を確かめる。

3. しんかい6500は、まんまるの 殻から

3. しんかい6500は、ほぼ完全な球

3. しんかい6500の耐圧殻 ── 内径2.0m・厚さ約7cm・真球度1.004

にっぽんの ふかい うみの ふね「しんかい6500」の 殻からは、ほとんど まんまるの 球です。なかの ひろさは、はば 2メートル ぐらい。かべの あつさは 7センチほどです。

まるい 形は、どの ほうこうからの 力にも つよい かたちと されて います。ボールを、どこから おしても、おなじ ように かんじるのと にて います。ただし、ほんとうの ボールより、ずっと せいこうに つくって あります。

「しんかい6500」で乗員が入る耐圧殻は、内径2.0m、厚さ約7cmのチタン合金でできた球です。JAMSTECの資料は、球は外からの圧力に強い形だと説明しています。

球は、中心から見てどの方向も同じ形です。そのため、すべての方向から水に押されても、力が一か所に集まりにくいと考えられています。ただし、この理由の説明は解説記事にもとづくもので、円筒との直接の比較は、この記事で使った資料には出ていません。

この球は、ゆがみも小さく作られています。球にどれだけ近いかを表す真球度は1.004、外径の製作精度は±2mm以下です。直径2mの球のずれを、2mm以内に収めているということです。

しんかい6500の乗員(3名)が入る耐圧殻は、厚さ約7cmのチタン合金製の球形で、内径は2.0mである[2]。真球度は1.004、外径の製作精度は±2mm以下とされる[3]。真球度(しんきゅうど)は、完全な球からのずれの小ささを表す指標である。

球が外圧に強いと考えられる理由は、中心からの方向による差がなく、全方向からの力に対して有利な形状であることによる、という解説がある。ただしこれは個人による解説記事で、円筒形との直接の比較は含まれていない。外圧を受ける球殻の座屈に関する最初の理論解は、1915年にZoellyが求めたとされる(同解説)。

4. どうして ちたんで つくったの?

4. 強くて軽い、チタン合金を選んだ理由

4. 素材選定 ── Ti-6Al-4V ELIと縮尺模型の圧壊試験

殻からの ざいりょうは、ちたんの なかまの ごうきんです。かるくて じょうぶな 金ぞくです。

もぐる ふねは、おもいと、うかび あがるのに ふべんです。だから、かるくて つよい ざいりょうが えらばれました。

殻の素材は、チタン合金です。軽くて丈夫という特徴があります。

潜水船は重すぎると、それだけ大きな浮力が必要になります。1990年の設計に関する報告では、「しんかい6500」の耐圧殻は、できるだけ軽くすることが求められたと書かれています。縮尺模型に何度も圧力をかけたり、壊れるまで試したりして確かめたうえで、チタン合金の採用が決まったそうです。

耐圧殻には最大限の軽量化が求められ、高強度の材料としてチタン合金(Ti-6Al-4V ELI)が選ばれた。縮尺模型による繰り返し加圧と圧壊あっかい試験で総合的に確認したうえで採用が決定した(1990年の報告)[4]。

軽さは、潜水船のほかの装備を積む余裕にも関わる。素材の選び方は、「強い」だけでなく「軽い」も同時に満たすかどうかで決まったことが読み取れる。

5. こわれる まで ためしたら?

5. 模型は、13,200m相当で壊れた

5. 圧壊試験 ── 縮尺1/2.86の模型が示した余裕

ほんものの 殻からを こわす わけには いきません。そこで、ちいさな もけいを つくって、ためしました。

もけいは、13200メートルの ふかさに あたる 水圧すいあつで、はじめて こわれたと、しょうかい されて います。しんかい6500が もぐる ふかさの、およそ 2ばいです。

実物の殻を壊して確かめるわけにはいきません。そこで、実物の約1/2.86、内径70cmのチタン合金の球を作り、圧力をかけて壊れる限界を調べました。

展示の説明によると、この模型は水深13,200m相当の圧力をかけたときに壊れました。しんかい6500が潜る6,500mの約2倍の深さに当たります。日常の使い方より、ずっと余裕を持たせているのです。

内径70cm(実物2mの縮尺1/2.86)のチタン合金の球の模型は、水深13,200m相当の圧力をかけたときに壊れたと、国立科学博物館の展示を紹介する海洋総合辞典に記されている[5]。13,200÷6,500≒2.03で、実際に潜る深度の約2倍である。

これは実物ではなく縮小模型の結果であり、また二次資料による記述である。設計時に得られた余裕の目安として受け取るのがよい。

6. せんすいかんは、どうして ながい 形なの?

6. 潜水艦は円筒形 ── 輪っかで補強する

6. 円筒形耐圧殻とリングスティフナー、高張力鋼NS110

潜水艦せんすいかんの 殻からは、ながい つつの 形です。ふねの 中を、人が あるける ひろさに するには、まんまるより つかい やすいと 考えられます。

ただ、つつの 形は、そとから おされると、ぐにゃっと へこみやすい ところが あります。そこで、殻からの 中がわに、わっかの 形の ほきょうざいを ならべて、へこみにくく して います。

ざいりょうは、とても かたい はがねです。

潜水艦の殻は、球ではなく、長い円筒形です。人が動き回れる長い空間を作るには、球より使いやすい形だと考えられます。日本の海上自衛隊の潜水艦も、おやしお型から葉巻のような形を取り入れ、そうりゅう型も受けついでいます。

ただ、円筒形は外から押されると、長さ方向にも縮む力を受け、急にへこむ「座屈」が起きやすくなります。そこで殻には、輪っか状の補強材(リングスティフナー)が、内側に溶接されます。多くはT字形の断面で、座屈のときに殻にかかる力を受け持ちます。

素材は、降伏強度の高い鋼を使えば、必要な殻の厚さを減らせます。防衛省の規格には、主として潜水艦に使う超高張力鋼板NS110が定められています。ただし、潜水艦が実際に何メートルまで潜れるかは公表されていません。

潜水艦の円筒形耐圧殻は、潜航時に周方向だけでなく長さ方向にも圧縮を受ける。座屈(外から押された薄い殻が急にへこむこと)に備えて、殻には輪っか状のリングスティフナー(多くはT字断面)が溶接され、座屈荷重で殻に生じる周方向の応力を受け持つ[7]。円筒形は、内部空間を使いやすい形とされる。

素材面では、降伏強度の高い材料を使うと、必要な最小の殻厚を減らせる[7]。防衛省規格NDS G 3121Bは、主として潜水艦に使う、耐力110kgf/mm2(1,079N/mm2)級の艦船用超高張力鋼板(NS110)を定める。1998年制定、2021年改正である[8]。耐力とは、変形が戻らなくなり始める力の目安である。

海上自衛隊の潜水艦は、おやしお型から部分単殻構造・葉巻型船型を導入し、そうりゅう型も踏襲している。潜航深度は公表されていない[9]。このため、深度の数値は本記事では扱わない。

7. じぶんでも しらべて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

いえで できる ことです。おふろの ふかさは、およそ 50センチです。水の ふかさが 10メートルで 1気圧きあつです。おふろの ふかさの なんばいなのか、わり算で 計算して みましょう。(10メートルは 50センチの 20ばいです。)

もっと しりたい ときは、JAMSTEC(ジャムステック)の「しんかい6500」の ページを、おうちの 人と いっしょに みて みましょう。

家でできることとして、まず10mの高さを身近なもので想像してみてください。3階建ての家の高さがおよそ10mですから、その高さの水の重さが1気圧ぶんです。海の深さ6,500mなら、その650個ぶんです。

もっと調べるなら、JAMSTECの「しんかい6500」のページに、耐圧殻の大きさや素材の紹介があります。潜水艦のことは、防衛省の公開資料で規格の名前などを探せます。

今日できること:JAMSTEC「深さと圧力」のコラム[1]で、10mごとの1気圧の目安と、6,500mでの計算の細かい違い(約651気圧と約657気圧)を読み比べる。

公式情報:JAMSTECの「しんかい6500」のページ[2][3]と、防衛省規格NDS G 3121B[8]の適用範囲の記述を読み、球形(チタン合金)と円筒形(高張力鋼)で、素材と形の組み合わせがどう違うかを整理する。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

水圧の数値と「しんかい6500」の仕様はJAMSTEC、円筒形の補強は解説資料、規格は防衛省の文書を主に使いました。

  1. JAMSTEC「海洋観測コラム:深さと圧力」 https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20210428/ (10mごとの圧力・6,500mの圧力)
  2. JAMSTEC 有人潜水調査船「しんかい6500」(探査機の概要) https://www.jamstec.go.jp/mare3/j/ships/deep_sea/shinkai6500.html (耐圧殻の形・厚さ・内径)
  3. JAMSTEC「しんかい6500 システム」 https://www.jamstec.go.jp/shinkai6500/system/ (真球度・製作精度)
  4. JAMSTEC「『しんかい6500』耐圧殻の設計・製作」(1990年) https://www.godac.jamstec.go.jp/doc_catalog/external/metadata/shiken23_18/file/shiken23_18.pdf (チタン合金の採用経緯)
  5. 海洋総合辞典「圧壊試験の耐圧殻模型」 http://www.oceandictionary.jp/scapes1/scape_by_randam/randam10/select1016.html (模型の圧壊試験の記述)
  6. コトバンク「耐圧殻」 https://kotobank.jp/word/耐圧殻-684062 (耐圧殻の定義)
  7. Marine Insight “Understanding Structure Design of a Submarine” https://www.marineinsight.com/naval-architecture/submarine-design-structure-of-a-submarine/ (リングスティフナー・降伏強度と殻厚。英語の解説)
  8. 防衛省規格 NDS G 3121B「艦船用超高張力鋼板(NS110)」 https://www.mod.go.jp/atla/nds/G/G3121B.pdf (NS110の適用範囲)
  9. Wikipedia「そうりゅう型潜水艦」 https://ja.wikipedia.org/wiki/そうりゅう型潜水艦 (船型・潜航深度が未発表であること)

なおした ところ

更新履歴

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