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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あついと 電気を とおす ふしぎな ぶひん ── サーミスタ

熱いほど電気を通す部品 ── サーミスタの「逆さま」と、その使い道

サーミスタの負の温度特性 ── 金属と逆になる理由、1833年の観察から実用化、PTCまで

分野:技術

電気を とおす 金ぞくは、あつく なると、電気を とおしにくく なります。ところが サーミスタという ぶひんは、あつく なるほど、電気を とおしやすく なります。

どうして さかさまに なるのでしょうか。スマホや 体温計の 中で、なにを して いるのでしょうか。この メモで わかります。

電気を通す金属は、熱くなると電気を通しにくくなります。ところがサーミスタは、熱くなるほど電気を通しやすくなる部品です。しかも、温度が1℃変わるだけで、抵抗が3〜5%ほど変わるといわれます[1]。

なぜ金属と逆になるのでしょうか。そして、その現象が見つかってから約100年たって、ようやく道具になったのはなぜでしょうか。この記事で分かります。

サーミスタ(NTC)は、温度が上がると電気抵抗が下がる。金属と逆の向きで、しかも変化が大きく、1℃あたり約3〜5%という目安が示されている[1]。

この逆向きは、電気を運ぶ粒子の数と、粒子の動きやすさの綱引きで説明される。現象の発見は1833年とされるが、実用化は1930年代になる。その空白の理由と、逆に抵抗が急増するPTCの仕組みまで、このメモで分かる。

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1. あつい ほど 電気を とおす ぶひん

1. 熱いほど電気を通す、逆さまの部品

1. 抵抗が温度で大きく下がる素子 ── サーミスタの定義と感度

サーミスタは、「ねつに びんかんな ていこうたい」という いみの えいごを みじかく した 名前だと されます[5]。ていこうとは、電気の とおりにくさの ことです。

ふつうの 金ぞくは、あつく なると、とおりにくさが ふえます。サーミスタは ぎゃくで、あつく なると とおりにくさが へります。

へりかたも 大きいのが とくちょうです。ていこうが 100だと すると、1℃ あがる ごとに、95〜97ほどに なる という めやすが あります[1]。ただし これは めやすで、温度や しゅるいで かわります。

では、どうして 金ぞくと さかさまに なるのでしょう。

「熱に敏感な抵抗体」という名前

サーミスタは、温度が上がると電気抵抗が大きく変わる半導体素子です。名前は、英語の thermally sensitive resistor(熱に敏感な抵抗体)を縮めたものとされ、温度を測ったり、温度を制御したりするのに使われます[5]。

一般に「サーミスタ」といえば、温度が上がるほど抵抗が下がるNTCサーミスタを指します。材料は、マンガン・ニッケル・コバルトなどの酸化物を焼き固めたセラミックスです[1]。

変わり方は、金属よりずっと大きい

NTCの抵抗は、1℃あたり約3〜5%変わるという目安があります[1]。抵抗が100なら、1℃上がるごとに95〜97ほどになる計算です。これは目安で、温度の範囲や品種で変わります。

わずかな温度の差が、はっきりした電気の差になるので、温度計にしやすい部品です。では、どうして金属と逆向きなのでしょうか。

サーミスタ(thermistor)は、thermally sensitive resistor(熱に敏感な抵抗体)の略で、温度上昇で電気抵抗が著しく変わる半導体素子を指す[5]。

一般にサーミスタといえば、温度上昇で抵抗が下がるNTC(負の温度係数)を指し、材料はMn・Ni・Coなどを主成分とする酸化物半導体セラミックスである[1]。抵抗の変化率は1℃あたり約3〜5%とされ[1]、100Ωなら1℃で95〜97Ω程度になる計算だが、温度域や品種で変わる目安値だ。

この感度の高さが温度センサーに向くのだが、そもそも金属と逆向きになるのはなぜか。

2. どうして さかさまに なるの?

2. 電気を運ぶ「運び手」が、熱で増える

2. キャリア数と移動しやすさの綱引き ── 金属と半導体の分かれ目

電気は、小さな 「はこび手」の つぶが ながれる ことで とおります。せまい みちを ながれる ビーズの つぶを、思いうかべて ください。

金ぞくでは、ながれる つぶの 数は ほとんど かわりません。あつく なると、みちが ゆれて、つぶが ひっかかりやすく なります。だから とおりにくく なります。

はんどうたいでは、あつく なると、ながれる つぶが どんどん ふえます。ひっかかりやすさも ふえるのですが、つぶの ふえかたの ほうが 大きいので、けっきょく とおりやすく なります[1]。

ただし ほんとうは、はこび手は ビーズでは なく、電子と 「せいこう」という つぶです。

運び手の数で決まる

電気が流れるとき、運び役になるのは、自由に動ける電子と、電子が抜けたあとの穴(正孔)です。この運び役をキャリアと呼びます。

金属では、温度が上がってもキャリアの数はほとんど変わりません。ところが、熱で結晶の粒がゆれて、運び役が進みにくくなります。だから抵抗が増えます。

NTCに使われる半導体の材料では、熱を受けるとキャリアが増えます。進みにくさも増えますが、キャリアの増え方がそれを上回ります。その結果、抵抗は下がります[1]。

半導体でも、進みにくさは増えている

よくある誤解は、半導体では熱で進みにくさがなくなる、というものです。実際は、進みにくさも増えています。ただ、キャリアが増える効果のほうが勝つだけです[1]。

この逆さまが、温度を電気の量に変える部品として使えます。では、この現象は、いつ見つかったのでしょうか。

金属では、キャリア数(自由電子)は温度でほぼ一定で、温度上昇によって格子振動が増え、キャリアの移動しやすさ(移動度)が下がる。そのため抵抗は増える。これが金属の振る舞いだ。

ところが半導体では、温度が上がると自由電子と正孔が増える。移動度は同じく格子振動で下がるが、キャリア数の増加がその低下を上回る。そのため全体の抵抗は下がる[1]。抵抗はキャリア数と移動度の積に反比例する形で決まるので、増えるほうが勝った側の向きに抵抗が動く、と読める。

「半導体では移動度が下がらない」という理解は誤りで、下がってもなお、キャリア数の増加が勝つ。この綱引きの勝ち負けが、金属と半導体の逆向きを生んでいる。では、この現象は誰が、いつ見つけたのか。

3. 100ねん ほうって おかれた ふしぎ

3. 見つかってから約100年、ただの珍しい現象だった

3. 1833年の観察と、1930年の高温計の提案

この ふしぎは、1833ねんに、ファラデーという 人が 見つけたと されます[3]。でも、その あとの 100ねんくらいは、めずらしい げんしょうと して 知られる だけでした[3]。

1930ねんに、サミュエル・ルーベンという 人が、この 力を 使った 高温計を 考えました。高温計は、とても あつい ものの 温度を はかる 道具です[3]。

ルーベンは、どうを 1000℃ ほどの 火で 30ぷん ほど やいて、さんかどうの うすい そうを つくる 方ほうを、とっきょに 出しました[4]。

珍しい現象が、道具になるまで

資料によると、温度で抵抗が下がる現象は、1833年にファラデーが見つけたとされます。硫化銀で見つけたという説明もありますが、これは二次資料の記述で、原典の論文は確認できていません[3]。

その後、1930年になるまで、この現象は「ただの科学的な珍しい現象」のままだったと書かれています[3]。使い道が見つからなかったからです。

高温計という使い道

1930年に、サミュエル・ルーベンが、この現象で高温を測る高温計をつくることを提案しました[3]。彼のアメリカ特許(1930年3月18日出願、1935年11月19日登録)には、銅を約1000℃で約30分酸化させた酸化第一銅の層が、熱で抵抗が下がることを温度の検出に使う、と書かれています[4]。

この特許の材料は銅の酸化物で、今のサーミスタのマンガン・ニッケル・コバルト系とは違います。そして、NTCサーミスタは、1930年代にルーベンによって商品になった、と説明されています[1]。

こうして高温計になった部品は、その後どこへ広がっていったのでしょうか。

この現象は、1833年にファラデーが見つけたとされる。金属とは逆に、温度で抵抗が下がる現象だった。ただし硫化銀を使ったという点は二次資料の記述で、原典の1833年の論文は未確認である[3]。シェフィールド・ハラム大学の論文は、この現象が1930年まで「単なる科学的好奇心」にとどまっていたと述べる[3]。

転機は、1930年にサミュエル・ルーベンが高温計の製作を提案したことだった[3]。米国特許US2021491(1930年3月18日出願、1935年11月19日登録)は、銅を約1000℃で約30分酸化させて得た酸化第一銅の層を使う。この層は熱で抵抗が下がるので、その変化を雰囲気や液体の温度の指標にできる、という内容だ[4]。

注意したいのは、特許の材料が銅の酸化物であって、現在のMn-Ni-Co系ではない点だ。NTCサーミスタは1930年代にルーベンにより商品化された、と村田製作所は説明する[1]。

1830年代の観察が使い道を得るまでに約100年かかった。では、その後、この部品はどこで使われているのか。

4. 家の 中の どこに いるの?

4. 身近な機械の中で、熱の番人になる

4. NTCの用途と、予測式体温計の考え方

サーミスタは、スマホ、エアコン、車などに 入って いて、温度を はかったり、ねつを かんりしたりします[1]。電気を ながす もとの ぶぶんで、電流を ととのえる ためにも 使われます[1]。

電子たいおんけいにも 使われています。サーミスタの ていこうの かわりかたで、温度を しらべます[6]。

「よそくしき」という たいおんけいは、さいしょの 温度の あがりかたから、体温を あらかじめ 見つもって、みじかい 時間で ひょうじします[6]。かかる 時間は きしゅで ちがいます。

温度を測る、熱を管理する

NTCサーミスタは、スマートフォン、エアコン、自動車などの温度検出と温度管理に使われます。電源での電流の制御にも使われます[1]。

わずかな温度の違いが抵抗の大きな違いになるので、小さくて安い部品でも、温度を読み取りやすい部品になります。

体温計の中では

サーミスタ式の電子体温計は、サーミスタの抵抗の変化から温度を検出します。予測式では、最初の温度の上がり方から体温を予測して、短い時間で表示します。ある機種の添付文書では、検温開始から約2分30秒までは予測値、それ以降は実測値の最高値を表示するとされています[6]。

時間は機種によって違います。ここでは、サーミスタが体温計にも使われている、という一例にとどめます。では、熱いと逆に電気を通さなくなる仲間は、いるのでしょうか。

NTCサーミスタの用途は、スマートフォン・エアコン・自動車などの温度検出と温度管理であり、電源での電流制御にも使う[1]。

電子体温計では、サーミスタの抵抗変化から温度を検出する。予測式は、検温開始直後の温度上昇の挙動から平衡温度を予測して短時間で表示する方式だ。PMDAの添付文書に載る一機種では、開始から約2分30秒までは予測値、以降は実測値の最高値を表示する[6]。秒数は機種ごとに異なり、別機種の文書では予測約20秒・実測約5分とされる[6]。体温計の仕組み全体はほかのメモに譲り、ここでは用途の一例にとどめる。

NTCは、温度が上がると抵抗が下がる。では、その逆に、温度がある点を越えると抵抗が急に上がる部品はあるのか。

5. あつく なると、とおさなく なる なかま

5. 逆向きの仲間PTCは、自分で温度を守る

5. PTCサーミスタ ── キュリー点と自己制御

サーミスタの なかまに、PTCが あります。これは、ある 温度を こえると、ていこうが きゅうに 大きく なります[2]。

あつく なりすぎると、電気が とおりにくく なるので、温度が 上がりすぎにくく なります。この せいしつを 生かして、つかいかたしだいで 温度を たもつ ヒーターや、こしょうが なくなると もどる ヒューズに 使われます[2]。

ただし、どれも、じっさいの 商品に 入って いるかは、メーカーの せつめいで たしかめて ください。

ある温度を越えると、急に通さなくなる

PTCサーミスタは、チタン酸バリウムに、ごく少量の希土類を加えたセラミックスです。キュリー点という温度を超えると、結晶の構造が変わって、電気を運ぶ電子の動きをさまたげる状態になり、抵抗が急に大きくなります[2]。

自分で温度を保つ、戻るヒューズ

この性質は、自己発熱と組み合わせて使われます。自己発熱で故障電流を抑える復帰型ヒューズや、発熱と放熱のつり合いで一定の温度を保つ自己制御ヒーターがその例です[2]。

村田製作所は1961年にPTCの量産を始め、商標「ポジスタ」を持つとされています[2]。ほかの自動車・家電での具体例は、今回の資料では確認できていません。

同じ「サーミスタ」でも、熱いと通しやすくなるNTCと、ある温度から通さなくなるPTCの二種類があることが分かります。

PTCサーミスタは、チタン酸バリウム(BaTiO3)に微量の希土類を添加したセラミックスで、キュリー点を超えると結晶が立方晶に転移し、電気双極子が消える。その結果、酸素イオンが電子の移動をさまたげて、抵抗が急に増す[2]。

この急増を使うのが、自己制御である。自己発熱で温度が上がると、抵抗が増して電流が減り、発熱が抑えられる。村田製作所は、この性質で故障電流を自己発熱により抑える復帰型ヒューズと、発熱と放熱のつり合いで一定温度を保つ自己制御ヒーターに使えるとしている[2]。同社は1961年に量産を始め、商標「ポジスタ」を持つ[2]。

金属とは逆向きの半導体の性質から、NTCは温度センサー、PTCは温度を自分で保つ部品と、役割が分かれた。

6. うちの 中で 「ねつの 番人」を さがそう

6. 家の中で「熱の番人」を探す

6. 出口 ── 家庭で探す観察と、資料の読みどころ

おうちの 電子たいおんけいの せつめいしょを 見て ください。「よそくしき」「じっそくしき」という ことばが あるか、さがして みましょう。

ほかにも、スマホの せつめいや、エアコンの せつめいに、温度を はかる ぶひんが 書いて あるか、おうちの 人と 見て みましょう。

ただし、ぶひんの 名前が 書いて ない ことも あります。見つからなくても だいじょうぶです。

家の電子体温計の説明書を開いて、「予測式」「実測式」という言葉があるか探してみましょう。あれば、どちらの方式か、表示までにどれくらい時間がかかると書いてあるかも見てみてください。

ほかにも、エアコンやスマートフォンの説明書に、温度を検出する部品や、温度で動作を変える機能が書いてあるか、探してみてください。ただし、部品名までは書かれていないことも多いです。

もっと読みたくなったら、村田製作所のNTCとPTCの解説[1][2]を開いてみてください。日本語で読めます。

家庭では、電子体温計の説明書で予測式・実測式の記載と表示までの時間を探すと、機種ごとの違いが確かめられる。エアコンやスマートフォンの取扱説明書に温度検出の記述があるかも見られるが、部品名まで書かれているとは限らない。

資料を読むなら、NTCとPTCの性質は村田製作所の解説[1][2]、歴史はシェフィールド・ハラム大学の論文[3]とルーベンの米国特許[4]が原典に近い。ファラデーの1833年の観察の原論文と、サーミスタという語の造語者は今回の範囲外で、さらに調べる価値のある問いだ。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:メーカーの公式解説、大学の論文、米国特許、辞典、医療機器の添付文書を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 村田製作所「NTCサーミスタ 基本」。https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/ntc/overview/basic/about (NTCの材料・抵抗が下がる理由・感度・用途・商品化について)
  2. 村田製作所「PTCサーミスタ 基本」。https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/ptc/overview/basic/about (PTCの仕組みと用途、量産開始について)
  3. NTC Ceramics: Past, Present and Future(シェフィールド・ハラム大学)。https://shura.shu.ac.uk/4973 (1833年の発見と1930年の提案について。英語の論文)
  4. Google Patents「US2021491A Electrical Pyrometer Resistance」。https://patents.google.com/patent/US2021491A/en (ルーベンの特許の内容について。英語)
  5. コトバンク「サーミスター」。https://kotobank.jp/word/サーミスター (サーミスタの定義と語の意味について。辞典項目)
  6. PMDA 医療機器添付文書(電子体温計)。https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/470034_223AABZX00072000_A_01_01 (サーミスタ式の予測式体温計の動作について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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