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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

チタンの めがねは、どうして かるくて さびないの?

チタンのめがねは、なぜ軽くて、さびにくいのか ── 目に見えない薄い膜の話

チタンフレームの軽さと耐食性 ── 比重約4.51と酸化皮膜、そして加工の壁

分野:技術

めがねは、あさから よるまで、かおに のって います。あせや 雨に ぬれる ことも あるでしょう。

チタンの めがねは、かるくて、さびにくいと いわれます[1]。その ひみつは、きんぞくの 中では なく、おもてに ある、目に 見えない うすい まくに ありました。

めがねは、朝から夜まで顔にのっていて、汗や雨にぬれることもあります。それでもチタンのフレームは、軽くて、さびにくいといわれます[1]。

さびない理由は、金属の中身ではなく、表面にできる目に見えないほど薄い膜にあるようです。軽さ、膜、傷が直る仕組みの順に見て、最後に、なぜめがねにするのが難しかったのかを見ます。

チタンの比重は約4.51で、鉄(約7.8)の約6割だ[1][2]。海水の中でも白金に匹敵する耐食性を示す、とされる[1]。けれども、それは金属そのものが変化しないからではなく、表面に酸化皮膜(不動態皮膜)ができるためだ[3]。

この記事では、軽さの数値、皮膜の仕組みと自己修復、それでも「さびて見える」ことがある理由、そして加工とコストの壁を、日本チタン協会・日本製鉄・メーカーの資料でたどる。素材の話が中心で、産地の歴史には触れても短くとどめる。

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1. チタンは、鉄より どれぐらい かるいの?

1. 同じ大きさで、鉄の約6割の重さ

1. 比重4.51 ── 鉄の約6割、アルミよりは重い

おなじ 大きさの チタンと 鉄を くらべると、チタンは 鉄の 6わりぐらいの おもさです[1]。鉄が 10だと すると、チタンは 6ぐらいです。

「はんぶん」までは かるく ありません。ですから、6わり、と おぼえて おきましょう。

ぎゃくに、チタンは おもさに くらべて、とても じょうぶだ とも いわれます[1]。かるくて、じょうぶ。めがねに むいて いそうです。

では、さびにくいのは、どうしてでしょう。まず、鉄が さびる ところから 見て みます。

チタンの比重(同じ体積での重さを、水と比べた数)は約4.51です。鉄は約7.8なので、チタンは鉄の約6割の重さになります(4.51÷7.8≒0.58)[1][2]。銅と比べると約半分です[1]。

「鉄の半分」ではなく、約6割です。アルミニウムよりは重い金属でもあります。

同じ重さあたりの強さで比べると、チタンはアルミニウムの約3倍、鉄の約2倍とされます[1]。太さが同じなら強い、という意味ではなく、同じ重さで比べたときの話です。

軽さは、さびにくさとは別の話です。次は、鉄がさびる仕組みから見ていきます。

日本チタン協会によると、チタンの比重は4.51で、鉄の約60%、銅の約1/2にあたる[1]。日本製鉄の解説でも、チタン約4.51に対し鉄は約7.8と示され[2]、4.51÷7.8≒0.58と、約6割で合う。これは「鉄の半分」ではなく、アルミニウムよりは重い。

同じ重さあたりの強さ(比強度)は、アルミニウムの約3倍、鉄の約2倍とされる[1]。断面積や太さが同じ場合の強さとは別の指標だ。フレームの軽さと強さの両立は、この比強度で説明される。

軽さは、さびにくさとは独立した性質だ。耐食性の仕組みは、鉄がさびる過程と対比すると分かりやすい。

2. 鉄は、どうして さびるの?

2. 鉄は、さびるとき、表面がぼろぼろになる

2. 鉄の腐食 ── 表面が溶けて酸化鉄になる

鉄は、水に ふれると、おもてが とけて、酸化鉄さんかてつに なります。これが「さび」です[2]。

ぬれた 鉄の くぎを 外に おいて おくと、赤茶色に なる ことが あるのは、この ためです。

チタンは、これと ちがう やりかたで、じぶんを まもって いるようです。

鉄は、水にふれると、表面が溶け出して酸化鉄(さび)になります[2]。

外に置いた鉄のくぎが赤茶色になるのは、この変化のためです。

これに対して、チタンは、表面に「酸化皮膜」という膜をつくり、さびにくくなっています[2]。その膜が、次の章の主役です。

日本製鉄の解説では、鉄は水に触れると表面が溶解し、酸化鉄を生じる。一方チタンは、酸化皮膜という不動態皮膜を形成することで錆びにくく、耐食性が高い、と整理されている[2]。

鉄は表面が溶け続けることがあるのに対し、チタンは安定した膜をつくる。

鉄が自分の表面を失いながら変化するのに対し、チタンは自分から膜をつくる。この差が、次章の内容になる。

3. チタンの おもてには、なにが あるの?

3. 空気にふれた瞬間にできる、安定した膜

3. 酸化皮膜 ── 瞬時に形成され、内部の腐食を進みにくくする

チタンは、空気に ふれると、すぐに、おもてに うすい まくが できます[3]。この まくを、酸化さんかひまく と いいます。

この まくは、とても あんていして いて、まくが できると、チタンの 中の ほうは さびにくく なる、と いわれます[3]。

きんぞくの 中身は、この まくに おおわれて いて、水や 空気に じかに ふれません。ぼうしを かぶって いるようです。

ただし ほんとうは、まくは 中身と ひとつづきで、ぬいだり かぶったり できません。

チタンは、空気にふれると、ほぼ一瞬で、表面に酸化皮膜をつくります。この膜は「不動態皮膜」と呼ばれ、とても安定で、この膜ができることで内部の腐食が進みにくくなる、と説明されています[3]。

膜の厚さは、見えないほど薄いようです。資料によって数字が違うので、ここでは数字は書かず、「とても薄い」にとどめます。

金属の内側は、この膜におおわれていて、水や空気と直接ふれません。汗や雨にぬれても、膜が外との間に立っていると考えられます。

ただし、この膜はどうなるのでしょう。傷がついたら、はがれてしまうのでしょうか。

チタンは空気中で、瞬時に表面へ酸化皮膜を形成する。この皮膜は極めて安定した不動態皮膜で、表面にこの皮膜ができることで内部の腐食が進みにくくなる、と説明される[3]。

皮膜はとても薄い。

加工メーカーの資料では、チタンの表面に酸化皮膜ができると説明されている。次は、その膜が傷ついたときに何が起こるか、という点になる。

4. きずが ついたら、どうなるの?

4. 傷がついても、膜は自分で直る

4. 自己修復と海水中での耐食性

チタンの おもてに きずが ついても、まくは、すぐに もとどおりに なると いわれます[4]。きずの ところが さんそに ふれると、あたらしい まくが できるからです。

ひざを すりむいた あと、かさぶたが できるのに にています。ただし ほんとうは、かさぶたは からだの はたらきで、チタンの まくは、さんそに ふれる ことで できます。

チタンは、海の 水の 中でも、とても さびにくい、と されます[1]。はっきんという きんぞくと、おなじ ぐらい だと いう せつめいも あります。

表面に傷が入っても、酸素に触れるとすぐに皮膜が再生され、耐食性が保たれる、と説明されています[4]。

膝をすりむくと、かさぶたができるのに少し似ています。ただし、かさぶたは体の反応で、チタンの膜は、酸素に触れれば化学的にできるものです。仕組みは別物なので、たとえはここまでにします。

日本チタン協会は、チタンが海水中で、白金に匹敵する耐食性を示し、他の主要な金属より優れる、と紹介しています[1]。

塩分の多い海水でも、耐食性が高いという説明です。

皮膜に傷が入っても、酸素に触れれば直ちに再生し、耐食性が維持される。これを自己修復と呼ぶことがある[4]。ただし、「絶対に変色しない」という意味ではない(次章)。

日本チタン協会は、海水中でチタンは白金に匹敵する耐食性を発揮し、他の主要金属より優れる、と記している[1]。

傷がついても酸素に触れると皮膜が再生する、という原理の説明だ。

5. チタンも、さびて 見える ことが あるの?

5. さびたように見えることがある理由

5. もらいさびと干渉色 ── チタン自体が腐るわけではない

チタンの めがねが、あかっぽく よごれて 見える ことが あります。でも、チタンが くさった とは かぎりません。

ひとつは、まわりの 鉄の こなや、ちがう きんぞくが ついて、そこが さびた ばあいです。これを 「もらいさび」と いいます[4]。

もうひとつは、ゆびの あぶらなどが ついて、まくの 見え方が かわる ばあいです[4]。

チタンそのものが ぼろぼろに なった わけでは ない、と いう せつめいです。

チタンが、さびたように見えることはあります。ただ、その理由として挙げられているのは、チタン自体が腐ることではありません。

ひとつは、「もらい錆」です。錆びた鉄粉が付いたり、チタンと違う金属が触れ合ったりして、そちらが錆びたものが、チタンの表面に移って見えます[4]。

もうひとつは、皮脂や摩擦などで、膜の見え方が変わる場合です[4]。膜の見え方が変わるので、色づいて見えることがある、という説明です。

「さびない」と言い切らず、「さびにくい」「さびたように見えることがある」と、少し慎重に受け止めるのがよさそうです。

チタンが錆びたように見える原因として、二次資料は、錆びた鉄粉の付着や異種金属との接触による「もらい錆」と、皮脂の付着や摩擦による皮膜の見え方の変化(干渉色)を挙げる[4]。いずれも、チタン自体の腐食ではない、という説明だ。

耐食性が高いことと、「絶対に変色しない」ことは別だ。表現は「さびにくい」にとどめる。

6. どうして めがねに するのが むずかしかったの?

6. 削りにくく、熱がこもる ── 加工の壁

6. 加工の壁とコスト ── 熱伝導率・ヤング率・クロール法、1982年の純チタンフレーム

チタンは、けずるのが むずかしい きんぞくです。けずる とき、ねつが にげにくく、はの さきが とても あつく なる ことが あるからです[5]。

つくる ところも たいへんです。チタンは、とても ふくざつな しごとを へて、やっと きんぞくに なる ので、ねだんが 高く なる といわれます[6]。

そんな チタンを、めがねに した 会社が あります。マルマンオプティカルという 会社が、1982ねんに、せかいで はじめて、ぜんぶ じゅんチタンの フレームを 売り出した と しょうかい して います[7]。

チタンは、加工が難しい金属です。熱の伝わりやすさ(熱伝導率)が、鉄の約4分の1、アルミニウムの約10分の1と低いので、削るときに熱が逃げず、刃先にこもります。切削中の刃先は、1000℃を超えることもあるそうです[5]。ただし、これは切削中の刃先の話で、チタン自体が1000℃になるという意味ではありません。

また、しなりやすく、高い温度では化学的に活発になって、刃に溶けついてしまう、という難しさもあります[5]。

作るのも簡単ではありません。チタンの鉱石(ルチル)を塩素と炭素で四塩化チタンにし、液体マグネシウムで還元して、スポンジ状のチタンにします(クロール法)[6]。工程が複雑で、地殻にありふれた元素なのに、高価な金属になるといわれます[6]。

こうした壁を越えて、マルマンオプティカルは1982年に、世界で初めてすべて純チタンのフレーム「チタノス」を発売した、と紹介しています[7]。

チタンの機械加工が難しい理由として、東レ・プレシジョンの解説は次を挙げる。熱伝導率が鉄の約1/4、アルミの約1/10と低く、切削では刃先に熱がこもって1000℃を超えることがある。ヤング率が低くしなりやすい。高温では化学的に活発になり、刃に溶着する[5]。「1000℃」は切削中の刃先の温度で、チタン自体の温度ではない。

素材づくりも複雑だ。ルチルを塩素・炭素で四塩化チタンにし、液体マグネシウムで還元してスポンジチタンにする(クロール法:TiCl₄+2Mg→Ti+2MgCl₂)[6]。地殻には多い元素だが、精錬の難しさから高価になる、と説明される。「希少だから高い」わけではない。

この壁を越えた例として、マルマンオプティカルは1982年に、世界で初めてオール純チタンフレーム「チタノス」を発売したと紹介している[7]。

7. じぶんの めがねの ざいりょうを、しらべて みよう

7. 家のめがねの材質を、探してみる

7. 出口 ── 材質の表示から、資料へ

おうちの 人の めがねを、かして もらいましょう。つるの 内がわや、はこ、せつめいしょに、ざいりょうが かいて あるか、見て みます。

「チタン」や 「TITANIUM」と かいて あれば、この 記事の チタンです。なにも かいて いない ものも あるでしょう。

めがねは、こわれやすい ものです。ちからを くわえたり、ぶんかいしたり しないで、そっと 見るだけに します。

もっと 知りたい 人は、日本チタンきょうかいの 「チタンの とくせい」の ページを、おうちの 人と 見て みましょう[1]。

家にあるめがねのフレームで、材質が書かれていないか、探してみましょう。つるの内側の刻印、ケース、説明書などに、「チタン」や「TITANIUM」などの表示があるかもしれません。書かれていないものもあるでしょう。

めがねは壊れやすいので、無理に力をかけたり、分解したりしないでください。持ち主に声をかけて、見るだけにします。

見つかったら、表示と実際の軽さ、手ざわりを、メモしておくのも面白いでしょう。ほかの金属のものと持ち比べて、軽さを確かめる場合も、同じ形・同じ大きさのものでないと比べにくい点に気をつけます。

調べたくなったら、日本チタン協会の「チタンの特性」のページが、軽さや耐食性の数字を短くまとめています[1]。

身近な確認として、家にあるめがねのつる内側・ケース・説明書に、材質の表示があるかを探せる。「チタン」「TITANIUM」などの表示があれば、この記事の素材だ。表示がない場合もあり、その場合は材質を判断しない。フレームを分解したり、無理な力を加えたりしない。

資料に当たるなら、日本チタン協会「チタンの特性」(比重・比強度・海水中の耐食性)[1]、日本製鉄の解説(鉄との比較)[2]、東レ・プレシジョン(加工の難しさ)[5]が、原文で確かめやすい。皮膜の厚さや自己修復については、民間メーカー資料以外の学術的な資料を探す余地が残る。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本チタン協会、日本製鉄、マルマンオプティカルなどの公式ページと、加工メーカーの解説を突き合わせた。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 日本チタン協会「チタンの特性」。 https://www.titan-japan.com/technology/properties.html (比重、比強度、海水中の耐食性について)
  2. 日本製鉄 TranTixxii「チタンと鉄の違い」。 https://www.nipponsteel.com/product/trantixxii/column/titanium-iron.html (鉄との比重の比較、鉄とチタンの腐食の違いについて)
  3. 名取製作所「チタンは錆びない」。 https://natori-mnf.co.jp/titaniumC-2/ (酸化皮膜が瞬時にできること、それ以上酸化しないことについて)
  4. 新進「チタンは錆びる?」。 https://sus-shinshin.co.jp/column/why-titanium-does-not-rust/ (皮膜の再生と、錆びたように見える原因について)
  5. 東レ・プレシジョン「チタン加工は難しい?」。 https://www.tpc.toray/column/detail06/ (熱伝導率、ヤング率など、加工が難しい理由について)
  6. 日本チタン協会「スポンジチタン」。 https://www.titan-japan.com/manufacturing/sponge.html (スポンジチタンの製造工程について)
  7. マルマンオプティカル TITANOS。 http://www.maruman-opt.co.jp/brand/titanos/ (1982年の純チタンフレームの発売について)

なおした ところ

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