このサイトは、ほんの入り口です

ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

でんしゃや バスは、どうして おくれるの? ── じかんどおりに はしる ひみつ

電車やバスは、なぜ遅れるのか ── 時間どおりに走るしくみと、遅れが広がるしくみ

電車とバスの遅れ ── ダイヤの余裕、信号の間隔、遅れの広がり方と立て直し

分野:技術

でんしゃが せんろの とちゅうで、とつぜん とまった。「まえの でんしゃが つぎの えきを でるのを まって います」と いう ほうそうが ながれる。まえの でんしゃは、じぶんの でんしゃより さきを はしって いる。どうして またなければ ならないんだろう。

この メモでは、この ぎもんから はじめて、でんしゃが じかんどおりに はしる ひみつと、おくれが ひろがって、また もとに もどる ところを しらべた。さいごに、バスの おくれも みて みる。

線路の途中で、電車が急に速度を落として止まる。車内放送が、前の電車が先の駅を出るのを待っている、という意味のことを伝える。前を走る電車は、こちらより先にいるのに、どうして待たなければならないのだろう。

このメモは、その疑問から始めて、電車が時間どおりに走れるしくみと、遅れが広がって立て直されるまでの流れを、国土交通省の資料、鉄道用語事典、論文などで調べた。遅延証明書が紙から画面に変わった話と、道路を走るバスの遅れも入れた。

線路の途中で、電車が急に速度を落として止まる。車内放送が、前の電車が先の駅を出るのを待っている、という意味のことを伝える。前を走る電車は、こちらより先にいる。それなのに、なぜ後ろの電車が待たなければならないのだろう。

このメモは、その疑問から始めて、電車が時間どおりに走れるしくみ、遅れが広がる流れ、立て直しの方法を、国土交通省の資料、鉄道用語事典、論文などで調べた。2026年4月に東京メトロが紙の遅延証明書の配布をやめた話と、線路がない道路を走るバスの遅れも入れた。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. でんしゃは、どれくらい じかんどおりなの?

1. 1日383本で、平均の遅れは1.4分

1. 1日383本、平均の遅れは1.4分 ── 遅れないほうが不思議かもしれない

とうかいどう しんかんせんは、1日に 383本 はしって いる。1本 あたりの おくれの へいきんは、1.4分 だった(2024ねんど。しぜんの さいがいで おくれた ぶんも ふくむ)[1]。

大きな 町の でんしゃは、2分から 3分 ごとに くる ところも ある[2]。でんしゃと でんしゃの あいだが みじかい ぶん、まえの でんしゃが すこし おくれると、すぐ うしろに ひびく。それでも、おくれが 小さい うちに おさまる ことが おおい。ふしぎだと 思わない?

その わけの ひとつは、でんしゃと でんしゃの あいだと、じこくひょうの なかに、「すきま」を つくって おく ことだ。この メモは、その すきまの はなし。

JR東海の2025年のアニュアルレポートによると、東海道新幹線は2024年度、1日に383本(臨時列車を含む)が走り、運行1列車あたりの平均の遅れは1.4分だった。この平均には、自然災害などによる遅れも入っている[1]。

東京や大阪のような大都市の電車は、もっと短い間隔で走る。日本民営鉄道協会の用語事典は、大都市の鉄道では運転間隔を2〜3分程度まで縮めている、と説明している[2]。2〜3分おきに次の電車が来るということは、前の電車が少し遅れると、すぐ後ろの電車に響くということでもある。

そう考えると、遅れがあることより、これだけ詰まったダイヤで、遅れが小さいうちに収まっていることのほうが不思議だ。その正確さを支えているものの1つが、電車のあいだと、時刻表の中に、あらかじめ作っておく「すきま」だ。次の章から、そのすきまを順に見ていく。

JR東海の2025年のアニュアルレポートによると、東海道新幹線は2024年度、1日あたり383本(臨時列車を含む)が走り、運行1列車あたりの平均遅延時分は1.4分だった。この数字には、自然災害などによる遅れも含まれている[1]。

東京圏の通勤電車は、さらに短い間隔で走る。日本民営鉄道協会の用語事典は、大都市の鉄道では電車の運転間隔を2〜3分程度まで短縮していると説明している[2]。2〜3分おきに次の電車が来るということは、前の電車が少し遅れれば、すぐ後ろの電車に響くということでもある。

そう考えると、遅れがあることより、これだけ詰まったダイヤで、遅れが小さいうちに収まっていることのほうが不思議かもしれない。その正確さを支えているものの1つが、電車と電車のあいだ、そして時刻表の中に、あらかじめ作っておく「すきま」だ。次の章から、そのすきまを順に見ていく。

2. まえの でんしゃを、どうして まつの?

2. 前の電車を待つ理由 ── 電車は急に止まれない

2. 前の電車を待つ理由 ── 電車は急に止まれない

でんしゃは、ブレーキを かけても、すぐには とまれない。ふつうの でんしゃには、めやすに なる きまりが ある。きんきゅうの ブレーキを かけてから とまるまでの きょりを、600メートルより みじかく する ことだ[3]。600メートルは、100メートルそうの 6かいぶんだ。

だから、まえの でんしゃが 見えてから ブレーキを かけても、まにあわない かも しれない。そこで、せんろを たくさんの くぎりに わけて、ひとつの くぎりには でんしゃを 1本しか いれない、と いう きまりが つかわれて いる[4]。せまい はしを ひとりずつ わたる のに にて いる。ただし ほんとうは、はしを わたる 人は じぶんの 目で 見て きめられるが、でんしゃは 信号しんごうが「すすめ」「ちゅうい」「とまれ」と おしえて くれる。

はじめの でんしゃが とまったのは、まえの でんしゃが まだ つぎの くぎりに いて、しんごうが「はいっちゃ だめ」と 言って いたから、と かんがえられる。おくれた でんしゃの うしろの でんしゃも、こうして まつ ことに なる。

電車は、ブレーキをかけても、すぐには止まれない。日本民営鉄道協会の用語事典によると、新幹線以外の電車は、非常ブレーキで止まるまでの距離を600m以下にすることが、技術基準で標準とされている。乗客の数や、雨や雪のときの車輪の滑りやすさでも、止まる距離は変わる[3]。600mは、100m走の6本ぶんだ。

前の電車が見えてからブレーキをかけても、間に合わないかもしれない。そこで、線路をいくつもの区間に区切り、1つの区間には1本の列車しか入れない「閉そく」という方式が使われている。信号機が区間に列車がいるかどうかを自動でとらえ、「進め」「止まれ」を出す。信号は、青・黄・赤の三灯式が基本で、大都市の路線では五灯式が多い[4]。

最初の電車が止まったのは、前の電車がまだ次の区間にいて、信号が入ることを許さなかったからだ、と考えられる。信号機が守っているのは、電車と電車のあいだの「すきま」だ。前の電車が遅れると、すきまを守るために、後ろの電車も待つことになる。運転間隔は、駅の停車時間、加速・減速の性能、速度、列車の長さ、信号のしくみなどを合わせて決められている[2]。

電車は、ブレーキをかけても急には止まれない。日本民営鉄道協会の用語事典によると、新幹線以外の電車の非常ブレーキは、止まるまでの距離を600m以下にすることが、技術基準で標準とされている。編成が長く乗客が多いときや、雨・雪で車輪の摩擦が減るときは、止まる距離が延びる[3]。600mは、100m走の6本ぶんにあたる。

前方に別の列車が見えてからブレーキをかけても、間に合わないおそれがある。そこで、線路を区間に区切り、1つの区間には1本の列車しか入れない「閉そく」という方式が使われている(「1閉そく区間1列車」の原則)。自動閉そくでは、信号機が区間内の列車の有無を自動で検知し、進行や停止の信号を出す。信号は青・黄・赤の三灯式が基本で、大都市の路線では五灯式(進行から停止まで5段階)が多い[4]。

最初に止まった電車は、前の電車がまだ次の区間(または駅)にいて、信号がその区間に入ることを許さなかったから、と考えられる。信号機が守っているのは、電車と電車のあいだの「すきま」だ。前の電車が遅れれば、すきまを守るために、後ろの電車も待つことになる。運転間隔そのものは、駅の停車時間、加速・減速性能、運転速度、列車の長さ、信号の機能などを総合して決められる[2]。

3. じこくひょうの なかの「よゆう」

3. 時刻表の元になる図と、ダイヤの中の「余裕」

3. ダイヤの中の「余裕」 ── 時刻表になる前の1枚の図

えきの じこくひょうの もとには、「ダイヤ」と いう 1まいの ずが ある。よこに じかん、たてに えきの 名まえを かいて、でんしゃが えきに つく じかんと 出る じかんを せんで つなぐ。でんしゃは ななめの せんに なる[5]。

この ダイヤの なかには、はしる じかん、えきに とまる じかんの ほかに、おくれを へらす ための「よゆう」の じかんが 入って いる[6]。よゆうは、はしる じかんの ぜんぶで 60分なら、1分 ちょっとから 2分 ぐらい。すごく すこしだ。学校に 行く とき、すこし はやめに 家を 出るのに にて いる。ただし ほんとうは、よゆうが すくない ぶん、大きな おくれは もどせない。

駅の時刻表の元になるのは、「ダイヤグラム(列車運行図表)」、略してダイヤと呼ばれる図だ。日本民営鉄道協会の用語事典によると、縦に駅名、横に時刻をとり、列車が各駅に着く時刻と出る時刻を線で結ぶ。同じ向きの列車は右上がり、反対向きは右下がりの斜線になる。駅の時刻表は、この図を時刻に「翻訳したもの」といえる[5]。

JRの列車ダイヤでは、時刻は、走るのに最低限必要な時間(基準運転時分)に、駅での停車時間と、余裕時分よゆうじふんを足して決まる[6][7]。民営鉄道では、余裕を最初から含めた運転時間で時刻を決めるとも解説されている[9]。余裕時分は、遅れを吸収するための「ゆとり」だ。JRを扱った1987年の論文は、余裕がないと、遅れが終着駅まで回復できず、1本の遅れがほかの列車に広がる、と説明している。余裕の大きさは、一般に基準運転時分の2〜3%前後だ[6]。走る時間が合計で60分なら、1分ちょっとから2分ほどにあたる。

余裕は、大きければよいというものでもない。過大な余裕は、ふだんの所要時間を長くしてしまう、と解説されている[8]。

駅の時刻表の元になるのは、「ダイヤグラム(列車運行図表)」、略してダイヤと呼ばれる図だ。日本民営鉄道協会の用語事典によると、縦軸に駅名、横軸に時刻をとり、列車が各駅に着く時刻と出る時刻を線で結ぶ。同じ向きの列車は右上がり、反対向きは右下がりの斜線になり、駅の時刻表は、この図を時刻に「翻訳したもの」といえる[5]。ある駅の高さで横に線を読めば、同じ向きの斜線どうしの間隔が、そのまま運転間隔になる。

JRの列車ダイヤでは、列車の時刻は、始発時刻、基準運転時分、停車時間、余裕時分よゆうじふんから算出される[6][7]。民営鉄道では、計画運転時間に最初から余裕を含め、別に余裕時分を足さない場合があるという[9]。基準運転時分は、車両の性能と制限速度から運転曲線を描いて計算した最短の所要時間で、事業者ごとの単位(5秒・10秒・15秒などが紹介されている)に丸められる[9]。時刻表の「1分」の中にも、秒単位の計算がある。

余裕時分は、遅れを吸収するための「ゆとり」だ。JRを扱った1987年の論文(細井)は、余裕がないと、遅れが終着駅まで回復できず、1本の遅れが他の列車に波及して拡大する、と説明している。余裕の大きさは列車や線区によるが、一般に基準運転時分の2〜3%前後だという[6]。走行時間が合計60分なら、1.2〜1.8分にあたる。過大な余裕は、平常時の所要時間を損なうとも解説されている[8]。

4. おくれは、どうして ひろがるの?

4. 遅れが広がるとき ── すきまが使い切られる

4. 遅れが広がるとき ── すきまが使い切られる

おくれの わけを、国が しらべた 数字が ある。東京の まわりの でんしゃで、10分より みじかい おくれの わけを 10回に ふりわけると、6回 ちょっとは、のりおりに じかんが かかったり、ドアを あけなおしたり、きゅうびょうの 人が いたり、おとしものが あったり した ことだった。2回 ちょっとは、ほかの 会社や ほかの せんの おくれが ひびいた ものだ[10]。でんしゃの 会社の 中の ことが わけの ものは、10回に 1回 ぐらいだ。

だれかが わるい、と いう はなしでは ない。2分から 3分 ごとに はしる しくみでは、ちょっと した ことでも、「すきま」を つかいきって しまう。手を つないで あるく ぎょうれつで、いちばん まえの 子が 立ちどまると うしろも とまる のに にて いる。ただし ほんとうは、でんしゃは 信号しんごうに まもられて、ぶつからない ように なって いる。

まえの でんしゃが おくれると、うしろの でんしゃも まつ。ホームで まつ おきゃくさんが ふえて、つぎの でんしゃは のりおりに じかんが かかって、もっと おくれる ことが ある[11]。

国土交通省は、東京圏の46路線の遅れを、原因別に集計している。2024年度の資料によると、10分未満の小さな遅れ(2024年11月の平日20日間)では、原因の約64%が「旅客関係」、約23%が「他社・他線区の影響」で、約88%が鉄道会社の外側の原因だった。鉄道会社の内側の原因(係員・車両・施設など)は約11%、災害は約1%だった。30分以上の大きな遅れ(2024年度の平日1年間)も、約89%が外側の原因だった[10]。

「旅客関係」には、乗り降りに時間がかかること、ドアの開け閉めのやり直し、急病の人、落とし物などが入っている。だれかが悪いという話ではない。数分おきに走るしくみでは、ちょっとした出来事でも、余裕を使い切ってしまう。

広がり方は、大きく2つの流れで説明できる。1つは、前の章の信号だ。前の電車が遅れると、すきまを守るために後ろの電車も待つ。もう1つは、ホームの人だ。遅れた電車を待つ人がホームで増えると、次の電車は、いつもの客に加えて、遅れているあいだに増えた客も乗せることになる。乗り降りに時間がかかり、停車時間が延びて、遅れがさらに大きくなる、と解説されている[11][12]。

国土交通省は、東京圏の46路線の遅延を、原因別に集計している。2024年度の資料によると、10分未満の小規模な遅延(2024年11月の平日20日間)では、原因の63.9%が旅客関係、23.2%が他社・他線区の影響で、部外要因が約88%を占めた。鉄道会社の内側の原因(部内要因:係員・車両・土木・電気施設など)は約11%、災害は約1%だった。30分以上の大規模な遅延(2024年度の平日1年間)でも、旅客関係が55.0%、他社・他線区の影響が20.4%で、部外要因が約89%だった[10]。

「旅客関係」には、乗降時間の超過、ドアの再開閉、急病人、落とし物などが入っている。他社・他線区の影響が2割を超えることは、遅れが会社や線の境目を越えて伝わることがある、という様子を映している。ここで見えているのは、だれかの落ち度ではなく、数分おきに走るしくみでは、ちょっとした出来事でも余裕を使い切ってしまうという構造だ。

広がり方は、大きく2つの流れで説明できる。1つは、前の章の閉そくと信号だ。前の電車が遅れれば、すきまを守るために後ろの電車も待つ。もう1つは、ホームの人だ。遅れた電車を待つ人がホームで増えると、次の電車は、通常の客に加えて、遅れているあいだに増えた客も乗せることになる。乗降に時間がかかり、停車時間が延びて、遅れがさらに拡大する、と乗りもの系の報道サイトが解説している[11]。交通政策審議会の答申を引いた別の記事も、ホームで待つ人が増えて混み合うと乗降に時間がかかり、遅れが拡大する構造を挙げている[12]。国土交通省の資料も、小規模な遅延の主な原因として乗降時間の超過・ドアの再開閉・急病人を挙げ、乗り降りを円滑にする取り組みを対策の1つにしている[10]。

5. おくれたら、どうやって なおすの?

5. 遅れを立て直す ── 指令所の人と、間隔を縮める技術

5. 遅れを立て直す ── 指令所の運転整理と、間隔を縮める技術

おくれが 出ると、でんしゃの うごきを みまもる ところの 人が、でんしゃの うごかし方を かえる。これを「運転整理」と いう。出る じかんや いき先を かえたり、とちゅうで おりかえしたり、一部の でんしゃを おやすみに したり する[13]。

ある 会社は、うしろの でんしゃが おくれて いる とき、まって いる でんしゃを とめずに さきに 出す ことも ある。おりかえしの じかんに よゆうを たした 会社も ある[10]。

東京の ある ちかてつでは、でんしゃの いちを こまかく しって、まえの でんしゃとの あいだを ちぢめられる しくみを 入れた。あいだを ちぢめられると、おくれを とりもどしやすい と いう[10]。

遅れが出たときは、「運転整理」が行われる。日本民営鉄道協会の用語事典によると、事故や災害、車両故障などでダイヤが乱れたときに、運行を正常に戻すために一連のダイヤの変更をすることだ。発車時刻や番線、停車駅や行き先、列車の種類や順序を変える、一部の列車を取りやめる、臨時列車を走らせる、といった方法がある。大都市では、運転指令所の指令員が、システムを使って行う[13]。

国土交通省の資料には、各社の工夫が載っている。相模鉄道は、追い越す後続列車が遅れているとき、待避駅で待たせずに先に発車させることを、柔軟な運転整理の例にあげている。京浜急行電鉄は、羽田空港駅と浦賀駅での折り返しの時間を見直し、遅れた列車が回復する余力をもたせた(2025年12月のダイヤ改正から)[10]。

すきまを縮める技術もある。東京都交通局は、大江戸線に無線式の列車制御システム(CBTC)を入れ、先行列車との間隔を縮められるようになり、遅れを回復する効果が高いと紹介している。東京メトロも、丸ノ内線で2024年12月7日に使いはじめた[10]。

遅れが出たときは、「運転整理」が行われる。日本民営鉄道協会の用語事典によると、事故や災害、車両故障などでダイヤが乱れたとき、運行を正常に戻すために一連のダイヤの変更を行うことをいう。発車の時刻や番線をずらす、停車駅や行き先を変える、列車の順番を入れかえる、一部の列車を運休にする、臨時列車を走らせるといった方法がある。大都市では、運転指令所の指令員が、運転整理のシステムを使いながら対応する[13]。

JR東日本の東京圏輸送管理システム(ATOS)は、超高密度で運行する首都圏の列車を、中央の指令センターでまとめて運転整理し、変更をリアルタイムで各駅に伝えるしくみとして、日立評論1997年2月号で紹介されている。同誌によると、1995年10月に東京〜甲府間の30駅で駅の装置だけの使用が始まり、1997年3月に中央線でセンターの指令装置を含めて使いはじめる予定だった[14]。

国土交通省の資料には、各社の工夫が載っている。相模鉄道は、後続の列車が遅れているとき、待避駅で待避せず先に発車させることを、柔軟な運転整理の例にあげている。京浜急行電鉄は、羽田空港駅と浦賀駅での折り返し時分を見直し、遅延した列車が回復する余力をもたせた(2025年12月のダイヤ改正から)。余裕時分を終点側に足す発想と読める[10]。

すきまそのものを縮める技術もある。東京都交通局は、大江戸線に無線式列車制御システム(CBTC)を導入し、先行列車との間隔を縮められるようになって、高い遅延回復効果を発揮していると紹介している。東京メトロも、丸ノ内線で2024年12月7日に供用を始めた[10]。

6. おくれた ことを、どうやって つたえるの?

6. 遅延証明書は、紙から画面へ

6. 遅延証明書 ── 遅れたことをどう伝えるか

おくれたとき、学校や 会社に 出す「ちえんしょうめいしょ」が ある。東京メトロでは、5分 いじょう おくれたら、10分 ごとの かずに して のせる。これまでは えきで 紙も くばって いたが、2026ねんの 4月1日から、紙は やめて、ウェブと アプリだけに した[15]。えきの まどぐちに ならぶ 人を へらす ためも ある。

ただし、「10分」と 書いて あっても、じぶんの のった でんしゃが ぴったり 10分 おくれた とは かぎらない[10]。

遅れたときに学校や会社へ出す「遅延証明書」は、東京メトロでは、線の運行が5分以上遅れた場合に、10分単位に切り上げて掲載される。2016年3月から、ホームページとアプリへの掲載を遅延の証明としてきたが、2026年4月1日の始発から、紙での配布をやめた。理由として、環境への負担を減らすこと、デジタル化の推進、列車遅延時の駅の窓口の待ち行列をなくすことがあげられている[15]。

国土交通省の資料は、発行の条件が鉄道会社ごとに違うこと、証明書が路線単位の最大の遅れ時間にもとづくため、1本1本の列車や、1人1人が実際に遅れた時間とは必ずしも一致しないことも断っている[10]。「10分」と書いてあっても、自分の乗った電車が10分遅れたとは限らない。

遅れたときに学校や会社へ出す「遅延証明書」は、東京メトロでは、東京メトロ線の運行が5分以上遅れた場合に、10分単位に切り上げて掲載される。5分未満の遅れには、原則として発行されない。2016年3月から、ホームページとアプリへの掲載を遅延の証明としてきたが、2026年4月1日の始発から、紙での配布を終了した。理由は、紙を減らして環境への負担を軽くすること、デジタル化を進めること、遅れたときに駅の窓口にできる行列をなくすことだと説明されている。Web版の掲載期間は当日から35日間だ[15]。

国土交通省の資料は、遅延証明書の発行条件が鉄道会社ごとに異なること、証明書が路線単位の最大遅延時間に基づくため、個々の列車や個々の利用者の遅延時間とは必ずしも一致しないことを、留意点として挙げている[10]。会社どうし、線どうしの発行日数を並べるときは、この条件の違いを踏まえる必要がある。

7. バスは、どうして おくれるの?

7. バスの遅れ ── 道路の上では、すきまを守れない

7. バスの遅れ ── 道路には閉そくがない

バスは、ふつうの 道を、じどうしゃや じてんしゃと いっしょに はしる。でんしゃのように、まえの バスとの あいだを 信号しんごうで まもる しくみは ない。せんだい市の バスを しらべた けんきゅうでは、おくれ方は、曜日と 時間、のりおりする 人の かず、でんしゃの えきに ちかいか どうかで きまって いた[17]。

おなじ 番号の バスが 2だい、3だい つづけて くる ことが ある。「だんごうんてん」と よばれる。まえの バスが おくれて おきゃくさんが ふえると、のりおりに じかんが かかって、うしろの バスが おいついて しまう、と けんきゅうで あつかわれて いる[18]。

バスを はやく はしらせる くふうも ある。バスが ちかづくと しんごうの あおを のばす しくみ(PTPS)だ[19]。千葉県の ある 道で、この しくみを 入れる まえと あとを くらべると、かかる じかんが へいきんで 5分の 1 ぐらい みじかく なった。ただし、まわりの 道では、こむ ところも あった と ほうこくされて いる[20]。

バスは、ふつうの道路を、自動車や自転車と一緒に走る。電車のように、前のバスとのあいだを信号と区間で守るしくみはない。仙台市営バスの1か月分の運行記録を分析した研究によると、遅れ方は、曜日、時間、乗り降りする人の数、鉄道駅との位置関係で決まっていた[17]。

同じ系統のバスが何台も続けて走る「団子運転」も、遅れが伝わる形の1つだ。2019年の論文は、ピーク時に乗客が増えて遅れが出ると、後続のバスにも伝わって団子運転になるようすを、数理モデルで扱っている。日本では、バスが走る順序を守る運行が一般的で、論文は追い越しを認める運行方法を提案している[18]。路線バスでは余裕時分がほとんど考慮されず、一度遅れると回復しにくい、とも解説されている[8]。

道路のほうを変える方法もある。バス専用の通行帯を作ったり、バスが近づくと信号の青を延ばしたりして、定時運行を助ける公共車両優先システム(PTPS)だ[19]。千葉県警察の報告では、JR稲毛駅〜穴川十字路のバス停間で、導入の前後を比べると、旅行時間が平均で約20%短くなった。導入後は、約9割のバスがダイヤに対して1分以内の遅れだった。この1つの区間での結果で、対象区間の外側の交差点では、渋滞が長くなったとも報告されている[20]。

バスは、ふつうの道路を、自動車や自転車と一緒に走る。電車のように、前のバスとのあいだを閉そくと信号で守るしくみは、道路にはない。仙台市営バスの1か月分の運行記録とGTFSデータを使った研究(笠原ほか、2022年)では、遅延時間のパターンは、曜日、時間、乗降客数、鉄道駅との位置関係によって決まることが示された[17]。

同じ系統のバスが何台も続けて走る「団子運転」は、遅れが伝わる形の1つだ。交通工学論文集の2019年の論文は、道路の混雑と需要の増加で遅れが出て、後続のバスにも伝わって集団走行になることを、数理モデルで扱っている。日本では走行順序を守る運行が一般的で、論文は追い越しを認める運行方法を提案し、効果を評価している[18]。路線バスでは余裕時分がほとんど考慮されず、一度遅れると回復しにくい、という解説もある[8]。

道路のほうを変える方法として、バス専用・優先レーンの設定と、バスが止まりにくいよう信号を優先的に青にする公共車両優先システム(PTPS)がある[19]。千葉県警察の調査報告では、JR稲毛駅〜穴川十字路のバス停間で、PTPSの導入前後を比べて旅行時間が平均約20%短縮し、運用後は約9割のバスがダイヤに対して1分以内の遅れだった。信号待ち時間は平均約30%、信号停止は1走行あたり平均約1回減った。これは1区間の結果だ。一方、対象区間の外側の交差点では、運用後に渋滞の長さが増えたと同じ報告書は述べている[20]。

8. じぶんで しらべて みよう

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

おうちの 人と いっしょに、パソコンや スマホで、でんしゃの「ちえんしょうめいしょ」の ページを ひらいて みよう。東京メトロの ページには、ここ 35日ぶんの「おくれ なし」と「おくれ」が のって いる[16]。「おくれ」の 日は なん日 あるかな。朝と ゆうがたの どちらが おおいかな。

えきの ホームや せんろの そば、道の そばでは、じかんを はかったり しない。しらべるのは、家の 中で。

じぶんの まちの でんしゃや バスにも、おなじような ページが あるか さがして みよう。じこくひょうの どこに「すきま」が かくれて いるか、おうちの 人に きいて みても おもしろい。

東京メトロの遅延証明書のページには、ここ35日ぶんの、時間帯ごとの遅れ(「遅延なし」か「10分程度の遅延」など)がのっている[16]。好きな線を1つ選んで、遅れのあった日と時間帯を、表に書き出してみよう。朝の7〜9時と、夕方では、どちらが多いだろう。近くを走る鉄道会社にも、同じようなページがあるかもしれない。

駅のホームや線路、道路のそばで、時間を測ったり観察したりしてはいけない。調べるのは、家の中で、画面と時刻表だけを使う。

もう1つ。時刻表を見ながら、「この時刻の中に、余裕時分はどのあたりにあるのだろう」と考えてみるのも面白い。時刻表だけでは答えが分からないので、鉄道会社の資料や、このメモの出典を読んでみるとよい。

遅れの記録は、自分で集められる。東京メトロの遅延証明書のページには、ここ35日ぶんの、6つの時間帯(始発〜7時、7〜8時、8〜9時、9〜10時、10〜17時、17時〜終電)ごとの遅れが載っている[16]。

  1. 好きな線を1つ選び、35日ぶんの日付と時間帯を、表に書き出す。
  2. 遅れが出た日と時間帯に印をつけ、どの時間帯に集まるかを数える。
  3. 国土交通省の「見える化」の資料1-1(線ごとの1か月あたりの遅延証明書発行日数)と、同じ会社の線どうしで比べる[10]。会社ごとに発行条件が違うので、会社をまたいだ比較はしない。

駅のホームや線路、道路のそばで、時間を測ったり観察したりはしない。調べるのは、家の中で、公開されているページと資料だけを使う。近くを走る鉄道会社やバス会社に、同じようなページがあるかどうかも探してみる。

読み比べるなら、1987年の論文[6]に載っているダイヤ作成の図と、国土交通省の資料の円グラフ[10]がよい。40年近い時間をおいて、片方は「余裕」の作り方を、もう片方は遅れが実際に何から始まっているかを示している。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:JR東海、国土交通省、東京メトロ、日本民営鉄道協会の用語事典、日立評論、日本オペレーションズ・リサーチ学会誌、交通工学関係の論文、警察・環境省の資料、報道記事、解説記事を使いました。数字は資料が示した年度・期間のものです。

  1. JR東海「アニュアルレポート2025」の東海道新幹線の特性のページ。 https://company.jr-central.co.jp/ir/annualreport/_pdf/annualreport2025-13.pdf (2024年度実績:1日あたり383本(臨時列車を含む)、運行1列車あたり平均遅延時分1.4分(自然災害等による遅延を含む))
  2. 日本民営鉄道協会「運転間隔」(鉄道用語事典)。 https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16316.html (大都市の運転間隔は2〜3分程度まで。駅の停車時間・加減速性能・速度・列車の長さ・信号の機能などで決まる)
  3. 日本民営鉄道協会「ブレーキ制動距離」(鉄道用語事典)。 https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16459.html (新幹線以外の非常ブレーキは600m以下が標準。編成長・乗客数・雨雪で距離が変わる)
  4. 日本民営鉄道協会「閉そく方式」(鉄道用語事典)。 https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16460.html (1閉そく区間1列車の原則、自動閉そく、三灯式と五灯式)
  5. 日本民営鉄道協会「ダイヤ」(鉄道用語事典)。 https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16411.html (ダイヤグラムは縦軸が駅名、横軸が時刻の図。駅の時刻表はそれを時刻に翻訳したもの)
  6. 細井敏弘「JRにおける列車ダイヤのスケジューリングとシステム化」『オペレーションズ・リサーチ』32巻11号(1987年11月)、709〜715ページ。 https://orsj.org/wp-content/or-archives50/pdf/bul/Vol.32_11_709.pdf (列車の時刻は始発時刻・基準運転時分・停車時間・余裕時間から決まる。余裕がないと遅れが回復できず他列車へ拡大する。余裕は一般に基準運転時分の2〜3%前後)
  7. 「余裕時分」『世界大百科事典』(コトバンク掲載)。 https://kotobank.jp/word/%E4%BD%99%E8%A3%95%E6%99%82%E5%88%86-1433540 (読みは「よゆうじふん」。基準運転時分・余裕時分・停車時分の合計から到達時分を計算)
  8. Wikipedia「余裕時分」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%99%E8%A3%95%E6%99%82%E5%88%86 (過大な余裕は平常時の所要時間を損なう。路線バスでは余裕時分がほとんど考慮されないという記述)
  9. Wikipedia「基準運転時分」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%BA%E6%BA%96%E9%81%8B%E8%BB%A2%E6%99%82%E5%88%86 (運転曲線から最短の所要時間を計算し、事業者ごとの単位に丸める)
  10. 国土交通省 鉄道局「東京圏の鉄道路線の遅延「見える化」(令和6年度)」(令和8年4月10日)。 https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo01_hh_000247.html 資料のPDF。 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001995846.pdf (遅延の原因別の割合、遅延証明書の留意点、各社の遅延対策:相模鉄道の運転整理、京浜急行電鉄の折り返し時分の見直し、都営大江戸線・東京メトロ丸ノ内線のCBTC)
  11. 乗りものニュース「「後ろの列車が遅れているため…」なぜ関係ない列車まで止めるのか」。 https://trafficnews.jp/post/106484 (遅れた列車を待つ人がホームにたまり、乗降に時間がかかって遅れが広がるという説明)
  12. 東洋経済オンライン「慢性的な電車の遅延問題は、解消できるのか 利用者が滞留する駅ホームの構造にも課題」(2016年)。 https://toyokeizai.net/articles/-/117443 (交通政策審議会の答申を引き、ホームの滞留で乗降に時間がかかり遅れが拡大する構造を挙げる)
  13. 日本民営鉄道協会「運転整理」(鉄道用語事典)。 https://www.mintetsu.or.jp/knowledge/term/16319.html (ダイヤが乱れたときに運行を正常に戻すための一連のダイヤの変更。運転指令所の指令員が行う)
  14. 「新たな時代を築く鉄道技術 超高密度線区の輸送を支える東京圏輸送管理システム(ATOS)」『日立評論』1997年2月号。 https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1997/02/1997_02_05.pdf (中央指令センターでの一括運転整理、各駅へのリアルタイム伝達、1995年10月・1997年3月の使用開始の記述)
  15. 東京地下鉄株式会社「遅延証明書配布方法の変更(原則紙発行の廃止)について」(2026年3月24日)。 https://www.tokyometro.jp/info/files/delay_certificate_web.pdf (2026年4月1日始発からWebのみ、5分以上を10分単位に切り上げ、掲出期間35日)
  16. 東京メトロ「遅延証明書」(千代田線の例)。 https://www.tokyometro.jp/delay/history/chiyoda.html (日付ごと・6つの時間帯ごとの遅延の掲載)
  17. 笠原有貴・中谷友樹・磯田弦「GTFSデータを用いた公共バスの遅延時間に関する時空間パターンの分析 ── 仙台市営バスを事例に ──」『季刊地理学』73巻4号(2022年)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tga/73/4/73_264/_article/-char/ja/ (遅延時間のパターンは曜日・時間・乗降客数・鉄道駅との位置関係で決まる)
  18. 胡敏兒・保田義之・井ノ口弘昭・秋山孝正「路線バスにおける集団走行発生時の運行方法の有効性分析」『交通工学論文集』5巻4号(特集号A)、A_42〜A_50ページ(2019年4月)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jste/5/4/5_A_42/_pdf/-char/ja (道路混雑と需要増加による遅れが後続に伝わる団子運転、日本で一般的な走行順序を守る運行、追い越しを認める運行の提案)
  19. 環境省「公共車両優先システム(PTPS)」(環境白書 平成17年版)。 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h17/22160_k222_r546.html (バス専用・優先レーンの設定と、信号を優先的に青にすることで定時運行を図るシステム)
  20. 千葉県警察「PTPS調査報告」。 https://www.police.pref.chiba.jp/kotsukiseika/traffic-safety_revision-system_02.html (JR稲毛駅〜穴川十字路のバス停間:旅行時間約20%短縮、約9割のバスが1分以内の遅れ、信号待ち時間約30%減、1走行あたりの信号停止約1回減。対象区間の外側の交差点では渋滞長時間が増加)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。