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1メートルは、だれが どうやって きめたの?

単位は、どうやって決まったのか ── メートルとキログラム

単位は、どうやって決まったのか ── メートルとキログラム

分野:技術

1メートルの ものさしは、日本でも フランスでも おなじ 長さだ。あたりまえに 思えるけど、これは だれかが きめないと、ぜったいに おこらない ことだ。

いったい、だれが、どうやって「これが 1メートルだ」「これが 1キログラムだ」と きめたのだろう。

1メートルのものさしは、日本でもフランスでも同じ長さだ。当たり前に思えるけど、これはだれかが決めないと、絶対に起こらないことだ。

いったい、だれが、どうやって「これが1メートルだ」「これが1キログラムだ」と決めたのだろうか。

国や地域ごとに単位がばらばらだと、貿易も工業製品の規格も成り立たない。今、世界のほとんどの国が同じ「メートル」「キログラム」という単位を使っているのは、歴史のある一点で、誰かがそれを定義したからだ。

その定義は、一度決めたら終わりではなかった。命がけの測量、100年以上気づかれなかった謎の変化、そして2019年の大改定まで、単位の定義そのものが書き換えられ続けてきた歴史をたどる。

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1. まちまちだった むかしの「ながさ」

1. まちまちだった昔の「長さ」

1. 単位がばらばらだった時代

むかしの「長さ」の たんいは、王さまの 手や 足の 長さを もとに して いる ことが 多かった。でも 手や 足の 長さは、人に よって ちがう。だから、まちや くにが かわると、おなじ なまえの たんいでも、じっさいの 長さが ちがう、と いう ことが おきて いた。

これでは、とおくの まちと ものを うりかいする とき、こまって しまう。

昔の「長さ」の単位は、王さまの手や足の長さをもとにしていることが多かった。でも手や足の長さは、人によって違う。だから、町や国が変わると、同じ名前の単位でも、実際の長さが違う、ということが起きていた。

これでは、遠くの町と物を売り買いするとき、困ってしまう。

18世紀のフランスでは、地方ごとに異なる度量衡(長さ・体積・重さの単位)が数百種類も使われていたとされる。単位の基準は、しばしば領主の身体や慣習に由来し、地域が変われば同じ名前の単位でも実際の量が異なった。

これは、商取引や工業製品の規格化にとって大きな障害だった。フランス革命の混乱のなかで、この問題を根本から解決しようという動きが生まれる。

2. 地きゅうの 大きさから きめた「1メートル」

2. 地球の大きさから決めた「1メートル」

2. 1791年、地球の子午線を基準にした測量

1791年、フランスは「だれの 体にも たよらない、みんなで つかえる ながさ」を きめる ことに した。えらばれたのは、地きゅうの 北きょくから 赤どうまでの きょりの、1000まん分の1を、1メートルと する という ほうほうだった。

この きょりを じっさいに はかる ために、2人の 学しゃが、フランスの 北の まちから みなみの スペインまで、土地を はかりつづけた。かくめいの さいちゅう、あやしい どうぐを もって いた 1人は、スパイだと うたがわれて とらわれて しまう ことも あった。もう 1人は、せんそうの ために、はじめに きめて いた ばしょで はかりつづける ことが できなく なって しまった。

じつは、この もう 1人の 学しゃは、じぶんの はかった すう字に、ちいさな くいちがいが ある ことに 気づいて いた。でも、その ことは だれにも 言わずに、すう字を こっそり 書きかえて しまった。あとで、もう 1人の 学しゃが その ことに 気づいたが、これを 言って しまうと、みんなが「1メートル」を しんじられなく なると かんがえ、だまって 記ろくに のこした。

1791年、フランスは「だれの体にもたよらない、みんなで使える長さ」を決めることにした。選ばれたのは、地球の北極から赤道までの距離の、1000万分の1を、1メートルとするという方法だった。

この距離を実際に測るために、2人の学者が、フランスの北の町から南のスペインまで、土地を測りつづけた。革命の最中、あやしい道具を持っていた1人は、スパイだと疑われて捕らえられてしまうこともあった。もう1人は、戦争のために、はじめに決めていた場所で測りつづけることができなくなってしまった。

じつは、このもう1人の学者は、自分の測った数字に、小さな食いちがいがあることに気づいていた。でも、そのことはだれにも言わずに、数字をこっそり書きかえてしまった。あとで、もう1人の学者がそのことに気づいたが、これを言ってしまうと、みんなが「1メートル」を信じられなくなると考え、黙って記録に残した。

1791年、フランス科学アカデミーは、地球の北極から赤道までの子午線弧長の1000万分の1を1メートルと定めることを決定した。特定の身体や物ではなく、地球という普遍的な基準に単位を結びつけようとする発想だった。

この子午線の長さを実測するため、天文学者ジャン=バティスト・ドランブルとピエール・メシャンが、1792年からダンケルクからバルセロナまでの三角測量を分担して実施した。フランス革命さなかの混乱のなか、ドランブルは測量器具をスパイ道具と疑われるなどして2度拘束され、公安委員会の方針で一時任務を外されもした。一方のメシャンは、フランスとスペインの開戦によって当初の観測地モンジュイックでの測量を続けられなくなり、場所を変えて測定を続けるなかで、1794年、自身の緯度の測定値に食いちがいがあることに気づいた[1]

メシャンはこの食いちがいを誰にも告げず、平均値そのものは変えないまま、データのばらつきが小さく見えるよう手を加えてしまう。のちにこの改変に気づいたドランブルは、公表すればメートル法への信頼を損なうおそれがあると考え、関連する記録を公にしないまま、改変されたデータもメートル法のもとになった測量の記録として残した[1]

3. 白金で「げんき」を 作った

3. 白金で「原器」を作った

3. 1889年、白金イリジウムの原器

1889年、さびにくく、へりにくい「白金」と いう きんぞくで、1メートルの 長さの ぼうと、1キログラムの おもさの つつが 作られた。これを「原器げんき」と いう。

この 原器げんきは フランスに しまわれ、せかいじゅうの くにに、おなじ 長さ・おもさの「コピー」が くばられた。こうして、せかいじゅうで「おなじ 1メートル」「おなじ 1キログラム」が つかえる ように なった。

1889年、さびにくく、すり減りにくい「白金」という金属で、1メートルの長さの棒と、1キログラムの重さの筒が作られた。これを「原器」という。

この原器はフランスにしまわれ、世界中の国に、同じ長さ・重さの「コピー」が配られた。こうして、世界中で「同じ1メートル」「同じ1キログラム」が使えるようになった。

1889年、酸化や摩耗に強い白金イリジウム合金で、「国際メートル原器」と「国際キログラム原器」が製作された。パリ郊外セーヴルの国際度量衡局(BIPM)に厳重に保管され、世界各国にはその複製(副原器)が配布された[2]

この体制のもとで、メートルとキログラムはようやく、誰の身体にも地域にも依存しない、世界共通の基準として機能するようになった。もっとも、それは「基準となる一つの物」に頼り続ける仕組みでもあった[2]

4. げんきの おもさが、すこし かわって いた

4. 原器の重さが、少し変わっていた

4. キログラム原器に生じた、謎の質量変化

ところが、この キログラムの 原器げんきには、ふしぎな ことが おきて いた。100年 いじょう たって、せかいじゅうに くばられた コピーと くらべて みたら、もとの 原器げんきの おもさが、ほんの すこしだけ かわって いた。

原げんは、はっきりとは わかって いない。原器げんきの ひょうめんに、ちりや よごれが ついた ことが かんけいして いるのでは、と かんがえられて いる。それは、まるで、たいせつに しまって おいた、たった 1つしか ない「お手本の おもり」に、目には 見えない ほこりが つもって、おもさが かわって しまったような ものだ(ただし ほんとうは、ほこりの つぶは あまりに 小さいので、けんびきょうでも 見えない かもしれない)。

ところが、このキログラムの原器には、不思議なことが起きていた。100年以上たって、世界中に配られたコピーと比べてみたら、もとの原器の重さが、ほんの少しだけ変わっていたのだ。

原因は、はっきりとは分かっていない。原器の表面に、ちりや汚れがついたことが関係しているのでは、と考えられている。

1946年に行われた各国原器の2回目の検証では、平均して国際原器から質量がずれていることが判明した。1989年から1991年にかけての3回目の検証では、1889年に承認された原器群との差の中央値が、およそ25マイクログラム(1キログラムの4000万分の1程度)にのぼることが確認された[3]

この変化の具体的な原因は、BIPM(国際度量衡局)自身の資料でも明確には特定されていない。表面へのわずかな汚れの付着などが要因ではないかと推測されているが、確定していない。いずれにせよ、「世界でただ一つの、質量の基準そのもの」が動いているように見えても、それが原器自体の変化なのか、比較対象である副原器の側の変化なのか、原理的に見分けようがないという問題が、科学者たちを悩ませることになった[3]

5. 「もの」に たよらない きめかたへ

5. 「もの」にたよらない決め方へ

5. 2019年、プランク定数にもとづく新しい定義

「もの」を きじゅんに して いると、その ものが かわって しまえば、きじゅんも かわって しまう。そこで 科学しゃたちは、ぜったいに かわらない「しぜんの きまり」を きじゅんに しようと かんがえた。

2019年、キログラムは、とくべつな てんびんを つかって、でんきの ちからと つりあわせる ほうほうで きめる ように なった。これで、原器げんきと いう「もの」が なくても、おなじ 1キログラムを きめられる ように なった。

「もの」を基準にしていると、その物が変わってしまえば、基準も変わってしまう。そこで科学者たちは、絶対に変わらない「自然の決まり」を基準にしようと考えた。

2019年、キログラムは、特別なてんびんを使って、電気の力とつりあわせる方法で決めるようになった。これで、原器という「もの」がなくても、同じ1キログラムを決められるようになった。

物という基準には、劣化・汚染・破損のリスクがつきまとう。この根本的な弱点を解消するため、科学者たちは「プランク定数」という、自然界で決して変化しない物理定数にキログラムを結びつける方法を追求した。

その中心技術が「キッブルバランス」だ。磁場の中にある導体に電流を流すと電磁力が生じる。分銅の重さとこの電磁力を釣り合わせ、同じ装置で導体を動かして生じる誘導起電力を測定すると、量子力学の効果(ジョセフソン効果・量子ホール効果)を介して、プランク定数と質量を精密に結びつけることができる。2019年5月20日、130年ぶりにキログラムの定義が改定され、原器という「物」ではなく、プランク定数という「自然の決まり」を基準とする時代が始まった[4]

6. メートルも、なんども きめなおされた

6. メートルも、何度も決めなおされた

6. メートルの定義も、地球から光速へ

じつは メートルも、いちど きめたら おわり、では なかった。1960年には、とくべつな 気体の ひかりの 色を きじゅんに する やりかたに かわり、1983年には、光が すすむ はやさを きじゅんに する いまの やりかたに かわった。

いまの 1メートルは、地きゅうでは なく、光の はやさで きまって いる。

じつはメートルも、一度決めたら終わり、ではなかった。1960年には、特別な気体の光の色を基準にするやりかたに変わり、1983年には、光が進む速さを基準にする今のやりかたに変わった。

今の1メートルは、地球ではなく、光の速さで決まっている。

メートルの定義も同様に更新されてきた。1960年、第11回国際度量衡総会で、クリプトン86原子が放つ特定のスペクトル線の波長を基準とする定義に改められた。さらに1983年、第17回国際度量衡総会で、光が真空中を299,792,458分の1秒で進む距離を1メートルとする、現在の定義に至った[5]

1791年の子午線測量、1889年の白金イリジウム原器、そして2019年のプランク定数へ。メートルとキログラムの定義は、それぞれ独立に、地球や物という具体的な対象から、光速や物理定数という抽象的な基準へと切り替わってきた。

じぶんでも しらべて みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

家に ある たいじゅうけいで、じぶんの 体じゅうを はかって みよう。その「kg」と いう すう字は、フランスの 白金の かたまりから、いまは プランク定数と いう しぜんの きまりで きまって いる。ほかにも「m」や「g」の 字が どこに かいて あるか、さがして みよう。

家にある体重計で、自分の体重を量ってみよう。その「kg」という数字は、フランスの白金のかたまりから、今はプランク定数という自然の決まりで決まっている。ほかにも「m」や「g」の字がどこに書いてあるか、探してみよう。

家にあるキッチンスケールや体重計で、身のまわりの物の重さを量ってみよう。表示された「g」「kg」という数字は、白金イリジウム原器から2019年のプランク定数へと切り替わった、その時点の定義にもとづいている。同じものを、もし2018年以前の体重計で量っていたら、理論上はわずかに違う数値が出ていたかもしれない。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. 日本地理学会「1800年前後の日本とフランス ─ 伊能忠敬の子午線測量とDelambre et Méchainによるメートルの定義のための子午線測量」、MacTutor数学史アーカイブ「Jean-Baptiste Delambre」「Pierre Méchain」。 https://www.geog.or.jp/files/h27-autumn_03.pdf https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Delambre/ https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Mechain/ (1791年にフランス科学アカデミーが地球の子午線弧長の1000万分の1を1メートルと定めることを決定したこと、天文学者ジャン=バティスト・ドランブルとピエール・メシャンが1792年からダンケルクからバルセロナまでの三角測量を分担して実施したこと〈完了時期は資料により1798年・1799年の両方の記載がある〉は日本地理学会の資料による。ドランブルが測量器具をスパイ道具と疑われるなどして2度拘束され一時任務を外されたことはMacTutorのDelambre伝記による。メシャンが仏西開戦によって当初の観測地モンジュイックでの測量を続けられなくなり、場所を変えて測定するなかで1794年に自身の緯度の測定値の食いちがいに気づいたこと、この食いちがいを誰にも告げずデータのばらつきが小さく見えるよう手を加えたこと、のちにドランブルがこの改変に気づき、公表すればメートル法への信頼を損なうおそれがあると考えて関連記録を公にしなかったことはMacTutorのMéchain伝記による〈改変されたデータが最終的な1メートルの長さにどう反映されたかの詳細は、この伝記だけでは確認できていない〉)
  2. 国立研究開発法人産業技術総合研究所(NMIJ)「長さ:メートル(m)」、フリー百科事典『ウィキペディア』「メートル原器」、国際度量衡局(BIPM)「History of the kilogram」。 https://unit.aist.go.jp/nmij/library/mise_en_pratique/length/ https://ja.wikipedia.org/wiki/メートル原器 https://www.bipm.org/en/history-si/kilogram (1889年に白金イリジウム合金で国際メートル原器が製作されパリ郊外セーヴルの国際度量衡局に保管されたこと、各国に複製〈副原器〉が配布されたことはNMIJおよびウィキペディア「メートル原器」による。同年に国際キログラム原器も製作・承認され、各国に副原器が配布されたことはBIPMによる)
  3. 国際度量衡局(BIPM)「History of the kilogram」、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研サイエンスタウン)「原器から物理定数へ!130年ぶりとなるキログラムの定義改定」。 https://www.bipm.org/en/history-si/kilogram https://www.aist.go.jp/science_town/reading/14/ (1946年の第2回検証で各国原器の質量が国際原器から平均的にずれていたこと、1989〜1991年の第3回検証で1889年承認の原器群との差の中央値が約25マイクログラムだったことはBIPMによる。原因が表面汚染などと推測されるものの完全には解明されていないこと、原器の質量比較の安定性におよそ1億分の5程度の限界があることは産総研サイエンスタウンによる)
  4. 国際度量衡局(BIPM)のキッブルバランス解説資料、東京都「キログラム(kg:質量のSI単位)の定義が2019年5月20日に130年ぶりに改定されました」。 https://www.bipm.org/documents/20126/28432256/working-document-ID-11124/b9e40c80-c4bf-33e2-fa88-b441d76cccfa https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/keiryo/policy/newkgdifinition190520.html (キッブルバランス法が、計量段階で磁場中の導体に電流を流して生じる電磁力〈原資料の表記でM·g=B·L·I_w〉と分銅の重さを釣り合わせ、運動段階で同じ装置を動かして生じる誘導起電力〈原資料の表記でV_m=v·B·L〉を、ジョセフソン効果・量子ホール効果を介してプランク定数に結びつけて測定する方法であることは、キッブルバランスの原理を示すBIPMの資料〈CCEM報告書〉による。本文中の記号表記は簡略化している。2019年5月20日にキログラムの定義が130年ぶりに改定されたことは東京都による)
  5. 国立研究開発法人産業技術総合研究所(NMIJ)「国際単位系における長さの単位『メートル』の定義と実現」。 https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/si-brochure/pdf/1_SI_メートル.pdf (1960年の第11回国際度量衡総会でクリプトン86原子の特定のスペクトル線の波長を基準とする定義に改定されたこと、1983年の第17回国際度量衡総会で光が真空中を299,792,458分の1秒で進む距離を1メートルとする現在の定義に改定されたことはNMIJの資料による)

なおした ところ

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