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どろみずが、じょうすいじょうで きれいに なるまで

台風で濁った川の水に、小雀浄水場はどう向き合ったのか ── 薬の量はビーカーで決める

高濁度原水の処理 ── 凝集・沈殿・ろ過と、注入率を決めるジャーテスト(令和元年台風19号・小雀浄水場の例)

分野:技術

2019ねんの たいふう19ごうの とき、ある じょうすいじょうに、とても にごった かわの みずが ながれこみました。にごりの めやす(「だくど」)は、さいだいで 1,189 でした。ふだんの みずとは、くらべものに なりません。

それなのに、すなで こした あとの みずは、さいだいでも 0.02 でした。(べつべつの じかんに はかった さいだいの あたいです。)どうして そんな ことが できたのでしょう。この きじを よむと、どろが しずまない わけと、くすりの やくめと、くすりの りょうの きめかたが わかります。

2019年の台風19号のとき、横浜市の小雀浄水場には、最大1,189度という濁りの川の水が流れ込みました。ところが、砂でこしたあとの水の濁りは、最大でも0.02度に収まっています[1]。最大値どうしを比べると、約6万分の1です(同じ水を追いかけた数字ではありません)。

大量の泥を、たった数時間でどうやって取り除くのでしょうか。この記事を読むと、泥の粒が放っておいても沈まない理由、薬がそれをどう変えるのか、薬の量を決める試験、そして最後に砂の層が受け持つ役目が分かります。

令和元年台風19号では、上流ダムの緊急放流の影響で、横浜市水道局小雀浄水場の原水濁度が最大1,189度に達した。一方、ろ過水の濁度は最大0.02度に抑えられた[1]。両者は別々に測った最大値どうしの比であり(約6万分の1)、同一の水を追跡した値ではない。

細かい泥の粒はなぜ沈まず、どうすれば沈むのか。その薬は、どうやって量を決めるのか。この記事を読むと、コロイド粒子の電荷による安定性、凝集剤による荷電の中和、ジャーテストによる注入率の設定、そしてろ過池が受け持つ最後の段階の役割が分かる。

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1. たいふうの よる、じょうすいじょうでは なにが おきたの?

1. 台風の前日から、浄水場は何を準備したのか

1. 高濁度が予想された浄水場は、台風の前に何をしたか

たいふう19ごうの とき、じょうすいじょうの ひとたちは、たいふうが くる まえの ひから じゅんびを しました。きかいを てんけんして、くすりを おおめに かって、どろを ためる ばしょも そうじして おきました[1]。

かわの みずは、うえの ダムの みずを たくさん ながしたために、とても にごりました。にごりの つぶは、とても こまかい どろでした。つちの においも しました[1]。

この じょうすいじょうは、つくる みずの りょうを 3わりほど へらして、ほかの じょうすいじょうに たすけて もらいました。むりを しない ことも、たいせつな しごとです。

では、こまかい どろの つぶは、どうして そのままでは しずまないのでしょう。

台風が近づく前日までに、この浄水場では、水質を測る機械や配管の点検、薬品の追加調達、そして大量の汚泥に備えた排水処理施設の掃除をしました。休日や夜間に出勤する体制も整えています[1]。

実際に来たのは、上流ダムの緊急放流による濁り水でした。濁りの正体は粒の細かいシルト質で、強い土のにおいもあったと報告されています[1]。しかも作る水の量を3割ほど減らし、水源の異なる別の浄水場に増やしてもらう対応もとりました。全部を一つの浄水場で抱え込まず、無理のない量に抑える判断も、水を守る仕事の一部です。

では、その細かい泥は、どうして水の中にただよったままなのでしょうか。

この浄水場は、台風の前日までに、水質計器・配管の点検、薬品の追加調達、排水処理施設の清掃(大量の汚泥の発生に備える)、休日夜間の出勤体制の整理を行った。さらに浄水処理量を3割程度減量し、水源系統の異なる別の浄水場の処理量を増やす措置をとった[1]。処理能力を超える濁質が入ってくることを見込み、量を減らして質を守る判断である。

実際の原水は、ダムの緊急放流の影響で最大1,189度(ふだんの値ではなく最大値)を記録し、濁質は粒子の細かいシルト質で、臭気強度20度の土臭もあった[1]。粒が細かいことは処理を難しくする。なぜ細かい粒は自然には沈まないのか。

2. どろの つぶは、どうして しずまないの?

2. 細かい泥の粒が、放っておいても沈まないのはなぜか

2. コロイド粒子が沈まないのは、電荷で反発しあうから

にごりの こまかい つぶは、たいてい マイナスの でんきを もって います。おなじ マイナスどうしは、ちかづくと はんぱつして はなれます。じしゃくの おなじ きょくを ちかづけると、おしあうのと にた ようすです。ただし ほんとうは、にごりの つぶが じしゃくで できて いるわけでは ありません。

だから、つぶは くっつかず、ばらばらの まま みずの なかを ただよいます[3]。じっと まって いても、なかなか きれいに なりません。

それなら、この はんぱつを よわく できたら、どう なるでしょう。

川の水に混じる泥の細かい粒は、一般に負の電気を帯びていて、たがいに反発しあっています。そのため、くっついて大きな塊になれず、ばらばらのまま水にただよいます[2]。神奈川県の資料も、濁りの粒は表面がマイナスに帯電しているため、粒どうしがくっつくことはない、と説明しています[3]。

同じ極の磁石を近づけると押し合う様子に似ています。ただし、泥の粒が磁石でできているわけではなく、電気の反発という点が似ているだけです。

ということは、この反発を弱められれば、粒はくっついて沈むはずです。それをするのが、凝集剤という薬です。

自然水中のコロイド粒子は、一般に負に荷電しており、互いに電気的に反発して安定な分散系をつくっている[2]。神奈川県の資料も、濁りの粒子は表面がマイナスに帯電しているため互いに反発し、くっつかないと説明する[3]。細かい粒ほど沈みにくいのは、このためである。

ここで注意したいのは、凝集剤は接着剤のように粒をつなぐのではない点だ。正に荷電した凝集剤を注入して粒子の荷電を中和し、反発を減らすことで、粒子間力による集塊(フロック)ができるようになる[2]。では、反発が弱まった粒子は、どうすればぶつかってくっつくのか。

3. くすりを いれた あと、どうやって かたまりを つくるの?

3. 薬を入れたあと、粒をどう塊にして沈めるのか

3. 荷電中和のあとの撹拌 ── フロックを作り、沈殿池で分ける

くすりを いれて、でんきの はんぱつが よわく なっても、つぶが ぶつからなければ、かたまりに なれません。そこで、みずを ぐるぐると まぜて、つぶどうしを ぶつけます[2]。

かたまりは「フロック」と よばれます。にごりの かたまりの ことです[4]。

フロックが おおきく おもく なると、そこに しずんで いきます。うわの みずは、ずっと すきとおって きます。

でも、くすりを どのくらい いれれば いいのでしょう。

薬を入れただけでは、粒はまだ出会えません。水をかき混ぜて、粒どうしをぶつけ、反発の壁をこえさせることで、塊ができます[2]。できた塊は「フロック」と呼ばれます。水の濁りが固まったものです[4]。

神奈川県の例では、薬を入れる着水井のあとに、大きな水車のような設備でフロックを育てる池があり、そのあとの沈殿池でフロックを沈めます[4]。フロックは重くなって底にたまり、上のほうの水がすんでいきます。

ところで、薬は多ければ多いほどよいのでしょうか。台風のときの浄水場は、量をどう決めたのでしょうか。

荷電を中和しただけでは粒子どうしは出会えない。凝集剤を撹拌で混ぜて、粒子が互いに近づく障壁を越えさせる必要がある[2]。撹拌の強さの目安(G値)は、凝集に最適な値が100〜300/秒とされ、混和池の滞留時間は1〜5分とする。水温が下がると水の粘性が増してG値が小さくなる点にも注意が要る[2]。

神奈川県の急速ろ過の例では、着水井で凝集剤と塩素剤を加えたのち、フロック形成池でフロックを成長させ、沈殿池で分離する[4]。ここまでは薬と撹拌の条件が結果を左右する工程であり、薬の量(注入率)をどう決めるかが次の問いとなる。

4. くすりの りょうは、だれが どうやって きめるの?

4. 薬の量は、ビーカーの実験で決める

4. 注入率をジャーテストで決める ── 台風時の最大70mg/L

くすりの りょうは、きかいまかせでは ありません。ビーカーに みずを すこしずつ とって、くすりの りょうを かえて いれて みます[6]。

どの ビーカーが いちばん よく かたまって、きれいに しずんだかを 見て、ほんとうの りょうを きめます。この ためしを「ジャーテスト」と いいます。

たいふうの ときも、ジャーテストで くすりの りょうを きめました。みずの にごりや せいしつは、2〜3じかんごとに はかりなおしました[1]。

みずの ようすが かわれば、ちょうど いい りょうも かわるからです。

薬の量を決めるのが、ジャーテストです。同じ水を何本かのビーカーに取り、薬の量を段階的に変えて入れ、混ぜてフロックができる様子を比べて、よい結果が出る量を探します。ある研究の例では、水を50mLずつ取り、薬の量を変えながら混ぜる方法が使われました[6](この例は地下水の研究で、浄水場の標準手順とは限りません)。

台風のときの小雀浄水場は、原水のアルカリ度(24度まで低下)などを見ながらジャーテストを行い、凝集剤PACの注入率を最大70mg/L(水1Lあたり70mg)に設定しました。濁度・アルカリ度・塩素要求量・臭気は、2〜3時間おきに測っています[1]。

水の状態は刻々と変わるため、薬の量も測り直して決め続けます。決めた薬で、実際に濁りはどこまで下がったのでしょうか。

ジャーテストは、原水に凝集剤の量を変えて加え、フロックを形成させて、最適な注入量を探索する試験である。横浜市衛生研究所の例では、原水50mLを採り、PACなどの量を段階的に変えてマグネチックスターラーで撹拌する方法がとられた[6]。ただし、この例は色度150度の地下水を対象とした研究であり、浄水場の標準手順と読むべきではない。

台風19号のときの小雀浄水場では、原水のアルカリ度が24度まで低下する状況で、ジャーテストにより凝集剤PACの注入率を設定し、最大70mg/Lとした。原水の濁度・アルカリ度・塩素要求量・臭気は、2〜3時間おきに測定して注入率の見直しに備えた[1]。原水が短時間で変化する以上、一度決めた値を使い続けることはできない。では、その設定で、濁りは工程ごとにどこまで下がったのか。

5. さいごに、すなの そうは なにを するの?

5. 沈まなかった濁りを、砂の層はどう受け止めたのか

5. 沈殿池で落ちきらなかった濁りを、ろ過池はどう受け止めたか

おおきな フロックは しずみますが、ぜんぶが しずむ わけでは ありません。しずみきらなかった にごりは、すなの そうを とおる あいだに ひっかかります[4]。

たいふうの ときは、しずんだ あとの みずでも、にごりが 9〜18 に なった ところが ありました。それでも、すなの そうを とおった あとは、さいだい 0.02 でした[1]。

すなの そうは、よごれるので、ときどき したから みずを ながして あらいます。たいふうの ときは、あらう かいすうを ふやしました。

ふだんは、およそ 3日に 1どの ペースで あらう れいも あります[4]。

大きなフロックは沈殿池で沈みますが、細かい分は流れ出てしまいます。台風のときの沈殿池の出口の濁りは、高速凝集沈殿池で最大18度、傾斜板付きの横流式沈殿池で最大9度まで上がりました。それでも砂の層を通したあとのろ過水は、最大0.02度に抑えられています[1]。

その間、ろ過池の砂の洗浄回数を増やし、砂の層を洗わずに水を流し続ける時間を、ふだんの72時間から55〜60時間に縮めました[1]。神奈川県の例では、砂の層を洗う逆洗(下から上に水を流す洗い方)は約3日に1度です[4]。逆洗の間隔は、浄水場によって異なります。

薬で固めて沈め、それでも残った濁りを砂でこす。台風のときのろ過水の濁度は、最大0.02度でした。

大型のフロックは沈殿池で分離されるが、微細なフロックや粒子は流出する。台風時の沈殿処理水の最大濁度は、高速凝集沈殿池で18度、傾斜板付横流式沈殿池で9度まで上昇した。それでも、ろ過池が残りを受け止め、ろ過処理水の濁度は最大0.02度に抑えられた[1]。この対応の中で、ろ過池の洗浄回数を増やし、ろ過継続時間を通常72時間から55〜60時間に短縮した[1]。

ここで、1,189度から0.02度への変化を、同じ水の追跡と読まないこと。原水の最大値と、ろ過水の最大値は、別の時刻の測定値どうしの比(約6万分の1)にすぎない。それでも、沈殿池で落ちなかった濁りが、砂層で最終的に捕捉される二段構成の意味は伝わる。神奈川県の例では、ろ過速度140m/日、逆洗は概ね3日に1度、全工程は約5時間で、1浄水場の値である[4]。

もう一つの方式が緩速ろ過である。1829年に英国で開発され、薬品を使わず砂層の微生物が濁りや臭気物質を分解するが、高濁度への対応は難しい面がある[5]。薬と砂を組み合わせた急速ろ過は、この弱点をおぎなう方式の一つと読める。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

ペットボトルに、こうていの つちと みずを いれて、ふって、テーブルに おいて みましょう。おおきな つぶは すぐ しずみますが、こまかい つぶは、なかなか しずみません。どれくらいで すみますか。おうちの ひとと いっしょに、しばらく 見て みましょう。

出かけてできること

かわの ちかくで、あめの ひと、あめの あと、みずの いろが ちがうか、見て みましょう。みずの ちかくは あぶないので、おうちの ひとと いっしょに、はなれた ところから 見ます。

こうしきの 情報じょうほう

すんでいる まちの すいどうきょくの ホームページに、みずの にごりを はかった けっかが のって いる ことが あります。

今日できること

透明なペットボトルに校庭の土と水を入れてよく振り、置いておいて、沈み方を観察してみましょう。大きな粒はすぐ沈み、細かい粒はなかなか沈まず、水がにごったまま残るはずです。10分後、1時間後、翌日の様子をメモすると、粒の大きさで沈む速さがちがうことが分かります。飲まずに、終わったら流しに捨てます。

出かけてできること

雨のあとの川や用水路で、いつもと水の色がちがうか、遠くから見てみましょう。水辺に近づきすぎないようにします。

公式情報

お住まいの地域の水道局のホームページには、水質の情報が載っていることがあります。台風時の対応は、日本水道協会などの資料で読めます。

今日できること

透明なペットボトルに土と水を入れて振り、10分・1時間・翌日で濁りの残り方を観察する。粒の大きさと沈む速さの関係を、時間を変えて記録してみる。飲用しない。

出かけてできること

降雨の前後で、近くの川の水の色を比べる。水辺に近づかず、安全な場所から観察する。

公式情報

JWRC(水道技術ジャーナルに掲載の水道Q&A)に、高濁度原水への対応(Q4)が載っている。神奈川県の資料は、薬品と急速ろ過の工程を図つきで説明している。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

台風19号時の対応と数値は[1]、凝集の原理と撹拌は[2]、薬品の説明は[3]、ろ過工程は[4]、緩速ろ過は[5]、ジャーテストの例は[6]を用いた。

  1. JWRC 水道Q&A Q4「高濁度原水への対応」(水道技術ジャーナル2021年1月) https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/10-98-2.pdf (台風19号時の濁度・薬品注入率・準備)
  2. JWRC 水道Q&A「凝集に必要な撹拌エネルギー」(水道技術ジャーナル2000年7月) https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/10-16.pdf (荷電の中和・撹拌の目安)
  3. 神奈川県「浄水処理工程で使用している薬品」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/h3x/top/jousuisyoriyakuhin.html (粒子の帯電と凝集剤)
  4. 神奈川県「急速ろ過方式の浄水処理工程」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/h3x/top/kyusokurokajousuisyori.html (急速ろ過の流れ・逆洗の例)
  5. JWRC 水道Q&A Q3「緩速ろ過池の砂の洗浄」(水道技術ジャーナル2021年1月) https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/10-98.pdf (緩速ろ過の開発年と特徴)
  6. 横浜市衛生研究所「色度150度の地下水の凝集処理」(水道研究発表会 令和7年度) https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/eiken/kankyoeisei/mizu/rikagaku/mizupaper.files/401.pdf (ジャーテストの一例)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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