1. どうして となりの 部屋で とぎれるの?
1. 同じルーターなのに、なぜ隣の部屋で切れるのか
1. 問いの立て方 ── 「壁に弱い」の中身を分解する
いえの ルーターは、電波を 出して います。その 電波には、2.4ギガヘルツと 5ギガヘルツという、ふたつの 「はば」が あります。ギガヘルツは、1びょうに 電波が ゆれる 数の ことです。
どちらも 同じ ルーターから 出ます。でも、かべの 向こうでは、つながりかたが ちがう ことが あります。
この ちがいは、まず 電波の 「ゆれかた」から 考えます。
壁の前で起きること
家庭のルーターは、2.4GHz帯と5GHz帯の電波を出せるものが多くあります。GHz(ギガヘルツ)は、1秒間に電波が何十億回ゆれるかを表す単位です。
同じルーターなのに、壁の向こうでは、片方だけつながりにくいことがあります。その原因は1つではありません。この記事では、原因を3つに分けて考えます。
1つめは、電波の波の長さ。2つめは、壁がなくても起こる距離による弱まり。3つめは、壁そのものの材料と厚みです。
「Wi-Fiは壁に弱い」という言い方は、少なくとも3つの現象を混ぜている。周波数による回り込みやすさの差、壁がなくても生じる距離による損失、そして壁の材質と厚みによる減衰である。以下では、この3つを別々に見ていく。
対象はおもに家庭用の2.4GHz帯と5GHz帯とする。両者の壁での差は、具体的な数値ではなく「傾向」として扱う。
2. でんぱは かべを まわりこめる?
2. 電波は障害物の後ろへ「回り込む」ことがある
2. 回折と周波数 ── 波長が長いほど陰に届きやすい
電波は、波のように 進みます。ゆれる 数が すくない 電波は、波が 長いです。長い 波は、じゃまな ものの うしろへ まわりこみやすい と いわれます[1]。
ゆれる 数が 多い 電波は、波が 短く なります。すると 光に 近づき、まっすぐ 進む くせが 強く なります[1]。
たとえば、へいの 向こうの 音は 聞こえるのに、かいちゅうでんとうの 光は とどきません。ひくい 音は 長い 波、光は とても 短い 波だからです。ただし、電波は 音や 光と 同じでは ありません。
だから 5ギガヘルツは、かげが できやすい ようだと 考えられます。ただし、かべを どれだけ とおるかは、ゆれる 数だけでは きまりません。
低い周波数と高い周波数
電波が障害物の後ろへ回り込む現象を、回折といいます。回折は、周波数が低い(波長が長い)ほど起こりやすいとされます。反対に、周波数が高い電波ほど光に近い性質になり、まっすぐ進みやすくなります[1]。
そのため、高い周波数の電波では、建物などの陰に電波が届かない部分ができやすくなります[1]。
身近な例は、塀の向こうの音です。話し声は聞こえるのに、懐中電灯の光は塀の向こうに届きません。ただし、電波と音・光は別のものなので、これはイメージをつかむための例です。
2.4GHzと5GHzでは、5GHzのほうが高い周波数です。だから5GHzのほうが、壁や家具の陰に入りやすい傾向がある、と考えられます。「通れない」ではなく「通りにくい傾向」です。壁をどれだけ通り抜けるかは、周波数だけでは決まりません。
電波が障害物の後方へ回り込む回折は、基本的に周波数が低い(波長が長い)ほど起こりやすい。逆に周波数が高い電波は光に近い性質を強め、直進性が高くなるため、建物などの陰に電波の届かない領域ができやすい[1]。
この傾向から、2.4GHz帯(波長約12.5cm)に比べ、5GHz帯(波長約6cm)は陰に入った場所で不利になりやすいと推測できる。波長は光速を周波数で割って求めた概算で、資料に載る値ではない。また、資料は回折を中心に述べており、壁の内部での吸収や反射の仕組みまでは扱っていない。
ここで「高周波は壁を通れない」と言い切るのは誤りである。壁の透過による減衰は、周波数だけで一律に決まるとは言えない。回折で回り込めるかどうかと、壁の中を通り抜けられるかどうかは別の問題で、次の章以降で分けて読む。
3. かべが なくても よわく なる?
3. 壁がなくても、電波は距離で弱まる
3. 自由空間損失 ── 周波数が2倍になると約6dB
じつは、かべが なくても、電波は はなれるほど よわく なります。これは、電波が 広がって いくからです。
そして、ゆれる 数が 多いほど、同じ きょりでも よわく なりやすい ことが 知られて います[2]。
ある 計算では、100メートル はなれると、2.4ギガヘルツより 5ギガヘルツの ほうが、電波の 強さが 4ぶんの 1ほどに なります[2]。
つまり、かべに ぶつかる 前から、5ギガヘルツは 少し つらいのです。
デシベルという ものさし
電波の弱まりは、デシベル(dB)で表します。3dB減ると電力は約半分、10dB減ると約10分の1です。6dB減ると、電力は約4分の1になります[2]。
壁のない空間(自由空間)でも、電波は広がるので弱まります。周波数が2倍になると、この弱まりは約6dB大きくなります[2]。
ある解説の計算では、100mはなれたときの弱まりは、2.4GHzで約80dB、5GHzで約86.4dBです。差は約6.4dB、電力にすると約4分の1です[2]。
この数字は、壁が1枚もない理想の条件での計算です。実際の家では、ここに壁の弱まりが足されます。
壁がなくても電波は弱まる。自由空間損失(FSPL)は距離の2乗と周波数の2乗に比例し、周波数が2倍になると約6dB大きくなる[2]。例として、100mでの損失は2.4GHzで約80dB、5GHzで約86.4dBと示されており、差は約6.4dBである[2]。
この差を検算する。周波数比は5÷2.4≒2.08で、20log₁₀(2.08)≒6.4dBとなり、資料の値と合う。6.4dBは電力比で約0.23、つまり約4分の1にあたる。
ここで注意したいのは、これは壁の減衰ではなく「距離と周波数」だけの話だという点だ。また、実際の屋内は反射や回折があり、この式どおりにはならない。式が示すのは、壁を考える前から5GHzは不利な出発点にある、ということまでである。
4. かべの なかみで どう ちがう?
4. 壁の「中身」で、弱まり方は桁ちがいになる
4. 建材ごとの減衰 ── NISTの測定と、メーカーの目安
かべは、材料と あつさで 電波の 通しやすさが 大きく ちがいます。
ある メーカーの 目安では、まどガラスは 電波を はんぶんほどに へらします。木の かべは 10ぶんの 1ほど。あつさ 30センチほどの かべは、100ぶんの 1から 300ぶんの 1ほどまで へります[4]。
かべを 2まい こえると、たんじゅんに 考えれば、へりかたは かけ算で 重なります。じっさいは、電波が はね返るので かわります。だから 部屋を いくつも こえると、電波は 急に 弱くなります。
アメリカの 研究所は、れんが・コンクリート・ガラス・木・鉄の ぼうなどを、あつさを かえて はかりました[3]。同じ 家の 中でも、かべの 中身しだいで 電波の 運命が かわります。
アメリカの研究所の測定
アメリカのNIST(国立標準技術研究所)は、建材が電波をどれだけ弱めるかを測りました。レンガ、コンクリート、ガラス、合板、木材、石膏ボード、鉄筋コンクリート、鉄筋の格子などを、厚みを変えて調べています[3]。
2.4GHz帯の目安
個別の数字は、あるメーカーが2.4GHz帯で示した概算の目安があります。無色の窓は約3dB、木の壁は約10dB、厚さ15cmほどの内壁は15〜20dB、厚さ30cmほどの耐力壁は20〜25dBです[4]。
これを電力にすると、窓は約半分、木の壁は約10分の1、厚い耐力壁は100分の1から300分の1ほどになります。dBは単純に足し合わせると、内壁を2枚こえて30〜40dB、つまり1000分の1より小さくなる計算です。実際の家では、反射などで変わります。
ただし、この数字はメーカーの概算で、2.4GHz帯だけの値です。同じ壁で5GHz帯がどれだけ変わるかは、この目安にはありません。
壁の減衰は、材質と厚みで桁が変わる。NISTは、レンガ、コンクリート8種、ガラス、合板、木材、石膏ボード、鉄筋コンクリート、鉄筋格子を、0.5〜2GHzと3〜8GHzの範囲で測定している(NISTIR 6055)[3]。ただし、ここでは概要のみを確認しており、個別のdB値は本文を読めていないため使わない。
個別の数値の目安として、メーカーのKeeneticが2.4GHz帯について、無色の窓3dB、木の壁10dB、内壁(厚さ約15cm)15〜20dB、耐力壁(厚さ約30cm)20〜25dB、コンクリートの床・天井15〜25dBを挙げている[4]。同社は、これらを絶対値ではなく概算と断っている。
dBは対数なので、電力比に直すと差がはっきりする。3dBは約1/2、10dBは1/10、20〜25dBは1/100〜1/316である。壁が2枚あれば、単純に足し合わせると、たとえば内壁2枚(30〜40dB)で1/1000〜1/10000になる。実環境では反射などで変わるが、部屋をいくつも隔てると厳しくなる傾向は読み取れる。
一方、壁の内部にある鉄筋や水分、金属箔つきの断熱材などが、反射や吸収をどのように起こすのかは、この調べでは出典を取れなかった。5GHz帯での同じ壁の値も同様である。したがって、「5GHzのほうが壁で弱くなりやすい傾向」までを述べ、具体的な差は書かない。
5. 2.4ギガヘルツの べつの よわみは?
5. 2.4GHz帯には、壁とは別の弱点もある
5. 混雑と干渉 ── 壁の減衰とは別の問題
ここまで 読むと、2.4ギガヘルツの ほうが かべに 強くて いいように 思えます。でも、べつの 弱みも あります。
2.4ギガヘルツは、だれでも 手つづきなしで 使える 電波の はばです。だから 電子レンジや コードレス電話、ブルートゥースなども 同じ はばを 使います[5]。
みんなが 同じ 道を 使うと こんで、つうしんが おそく なる ことが あります。これは かべとは ちがう ことです。
ここまでの話だけだと、2.4GHzのほうが壁に強くて得なように見えます。ところが、2.4GHz帯には別の弱点があります。
この帯はISMバンド(産業・科学・医療用の電波)で、免許なしで使えます。そのため、電子レンジ、コードレス電話、Bluetooth機器など、多くの機器が同じ帯を使っており、干渉で通信が遅くなることがあります[5]。
ここで大切なのは、壁での弱まりと、混雑による遅さを分けて考えることです。同じ「つながりにくい」でも、原因は別のことがあります。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
おうちの 人に 聞いて から、スマホの Wi-Fiの バーを 見ながら、家の 中を 歩いて みましょう。ルーターの 近く、となりの 部屋、ろうかで、バーが いくつ 立つか、間取りの 絵に 書き入れます。
ルーターに 2.4と 5の 2つの 名前が あれば、つなぎかえて 見くらべても おもしろいです。ただし、スマホの バーは 目安で、きちんと はかった 数では ありません。かべの 材料や あつさも、絵に 書き足して みましょう。
今日できること
家族に断ってから、スマホのWi-Fiのバーを見ながら家の中を歩き、場所ごとの本数を間取りの略図に書き入れてみましょう。ルーターの近く、隣の部屋、廊下、浴室の前などで比べます。
ルーターに2.4GHzと5GHzで別の名前がある場合は、つなぎかえて比べる方法もあります。ただしバーは端末ごとの目安で、測定値ではありません。図には、壁の材質や厚みが分かればそれも書き足します。
今日できること
家族の了承を得たうえで、端末の電波強度表示(バー)を手がかりに、家の中の場所ごとの強さを略図に記録できる。バーは端末や機種で基準が違い、測定値ではない点に注意する。2.4GHzと5GHzで別のネットワーク名が付いていれば、それぞれで同じ場所を見比べると、周波数による傾向の差を確認する手がかりになる。ただし結果は環境で変わるので、一般化はしない。
資料を読むなら
NISTIR 6055(NIST)は建材ごとの減衰を扱う原典である。個別のdB値を引くには本文の表を確認する必要がある。メーカー資料は概算値であり、5GHz帯の値が載っていない点にも留意したい。法制度(5GHz帯の屋内外の利用区分など)は改正されうるため、電波利用に関する公的機関の公式情報で確認するとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料。数値の目安は、メーカーや解説の概算を含みます。
- MONOist「電波の性質に関する解説」(回折と周波数) https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2410/28/news012.html (回折と直進性の傾向)
- GaussianWaves「Friis Free Space Propagation Model」 https://www.gaussianwaves.com/2013/09/Friss-Free-Space-Propagation-Model/amp (自由空間損失と周波数の関係)
- NIST「Electromagnetic Signal Attenuation in Construction Materials」(NISTIR 6055) https://nist.gov/publications/electromagnetic-signal-attenuation-construction-materials (建材の測定範囲。概要のみ確認)
- Keenetic「Wi-Fi signal attenuation coefficients」 https://support.keenetic.com/titan/kn-1811/en/20207.html (2.4GHz帯の壁ごとの減衰の目安)
- シャープ「2.4GHz帯の干渉について」 https://jp.sharp/netwalker/info/other/wirelesslan.html (2.4GHz帯を共用する機器と干渉)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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