このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

風車は どうして 風で でんきを つくれるの?

風車はなぜ、風を受けて回るだけで電気をつくれるのか ── 風速が2倍なら、風のパワーは理論上8倍

風力発電の原理 ── 揚力による回転、電磁誘導、風速の3乗則とベッツの限界、ピッチ・ヨー制御

分野:技術

風が 2ばいに なると、風が もつ ちからは、りくつの うえで 8ばいに なります[5]。

ふしぎ ですね。どうして こんなに かわるのでしょう。風車は、風を うけて まわる だけで、どうやって でんきに なるのでしょう。この メモでは、まわる ところから でんきが 出る ところまでの みちが 分かります。

風車に当たる風の速さが2倍になると、風から取り出せるパワーは、理屈の上では8倍になります。2を3回かけた数です[5]。

風が2倍で、なぜ8倍なのでしょうか。そもそも、羽根を回しているのは風の「押す力」なのでしょうか。電気になるまでの道のりと、風車が強い風や弱い風につき合う工夫が分かります。

風車が風から得るパワーは、風速の3乗に比例する。風速が2倍なら理論上8倍で、風速が20%増えるだけでも約1.73倍(1.2の3乗)になる[5]。

では、この変化の激しい風を、風車はどうやって安定した電気にしているのか。羽根が回る理由、回転が電気に変わる原理、取り出せる量の上限、強弱と向きの制御の順に、公的機関や解説の記述から、全体の流れが分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 風は 羽根を おして いるの?

1. 羽根を回しているのは、風の「押す力」なのか

1. ローターを回す力 ── 抗力ではなく揚力

風車の 羽根は、風に おされて まわって いる ように 見えます。でも、ほんとうは ちょっと ちがいます。

羽根は、ひこうきの つばさに にた はたらきを します。風が 羽根の よこを 通ると、羽根の かたがわの 空気の ちからが へって、りょうがわで ちがいが できます。すると、羽根を うごかす 「ようりょく」が 生まれます[1]。

この ようりょくが、おす ちからより 大きいので、風車は くるくる まわります[1]。

ただし 手で 風を うけた ときの ような、おされる ちからも ゼロでは ありません。ようりょくの ほうが 強い、という ことです。

風車の羽根は、飛行機の翼のように働きます。風が羽根を横切ると、羽根の片側の気圧が下がり、揚力と抗力という2つの力が生まれます[1]。

アメリカのエネルギー省は、揚力のほうが抗力より強いので、ローターが回ると説明しています[1]。風に押されるだけの板ではなく、翼として働くのが風車の羽根です。

羽根の形については、別の「羽根の形と枚数」のメモでも扱っています。ここでは、この回転がどう電気になるのかへ進みます。

アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)は、羽根を風が横切ると片側の気圧が下がって揚力と抗力が生じ、揚力が抗力を上回るためローターが回ると説明している[1]。つまり風車の羽根は、風に押される板ではなく、飛行機の翼と同じ原理で働く。

日本の解説でも、揚力を使うプロペラ形が一般に性能面で最も良いとされる[5]。ただしここまでは、回転を生むところまでだ。回る羽根の力はまだ電気ではない。次に問題になるのは、その回転の速さである。

2. ゆっくり まわる 羽根を、どうやって はやく する?

2. ゆっくり回る羽根を、どう速くするのか

2. 低速・高トルクの回転 ── 増速機と直結方式

大きな 風車の 羽根は、ゆっくり、ぐうっと 大きな ちからで まわります[2]。でんきを つくる きかいは、もっと はやい まわり方の ほうが つごうが いいのです。

そこで、風車の 中の 「ぞうそくき」が はたらきます。はぐるまの くみあわせで、まわる 数を ふやす きかいです[3]。はやく まわせるぶん、でんきを つくる きかいは 小さく できます[2]。

ぞうそくきを つかわず、羽根と でんきを つくる きかいを じかに つなぐ しくみも あります[2]。

大きなローターは、ゆっくりと、大きな力で回ります。これを低速・高トルクの回転といいます[2]。ところが、発電機は速く回したほうが小さくてすみます。

そのため、発電機などを収めたナセルという箱の中に、増速機(ギアボックス)が入っています。歯車の組み合わせで回転数を増やし、その回転を発電機へ渡します[3]。回転が速くなるぶん、発電機を小さくできます[2]。

増速機を使わず、ローターを発電機に直接つなぐ「直結方式」の風車もあります[2]。

ローターは低速・高トルクで回る。発電機に適した速い回転へ変えるのが増速機(ギアボックス)で、ナセル内でギアにより回転数を増やす[3]。回転が速いほど発電機は小型にできる[2]。

ただし、すべての風車が増速機をもつわけではない。ローターを発電機に直結する方式もある[2]。増速機の有無は設計上の選択で、どちらか一方が正解という話ではない。では、その速い回転は、どのようにして電気になるのか。

3. まわる じしゃくから、どうして でんきが 出るの?

3. 回る磁石とコイルから、なぜ電気が出るのか

3. 電磁誘導 ── ファラデーの1831年と発電機

つぎは、でんきを つくる きかいの 中です。ここには、どうの せんを まいた 「コイル」と、じしゃくの ちからが ある ところが あります。

じしゃくの ちからが ある ところで コイルか じしゃくを うごかすと、でんきが 生まれます[3]。この ふしぎな げんしょうを 「でんじゆうどう」と いいます。

これを 見つけたのは、イギリスの ファラデーです。1831年の ことと つたえられて います[4]。

ファラデーは、どうの まるい 円ばんを、うまの ひづめの かたちの じしゃくの あいだで まわし、とぎれない でんきを とりだしました。これが さいしょの はつでんきと いわれます[4]。

発電機の中では、銅線のコイルを磁界の中で回します。このとき電気が生まれる現象が電磁誘導で、回転のエネルギーを電気に変える基本の原理です[3][2]。

ファラデーの実験

この現象を見つけたのは、イギリスのマイケル・ファラデーです。1831年8月29日、王立研究所で、片方のコイルに流した電流が、近くの別のコイルに電気を生むことを見つけました[4]。

同じ年の9月には、銅の円盤を馬蹄形の磁石の極の間で回して、途切れない直流電流を取り出しました。これが最初の発電機とされています[4]。風車の発電機は、この実験と同じ仲間の原理で動いています。

発電機は、電磁誘導という現象で回転エネルギーを電力に変える。銅線の巻線を磁界の中で回すと電気が生じる[3][2]。風力発電の発電機は、現在は誘導発電機と同期発電機が主流とされる[5]。

この現象を発見したのが、イギリスのマイケル・ファラデー(Michael Faraday)だ。IET(英国工学技術学会)の資料によれば、1831年8月29日に王立研究所で、片方のコイルの電流が近くの別のコイルに電気を生むことを見つけた。同年9月には、銅の円盤を馬蹄形磁石の極の間で回して連続した直流電流を得ており、これが最初の発電機とされる[4]。

つまり、風車の発電は、ファラデーの円盤の実験を、風で回す大きな装置に置きかえた姿でもある。回す動力は風だ。では、その風の強さが電気の量をどう変えるのか。

4. 風が 2ばいで、どうして 8ばいなの?

4. 風が2倍で8倍。ただし、全部は取り出せない

4. 風速の3乗則とベッツの限界

風車から 出る ちからは、風の はやさを 3かい かけた 数に ならぶ、と いわれます[5]。風が 2ばいなら、2×2×2で 8ばいです。

でも、風の ちからを ぜんぶ とる ことは できません。風を ぜんぶ とめて しまうと、あとから くる 風が 入れなく なるからです[6]。

ドイツの ベッツという 人が 1919年に、とれる 数は 多くても 16/27、やく 6わりと しめしました[6]。これは 計算で 出した 上げんで、ほんものの 風車の かずでは ありません。

風車の出力は、羽根が回る円の半径の2乗と、風速の3乗に比例します[5]。風速が20%増えると、1.2の3乗で約1.73倍です。風速が2倍なら、2の3乗で8倍になります。これは風の持つエネルギーの話で、実際の風車が出す電気の量は、風車の効率などで変わります。

では、風のパワーは全部取り出せるのでしょうか。風を完全に止めてしまうと、後ろから新しい空気が通れません。そのため、風車が取り出せる割合には上限があります。最大になるのは、風車を出ていく風の速さが、入ってくる風の速さの3分の1になるときです[6]。

この上限は16/27(約59.3%)で、ベッツの限界と呼ばれます。ドイツのアルベルト・ベッツが1919年に発表しました[6]。羽根の形や枚数によらない上限です。

イギリスのランチェスターが1915年に同じ結果を得ていた、とも紹介されています[7]。実際の風車は、この上限よりもさらに少ない割合しか取り出せません。

風車の出力は、羽根の回る円の半径の2乗と風速の3乗に比例する[5]。風速が20%増えると1.2³≒1.73倍、2倍なら2³=8倍になる。ただしこれは風の持つパワーの比例関係であり、実際の出力は風車の効率や設計の制約で変わる。

では、風のパワーをすべて取り出せるのか。風を完全に止めると後続の空気が入れなくなるため、取り出せる割合には理論上の上限がある。最大になるのは、風車を出る風速が入る風速の1/3のときで、その割合は16/27(約59.3%)である。ドイツのアルベルト・ベッツが1919年に示したためベッツの限界と呼ばれ、羽根の形や枚数によらない[6]。

この結果は、1915年にイギリスのランチェスターが同じものを得ていたと紹介される(ロシアのジュコフスキーは1920年)。実機が取り出せる割合は、この上限を超えない。

風速の3乗に比例するということは、強風ほど大きなパワーが入ってくることを意味する。それを受けとめきるのは、機械にとって楽ではない。では、風が弱いときと強いとき、風車は何をしているのか。

5. 風が かわったら、風車は どうするの?

5. 風の強さと向きが変わったら、風車はどう応えるのか

5. ピッチ制御とヨー制御 ── 角度と向きで風につき合う

風は つよく なったり、よわく なったり、むきも かわります。風車は それに あわせて うごきます。

ひとつは 羽根の かどを かえる しくみです。風が よわい ときは 風を たくさん うける かどに、つよい ときは 風を うけ ながす かどに します[2]。これで 風車を まもります。

もうひとつは、風車の 上の はこ(ナセル)の むきを かえる しくみです。風の むきが かわると、羽根が 風の ほうを むき つづけるように まわります[2]。

風の はやさは、風そくけいで はかり、そうちに つたえます[2]。

風速の3乗に比例して入ってくるパワーは、強風のときには風車にとって負担にもなります。そこで、羽根の角度を変える「ピッチ制御」があります。風が弱いときは風を多く受ける角度に、強いときは余分な風を受け流す角度にして、風車を守ります[2]。強風のときは、羽根を風と平行に近い向きにそろえる「フェザリング」をして、壊れないようにすることもあります[2]。

もう1つが「ヨー制御(方位制御)」です。風向きが変わると、ナセルの向きを回して、羽根を風に向け続けます[2]。風速計が測った風の速さは、コントローラーに送られます[2]。

日本の解説でも、風の強さには可変ピッチ機構、風の向きには方位制御機構で対応するとされています[3]。

つまり風車は、ただ立っているだけの建物ではありません。風の強さや向きに合わせて、羽根の角度やナセルの向きを変えています。

風速の3乗に比例して入るパワーに対して、風車は羽根の角度(ピッチ)で応える。ピッチ制御は羽根の角度を調整してローターの回転を制御する仕組みで、風が弱いときは風を多く受ける角度に、強いときは余分な風を受け流す角度にして機械を守る。強風では羽根を風と平行にして風になびかせる(フェザリング)こともある[2]。

向きの制御はヨー制御(方位制御)だ。風向きが変わると、発電機などを収めたナセルの向きを回して、アップウィンド型(風上にローターを向ける型)の風車を風に向け続ける。風速計の測定値はコントローラーに送られる[2]。日本の解説も、風の強さには可変ピッチ機構、向きには方位制御機構で対応すると述べている[3]。

ここまでの流れを並べると、羽根が揚力で回り、増速機を通り、電磁誘導で電気になる。その途中で、風の強さと向きに合わせて羽根の角度とナセルの向きが調整される[3]。

6. 風の つよさで、かざぐるまは どう かわる?

6. かざぐるまとうちわで、風の強さと角度を試す

6. 出口 ── 風の強弱と角度を試す観察と、資料の読みどころ

かみで かざぐるまを 作るか、おもちゃの かざぐるまを つかいます。うちわで、よわい 風と つよい 風を おくって、まわり方を くらべます。

つぎに、かざぐるまの むきを すこし かえて、風を あてます。まわり方が かわるか 見ましょう。

はさみや とがった ぼうは つかわず、まわりに ぶつからない ひろい ところで やります。うちわを ふる ときは、ほかの 人に 当てないように してください。

ただし、ほんものの 風車と おなじ けっかが 出る とは かぎりません。それでも、風の つよさと かどで ようすが かわる ことは かんじられます。

紙のかざぐるまか、おもちゃのかざぐるまを使います。うちわで弱い風と強い風を送って、回り方を比べてみましょう。

次に、かざぐるまの向きを少し変えて風を当て、回り方がどう変わるかを見ます。ほかの人に当たらない、広い場所で行ってください。

ただし、これは風車の実験そのものではありません。風の強さと向きで回り方が変わる、という感覚をつかむための遊びです。風車が羽根の角度やナセルの向きを変えているのは、この感覚の大きな版だと考えられます。

家のかざぐるまとうちわで、風の強弱と向きによる回り方の違いを観察できる。弱い風・強い風を送って比べ、次にかざぐるまの向きを変えて回り方を見る。人や物に当たらない広い場所で行うこと。ただしこれは風車の再現実験ではなく、3乗則や揚力を測るものではない。

資料としては、DOEの「How Do Wind Turbines Work?」と「Inside a Wind Turbine」が、揚力・増速機・ピッチ制御・ヨー制御を公的機関の立場でまとめている[1][2]。IETのファラデーの紹介は、1831年の電磁誘導と最初の発電機が1次資料に近い形で書かれている[4]。風速3乗やベッツの限界は、中小機構のJ-Net21とIMAの解説で、式の意味を確かめられる[5][6]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:アメリカ合衆国エネルギー省、IET(英国工学技術学会)、中小機構のJ-Net21、IMA(英国数学応用研究所)、三井物産などの解説を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. U.S. Department of Energy, "How Do Wind Turbines Work?". https://www.energy.gov/eere/wind/how-do-wind-turbines-work (風車の羽根と揚力について)
  2. U.S. Department of Energy, "Inside a Wind Turbine". https://www.energy.gov/eere/wind/inside-wind-turbine (増速機・発電機・ピッチ制御・ヨー制御について)
  3. 三井物産「風力発電の仕組み」。https://www.mitsui.com/solution/contents/solutions/re/60 (増速器・電磁誘導・制御機構の日本語の説明について)
  4. IET Archives, "Michael Faraday". https://www.theiet.org/membership/library-archives/the-iet-archives/biographies/michael-faraday/ (ファラデーの電磁誘導と最初の発電機について)
  5. J-Net21(中小機構)「風力発電のしくみ」。https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/energyeff/Q0920.html (風速の3乗に比例する出力、発電機の種類、プロペラ形について)
  6. IMA Urban Maths, "Betz can". https://ima.org.uk/8187/urban-maths-betz-can/ (ベッツの限界について)
  7. Wikipedia, "Betz's law". https://en.wikipedia.org/wiki/Betz%27s_law (ランチェスターと実機の割合について。二次資料)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。