このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ひこうきの つばさは、どうして 大きな ひこうきを 持ち上げられるの?

飛行機の翼はなぜ機体を持ち上げられるのか ── 上の空気は先に通り過ぎる

翼はどうして揚力を生むのか ── 「上面の道のりが長いから速い」説明と、流れの曲がり

分野:技術

がっこうで 「つばさの 上を 通る 空気は とおまわりなので、下の 空気と 同時に 着く ために 速く 走る」と 習った 人が いるかも しれません。ところが、けむりを 使った じっけんの えいぞうでは、上の 空気の ほうが 先に 後ろへ 着いて しまいます[1][2]。

それでは、ひこうきを 持ち上げて いるのは なんでしょう。つばさが 空気を どう 動かして いるのか、ライト兄弟は つばさを どう 調べたのかが わかります。

理科で「翼の上側は丸みがあって道のりが長い。だから上の空気は速く走り、下の空気と同時に翼の後ろへ着く」と聞いたことはないでしょうか。ところが、NASAもケンブリッジ大学も、この説明を実験の結果と合わないものとして取り上げています。実際には、上の空気のほうが先に後ろへ着いてしまいます[1][2]。

では、何が飛行機を持ち上げているのでしょうか。翼が空気にしていること、圧力の見方と反作用の見方の関係、そしてライト兄弟が自分の手で翼を測った話から、その答えが分かります。

翼の上面は道のりが長く、そこを通る空気は下面の空気と後縁で同時に着くために速くなる。この「等遷移時間」の説明は広く教えられているが、NASAは誤りとしており、ケンブリッジ大学の煙の実験映像でも、上面の空気は下面の空気より先に翼の後ろを通り過ぎる[1][2]。

では、揚力は何から生まれるのか。翼が空気の流れを曲げることを軸に、圧力の見方とニュートンの見方の関係、迎え角と失速の条件、ライト兄弟が既存の係数表を疑って翼を測った経緯が分かる。

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1. つばさの 上の 空気は、ほんとうに 同時に 着くの?

1. 「上の空気は遠回りだから速い」は本当か

1. 「同時に着く」説明は、実験で成り立つか

よく 聞く 話は こうです。つばさの 上は ふくらんで いるので、道のりが 長い。だから 上の 空気は 速く 走って、下の 空気と 同時に つばさの 後ろへ 着く。速い ところは 空気の 力が 小さく なるので、つばさが 上へ 引かれる、と いう 話です。

NASAは、この 「同時に 着く」と いう せつめいは まちがいだと して います[1]。ほんとうの 上の 空気は、同時に 着くのに ひつような 速さよりも、ずっと 速く 流れます。だから 上の 空気が 先に 着きます[1]。

ケンブリッジ大学も、けむりを 使った えいぞうで 調べました。上の 空気は、下の 空気が 下の はしに 着く 前に、もう つばさの はしを 通りすぎて いました[2]。

この 大学の 先生は、まず わざと まちがった せつめいを 見せて、「聞いた ことが ある 人」を 聞く 話を して います。先生の 話では、聞いた ことが ある 人として 手を 上げたのは、やく95%でした[2]。教室での 話なので、世の中の 人の わりあいでは ありません。それでも、それだけ たくさんの 人が 習って いる せつめいなのです。

では、ほんとうは つばさは 空気に なにを して いるのでしょう。

よく聞く説明は次のとおりです。翼の上側は丸みがあって、空気が通る道のりが下側より長い。上と下の空気は翼の後ろで同時に着くはずだから、上の空気は速く走る。速いところは圧力が下がるので、翼は上へ引かれる、というものです。

NASAの初心者向けの解説は、この「同時に着く」という考えを誤った説明として取り上げています。実際の上面の流れは、同時に着くのに必要な速さよりずっと速く、上の空気が先に後ろへ着くからです。しかも、前のほうで隣り合っていた2つの空気の粒が、後ろで隣り合うことはありません[1]。

ケンブリッジ大学工学部の煙の実験映像も、同じことを見せています。翼の上を通る空気は、下の空気が下面の端に着く前に、すでに翼の端を通り過ぎています。研究者は「揚力をつくるのは道のりの長さではなく、曲がり(カーブ)だ」と述べています[2]。

この大学の研究者バビンスキー氏は、講義の初めにわざと誤った説明を示し、聞いたことがある人を尋ねるそうです。本人の話では、手を挙げるのは聴衆の約95%で、誤りだと知っている人はごく少数でした[2]。講義の場での印象で、全人口の割合ではありません。それでも、この説明がそれだけ広く教えられていることはうかがえます。

では、道のりでないなら、翼は空気に何をしているのでしょうか。

「翼の上を通る空気は遠回りをするから速い」という説明を、理科で聞いた覚えのある人は多いだろう。この考えは、上面と下面を通った空気が後縁で同時に着く(等遷移時間)ことを前提にしている。ところがNASAの解説によれば、実際の上面の流れは、同時に着くのに必要な速さよりはるかに速く、上の空気が先に後縁へ着く。前縁で隣り合っていた2つの空気の粒は、後縁で隣り合わない[1]。

独立した確認もある。ケンブリッジ大学工学部の煙の実験映像では、上面の空気は、下面の空気が下面の端に着く前に翼の端をすでに通り過ぎている。研究者は、揚力をつくるのは道のりの長さではなく、流れの曲がり(曲率)だと述べる[2]。

ちなみに同大学のバビンスキー氏によると、講義の冒頭でわざと誤った説明を示し、聞いたことがある人を尋ねると、約95%の聴衆が手を挙げ、誤りと知る人はごく少数だという[2]。これは本人談で、講義という場の印象にすぎず、全人口の割合とは読めない。それでも、この説明が教室に広く定着していることの目安にはなる。

では、道のりでないなら、何が揚力を決めるのか。次章では、揚力の定義そのものから見ていく。

2. つばさは 空気を、下へ 曲げて いる

2. 翼は、流れを曲げて揚力をつくる

2. 揚力は流れが曲げられるときに生じる

こたえの 入り口は、「曲げる」と いう ことばです。NASAの せつめいでは、空気などの 流れが ものに 当たって、向きを かえられた ときに 揚力ようりょくが 生まれます。流れが 曲げられた 向きと、はんたいの 向きに 力が はたらきます[3]。

うちわで あおぐ ところを 思い出して ください。うちわは 空気を 前へ おしだします。すると うちわは 後ろへ おされる ような 手ごたえが あります。つばさは これを、空気を 下へ 曲げる ことで して いると 考えられます。ただし うちわは たとえで、つばさの 形は もっと 細かい はたらきを して います。

NASAによると、つばさでは、上の 面も 下の 面も、空気を 曲げる ために はたらきます[3]。空気が なければ 揚力ようりょくは ありません。空気が 動かなくても、ありません[3]。

ひこうきが 前へ すすむ ことで、つばさに 空気が 当たりつづけます。このとき つばさの 上の 空気は 先に 後ろへ 着いて しまいます。「同時に 着く」より、「空気を 曲げて 下へ 送る」ほうが、おおきな 見かたなのです。

では、「空気の 力が 小さく なって、上へ 引かれる」と いう 話は、まちがいなのでしょうか。

NASAグレン研究センターの解説は、揚力を次のように説明します。揚力は、流れる気体が物体に当たって向きを変えられるときに生じます。流れが一方に曲げられると、揚力は逆向きにはたらきます[3]。ニュートンの作用・反作用の考え方です。

うちわであおぐと、空気は前に押し出され、うちわは後ろへ押されるような手ごたえがあります。翼がしていることは、これを下向きに行う、と考えると分かりやすいでしょう。ただし、うちわはたとえで、翼のはたらきはもっと細かく、上面と下面の両方が流れを曲げるのに関わっています[3]。

同じ解説によると、流体がない場合も、物体と流体の間に動きがない場合も、揚力は生まれません[3]。飛行機が止まったままの翼には揚力がなく、前へ進んで空気に当たり続けることで、はじめて揚力が生まれます。

ここで、先ほどの「翼の上側は空気の圧力が下がる」という話が、まちがいなのかが気になります。実は、圧力の見方と反作用の見方は、どちらも正しいとされています。

では、揚力はどう定義されるのか。NASAグレン研究センターの解説によると、揚力は、気体の流れが固体の物体によって向きを変えられるときに生じ、流れが曲げられた向きと逆向きにはたらく。作用・反作用の関係である[3]。翼では、上面も下面も、流れを曲げる働きに関わっている[3]。

条件も書かれている。流体がなければ揚力は生じないし、物体と流体の間に動きがなくても生じない[3]。つまり、空気との相対的な動きがない翼には揚力がなく、前へ進むか風を受けるかして空気と動き合うことが、揚力の前提だということだ。

身近な例で言えば、うちわであおぐと、空気を前へ押し出す代わりにうちわが後ろへ押される手ごたえがある。翼の場合は、空気を下向きに送る作用の反作用が上向きの力になる、と見ることができる。ただし、これは理解のためのたとえで、翼の実際の流れはもっと複雑である。

だとすれば、冒頭で否定した「圧力が下がる」見方は不要なのか。次章で、2つの見方の関係を整理する。

3. 「あつりょくの ちがい」と 「空気を 曲げる」は、ちがう 話なの?

3. 圧力の見方と反作用の見方は、同じ力を別の面から見ている

3. ベルヌーイの見方とニュートンの見方の関係

NASAの こたえは、「どちらも 正しい」です[4]。「あつりょくの ちがいで 持ち上がる」と いう 見かたも、「空気を 曲げた はんたいの 力」と いう 見かたも、同じ 力を べつの 面から 見て いる のだと いいます[4]。

ただし NASAは、ベルヌーイも ニュートンも、つばさの 揚力ようりょくそのものを せつめいしようと した わけでは ない、とも 言って います[4]。

JALの 機長きちょう、楠義寛くすのきよしひろさんも 話して います。ひこうきは、エンジンの 力で 前へ すすみ、つばさが 風を 受けて 揚力ようりょくが 生まれます。揚力ようりょくが ひこうきの 重さより 大きく なると、ひこうきは うきます[5]。

あつりょくの ちがいの 話は おおむね 正しい。でも、つばさが 空気を 下へ 曲げる ことの 反作用も、大きな 力を 生んで います。機長きちょうは、あつりょくの ちがいと 反作用の 両方に ふれて、つばさの 力を せつめいして います[5]。

エンジンの 力は 前へ すすむ ため、持ち上げるのは つばさの 揚力ようりょくです[5]。それでは、その 揚力ようりょくの 大きさは、なにで かわるのでしょう。

NASAグレン研究センターの別の解説は、「圧力差で持ち上がる」(ベルヌーイ)と「空気を曲げた反作用で持ち上がる」(ニュートン)は、どちらも正しいと述べています。どちらも同じ力を、別の面から見ているのだそうです[4]。圧力の効果を全部足しても、速度の効果を全部足しても、物体にはたらく空気の力が決まります[4]。

ただし、NASAはこうも述べます。ベルヌーイもニュートンも、翼の揚力そのものを説明しようとしたわけではない、と[4]。つまり、2つの見方は、翼の形から揚力を直接導いてくれる理論というより、すでにある力を読み解く道具だと考えるのが良さそうです。

パイロットの説明も同じ方向です。JALの楠義寛くすのきよしひろ機長(2026年3月掲載)は、エンジンの推力で前に進み、翼が風を受けて揚力が生まれ、揚力が機体の重さを上回ると浮く、と説明します[5]。

機長によれば、圧力差の理論はおおむね正しいものの、実際には翼が空気を物理的に下向きに変える反作用も大きな力を生んでいる、と圧力差と反作用の両方に触れています[5]。エンジンは機体を前へ進める役目で、持ち上げるのは翼です[5]。

では、その揚力は、何を変えると大きくなったり小さくなったりするのでしょうか。

圧力の見方とニュートンの見方は対立するのか。NASAグレン研究センターは、どちらも正しく、同じ力を別の面から見ていると述べる。圧力の効果を全体で足し合わせても、速度の効果を足し合わせても、物体にはたらく空気力が決まるからだ[4]。ただし同じ解説は、ベルヌーイもニュートンも翼の揚力そのものを説明しようとしたわけではない、とも書く[4]。つまり、2つの見方は、翼の形から揚力を直接計算するものではなく、物体にはたらく空気の力を読み解く見方だ。

運航の現場の言葉も、同じ方向を向いている。JALの楠義寛くすのきよしひろ機長(2026年3月2日掲載)は、推力で前進し、翼が風を受けて揚力が生まれ、揚力が機体の重さを上回ったときに浮くと説明する。圧力差による理論はおおむね正しいが、翼が空気の流れを下向きに変える反作用も大きな力を生んでおり、2つが組み合わさって機体を持ち上げているという[5]。

ここで注意が要る。NASAは「同じ力を別の面から見ている」と言い、機長は「2つが組み合わさっている」と言う。言い方は違うが、どちらも「圧力差だけ」「反作用だけ」と片方に決めつけない点は共通している。2つの資料の言い方が、厳密に同じ意味なのかまでは、この記事の資料からは決められない。

エンジンの推力は前へ進む力で、機体を支えるのは翼の揚力である[5]。では、その揚力の大きさを動かす要因は何か。まず、翼を風に対してかたむける角度に注目する。

4. つばさの 角度を 大きく すると、どう なるの?

4. 翼の角度を変えると、揚力はどう変わるか

4. 迎え角と失速 ── 揚力が直線的に増える範囲と、急に変わる限界

つばさを、風に 向かって 少し 上向きに かたむけた 角度を、迎え角むかえかくと いいます。この 角度は 揚力ようりょくに 大きく かかわります[6]。

NASAによると、角度が 小さい うちは、角度を 大きく する ほど、揚力ようりょくも ほとんど まっすぐに ふえて いきます。目安の はんいは、プラスマイナス10度ほど です[6]。

けれども、角度を 大きく しすぎると、つばさの ひょうめんに はりついて いた うすい 空気の そうが はがれて しまいます。すると 揚力ようりょくは 急に かわります。これを しっそくと いいます[6]。

どの 角度で しっそくするかを けいさんで 当てるのは、とても むずかしい ことだと されて います[6]。つばさに よって ちがうので、10度は 目安に すぎません。

かたむけるほど よく 持ち上がる、とは かぎらない。それなら、昔の 人は つばさの 形や 角度を、どうやって 調べたのでしょう。

翼を風に対して少し上向きにかたむけた角度を、迎え角といいます。NASAによると、迎え角は揚力に大きく影響します[6]。

角度が小さいうち、目安としてプラスマイナス10度ほどの範囲なら、揚力はほぼ直線的に増えます[6]。この小さい角度の範囲では、角度を大きくすると揚力も増えていきます。

ところが、迎え角が大きくなりすぎると、翼の表面にはりついていた薄い空気の層(境界層)がはがれます。すると揚力が急に変わります。この状態を失速といいます[6]。失速する角度を計算で当てるのは非常にむずかしく、10度というのも目安で、翼によって違います[6]。

流れを曲げることが揚力のもとなら、曲げ方が極端になって流れがついてこれなくなると、揚力が急に変わるのは自然に思えます。

こうした「翼の形と角度で揚力がどう変わるか」という数字は、今では風洞で測られます。120年以上前、それを自分たちで測ろうとした兄弟がいました。

流れを曲げる量は、翼を風に対してどれだけかたむけるかで変わる。この角度が迎え角である。NASAグレン研究センターによれば、翼では迎え角が小さい範囲(およそ±10度)なら、揚力はほぼ直線的に増える[6]。

しかし、迎え角を大きくしすぎると、翼の表面ぞいの薄い空気の層(境界層)がはがれ、揚力が急に変わる。これが失速である[6]。失速する角度を計算で当てるのは非常に難しい[6]。±10度は目安の範囲で、翼ごとに失速角は異なる。

流れを曲げる量が揚力の源なら、曲げ方が極端になって流れが翼面についていけなくなると、揚力の様子が変わると考えられる。これは資料の因果ではなく、私の読み解きだ。

こうした「形と角度で揚力がどう変わるか」は、計算でなく測定で確かめるしかなかった時代がある。それを自分たちの手で測ったのが、ライト兄弟だ。

5. ライト兄弟は、つばさの 数字を 自分で はかった

5. ライト兄弟は、表の数字を疑って翼を測った

5. 1901年のライト兄弟 ── 既存の係数表を疑い、小さな翼模型で揚力を測る

1901年、ライト兄弟は 自分たちで つくった グライダーを とばしました。ところが、思った ほど とびません[7]。

兄弟は、ひこうきづくりに つかっていた 数字の 表を うたがいました。ひとつは、リリエンタールと いう 人の 揚力ようりょくの 表。もうひとつは、18せいきに 風車の ために つくられた 「スミートン係数」で、やく150年、受け入れられて いました[7]。

そこで 兄弟は、自転車の みせの 中に 小さな 風洞ふうどうを つくりました。風を 流す 箱の 中に 小さな つばさの 模型もけいを 入れ、天秤てんびんで 揚力ようりょくを はかりました[7][8]。

模型もけいの 大きさは、3〜8平方インチ。いちばん 多い 6平方インチは、はがきの やく4分の1 です。これは わたしが けいさんした あたいです[8]。

はかってみると、揚力ようりょくの 数字が 1.0を こえる 模型もけいが あり、兄弟の ウィルバーは おどろきました[8]。どの 数字も、リリエンタールや スミートンの 数字と ちがって いました[7]。

兄弟は、小さな つばさを 自分たちで はかり、これまでと ちがう 数字を 見つけました。

1901年、ライト兄弟は自作のグライダーを飛ばしましたが、予想したほど飛びませんでした。兄弟は、設計に使っていた2つの数字を疑います。リリエンタールの揚力の表と、スミートン係数(0.005)です。スミートン係数は18世紀に風車の設計用につくられ、約150年のあいだ受け入れられてきたものでした[7]。

なお、リリエンタールの表が誤りだったと断定はできません。誤りはスミートン係数のほうだとする資料が多いのですが、この記事の資料だけでは、どの数字がどう間違っていたかまでは決められません[7]。

確かめるために、兄弟は自転車店の風洞と天秤を使い、小さな翼模型の揚力を測りました[7]。NASAの解説では、天秤は模型翼の揚力を、平らな板が風から受ける力とつり合わせて測る仕組みでした[8]。

模型の面積は3〜8平方インチ(約19〜52平方センチ)で、多くは6平方インチ、つまり約39平方センチです。はがきのおよそ4分の1で、私が換算した値です[8]。

測った結果は、リリエンタールやスミートンの数字と、どれも違っていました[7]。6平方インチの模型のいくつかは、揚力係数が1.0を超え、ウィルバーを驚かせたそうです[8]。

翼の形がどんな流れをつくるのかが分かる前の時代に、兄弟は、小さな模型を測るという方法で揚力の大きさを調べたのです。

1901年、ライト兄弟が自作のグライダーを飛ばしたところ、期待したほどの揚力が出なかった。ここで兄弟は、機体の設計を直す前に、使っていた数字の側を疑った。疑われたのは、リリエンタールの揚力表と、スミートン係数(0.005)である。後者は18世紀に風車の設計用に作られ、約150年受け入れられてきた[7]。

ただし、「リリエンタールの表が誤り」と断定するのは適切でない。誤りはスミートン係数側にあるとする資料が多く、どの数字がどう違っていたのかは、この記事の資料だけでは分けられない[7]。確かなのは、兄弟が自分たちの測定値が両方と違うと気づいたことだ[7]。

測定の道具は、自転車店の風洞と天秤だった。NASAの解説によれば、天秤は、模型翼の揚力を、平板が風から受ける抗力とつり合わせて読み取る仕組みである[8]。模型の面積は3〜8平方インチ(約19〜52平方センチ。1平方インチ=6.45平方センチとして私が換算)で、多くは6平方インチ(約39平方センチ)だった。はがき(100×148ミリ)の約4分の1にあたる[8]。

結果として、6平方インチの模型のいくつかは揚力係数が1.0を超え、ウィルバー・ライトを驚かせた[8]。風洞で測った翼の種類の数は、資料によって食いちがうため、ここでは「たくさんの形を測った」にとどめる。

ここから分かるのは、揚力の理論が整うずっと前から、翼の形や角度による揚力の違いは、測定によって捉えられていたことだ。理論の説明が教科書で単純化されやすい一方で、飛行機を実際に飛ばす側は、測った数字の上に立っていたとも言える。

6. したじきを 動かして、手に つたわる 力を 感じて みよう

6. 下敷きで、角度による手ごたえの違いを試す

6. 手元で試せることと、読み直せる資料

うすい したじきを 一まい 用意します。おうちの 人と、まわりに 人や ものが ない 広い ところで やって みましょう。

したじきの はしを 持って、ゆっくり 前へ 動かします。まず 地面と 平行に、つぎに 前を 少しだけ 上げて、さいごに もっと 上げて みます。

手に つたわる 力は、角度に よって 同じでしょうか、ちがうでしょうか。ほんものの つばさとは ちがうので、これは 角度で 手ごたえが かわるか どうかを 感じる あそびです。

今度 ひこうきを 見る ときは、つばさが 空気を どちらへ 曲げて いるのか、考えて みて ください。

薄い下敷きを1枚用意し、まわりに人やものがない広い場所で試します。下敷きの端を持ち、ゆっくり前へ動かします。はじめは地面と平行に、次に前を少し上げ、さらに上げてみて、手に伝わる力がどう違うかを感じます。

本物の翼とは形も動かす速さも違うので、迎え角を変えると手ごたえが変わるのかどうかを体で感じる程度のものです。角度の違いを、自分の言葉で書き出してみると、資料の記述と見比べやすくなります。

見直したい点は、「同時に着く」という説明の前提と、圧力・反作用という2つの見方の関係です。NASAグレン研究センターの解説は英語ですが、図を手がかりに読み進められます。

手元で試せることは、下敷きを動かして角度による手ごたえの違いを感じる程度に限られる。形も速さも実物と違い、揚力の数値を得る実験ではない。安全な広い場所で、まわりに人やものがない状態で行う。

読み直せる資料は、次の3つである。第一に、NASAグレン研究センターの初心者向け解説(誤った説明の検討、揚力の定義、ベルヌーイとニュートン、迎え角、ライト兄弟の揚力天秤)。いずれも英語で、図が多い。第二に、ケンブリッジ大学工学部の記事 "How wings really work"(煙の実験映像の説明)。第三に、JALのOnTripにある楠義寛機長の解説(日本語)。

次は、迎え角を変えると揚力がどう変わるかを、NASAの図で確かめてみよう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

「同時に着く」説明の検討、揚力の定義、2つの見方、迎え角、ライト兄弟の風洞実験は、下の資料による。

  1. NASA Glenn Research Center, Beginner's Guide to Aeronautics「Incorrect Theory #1: Equal Transit」 https://www.grc.nasa.gov/www/k-12/VirtualAero/BottleRocket/airplane/wrong1.html (「同時に着く」説明の検討)
  2. University of Cambridge, Department of Engineering「How wings really work」 https://www.eng.cam.ac.uk/news/how-wings-really-work (煙の実験映像、講義での挙手の話)
  3. NASA Glenn Research Center「What is Lift?」 https://www.grc.nasa.gov/www/k-12/VirtualAero/BottleRocket/airplane/lift1.html (揚力の定義と、流れの曲がり)
  4. NASA Glenn Research Center「Lift - Bernoulli and Newton」 https://www.grc.nasa.gov/www/k-12/VirtualAero/BottleRocket/airplane/bernnew.html (圧力の見方とニュートンの見方の関係)
  5. JAL OnTrip「そもそも飛行機はなぜ飛ぶの?」(楠義寛機長、2026年3月2日掲載) https://ontrip.jal.co.jp/_ct/17824119 (機長による解説。推力と揚力の役割)
  6. NASA Glenn Research Center「Lift Coefficient / Angle of Attack」 https://www.grc.nasa.gov/www/k-12/VirtualAero/BottleRocket/airplane/incline.html (迎え角と失速)
  7. U.S. Centennial of Flight Commission「Wright 1901」 https://centennialofflight.net/essay/Wright_Bros/1901/WR3.htm (ライト兄弟が既存の係数表を疑った経緯)
  8. NASA Glenn Research Center「Wright Brothers' Lift Balance」 https://www1.grc.nasa.gov/beginners-guide-to-aeronautics/lift-balance-operation (揚力天秤の仕組みと模型翼の大きさ)

なおした ところ

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