1. 青い すじの 中は、何色の 血?
1. 青い筋の中を流れているのは、何色の血なのか
1. 青く見える静脈の中身は、暗い赤の血である
てくびの 内がわに ある、青っぽい すじ。これは、じょうみゃくと いう 血管です。
でも、血が 青いわけでは ありません。からだの 外に 出た じょうみゃくの 血は、くらい 赤色です[4]。
おどろくのは、この くらい 赤い 血の 中にも、酸素が まだ たくさん あることです。血の 中の 赤い ものの うち、4分の 3ほどは、酸素を つれた ままだと いわれます[4]。
では、その 赤い ものは、何なのでしょう。
筋は青く見えるが、血は青くない
手首の内側に、青みがかった筋が見える人がいます。皮膚のすぐ下を通る静脈です。ただし、血そのものが青いわけではありません。皮膚の光の通り方をコンピューターで再現し、「静脈がなぜ青っぽく見えるのか」を調べた研究があります[6]。調べる対象になっているのは、血の色ではなく、皮膚ごしに見たときの「見え方」のほうです。
静脈の血も、まだ4分の3は酸素つき
静脈の血は、酸素を使い終わった血だと思われがちです。しかし資料の数字では、動脈血でヘモグロビンの約95%が酸素と結合していて、肺に入る前の静脈血(混合静脈血)でも約75%が結合したままです[4]。
この2つの数字を引き算すると、体の中をめぐるあいだに手放される酸素は、ヘモグロビン全体の約20%分です。静脈の血はまだ大部分が酸素を持ったまま、心臓へ戻っていくことになります。
では、「ヘモグロビン」とは何で、赤はそのどこにあるのでしょうか。
手首の内側の静脈が青みがかって見えることは広く知られているが、血液が青いのではない。皮膚の光学モデルのシミュレーションによって「静脈が青く見える理由」を調べた研究が、学位論文として公表されている[6]。この研究が問題にしているのは血の色ではなく、皮膚を通して見たときの見え方である。
数字で見ると、血液の中身のイメージがさらに変わる。資料によれば、動脈血ではヘモグロビンの約95%が酸素と結合しており、肺に入る前の混合静脈血でも約75%は結合したままである。残りの約25%が酸素を持たないヘモグロビンで、これが静脈血の暗い赤色の理由とされる[4]。
この2つの代表値を引き算すると、動脈から静脈に至る間に手放される酸素は約20ポイント分、動脈血が運んでいた酸素の約5分の1にあたる(20÷95≒0.21)。ただしこれは資料の代表的な値どうしの単純な引き算で、実際の値は場所や状態によって変わりうる。静脈血は「酸素の切れた血」ではなく、大部分がなお酸素を持ち、色だけが暗い赤になった血だと読める。では、その赤は、血液のどの成分が担っているのか。
2. 赤の 正体は、赤血球の 中の「ヘム」
2. 赤の正体は、赤血球の中にある鉄を含む色素「ヘム」
2. 赤色素ヘムは、ヘモグロビンの鉄を含む部分である
血の 赤い 色の もとは、赤血球と いう 小さな つぶの 中に あります。赤血球は、まん中が へこんだ、円ばんの ような かたちです。直径は 7〜8マイクロメートルで、1ミリの 中に 130こほど ならびます[5]。
この つぶの 中身は、ほとんどが 水と ヘモグロビンです。ヘモグロビンは、鉄を ふくむ「ヘム」と、たんぱくしつの「グロビン」が くっついた ものです。
血が 赤いのは、ヘムが 赤い 色素を もって いるからです[1]。赤の 正体は、鉄を ふくむ ところの 色なのです。
では、ヘモグロビンは、なぜ 明るい 赤に なったり、くらい 赤に なったり するのでしょう。
赤血球は、ヘモグロビンの入れ物
赤血球は、直径7〜8マイクロメートルの、中央がへこんだ円盤形の細胞で、核がありません。成分の大半は水とヘモグロビンです[5]。1マイクロメートルは1000分の1ミリなので、1ミリの長さに横向きに並べると、130個前後が入る大きさです。
赤い色素は「ヘム」
ヘモグロビンは、鉄を含む「ヘム」と、たんぱく質の「グロビン」が結びついたものです。厚生労働省の「e-ヘルスネット」は、血液が赤いのはヘムが赤色素を持っているためだと説明しています[1]。
ヘムは二価の鉄を含み、ヘモグロビンのほか、ミオグロビンなどの色素部分にもあたるとされます[2]。別の百科事典も、血液の赤さは、赤血球の中の、鉄原子をもつ色素たんぱく質によるものだと述べています[3]。
赤の正体は、鉄を含む色素の色でした。では、その赤が明るくなったり暗くなったりするのは、なぜでしょうか。
血液の赤色は、赤血球に含まれるヘモグロビンの色である。ヘモグロビンは、鉄を含む色素部分(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついたもので、厚生労働省のe-ヘルスネットは、血液が赤いのはヘムが赤色素を持つためだと説明している[1]。ヘムは二価の鉄を含む色素で、ヘモグロビンのほか、ミオグロビンやシトクロムなどの色素部分にもあたる[2]。世界大百科事典の旧版も、血液の赤さは赤血球の中の鉄原子をもつ色素たんぱく質によると記している[3]。
この色素の入れ物である赤血球は、直径7〜8μmの中央がへこんだ円盤状で、核がなく、成分の大半は水とヘモグロビンである[5]。7〜8μmは0.007〜0.008mmなので、1mmの幅に横向きで並べると、およそ125〜140個が入る計算になる。1つ1つは小さいが、そのほとんどが色素たんぱく質で満たされている。
では、酸素が結びつくと、ヘモグロビンの赤はどう変わるのか。
3. 酸素を もつと 明るい 赤、はなすと くらい 赤
3. 酸素を持つと鮮やかな赤、手放すと暗い赤
3. ヘモグロビンの色は、酸素との結合で明るさが変わる
ヘモグロビン 1こには、鉄が 4つ あります。鉄 1つに つき、酸素が 1つ くっつけます[3]。
酸素が くっつくと、ヘモグロビンは あざやかな 赤に なります。酸素を はなすと、くらい 赤に なります[4]。
はいを 通った ばかりの 血が あかるい 赤、からだを めぐって 酸素を はなした 血が くらい 赤なのは、この ためです[4]。
赤い 色は 1つでは なくて、酸素の あるなしで、あかるさが かわるのです。では、くらい 赤の 血が 通る じょうみゃくは、どうして 青く 見えるのでしょう。
1個のヘモグロビンに、鉄が4つ
ヘモグロビン1分子には鉄原子が4個含まれていて、鉄原子1個につき、酸素が1分子ずつ結びつきます[3]。この結びつきは、酸素が多い場所では結びつき、少ない場所では離れる、元に戻せるものです。
酸素が結びつくと明るくなる
ヘモグロビンは、酸素と結びつくと鮮やかな赤(鮮赤色)になり、結びついていないと暗赤色になります。肺を通った動脈血が鮮やかな赤で、静脈血が暗い赤なのは、このためです[4]。百科事典も、動脈血は大部分のヘモグロビンに酸素が結びついて鮮紅色を呈すると述べています[3]。
同じ赤でも、酸素を持った分だけ明るくなります。では、暗い赤の血が流れる静脈は、なぜ皮膚の下で青く見えるのでしょうか。
ヘモグロビン1分子には鉄原子が4個含まれ、鉄原子1個につき酸素1分子が結合する。この結合は可逆的で、酸素の多い肺では結合し、少ない末梢では離れる[3]。1分子あたり最大で4分子の酸素を受け取れる計算になる。
この結合状態が、色にそのまま現れる。ヘモグロビンは酸素と結合すると鮮赤色、結合していないと暗赤色になり、肺を通った動脈血が鮮赤色、静脈血が暗赤色なのはそのためである[4]。世界大百科事典(旧版)の記述も、動脈血は大部分のヘモグロビンに酸素が結合して鮮紅色を呈する、というものである[3]。
前章の数字と合わせると、静脈血の色は「酸素ゼロの色」ではなく、酸素つきのヘモグロビンが約75%、酸素なしが約25%の混ざった色だと読める。血の赤は固定された1色ではなく、結合した酸素の割合で明るさが動く色である。それでも、体の外に出して見れば静脈血は赤い。では、皮膚の下の静脈が青く見えるのはなぜか。
4. 赤い 血なのに、すじが 青く 見えるのは?
4. 赤い血が皮膚の下で青く見える理由は、説明が分かれている
4. 静脈が青く見える理由:散乱説、錯視説と、見直された説明
これには、いくつかの せつめいが 出されて いて、「これだ」と 1つに きまった わけでは ありません[8]。
1つは、皮膚の 光の せつめいです。ある 研究者は、皮膚の 手前の ところで、青い 光が ちらばって、のこりの 赤や みどりの 光は、おくの 色素に すわれる、と 考えて います[8]。
もう 1つは、目の かんちがいです。すじの まわりの 色との くらべかたで、青く 見えるだけだ、と いう 考えも あります[8]。
どの せつめいでも、血が 青い わけでは ありません。血は 赤い まま、見え方の 話だと いうことです。
1つ目の説明:光の散乱と吸収
ある説明では、手前の組織で青い光が散らばり、残りの赤や緑の光は奥の色素に吸収されるために、青く見えると考えます[8]。皮膚の浅い層にあるコラーゲンの線維が、光を散らす役目を果たしうる、というシミュレーション研究もあります[7]。青い光ほど散らされやすい、という性質が背景にあります。
2つ目の説明:色の見え方の錯視
一方、静脈は青くなく、青く見えるのは錯視(色の対比による見え方のずれ)だと述べる研究者もいます[8]。また、1996年に、静脈が青い理由は、青い光が赤い光より多く戻ってくることではない、と報告した論文があるといいます[8]。単純な「青い光が跳ね返るから」という説明は、そのままでは見直されているようです。
1つに決まっていない
このように、静脈が青く見える理由には複数の説明が出されていて、「これだ」と1つに決まったわけではありません。どの説明でも共通しているのは、血液そのものは赤いということです。
この問いには複数の説明が出されている。立命館大学の北岡明佳による文献整理のページ[8]は、少なくとも2つの立場を並べている。
1つ目は光学的な説明である。榎本知朗の説明として、手前の組織で青い光が散乱され、残りの赤や緑の光が向こう側の色素に吸収されるため、静脈が青く見えるという[8]。皮膚の光学モデルによるシミュレーション(J. Biomed. Opt. 23(2), 2018)は、真皮乳頭層のコラーゲン線維によるレイリー散乱が、静脈の青みに重要な役割を果たしうると示した[7]。レイリー散乱は、波長の短い青い光ほど散乱されやすい性質をもつ。ただし、この研究は「重要な役割を果たしうる」ことを示したもので、これだけで青みの全てを決める原因だと主張するものではない。
2つ目は錯視説で、北岡自身は、静脈は青くなく、青く見えるのは錯視(色の対比)だと述べる[8]。さらにそのページは、Kienleらが1996年にApplied Opticsで、静脈が青く見える理由は「赤い光に比べて青い光が多く戻ってくること」ではないと報告したと引用している[8]。この説明は、北岡の文献整理ページがKienleらの報告として紹介しているものである。「青い光が跳ね返るから」という単純な説明は、そのままでは見直されている、と読める。
以上から、1つの原因で決着した、とは言えない。血液そのものは赤く、青く見える理由には複数の説明がある。では、血そのものが青い動物はいないのか。
5. 血が 青く なる 生きものも いる
5. 酸素で青くなる血をもつ生きものもいる
5. 銅をもつヘモシアニン:酸素と結合して青くなる色素
イカや タコ、ザリガニの 血には、ヘモシアニンと いう 色素が あります[9]。これは、鉄では なくて、銅を もっています。
ヘモシアニンは、ふだんは 色が ありません。酸素が くっつくと、青く なります[9]。
ヘモグロビンと おなじように、酸素を はこぶ はたらきを します。人の 血の 赤は 鉄の 色、イカの 血の 青は 銅の 色素の 色です。
鉄の赤と、銅の青
イカ、タコ、ザリガニなどの血には、ヘモシアニンという色素たんぱく質があります。ヘモグロビンと同じように酸素を運びますが、含んでいるのは鉄ではなく銅です。それ自身は無色で、酸素が結びつくと青色に変わります[9]。
人の静脈が「青く見える」のは見え方の話でしたが、ヘモシアニンの青は、酸素が結びつくと色素そのものが青くなる、本物の色の変化です。
ヘモグロビンとは別の酸素運搬色素として、ヘモシアニンがある。銅を含む色素たんぱく質で、各サブユニットが2個の銅原子をもつ。それ自身は無色だが、酸素が結合すると青色に変わる。イカ・タコ・ザリガニなど、軟体動物や節足動物の血漿中に存在する[9]。
人の静脈が青く見えるのは、暗い赤の血を皮膚の層を通して見た見え方の問題で、血そのものは赤い。それに対しヘモシアニンでは、酸素が結合すると色素の色そのものが青く変わる。同じ「酸素を運ぶ」役目でも、鉄をもつヘムは赤、銅をもつ色素は酸素を結びつけると青、と色の出方が違う。
6. てくびの すじを、あかるい ところと くらい ところで 見くらべよう
6. 手首の筋を、明るい場所と暗めの部屋で見比べてみる
6. 手首の静脈を、明るさを変えて見比べて観察する
てくびの 内がわに、青っぽい すじが 見える 人は、見てみましょう。見えにくい 人は、むりを しなくて だいじょうぶです。
まず、あかるい まどの そばと、すこし くらい へやで、おなじ すじを 見くらべます。見え方が かわるか、メモします。
すじの まわりの ひふの 色も いっしょに 見て、すじの 色が どう 見えるか、ことばで かいてみましょう。
ここで 分かるのは、自分の 目で どう 見えるかだけです。どの せつめいが 正しいかは、これでは きまりません。
おうちの 人と、見え方を くらべっこして みるのも いいでしょう。
自分の目で試す
手首の内側に青っぽい筋が見える人は、見え方を調べてみましょう。見えにくい人は、無理をしなくて大丈夫です。
明るい窓際と、少し暗い部屋で、同じ筋の色の見え方を見比べます。筋の色が、まわりの皮膚の色とどう違って見えるかを、言葉でメモします。
これは、見え方を比べる観察です。結果は人によって違うかもしれませんし、どの説が正しいかは、これだけでは決まりません。
原典を読むなら
出典欄の北岡明佳さんのページは日本語で読める文献整理で、散乱説と錯視説の言い分が並べて載っています。同じ筋でも、説明が1つに決まっていない様子を、そこで読み比べられます。
手首の内側に静脈が青く見える人は、明るい場所と暗めの部屋とで、同じ筋の見え方が変わるかを比べる観察ができる。筋の色が周囲の皮膚の色とどう違って見えるかも、言葉で記録しておく。
これは見え方を比べる観察で、錯視説や散乱説の検証ではない。見え方は人によって異なるかもしれず、この観察だけでどの説明が正しいかは決まらない。
原典にあたるなら、まず出典欄の北岡明佳のページ(日本語)が入口になる。散乱説・錯視説の主張者と文献が並んでおり、複数の説明を読み比べられる。ヘモグロビン周辺の数字(酸素と結合した割合など)は、解説資料の代表値である点にも注意したい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数字は資料の代表的な値で、状態によって変わります。
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「Hb/血色素量」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-074.html (血が赤いのはヘムが赤色素をもつため)
- コトバンク「ヘム」(栄養・生化学辞典ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%83%98%E3%83%A0-130118 (ヘムは二価の鉄を含む色素部分)
- コトバンク「ヘモグロビン」(日本大百科全書・世界大百科事典ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%83%98%E3%83%A2%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%93%E3%83%B3-130136 (鉄4個と酸素の結合、動脈血の色)
- カンゴルー「動脈血と静脈血・ヘモグロビン」 https://www.kango-roo.com/learning/2193/ (鮮赤色と暗赤色、酸素結合の割合)
- カンゴルー「赤血球・ヘモグロビン」 https://www.kango-roo.com/learning/2192/ (赤血球の大きさと形)
- Van Leeuwen, On the Bluish Appearance of Veins(ウォータールー大学 学位論文, 2018) https://uwspace.uwaterloo.ca/items/a5b96f50-b9c7-475f-8661-7977ae6f48ab (静脈が青く見える理由を調べた研究。要旨による)
- Journal of Biomedical Optics 23(2), 025001 (2018) https://www.spiedigitallibrary.org/journals/Journal-of-Biomedical-Optics/volume-23/issue-2/025001/Elucidating-the-contribution-of-Rayleigh-scattering-to-the-bluish-appearance/10.1117/1.JBO.23.2.025001.full (レイリー散乱とコラーゲン線維。要旨による)
- 北岡明佳「静脈の色」文献整理(立命館大学) https://www.psy.ritsumei.ac.jp/akitaoka/koshogakkai2016.html (散乱説と錯視説、Kienleらの報告の引用)
- コトバンク「ヘモシアニン」(デジタル大辞泉・世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/%E3%81%B8%E3%82%82%E3%81%97%E3%81%82%E3%81%AB%E3%82%93-3168899 (銅をもつ青い色素)
なおした ところ
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