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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ほねは おれても、きずあとが のこらないの?

折れた骨は、なぜ傷あとではなく「骨」で作り直されるのか

折れた骨は、なぜ傷あとを残さず元にもどるのか ── 治る順序と固定の役目

分野:からだ

ひざを すりむくと、きずあとが のこる ことが あります。ところが ほねは、ちゃんと なおして もらえば、おれても もとの ほねの つくりに もどって いくと いわれて います[1][2]。

きずあとの かわりに、どうやって ほんものの ほねを つくりなおすのでしょう。血の かたまり、骨膜こつまくの 細胞さいぼう、軟骨なんこつが、それぞれ なにを して いるのかが わかります。

すりむいた皮膚は、治ったあとに傷あとが残ることがあります。ところが骨は、折れても、治療の条件が整えば、元の構造と形を取りもどす力が強い器官だと、日本の医学雑誌の解説にも国際誌の総説にも書かれています[1][2]。

傷あとで埋めずに、なぜ本物の骨で作り直せるのでしょうか。折れた直後の血のかたまりから、骨膜の細胞、軟骨を経る2つの道、固定のしかた、子どもの治りの速さまで、どんな働きがつながっているのかが分かります。

皮膚の傷は瘢痕を残して治るが、骨は折れても、治療が適切で重大な問題がなければ、本来の構造と形を回復する。福岡医学雑誌の解説は、骨をそうした再生能力の旺盛な器官と位置づけている[1]。骨がつながったあとも、ゆっくりしたリモデリングで元の骨の構造が再構成されると、国際誌の総説は述べる[2]。

では、傷あとで済ませない作り直しは、何をきっかけに、どんな順で進むのか。血腫、骨膜細胞、軟骨を経る2つの骨化、固定の安定性、子どもでの違いまでが、国内外の資料で、どこまで言えるのかが分かる。

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1. すりきずは あとが のこるのに、ほねは どうなの?

1. すりむいた傷にはあとが残るのに、骨は折れても骨で作り直される

1. 皮膚は瘢痕で治り、骨は本来の構造を回復する

ひざを すりむいて、しろい せんが のこった ことは ありませんか。皮膚ひふは、きずが なおっても、あとが のこる ことが あります。

では、ほねが おれたら どうでしょう。ちゃんと なおして もらえば、おれた ところは もとの ほねの つくりに もどって いくと いわれて います[1]。きずあとで ふさぐのでは なく、ほんものの ほねを また つくる、という ことです。

どうして そんな ことが できるのでしょう。まず、ほねが おれた すぐあとに、おれた ところで なにが おきるのかを みて みます。

ひざをすりむくと、治ったあとに白っぽい線が残ることがあります。皮膚の傷や胃にできた潰瘍は、傷口を埋める瘢痕組織、つまり傷あとのための組織で治ります。

ところが骨は、福岡医学雑誌の解説によると、本来の構造と形を取りもどす再生能力の旺盛な器官です。ただし総説は「治療が最適化され、ほかに重大な問題がない場合」と条件をつけています[1]。骨がつながったあとも、ゆっくりした作り直し(リモデリング)が続き、最終的に元の骨の構造が再構成されると、国際誌の総説にも書かれています[2]。

傷あとで埋めるのではなく、骨そのものを作り直す。その手順は、どこから始まるのでしょうか。折れた直後の、折れ目の中をのぞいてみます。

皮膚の傷は、治ったあとに傷あとが残る。胃潰瘍も瘢痕組織で治る。多くの器官がこうした治り方をするなかで、骨は例外的に、治療が適切で重大な問題がなければ本来の構造と形を回復する、再生能力の旺盛な器官だと、神宮司誠也の解説(2002年)は述べている[1]。

この「回復」は、骨がつながった時点で終わりではない。骨折の治癒は炎症期・修復期・リモデリング期の順に進み、骨が仮骨でつながったあとも、ゆっくりしたリモデリングが続いて、最終的に元の骨の構造が再構成されると、Claesらの総説は整理している[2]。傷を埋めて終わるのではなく、骨そのものを作り直して終わる治り方だと読める。

では、その作り直しは、折れた瞬間から何をきっかけに始まるのか。まず折れ目にたまる血のかたまりに注目する。

2. おれた すぐあとの 血の かたまりは、合図に なる?

2. 折れ目にたまった血のかたまりが、作り直しを始める合図になる

2. 血腫と血小板 ── 治癒の「引き金」と考えられている成長因子

ほねが おれると、おれた ところの まわりに 血が たまって、かたまりに なります。

この 血の かたまりは、ただの よごれでは ないと かんがえられて います。血の なかの 血小板けっしょうばんが、ほねを なおす はたらきの 「ひきがね」に なって いる ようなのです[1]。

ためした じっけんが あります。おれて いない ほねの 骨膜こつまくの したに、血小板が だす ものと おなじ はたらきを する ものを いれました。すると、ほねや 軟骨なんこつが まざった、おれた ところの かたまりに にた ものが できました。

ただし、かいた ひとは 「ひきがねに なって いると かんがえられる」と、いいきっては いません。では、この 合図を うけとる のは、なんでしょう。

骨が折れると、折れ目のまわりに血がたまり、固まります。これを血腫といいます。解説によると、この血腫は折れた場所から、近くの骨膜の上まで広がります。骨膜は、骨の表面を包む膜です[1]。

血のかたまりには血小板が含まれていて、血小板が放出する成長因子(TGFβ、PDGF)が、治る過程の「引き金」になっていると考えられています[1]。その手がかりになった実験があります。折れていない骨の骨膜の下に、このうちTGFβを入れたところ、骨や軟骨を含む、仮骨とよく似た組織ができたのです。仮骨は、折れ目にできる新しい骨のかたまりです。

ただし論文の書き方は「考えられる」で、引き金だと言い切ってはいません。そして、免疫細胞が集まる炎症反応も、修復の開始に関わるとされています[2]。血のかたまりは、ただの出血のあとではなく、次の作業を知らせる場所のようです。

では、その合図を受けて、最初に動きだすのはどの細胞でしょうか。

骨が折れると、折れ目に血液がたまって血腫ができる。神宮司の解説によれば、この血腫は骨折部から近くの骨膜の上にまで広がり、血小板から放出される成長因子のTGFβやPDGFが、治癒の引き金になっていると考えられている[1]。

根拠の一つは、折れていない骨の骨膜の下にTGFβを投与した実験である。骨組織や軟骨組織を含む、仮骨と類似の組織ができた。折れていなくても、この成長因子があれば骨づくりに近いことが始まる。そのため、血腫は単なる出血の跡ではなく、治癒の開始を知らせる場所だと考えられているのである。ただし原文の表現は「考えられる」にとどまり、引き金だと断定してはいない。

これに、免疫細胞が出る炎症反応が重なる。Claesらの総説は、炎症反応が修復の開始に関わると述べる[2]。血腫と炎症は、治癒の最初の段階を形づくる。では、その合図を受けて、最初に増えはじめるのはどの細胞か。

3. 合図を うけて、ほねの まくの さいぼうが ふえる

3. 合図を受けた骨膜の細胞が、新しい骨をつくりはじめる

3. 骨膜細胞の増殖と骨芽細胞への分化 ── ラットで見えた時間割

骨膜こつまくは、ほねの ひょうめんを つつむ うすい まくです。ここに いる 細胞さいぼうが、合図を うけて ふえはじめます。

ラットで しらべた 日本語の せつめいでは、おれて 1日めごろから、おれた ところの りょうわきで、骨膜こつまくの 細胞さいぼうが ふえました。2〜3日めには、まだ かたく なって いない あたらしい ほねが みえはじめました[1]。

この 細胞さいぼうは、ほねを つくる 細胞さいぼうに かわって いきます。ただし、この 日にちは ラットの ものです。ヒトでは じかんの ものさしが ちがうので、おなじ 日にちでは ありません。

ほねの できかたは、じつは ひとつでは ありません。つぎは、もう ひとつの みちの はなしです。

骨膜は、骨の表面を包む膜です。血腫から合図が届くと、ここにいる細胞が働きはじめます。

福岡医学雑誌の解説にあるラットの実験では、骨折の1日目ごろから、折れ目の両わきで骨膜の細胞がふえはじめました。2〜3日後には、まだ石灰化していない新しい骨(オステオイド)が、折れ目の近くに見えはじめます。骨膜の細胞は、骨をつくる骨芽細胞へ変わっていきます[1]。

驚くのは、その正確さです。同じように骨折させたラットでは、骨折後の何日目に、どこに、どんな組織が見えるかが、個体によって変わらないほどそろっていました。解説は、治る過程が非常によく制御されていると評しています[1]。ヒトでもほぼ同じことが起きていると思われますが、時間の尺度は違うので、ここに出てくる日数をヒトの日数として読むことはできません。

骨膜から新しい骨ができる道は、骨ができる道の一つにすぎません。もう一つは、軟骨を通る道です。

合図を受けて動きだすのは、骨の表面を包む骨膜の細胞である。ラットの骨折では、骨折後1日目ごろから折れ目の両側で骨膜細胞が増殖し、2〜3日後には、石灰化していない新生骨梁組織(オステオイド)が折れ目の近くに見えはじめる。骨膜細胞は骨芽細胞へ分化していく[1]。

注目したいのは、この過程が毎回ほぼ同じ時間割で進むことだ。同じ条件で骨折をおこしたラットでは、何日目にどこにどのような組織が見えるかに、個体差がないといえるほどだった。解説は、治癒がきわめてよく制御された過程だとまとめている[1]。ただし、これはラットの日数である。ヒトでもほぼ同じことが起きていると思われるが、時間の尺度は異なる。ここで出てきた日数をヒトに当てはめることはできない。

骨膜から直接骨ができるこの道は、骨膜性骨化と呼ばれる。ところが骨は、この道だけでは作られない。同じ仮骨の中で、もう1つの道が並行して進む。

4. ほねが できる みちは ふたつ。なんこつを とおる みちって?

4. 骨ができる道は2つ。骨膜から直接つくる道と、軟骨を経る道

4. 骨膜性骨化と内軟骨性骨化 ── 仮骨の中で同時に進む2つの道

おれた ところに できる あたらしい かたまりを、仮骨かこつと いいます。「かりの ほね」と いう いみです。

仮骨かこつの なかには、ほねに なる ぶぶんと、軟骨なんこつに なる ぶぶんが あります。ほねは ふたつの みちで できて、どちらも おなじ ころに すすみます[1]。

ひとつめは、骨膜こつまくから じかに ほねを つくる みち。ふたつめは、いったん 軟骨なんこつを つくって、あとで ほねに おきかえる みちです。ラットでは、2しゅうかん ごろに、この おきかえが はじまりました。

かわに はしを かける 工事を おもいうかべて ください。はじめに 足場や かりの はしを つくり、あとで ほんものの はしに つくりかえます。軟骨なんこつは、その 足場の ような ものです。ただし 本当の 軟骨なんこつは、外して すてる 足場では なく、軟骨なんこつが ほねに おきかわります。

おなじ おれかたでも、仮骨かこつが たくさん できる ときと、ほとんど みえない ときが あるそうです。なにが ちがうのでしょう。

折れ目にできる新しい骨のかたまりを、仮骨といいます。仮骨には骨になる部分と軟骨になる部分があり、骨ができる道が2つ、同時に進みます[1]。

1つは、骨膜から直接骨ができる道(骨膜性骨化)。もう1つは、いったん軟骨をつくり、あとで骨に置きかえる道(内軟骨性骨化)です。ラットでは、骨折後2週間ごろに、新しい骨と軟骨の境目で、軟骨が骨に置きかわりはじめました[1]。

川に橋をかける工事にたとえると、先に仮の足場を組み、あとで本物の橋に置きかえる手順に似ています。ただし、これはたとえです。軟骨は取り外される足場ではなく、軟骨そのものが骨に置きかわります。

ここまでで、血のかたまり、骨膜の細胞、軟骨という流れが見えました。ところが、同じ折れ方でも、仮骨がたくさんできる骨折と、ほとんど見えない骨折があるといいます。何がちがいを決めるのでしょうか。

折れ目にできる仮骨の中では、骨のでき方が1通りではない。仮骨には骨になる部分と軟骨になる部分があり、骨ができる道は2通りが同時に進む[1]。

1つは、骨膜性骨化。もう1つは、いったん軟骨をつくってから骨に置きかえる内軟骨性骨化で、ラットでは骨折後2週間ごろに、新生骨梁組織と軟骨組織の境目で始まる[1]。ここで注意したいのは、2つの道が順番に起きるのではなく、同じ仮骨の中で並行する点だ。内軟骨性骨化が2週間ごろに始まるからといって、それまで骨膜性骨化しかなかったという意味ではない。

骨を直接足す道と、軟骨で先に形をつくってから骨に置きかえる道の二本立てで、折れ目は埋まっていく。では、仮骨のでき方は、骨折のしかたによらず同じなのか。次に、固定のしかたとの関係を見る。

5. ささえかたで、仮骨かこつの りょうが かわる?

5. 動きをどれだけ残して固定するかで、仮骨の量が変わる

5. 固定の安定性と血流 ── 直接的骨癒合と間接的骨癒合

おれた ほねは、ギプスや、ほねの なかに いれる ながい くぎの ような ものを つかって、うごかないように ささえます。

ふしぎな ことに、ささえ かたで、仮骨かこつの できかたが かわります。すこし うごきを のこす ほうほうでは、仮骨かこつを つくって ほねが つながります。ほねの かけらを ぎゅっと おしつけて つよく とめると、仮骨かこつが みえない ふうに くっつくそうです[3][4]。

どちらも ほねは つながります。くっつきかたが ふたとおり ある、という ことです。

もうひとつ、大切なのが 血です。おれた ところに 血が もどる ことと、ささえの かたさが、なおりかたを 大きく きめると 書かれて います[2]。

では、子どもの ほねは、おとなより はやく なおると いわれるのは、なぜでしょう。

骨折の治療では、折れた骨が動かないように、ギプスや金属で固定します。ただ、固定は「できるだけ動かさない」だけの話ではありません。動きを残すかどうかで、骨のつながり方が変わります。

日本の整形外科の解説によれば、骨癒合には直接的骨癒合と間接的骨癒合の2種類があります。直接的骨癒合は絶対的安定性、つまり隙間なく強固に固定することで、間接的骨癒合は相対的安定性、つまり多少の動きを残す固定で得られます[3]。

骨のかけらを圧迫して強く固定すると、仮骨が見えない特殊なつながり方になり、これが直接的骨癒合と呼ばれています[4]。動きを残す固定のほうは、仮骨をつくってつながる、ふつうの治り方になります。

もう1つ、治り方を左右するのが血流です。Claesらの総説は、治癒の経過は、固定の安定性と、傷んだ場所に血液がもどること(血流の回復)に大きく左右されると述べています。関節リウマチや糖尿病のような全身の炎症があると、治るのに時間がかかったり、骨がつながらない偽関節になる危険が高まりうる、とも書かれています[2]。

固定の方法は、骨折の場所や状態を見て、医師が選ぶものです。ここで読み取れるのは、動きの残し方が仮骨の量を変える、という点までです。では、子どもの骨は、なぜ大人より早く治るといわれるのでしょうか。

同じ骨折でも、固定の安定性が違えば、骨のつながり方そのものが変わる。新倉隆宏の解説の要旨は、骨癒合には直接的骨癒合と間接的骨癒合の2種類があり、前者は絶対的安定性の獲得で、後者は相対的安定性の獲得で得られると述べる[3]。

絶対的安定性は、骨片を圧迫して隙間なく強固に固定した状態、相対的安定性は、癒合を妨げない程度の動きを残した状態を指す。臨床整形外科の解説は、強固に固定した場合は仮骨の見られない特殊な癒合形態になり、これが直接的骨癒合と呼ばれたとしている[4]。動きを残す間接的骨癒合は、仮骨を介してつながる。この部分は学術誌の要旨で確かめた範囲なので、固定法ごとの詳しい条件は原典に当たる必要がある。

固定は、強ければ強いほどよい、という単純な話ではなさそうだ。少なくとも、強固な固定は、仮骨の見えない別の治り方になる。Claesらは、治癒の経過を主に左右するものとして、固定の安定性(生体力学)と、外傷後の血流の回復(再血管化)を挙げる[2]。

全身の炎症(関節リウマチ、糖尿病など)は、治癒に時間がかかったり、癒合しない偽関節になる危険を高めうる[2]。炎症反応は修復の開始にも関わるため、炎症は、あれば悪い、なければよい、という二分では語れない。

ここまで見てきたのは、骨折全般に関わる治り方である。では、この治り方が、成長期の子どもではどう違って見えるのか。

6. 子どもの ほねが はやく なおるのは なぜ?

6. 子どもの骨が早く治る理由と、「何でも元通り」ではない限界

6. 小児の骨折 ── 強い骨膜・成長期の遺伝子・リモデリングの限界

子どもの ほねは、おとなより はやく なおる ことが おおいと いわれます[5]。りゆうの ひとつは、子どもの 骨膜こつまくが じょうぶで、骨膜こつまくの したに たまる 血の かたまりも 大きい ことと せつめいされて います。そのため 仮骨かこつが はやく できると いう ことです。

もうひとつは、せいちょう中の 子どもでは、ほねを つくる はたらきが、おれた ときに もう うごいて いる ことです。おとなは それを もういちど うごかす ひつようが あるので、すこし おそく なる、という せつめいです。ただし これは しらべた ひとの かんがえで、いつでも あてはまる きまりでは ありません。

子どもは、ぴったり もとの ばしょに ついて いなくても、つくりなおしで なおる よちが 大きいと いわれます。でも、どんな ゆがみでも なおる わけでは ありません。ほねの しゅるいや、とし、かんせつに ちかいか、むきで ちがいます[6]。

ギプスを つける ながさは、子どもでは 1〜3か月 ほどの ことが おおく、そのあとも なおるのは つづきます[7]。手の ほねは 血が よく めぐって いて、太ももの ほねは まわりを にくや すじが おおって いるので、わりと はやく なおる ほうだと いわれます。すねは おそい など、ばしょでも ちがいます。

では、この なおりかたを、じぶんの 目で たしかめる てがかりは あるのでしょうか。

子どもの骨折は、大人より早く治るといわれます。理由として、小児の骨折をまとめたLindamanの論文は、丈夫な骨膜と、骨膜の下にたまる大きな血腫が、十分な強さの仮骨を早くつくるのを助けると説明しています[5]。

もう1つの説明は、骨をつくる遺伝子やホルモンが、骨折のあとの治りも進める、というものです。成長期の子どもでは、骨折したときにはすでにその働きが動いています。大人はそれをもう一度働かせる必要があるため、回復が遅くなるといいます[5]。これは著者の説明で、骨折の治り方の一般的な決まりとして言い切られているわけではありません。

子どもでは、ぴったり元の位置でなくても、骨の作り直し(リモデリング)で直る余地が大きく、癒合しないこともまれだとされます[6]。ただし、直る度合いは、骨の種類、年齢、関節からの近さ、骨の向きで変わります。Wilkinsの論文では、典型的な長骨では、リモデリングのおよそ75%は成長板の向きが変わることで起き、骨の幹の部分が追加で作り直される分は約25%とされています。どんなゆがみでも直るわけではありません。

ギプスや副木をつける期間は、子どもでは多くの場合1〜3か月で、その後も治りは続きます。手の骨は血流が豊かで、太ももの骨は周囲の軟部組織に覆われているため、比較的早く治る傾向があり、すねは遅いなど、部位でも違います[7]。いずれも目安で、一人ひとりで差があります。

治る過程に登場する働きは、ここまででひと通り出ました。では、この話を、自分の暮らしの中でどう確かめられるでしょうか。

子どもが大人より骨折の治りが早いのは、なぜか。Lindamanの総説は、丈夫な骨膜と大きな骨膜下血腫が、十分な強さの仮骨を早くつくるためと説明する[5]。第2章の血腫と第3章の骨膜が、小児ではどちらも「大きい・強い」ほうに効く、と読むと筋が通る。

もう1つの説明は、骨の発生を進める遺伝子やホルモンが、骨折の治癒も進めるというものだ。成長期の子どもでは、その働きが骨折の時点ですでに動いており、大人はそれを再び働かせる必要があるため、回復が遅れる[5]。これは著者による説明であり、骨折の治癒は発生のやり直しだと、一般論として確定した話ではない。

「元に戻る」には条件がある。Wilkinsの総説は、子どもの骨折は癒合しないことがまれで、元の位置とぴったり合っていなくてもリモデリングで直る余地が大きいとする一方、その度合いは骨の種類、年齢、関節からの近さ、骨の向きで変わると述べる[6]。典型的な長骨では、リモデリングの約75%は成長板の向きの変化によるもので、骨幹で追加的に骨が作り直される分は約25%にとどまる。成長板の向きが変わる余地の有無が、直り方に大きく効くと読める。

治療期間の目安としては、ギプスや副木を使う期間は、子どもでは多くが1〜3か月で、治癒はその後も続く。手の骨は血流が豊かで、大腿骨は周囲の軟部組織に覆われているため比較的早く治る傾向があり、すねは遅いというように、部位でも差がある[7]。

ここまでの内容は、ラットの実験や臨床の報告からの整理であり、一人ひとりの治る速さを予測するものではない。では、この道すじを、どう確かめ、どこから読みはじめればよいか。

7. 日にちを かぞえて、ほねの なかを おもいうかべよう

7. ギプスの期間をカレンダーで数えて、骨の中の順番を言ってみる

7. 期間の目安を日付で数える ── 読むならどの資料からか

カレンダーを ひらいて、きょうから 1か月 あとと、3か月 あとが いつか、かぞえて みましょう。子どもの ギプスは、おおくの ばあい、そのくらいの あいだ つづくと いわれます[7]。

その あいだに、ほねの なかで すすむ ことを、じゅんばんに いって みます。血の かたまりが 合図を だし、骨膜こつまくの 細胞さいぼうが ふえ、軟骨なんこつを はさんで ほねに なり、さいごは もとの かたちに つくりなおされます。

ヒトでは、なん日めに なにが おきるのか。それは、この きじでは わかりません。しらべて みると おもしろい もんだいです。

カレンダーを開き、今日から1か月後と3か月後の日付を数えてみましょう。子どものギプスや副木は、多くの場合そのくらいの期間つけるといわれます[7]。この期間は、骨の修復期にあたります。

そのあいだに骨の中で進む順番を、自分の言葉で言えるか試すのも一つの手です。血腫が合図を出し、骨膜の細胞がふえ、軟骨を経る道と直接の道で仮骨ができ、最後にゆっくりした作り直しが続きます。

日数には注意が要ります。ラットで見えた「2〜3日後」や「2週間ごろ」は、ヒトの日数ではありません。ヒトでは何日目に何が起きるのか、というのは、この記事では扱っていない問いです。福岡医学雑誌の解説[1]は日本語で読め、ラットの時間割がどう調べられたかの入口になります。炎症期・修復期・リモデリング期の整理は、Claesらの総説[2]にあります。

子どものギプスは1〜3か月が多いという目安[7]を、日付で数えてみる。今日から30日後と90日後は何月何日か。その間に骨の中で進むとされる順序(血腫、骨膜細胞の増殖、軟骨を経由する骨化、リモデリング)を章ごとに言い直せるか試すと、読んだ内容の抜けが分かる。

読むなら、まず福岡医学雑誌の解説[1]。ラットでの時間割と、骨膜性・内軟骨性の2つの道を、日本語でたどれる。固定と仮骨の関係は、新倉の要旨[3]と臨床整形外科の解説[4]。子どもの治りは、Lindaman[5]とWilkins[6]。英語の論文は、要旨だけなら短く読める。

残る問いもある。ラットの日数は、ヒトでは何日にあたるのか。仮骨の見えない直接的骨癒合は、仮骨のある治り方と、強さや長期の経過でどう違うのか。これらは、今回の資料の範囲を超える問いで、原典や、より新しい総説で調べる価値がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本語の解説、国際誌の総説、小児骨折の論文、医療機関の案内を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 神宮司誠也「骨折治癒のしくみ―骨の再生能力―」福岡医学雑誌93(7), 2002。https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/7183625/9307_p116.pdf (骨が元の構造に戻ること、血腫、骨膜細胞、2つの骨化、ラットの時間割について)
  2. Claesら「Fracture healing under healthy and inflammatory conditions」Nature Reviews Rheumatology, 2012。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22293759/ (リモデリングによる再構成、固定の安定性と血流、炎症について)
  3. 新倉隆宏「骨癒合の基礎―骨折が治るとは?―」関節外科45(6), 2026(要旨)。https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18885/JJS.0000002581 (直接的・間接的骨癒合の2種類について。要旨を確認)
  4. 新倉隆宏「ビジュアルにわかる骨癒合の基礎―バイオロジーとバイオメカニクス」臨床整形外科59(5)(医学書院)。https://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/journal/05570433/59/5/1408202958 (強い固定と、仮骨の見えない直接的骨癒合について。要旨の範囲で確認)
  5. Lindaman「Bone healing in children」Clinics in Podiatric Medicine and Surgery, 2001。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11344982/ (子どもの治りが速い理由の説明について)
  6. Wilkins「Principles of fracture remodeling in children」Injury, 2005。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15652934/ (子どものリモデリングの余地と限界について)
  7. Mass General Brigham「Fractured bone healing time」。https://www.massgeneralbrigham.org/en/health-wellness/fractured-bone-healing-time (子どものギプス期間の目安について。医療機関の案内)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

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