1. おいしい チョコは、なにで きまるの?
1. おいしいチョコの目印は、ツヤ・音・口どけ
1. 良いチョコレートの3つの目安と「食べる結晶」
スイスの チョコ しょくにんの 考えとして、おいしい チョコの めやすが 3つ しょうかい されて います[1]。
1つめは、ひょうめんが ピカッと 光る こと。2つめは、わった とき パリッと 音が する こと。3つめは、口の 中で とろける こと です。
この 3つには、チョコの 中の あぶら、ココアバターの けっしょうが かかわって います[1]。けっしょうの つぶが きれいに そろうと、ツヤも 音も 口どけも よくなりやすい のです。
では、けっしょうは、ひとつ だけ なのでしょうか。
2. けっしょうの ならびかたは、6しゅるい
2. ココアバターの結晶には6通りの並び方がある
2. ココアバターの結晶多形 ── Ⅰ〜Ⅵ型と食品に最適なⅤ型
ココアバターの けっしょうには、ならびかたが 6しゅるい あります。Ⅰがた から Ⅵがたまで、ローマ数字で よばれます[1]。
ならびかたが ちがうと、とける 温度も ちがいます[1]。
この 中で、おいしい チョコに むいて いるのは、Ⅴがた だと いわれます[1]。
ここで ざんねんな ことが あります。ⅠからⅣがたは ふあんていで、時間が たつと すがたを かえて しまいます。さいごの Ⅵがたは いちばん おちついて いますが、とける 温度が たかく、白く なる もとにも なります[1]。
ねらうのは、まん中より すこし 上の Ⅴがた。どうやって、これだけを 作るのでしょう。
3. とかした チョコを、どう ならべなおすの?
3. 溶かしたチョコの並びを、「種」でそろえ直す
3. テンパリング ── Ⅴ型の種結晶から全体を結晶化させる
ちょうど いい ならびかたを 作る ぎじゅつを、「テンパリング」と いいます[1]。
やりかたは、おんどを 上げ下げする ことです。いちど とかした チョコを ひやし、また すこし あたためます[1]。ひやす とき、Ⅴがたの 小さな「たね」が できます。たねの まわりに、ほかの つぶが ならんで いくのです。
たとえば、ならんで いる 人の 行れつに、先頭の 人が いると、うしろの 人は まねして 同じ ならびかたに なりやすい ですね。ただし ほんとうは、つぶは 人では ないので、まねを して いる わけでは ありません。
おうち向けには、ゆせんで とかし、水で ひやし、また ゆせんで あたためる 方ほうが 知られて います[4]。しっぱいすると、けっしょうが 多すぎたり、足りなかったり して、食べた ときの かんじや 見た目が わるく なる ことが あります[4]。
うまく いくと、どうなるのでしょう。
種をまいてから、全体を固める
Ⅴ型だけをそろえる操作が、テンパリングです。まずⅤ型の種結晶を出させ、そのあとで全体を結晶化させる温度調節です[1]。
一度溶かしたチョコを冷まし、また少し温めます。冷ますと、Ⅴ型の種ができます。種のまわりで、ほかの油が同じ並びで固まっていく、というのが基本の考え方です。
温度は一例
特許の明細書にある一例では、40〜50℃で溶けた生地を27〜28℃くらいまで下げ、29〜31℃くらいに温め直す、と説明されています[5]。ただし、配合や製品で変わる目安です。
家庭では、湯煎で溶かし、冷水で冷やし、再び湯煎で温める水冷法などが紹介されています[4]。失敗すると結晶が多すぎたり足りなかったりして、食感と見た目が損なわれます[4]。
4. そろうと、パリッと 音が して、とろける
4. そろうと、パリッと割れて、口の中でとろける
4. Ⅴ型がそろった結果 ── 光沢・スナップ性・口どけ
Ⅴがたが きれいに そろうと、チョコは かたまる のが はやく なり、かたから きれいに はずれます。ツヤが 出て、白い こなも 出にくく なります[5]。
ココアバターは ふしぎな ざいりょうです。10℃では、けっしょうの わりあいが 80%を こえます。バターは 40%ほどなので、およそ 2ばい です[1]。
25℃ぐらいまでは かたい まま、パリッと われます。30℃を こえると、けっしょうが きゅうに へり、35℃では ほとんど なく なります[1]。だから、手に とると かたいのに、口に 入れると なめらかに とけるのです。
これで、おいしさの わけは だいたい わかりました。でも、ふるい チョコが 白く なるのは、どうして でしょう。
型から外れやすく、ツヤが出る
特許明細書の説明では、Ⅴ型の安定な結晶が適切な量あると、固まる速度が速くなり、型からきれいに外れます。ファットブルームも出にくく、光沢のあるチョコになります[5]。辞典にも、Ⅴ型がそろうと、なめらかな口当たり、ツヤ、パリッとした割れ方になる、と書かれています[3]。
固さから、一気にとろけるまで
ココアバターは、10℃で結晶の割合が80%を超えます。バターは約40%なので、およそ2倍です[1]。
25℃くらいまで固さを保ち、パリッと割れます。30℃を超えると結晶が急に減り、35℃ではほとんどなくなります。この変わり方が、なめらかな口どけや風味の放出につながるとされます[1]。
ここまで整えても、チョコは永遠にそのままではありません。並びがそろったはずのチョコが、白く変わることがあるのはなぜでしょう。
5. ふるい チョコの 白い こなは、なに?
5. 古いチョコの白い粉は、結晶が育った姿
5. ファットブルームとシュガーブルーム ── 白くなる2つの経路
チョコの ひょうめんが、こなを ふいた ように 白く なる ことが あります。これを「ブルーム」と いいます。
ブルームには 2しゅるい あります[2]。ひとつは「ファットブルーム」。ココアバターの けっしょうが 大きく なって、白く 見える ものです。おんどの かんりが 足りない ことが おもな げんいんと いわれます。もうひとつは「シュガーブルーム」。さとうが ひょうめんで けっしょうに なり、おんどの さで つゆが つく ことで おきます。
ファットブルームでは、ほぞんの 間に けっしょうの すがたが かわり、大きな けっしょうが できます。すると 光が あちこちに はねかえって、白く 見えます[1]。
Ⅴがたは、数か月から 1ねんの たんいで、おちついた Ⅵがたに うつる ことが あると いわれます[1]。大きな けっしょうは、Ⅵがただと いう 話も あります。
白さには2種類ある
白く粉をふいたようになるブルームには、2種類があります[2]。
ひとつはファットブルームで、ココアバターの結晶が粗大化し、表面が白く見える状態です。温度管理の不足が主な原因といわれます。もうひとつはシュガーブルームです。砂糖が表面で結晶になって白くなり、温度差による結露が原因です[2]。
白い粉の正体
ファットブルームでは、保存中に結晶の状態が変わり、大きな結晶ができます。その大きな結晶が光を乱反射させるので、白く粉をふいたように見えるのです[1]。数十マイクロメートルほどの大きさとされます[1]。
化学工学会の資料の説明では、Ⅴ型は数か月から1年のあいだに、最も安定なⅥ型へ落ち着いていきます。粗大な結晶はⅥ型だそうです[1]。
溶かしてテンパリングをせずに固めると、不安定な結晶ができて、熱にあたったときにファットブルームが出る、と辞典にもあります[3]。ただし、白くなる原因は、ひとつだけとは限りません。
ブルームには2種類ある。ファットブルームはココアバター結晶の粗大化で表面が白く見える現象で、温度管理の不足が主因だ。シュガーブルームは砂糖が表面で再結晶して白くなる現象で、温度差による結露が関わる[2]。
ファットブルームの白さは、結晶の大きさの問題として説明される。保存中に結晶の状態が変化して数十μmの大きな結晶ができ、光が乱反射して白く見える[1]。数か月〜1年の単位で、Ⅴ型は最安定のⅥ型へ移ると資料は述べ、粗大結晶はⅥ型だとする[1]。融点の高い、より安定な並びへ落ち着く過程で、平らだった表面が荒れる、というのが基本の読みだ。
テンパリングを省いて固めると不安定な結晶ができ、熱にあたるとファットブルームが出るという記述もある[3]。ただし、ブルームの原因はⅤ型からⅥ型への転移だけとは限らない。白くなる経路が、他にもあるのか。
6. めんどうな ならべ なおしを しなくても いい?
6. 温度の上げ下げなしで、Ⅴ型を作る研究
6. リン脂質によるⅤ型の誘導 ── テンパリングの代替の試み
テンパリングは、おんどを 上げ下げする、てまの かかる しごとです。そこで、ほかの やりかたも 研究されて います。
ある 研究では、ココアバターに リンししつと いう 分子を すこし 入れる と、けっしょうが はやく できて、Ⅴがたが 作られたと 発表されて います[6]。かたさ、ツヤ、こまかい つくりも よい ものが できました。
ただし、お店の チョコが この 方ほうで 作られて いると いう わけでは ありません。研究者たちの ちょうせんの 1つ です。
テンパリングは、温度の上げ下げが必要で、手間のかかる作業です。そこで、別のやり方を探る研究もあります。
ココアバターにリン脂質という分子を少し加えると、結晶化が速まってⅤ型ができ、複雑なテンパリングなしで、硬さや光沢、微細な構造のよい製品が得られた、という報告があります[6]。
これは研究報告であり、市販のチョコがこの方法で作られているという意味ではありません。それでも、「並び方をそろえる」ことを、温度ではなく分子の力で助ける道もある、という例です。
テンパリングの温度操作を要さずにⅤ型を得る試みとして、リン脂質分子をココアバターに少量加える研究が紹介されている。結晶化が加速してⅤ型が形成され、硬さ・光沢・微細構造のよい製品が得られたという[6]。
これは研究成果の紹介で、市販品がこの方法を使っているとは書かれていない。温度の履歴で結晶型を選ぶ従来法に対し、分子の添加で核形成を助ける別の道がありうる、という位置づけで読むのがよい。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
チョコの ツヤや われかたは、目や 耳で くらべられます。
やって みよう。これは テンパリングでは なく、とかして かため なおすと かわるかを くらべる かんさつ です。おうちの 人と いっしょに、小さな チョコを 2つ 用意します。1つは そのまま。もう 1つは、ゆせんで とかして、れいぞうこで ひやして かためます。ゆせんは やけどに 気を つけ、おうちの 人に して もらって ください。
2つを、ツヤと、われた ときの 音と、口に 入れた ときの かんじで くらべます。ちがいが 出ない ことも あります。くらべた ことを ノートに かきましょう。
おうちに チョコが あれば、ひょうじの 「ココアバター」という ことばを さがして みましょう。もっと しらべる 手がかりは、「テンパリング」「ブルーム」「ココアバター」です。
今日できること
おうちの人と一緒に、小さなチョコを2つ用意します。1つはそのまま、もう1つは湯煎で溶かして冷蔵庫で固め直します。湯煎は、やけどに気をつけ、おうちの人にしてもらってください。
2つを、ツヤ、割ったときの音、口どけで比べます。違いがはっきり出ないこともありますが、それも観察の結果です。
出かけてできること
店のチョコを、割れ方やツヤで見比べてみましょう。長く置かれた商品に、白い粉のような跡がないかも見てみてください。
調べるときの言葉
「テンパリング」「ブルーム」「ココアバター 結晶多形」で調べられます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:化学工学会、明治、特許明細書、辞典、研究紹介を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 化学工学会 夢化学委員会「チョコレート そのおいしさを科学する」。https://www.scej.org/docs/higher/highschool-web/chocolate_youshi.pdf (結晶の型・テンパリング・口どけ・ブルームについて)
- 明治 ハロー!チョコレート コラム106。https://www.meiji.co.jp/hello-chocolate/column/106/ (ブルーム2種類について)
- Wikipedia「Cocoa butter」。https://en.wikipedia.org/wiki/Cocoa_butter (Ⅴ型がそろったときの食感や、テンパリングの説明について。二次資料)
- 明治 ハロー!チョコレート コラム37。https://www.meiji.co.jp/hello-chocolate/column/37/ (家庭でのテンパリングについて)
- 特許 JP5756074B2「耐熱性チョコレート」。https://patents.google.com/patent/JP5756074B2/ja (テンパリング温度の一例と、効果の説明について)
- Nature Asia ハイライト「ココアバターの結晶化」。https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13803 (リン脂質を使った研究の紹介について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。