1. にせものの ひがいが はんぶんに なった のは、なぜ?
1. 偽造被害が半減した時期に、守りはどう変わったか
1. 2017→2018年の偽造被害半減と、対策の3段階
カードの にせものは、ほんものと おなじ ように 店で 使われて しまう ことが あります。その ひがいが、1年で 32おく円から 16おく円に なりました[1]。
ただし、2019年は すこし ふえました。それでも きょうかいは、対さくの せいかが 出て いると 見て います[1]。
これは 1つの くふうだけで 生まれた 数では ありません。カードの まもり方は、3だんかいで かわって きました。
1つ目は、カードの 中の データ。2つ目は、目で 見て たしかめる しるし。3つ目は、カードの 中の ちいさな チップです。
まず、いちばん むかしの データから 見て みましょう。どうして かんたんに コピー されて しまったのでしょうか。
1年で半分になった数字
偽造カードの不正利用額は、2017年の32億円から2018年は16億円になりました。2019年はやや増えましたが、日本クレジット協会は、対策の成果は出ていると見ています[1]。
この半減は、ICチップ化だけの成果とは言えません。日本では、2015年3月にできたクレジット取引セキュリティ対策協議会が実行計画をつくり、2020年3月末までに対面取引でIC取引に対応する目標を掲げました。実行計画は、カード情報の保護、対面の偽造カード防止、ネットなど対面でない取引のなりすまし防止の3本柱です[1]。
守り方の3段階
カードの偽造防止は、大きく3つの段階を経てきました。磁気ストライプの情報をコピーされる時代、見た目の目印でにせものを見分ける工夫、そしてコピーしても使えないICチップです。順に見ていきます。
まず出発点の疑問です。磁気ストライプは、なぜ簡単にコピーされたのでしょうか。
偽造カードの不正利用額は、日本クレジット協会の調査で2017年の32億円から2018年の16億円へ半減し、2019年はやや増加した。協会は成果が出ていると見ている[1]。ただしこれは前年との比較で、ICチップ化だけの成果とは言えない。
背景には、クレジット取引セキュリティ対策協議会(2015年3月設立)の実行計画がある。対面取引の偽造対策としてIC取引への対応期限を2020年3月末とし、計画全体は(1)カード情報保護、(2)対面の偽造カード防止、(3)非対面のなりすまし防止の3本柱だった[1]。
では、偽造の対象になった磁気ストライプは、どこが弱かったのか。そして、それに対して「物」と「暗号」はどう働くのか。次章からこの順に読む。
2. じきの せんは、どうして コピー できたの?
2. 磁気ストライプは、なぜ写し取られたのか
2. 磁気ストライプの成立と、スキミングの原理
カードの うらに ある くろい せんを、じきの ストライプと いいます。この 中に、データが ならんで います。
この せんを カードに つけた 人は、IBMの ぎじゅつしゃ、パリーさんと つたえられて います。カードに テープを はるのが むずかしくて こまって いたとき、おくさんの 「アイロンで とかして つけたら?」という ひとことが、てがかりに なったと つたえられて います[2]。ふたりで やって みたら、うまく いきました。
1969年には アメリカの きじゅんに なり、その 2年後の 1971年には 世界の きじゅんに なりました[2]。おかげで、世界の どこでも おなじ カードが 使えるように なりました。
ただし、データが 読み取れる かたちで 入って いたので、読み取って べつの カードに かきうつせば、にせものが できて しまいます[3]。ノートを コピーする ような ものです。ただし 本当は、ノートより ずっと 小さな きかいで 行われます。
アイロンから始まった帯
磁気ストライプをプラスチックのカードに付けたのは、IBMの技術者フォレスト・パリーだと伝えられています。テープをカードに貼る方法に苦労していたところ、アイロンをかけていた妻が「アイロンの熱で溶かして付けたら」と助言し、それが手がかりになってうまくいったという逸話です[2]。
IBMは1969年に標準化を主導し、この規格は同年に米国標準、その2年後の1971年に国際標準になりました[2]。世界のどこでも同じカードが使えるようになった一方で、カードの中身が同じ形式で読めることも、世界共通になりました。
読み取れることが、弱点になった
磁気ストライプは、情報が読み取れる形で記録されています。読み取って同じデータを別のカードに書けば、偽造できてしまいます。これをスキミングといいます[3]。ノートをコピー機で写すのに近いですが、機械の仕組みは違うので、たとえは似ているだけです。
情報だけでは守れないなら、カードそのものに「写せない目印」を付けたらどうでしょう。
磁気ストライプをプラスチックカードに付けたのは、IBMの技術者フォレスト・パリーで、貼り付けに苦労した際、アイロンをかけていた妻の助言でアイロンの熱を使い、テープを溶着したと伝えられる。IBM公式の歴史ページの逸話だ[2]。
IBMは1969年にジェローム・スヴィガルスを中心に標準化を主導し、同年に米国標準、その2年後(1971年)に国際標準となった[2]。「1971年」はIBM記述の「2年後」からの計算だ。標準化のおかげで世界どこでも同じカードが使えるようになったが、情報が同じ形式で読み書きできる点も共通になった。
磁気ストライプは情報が読み取り可能な形で記録されるため、読み取って同じデータを別のカードに書けば偽造できる(スキミング)。楽天カードの説明は、ICカードは情報を高度に暗号化して保存でき、偽造や解析が極めて難しいとする[3]。
情報は守れないなら、カード自体に写せない目印を付ければよい。それがホログラムだ。
3. ひかる シールは、どうして コピー できないの?
3. ホログラムは、なぜコピー機で写せないのか
3. ホログラフィー ── 干渉縞による立体像と偽造防止
カードを かたむけると、きらきら ひかる ところが あります。あれが ホログラムです。かたむける 向きで、見え方が かわります[5]。
ホログラフィーは、ハンガリーの ガボールさんが 1947年に かんがえた ぎじゅつです[4]。2つの 光を かさねて、りったいの 絵を うつしだします。
ホログラムを つくるには、とくべつな ぎじゅつと ざいりょうが いると いわれます。コピーの きかいや プリンターでは、おなじ ものが できません[5]。
ただし これは ある会社の せつめいで、すべての カードの ホログラムに あてはまる とは かぎりません。
けれど ホログラムは、目で 見る しるしです。カードの データそのものを まもる くふうが、もう 1つ ひつようでした。
傾けると変わる像
ホログラフィーは、ハンガリーの物理学者ガーボル・デーネシュ(ガボール)が1947年に発明した技術です[4]。2つの光を重ねてできる干渉縞をフィルムに記録し、そこに光を当てて立体的な像を再生します。クレジットカードや紙幣の偽造防止にも使われます。
ホログラムは、傾けると見え方が変わります。製造に光の干渉を使う特殊な技術や材料が必要で、コピー機やプリンターでは再現できない、と説明されています[5]。ただしこれは、大日本印刷のホログラムについての説明です。カードのホログラムすべてに、そのまま当てはまるとは限りません。
目印だけでは足りない
ホログラムは、手に取って見分ける手がかりになります。でも、カードの中のデータそのものが写されたら、目印だけでは防げないかもしれません。データの側にも、写しても使えない仕組みが必要でした。
ホログラフィーは、ハンガリーの物理学者ガーボル・デーネシュ(ガボール)が1947年に発明した。参照光と物体光が重なる光の干渉で干渉縞ができ、フィルム上で回折格子となって立体像が再生される。カードや紙幣の偽造防止に使われる[4]。
複製が難しい理由は、製造に光の干渉を使う特殊な技術・材料が必要で、コピー機やプリンターでは再現できず、傾けると見え方が変わる点にある[5]。ただし、この記述は大日本印刷のリップマンホログラムの説明で、カードのホログラム全般の言い切りにはできない。
ホログラムは目視での見分けに役立つが、カード内のデータのコピーそのものは防げない。データの側に、写しても使えない仕組みを持たせる必要があった。
4. ICチップは、ぬすまれても つかえないの?
4. 取引ごとに新しい暗号値を作るICチップ
4. ICチップと使い捨ての暗号値(クリプトグラム)
カードの おもてに ある きんいろの 四かくい ぶひんが、ICチップです。ここには、あんごうを つくる ちからが あります。
ICチップは、買い物の たびに、あたらしい あんごうを つくります[6]。この あんごうを、EMVという きまりでは、クリプトグラムと よびます。
あいことばが 毎回 かわる ようなものです。もし 買い物の とちゅうで ぬすみ見られても、まえの あんごうは 次の 買い物に そのまま 使えません[6]。
ただし 本当は、あいことばを 言う のでは なく、計算で つくった 数を 送って います。
ICチップは、大事な データを とても むずかしい あんごうに して しまう ことも できます。そのため、カードを にせものに したり、中身を しらべたり するのは、とても むずかしく なります[3]。
日本では、2020年3月の おわりまでに、店の きかいを ICチップに 合わせる 目ひょうが たてられました[1]。それでも、ぜったいに にせものが できない という わけでは ありません。
取引のたびに変わる暗号値
ICチップを載せたカードは、取引ごとに新しい暗号値(クリプトグラム)を作ります。EMVCoという団体が管理する国際的な仕様の説明です[6]。暗号値は取引ごとに固有で、前の値は次の取引にそのまま使えません。
合言葉を毎回変えるようなものです。ただし実際には、言葉を言うのではなく、計算で作った値をやり取りしています。
写し取って作る偽造が、難しくなる
楽天カードは、ICチップは大切な情報を高度に暗号化して保存でき、カードの偽造や解析が極めて難しくなると説明しています[3]。日本では、対面取引でのIC取引への対応期限が2020年3月末に設定され、実行計画に沿って対応が進みました[1]。
ただし、ICチップで偽造の被害がゼロになったわけではありません。次の章で、いまの被害の内訳を見てみます。
5. にせものが へった あと、あぶないのは どこ?
5. 偽造は約1%、被害の大部分はネットでの番号盗用
5. 被害の中心は番号盗用 ── 2024・2025年の内訳と3Dセキュア
カードを 手に もたなくても、ネットで 買い物 できます。そこで、カードの 番号だけを ぬすんで 使う ひがいが、いまは 多く なって います。
2024年の ひがいは、ぜんぶで 555おく円ほど。その うち、にせもの カードは 5.9おく円で、100円の うち 1円 ほどです。ばんごうを ぬすまれた ひがいは 513.5おく円で、100円のうち 92円 ほどでした[7]。
2025年は、ぜんぶで 510.5おく円。にせものは 7.2おく円で、ふえましたが、やはり 100円の うち 1円 ほどです[8]。ゼロに なった わけでは ありません。
ネットの ぬすみを ふせぐ くふうも あります。3Dセキュアと いう しくみです。カードを 出した 会社と 店が 買い物の 中身などを やりとりして、カードの 会社が あやしい 買い物を すばやく 見つけて とめる てだすけを します[9]。
にせものが へった いま、ネットでの 本人かくにんを どう まもるかが、つぎに しらべたい ことです。
被害の中心は番号盗用へ
日本クレジット協会の集計では、2024年の不正利用被害額は555.0億円でした。内訳は、偽造5.9億円、番号盗用513.5億円、その他35.6億円です。割合にすると、番号盗用が約92.5%、偽造が約1.1%になります[7]。
2025年通年の被害額は510.5億円で、前年から8.0%減りました。偽造は7.2億円で前年より22.0%増え、番号盗用は475.4億円で7.4%減りました。偽造の割合は約1.4%です[8]。偽造は、ゼロになったわけではなく、年によって増減があります。
ネットの取引を守るEMV 3-Dセキュア
カードを見せない、対面でない取引の不正を防ぐ仕組みに、EMV 3-Dセキュアがあります。カードの発行会社と店が購入内容や端末の情報などを交換し、発行会社が不正な取引を素早く見分けて止められるようにします[9]。
内訳を見ると、被害の大部分は番号盗用で、ネット取引の守りが課題になっていることが分かります。
2024年の不正利用被害額は555.0億円(前年比2.6%増)で、内訳は偽造5.9億円、番号盗用513.5億円、その他35.6億円だった。番号盗用は513.5÷555.0=約92.5%、偽造は5.9÷555.0=約1.1%になる[7]。
2025年通年は510.5億円(前年比8.0%減)で、偽造7.2億円(22.0%増)、番号盗用475.4億円(7.4%減)、その他27.9億円。偽造の割合は7.2÷510.5=約1.4%、番号盗用は約93.1%だ[8]。偽造の対策が効いても、被害がゼロにならず、年によって増減することが分かる。
カードの実物が要らない番号盗用に対しては、EMV 3-Dセキュア(スリーディーセキュア)が対策になる。発行会社と加盟店が購入内容や端末情報などを交換し、対面でないカード取引の不正を防ぐ仕組みで、発行会社が不正取引を素早く見分けて止められる[9]。
番号盗用が中心になった理由は、この数字だけでは断定できない。次に調べるなら、ネット取引の本人確認が課題だ。
6. じぶんの カードを、かたむけて 見て みよう
6. カードのホログラムとICチップを、傾けて見てみる
6. 出口 ── 実物の観察と、資料の読みどころ
おうちの 人に たのんで、カードを 1まい 見せて もらいましょう。カードは、大切な ものです。ばんごうと ゆうこうきげんは かくして、おうちの 人が いい と いった カードだけを 見ましょう。人に 見せたり、しゃしんに とったり しないで ください。
まず、カードを 手に とって、かたむけて みます。ホログラムが ある カードなら、かたむけると 見え方が かわります。ただし、ホログラムが ない カードも あります。
つぎに、金いろの 四かくい ぶひんを さがします。これが ICチップです。うらの くろい せんは、じきの ストライプです。
もっと 知りたく なったら、IBMの ホームページや、日本クレジットきょうかいの せつめいを 読んで みて ください[2][1]。
おうちの人にお願いして、カードを1枚見せてもらいましょう。ホログラムやチップを見るだけなので、番号は見なくて大丈夫です。番号や有効期限は指などで隠し、家族が許可したカードだけを見ます。人に見せたり、写真に撮ったりしないでください。
カードを傾けて、ホログラムの見え方が変わるか調べます。次に、ICチップ(金色の四角い部品)と、裏の黒い帯(磁気ストライプ)を探します。ただし、ホログラムのないカードもあります。
3つの守りが、1枚のカードの上でどう並んでいるかを見ると、この記事の流れが実物と結びつきます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本クレジット協会の調査を伝える記事、IBMとEMVCoの公式ページ、カード会社の案内、ホログラムの解説記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Payment Navi「実行計画の成果」(日本クレジット協会の調査を紹介)。https://paymentnavi.com/paymentnews/91840.html (偽造被害の半減と、実行計画・IC対応期限について。二次資料)
- IBM History「The magnetic stripe」。https://ibm.com/history/magnetic-stripe (磁気ストライプの誕生と標準化について)
- 楽天カード「ICチップのセキュリティ」。https://www.rakuten-card.co.jp/security/icchip/ (ICチップの暗号化とスキミングについて)
- Wikipedia「ホログラフィー」。https://ja.wikipedia.org/wiki/ホログラム (ホログラフィーの発明と原理について。二次資料)
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)。https://newswitch.jp/p/17823 (ホログラムが複製しにくい理由について。報道)
- EMVCo「EMV Contact Chip」。https://www.emvco.com/emv-technologies/emv-contact-chip/ (取引ごとの暗号値について。英語)
- ECのミカタ(日本クレジット協会の集計を紹介)。https://ecnomikata.com/ecnews/46369/ (2024年の不正利用被害額の内訳について。報道)
- ECのミカタ(日本クレジット協会の調査を紹介)。https://ecnomikata.com/ecnews/marketing/49820/ (2025年の不正利用被害額の内訳について。報道)
- EMVCo「EMV 3-D Secure」。https://www.emvco.com/emv-technologies/3-d-secure/ (ネット決済の不正を防ぐ仕組みについて。英語)
なおした ところ
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