1. 音は 耳の おくで、みずの なみに なる
1. 空気をふるわせた音は、耳の奥で「水の波」に変わる
1. 空気の振動から蝸牛内の液体の波へ ── 耳小骨・卵円窓・基底膜
おふろで、水の 中に もぐって 人の こえを きいた ことは ありますか。音は 水の 中でも とどきます。
耳の おくにも、カタツムリの から みたいな うずまきが あります。蝸牛と いいます。中には えきたいが つまって います[1]。
音は、まず 空気の ふるえです。それが 耳の 中の 小さな ほねを つたわって、うずまきの えきたいを ゆらします。えきたいには 細い 毛が のびて いて、ゆれに あわせて うごきます。すると 神経に 合図が 生まれて、のうに とどき、音として わかる のです[1]。
2. その みずは、でんちの ような とくべつな えき
2. 耳の液は2種類。片方は「電池」のように働く
2. 内リンパ液と外リンパ液 ── カリウム濃度と+80mVの高電位
耳の おくの えきたいは、1しゅるい では ありません。「ないリンパえき」と「がいリンパえき」の 2つが あります[3]。
がいリンパえきは、ふつうの 体の みずに にて います。でも ないリンパえきは ちがいます。カリウムと いう ものが 多く、まわりより 電気が たかい のです[3]。
この 電気が たかい ことは、耳が 小さな 音に びんかんな ために、とても たいせつと いわれます[3]。
ただし 本当の でんちとは しくみが ちがいます。たとえ話です。
性質のちがう2種類の液
内耳は、性質のちがう2種類の液で満たされています。外リンパ液は、ふつうの細胞のまわりの液や血液に似ています。内リンパ液は、カリウムイオンが約150mM(ミリモーラー。濃さの単位)と多く、ナトリウムは2〜5mMと少なく、外リンパ液に対して常に+80〜+100ミリボルト高い電位をもっています[3]。
この電位がないと、聞こえにくくなる
大阪大学の解説は、この特殊なイオンの環境と高い電位が、有毛細胞の鋭敏な働きと聴覚の高い感受性に必須だと述べます。特に高電位は重要で、これが崩れると難聴が起こります[3]。有毛細胞に入ったカリウムは外リンパ側へ出て、血管条を通って内リンパへ戻る循環があります。
耳の液は、電池のような高い電気をもちながら、つねに保たれています。ただし「電池」は分かりやすくするためのたとえで、本物の電池と同じしくみではありません。
3. えきが ふえすぎると、耳が なる ことが ある
3. 内リンパ液がたまると、めまいと耳鳴りが現れる病気がある
3. 内リンパ水腫とメニエール病 ── 液の量と耳鳴りの接点
耳の 中の えきたいの バランスの みだれが かかわると される 病気が あります。メニエール病と いいます。
この 病気では、つよい めまいが くりかえし 出ます。耳の中で 音が なる 耳なりや、耳が つまった 感じも 出る ことが あります[4]。
ないリンパえきが たまる「ないリンパすいしゅ」が かかわると されます。ただし 原いんは、まだ すべては わかって いません[4][5]。
これは、耳の えきと 耳なりが つながる 一つの れいです。ふつうの 耳なり ぜんぶが、えきの せいという わけでは ありません。
4. 耳なりの 音は、どこで なって いるの?
4. 耳鳴りの音は、どこで作られているのか
4. 耳鳴りに脳の活動が関わる ── 蝸牛からの入力の変化と有毛細胞の損傷
耳なりは、まわりに 音が ないのに 聞こえる 音です。多くの 場合、ほかの 人には 聞こえません。おとなの 10〜25%ほどが 感じると いわれ、めずらしい ものでは ありません[7]。
この 音は、耳では なく、のうの 音を わかる ばしょ(ちょうかくひしつ)で 作られると、せつめいされて います[7]。
では、耳は かんけい ないのでしょうか。そうでは ありません。耳から のうに とどく 合図が かわると、のうの ようすが かわる ことが あるのです[8]。
大きな 音を ずっと きくと、有毛細胞が こわれる ことが あります。人の 有毛細胞は、また 生えて きません[6]。だから 大きな 音は、耳を まもる ために ちゅういが いります。
音は脳の中で感じられる
耳鳴りは、外に音源がないのに感じる音で、多くの場合、他の人には聞こえません。成人の10〜25%が経験するとされますが、重い病気に結びつくことはまれです[7]。数字は資料によって幅があり、MSDマニュアルでは人口の10〜15%と書かれています[8]。
NIDCD(アメリカの国立聴覚・コミュニケーション障害研究所)は、この「ないはずの音」を脳の聴覚皮質が作ると説明します[7]。
耳の変化が、引き金になる
MSDマニュアルによると、耳鳴りは聴覚皮質の異常な神経活動で起こると考えられ、その乱れは、蝸牛・聴神経・脳幹・聴覚皮質という聴覚の道すじからの入力が妨げられたり変わったりして生じます。最も多いのは、騒音や加齢による感音難聴を伴う場合です[8]。
大きな音による難聴の多くは、有毛細胞が傷つき死ぬことが原因です。人の有毛細胞は、鳥やカエルの仲間とちがって、再び生えてきません。大きな音は耳鳴りも起こしえます[6]。
耳の液や有毛細胞の変化が、脳への入力を変える。その結果、脳が「ないはずの音」を作るのかもしれません。
耳鳴りは外部に音源のない音の知覚で、NIDCDは成人の10〜25%にあるとし、重い疾患に結びつくことはまれとする[7]。MSDマニュアルは人口の10〜15%とし、資料間で幅がある[8]。そのため、有病率は一つの数字に決めず、幅で示すのが妥当だ。
NIDCDは、この幻の音を脳の聴覚皮質が生み出すと説明する[7]。ただしこれは耳が無関係という意味ではない。MSDマニュアルは、自覚的耳鳴を聴覚皮質の異常な神経活動と考え、その活動の乱れが、聴覚路(蝸牛・聴神経・脳幹核・聴覚皮質)からの入力の阻害や変化によって生じるとする。最も多いのは騒音性や加齢による感音難聴を伴う場合である[8]。
有毛細胞については、騒音性難聴の大半が有毛細胞の損傷と死によるもので、ヒトの有毛細胞は鳥や両生類のものと異なり再生しない[6]。ただし、内リンパ液の電位の乱れや有毛細胞の損傷が、耳鳴りの神経活動にどう変わるのかという詳しい経路は、ここで使った資料では扱われていない。
5. みずの なみを、じぶんの 目で みて みよう
5. 声が水面をふるわせる様子を、見てみよう
5. 出口 ── 水面で振動を見る体験と、資料の読みどころ
おおきな ボウルに みずを いれて、テーブルに おきます。口を みずの 近くに ちかづけて、ひくい こえで「うー」と 声を 出して みましょう。みずの おもてが、ふるえるかも しれません。
ただし、ふるえが 小さくて 見えない ことも あります。ちょうしを かえて ためして みてください。
耳の おくでは、音が こんなふうに えきたいを ゆらして います。ただし 耳の 中の ゆれは、もっと ずっと 小さい ものです。
耳なりが きに なる ときは、おうちの 人に はなして みましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:MSDマニュアル、アメリカの国立聴覚・コミュニケーション障害研究所(NIDCD)、大阪大学医学部、厚生労働省の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- MSDマニュアル家庭版「耳」。https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/耳-鼻-のどの生物学/耳 (蝸牛の構造と音が神経信号になる流れについて)
- NIDCD “How Do We Hear?”。https://www.nidcd.nih.gov/health/how-do-we-hear (基底膜の進行波と有毛細胞について。英語)
- 大阪大学医学部 薬理学「内リンパ液のK+循環」。https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/pharma2/?p=311 (内リンパ液の組成と高電位について)
- NIDCD “Ménière’s Disease”。https://www.nidcd.nih.gov/health/menieres-disease (メニエール病と内リンパ水腫について。英語)
- 厚生労働省 医療機器評価資料(間歇的中耳加圧装置)。https://www.mhlw.go.jp/content/11124500/001609125.pdf (メニエール病の定義について)
- NIDCD “Noise-Induced Hearing Loss”。https://www.nidcd.nih.gov/health/noise-induced-hearing-loss (騒音と有毛細胞について。英語)
- NIDCD “Tinnitus”。https://www.nidcd.nih.gov/health/tinnitus (耳鳴りの定義と脳の関わりについて。英語)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「耳鳴」。https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/耳の問題がある患者へのアプローチ/耳鳴 (耳鳴りが起こる聴覚路について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。