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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

耳の おくの みずは、でんち みたいに 電気を もっていた

耳の奥の液は「電池」のように電気を帯びている ── 音を感じる力と耳鳴りの意外なつながり

蝸牛の内リンパ液は約+80mVの高電位をもつ ── 有毛細胞の感度と、耳鳴りが生まれる場所

分野:からだ

みみの おくの うずまきの 中には、みずの ような えきたいが はいって います。その えきたいは、でんちの ように 電気を もって いるのです。

どうして、耳に でんちが いるのでしょう。その えきたいが みだれると、耳の中で 音が なる ことが あるのでしょうか。しらべた ことが わかります。

耳の奥にある渦巻きの器官には液体が満ちていて、その一つは、まわりより約80ミリボルトも高い電気を帯びています[3]。まるで小さな電池です。

なぜ耳の中に電池のような液があるのでしょうか。その液が増えすぎたり、有毛細胞が傷ついたりすると、耳鳴りとどうつながるのでしょうか。公的機関の資料から、そのつながりが分かります。

内耳の蝸牛を満たす内リンパ液は、カリウムイオンが約150mMと多く、外リンパ液に対して常に+80〜+100mVの高電位をもつ[3]。いわば耳の奥に置かれた「電池」である。

この電位は、なぜ有毛細胞の感度に必要なのか。液の異常は、耳鳴りにどこまで結びつくのか。蝸牛の液、有毛細胞、脳の三つの関係が分かる。

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1. 音は 耳の おくで、みずの なみに なる

1. 空気をふるわせた音は、耳の奥で「水の波」に変わる

1. 空気の振動から蝸牛内の液体の波へ ── 耳小骨・卵円窓・基底膜

おふろで、水の 中に もぐって 人の こえを きいた ことは ありますか。音は 水の 中でも とどきます。

耳の おくにも、カタツムリの から みたいな うずまきが あります。蝸牛かぎゅうと いいます。中には えきたいが つまって います[1]。

音は、まず 空気の ふるえです。それが 耳の 中の 小さな ほねを つたわって、うずまきの えきたいを ゆらします。えきたいには 細い 毛が のびて いて、ゆれに あわせて うごきます。すると 神経しんけいに 合図が 生まれて、のうに とどき、音として わかる のです[1]。

耳に入った音は、はじめ空気の振動です。鼓膜のおくで、中耳の小さな骨(耳小骨)が振動を運び、内耳の入り口にある卵円窓から、渦巻き形の蝸牛へ伝えます。蝸牛の中は液体で満たされています[1]。

液体が波打つと、蝸牛の中を基底膜という膜に沿って波が進みます。膜の上には有毛細胞が並んでいて、この波に乗って動きます。すると細胞に化学物質が流れ込み、電気信号が生まれて、聴神経が脳へ運びます[2]。

空気の波が、耳の奥で水の波に変わる。では、その水はふつうの水でよいのでしょうか。

音は空気の振動として鼓膜に入り、中耳の耳小骨を経て内耳の卵円窓から蝸牛へ伝わる。蝸牛は渦巻き形の中空の器官で、液体で満たされ、有毛細胞の線毛がその液体の中へ伸びている[1]。

液体が波打つと基底膜に進行波が生じ、基底膜上の有毛細胞がそれに乗って動く。このとき細胞に化学物質が流れ込んで電気信号が生まれ、聴神経が脳へ運ぶ[2]。では、この液体は、ただ波を伝えるだけの水なのか。

2. その みずは、でんちの ような とくべつな えき

2. 耳の液は2種類。片方は「電池」のように働く

2. 内リンパ液と外リンパ液 ── カリウム濃度と+80mVの高電位

耳の おくの えきたいは、1しゅるい では ありません。「ないリンパえき」と「がいリンパえき」の 2つが あります[3]。

がいリンパえきは、ふつうの 体の みずに にて います。でも ないリンパえきは ちがいます。カリウムと いう ものが 多く、まわりより 電気が たかい のです[3]。

この 電気が たかい ことは、耳が 小さな 音に びんかんな ために、とても たいせつと いわれます[3]。

ただし 本当の でんちとは しくみが ちがいます。たとえ話です。

性質のちがう2種類の液

内耳は、性質のちがう2種類の液で満たされています。外リンパ液は、ふつうの細胞のまわりの液や血液に似ています。内リンパ液は、カリウムイオンが約150mM(ミリモーラー。濃さの単位)と多く、ナトリウムは2〜5mMと少なく、外リンパ液に対して常に+80〜+100ミリボルト高い電位をもっています[3]。

この電位がないと、聞こえにくくなる

大阪大学の解説は、この特殊なイオンの環境と高い電位が、有毛細胞の鋭敏な働きと聴覚の高い感受性に必須だと述べます。特に高電位は重要で、これが崩れると難聴が起こります[3]。有毛細胞に入ったカリウムは外リンパ側へ出て、血管条を通って内リンパへ戻る循環があります。

耳の液は、電池のような高い電気をもちながら、つねに保たれています。ただし「電池」は分かりやすくするためのたとえで、本物の電池と同じしくみではありません。

内耳は性質の異なる2種類の液で満たされる。外リンパ液は通常の細胞外液や血液に類似するが、内リンパ液はK⁺が約150mMと高く、Na⁺が2〜5mMと低く、常に+80〜+100mVの高電位を示す[3]。

大阪大学医学部薬理学の解説は、この特殊なイオン環境と高電位が有毛細胞の鋭敏な働きと聴覚の高い感受性に必須であり、特に高電位が破綻すると難聴が起こるとする[3]。有毛細胞に入ったK⁺は外リンパ側へ出て、血管条を経て内リンパへ戻る循環があるが、その細部には立ち入らない。

電位の高さそのものが感度に必要、という点が要である。液の量だけでなく、液の「質」が聞こえを支えている。

3. えきが ふえすぎると、耳が なる ことが ある

3. 内リンパ液がたまると、めまいと耳鳴りが現れる病気がある

3. 内リンパ水腫とメニエール病 ── 液の量と耳鳴りの接点

耳の 中の えきたいの バランスの みだれが かかわると される 病気が あります。メニエール病と いいます。

この 病気では、つよい めまいが くりかえし 出ます。耳の中で 音が なる 耳なりや、耳が つまった 感じも 出る ことが あります[4]。

ないリンパえきが たまる「ないリンパすいしゅ」が かかわると されます。ただし 原いんは、まだ すべては わかって いません[4][5]。

これは、耳の えきと 耳なりが つながる 一つの れいです。ふつうの 耳なり ぜんぶが、えきの せいという わけでは ありません。

メニエール病は、強いめまい、耳鳴り、難聴、耳がつまった感じが出る内耳の病気です。内耳の内リンパ液がたまる「内リンパ水腫」が関わるとされています[4]。

日本の厚生労働省の資料でも、聴覚の症状(難聴・耳鳴り・耳閉感)を伴うめまい発作を繰り返す病気とされ、発症の原因はまだ分かっていません[5]。

耳鳴りが、液の量の乱れと同時に現れることがある。これが、液と耳鳴りがつながる一つの例です。ただし、ふつうの耳鳴り全般が液の異常で起こるとは言えません。

メニエール病は、強いめまい、耳鳴り、難聴、耳閉感を示す内耳の病気で、内リンパ液が蓄積する内リンパ水腫が関与するとされる[4]。厚生労働省の資料も、聴覚障害(難聴・耳鳴り・耳閉感)を伴うめまい発作を反復する前庭機能異常疾患と定義し、発症原因は未解明とする[5]。

だから、内リンパ液の量や性質の乱れが耳鳴りに結びつく例はあるが、それは耳鳴りが現れる一つの経路にとどまる。普通の耳鳴り全般が液の異常で説明できるとは、資料からは言えない。

4. 耳なりの 音は、どこで なって いるの?

4. 耳鳴りの音は、どこで作られているのか

4. 耳鳴りに脳の活動が関わる ── 蝸牛からの入力の変化と有毛細胞ゆうもうさいぼうの損傷

耳なりは、まわりに 音が ないのに 聞こえる 音です。多くの 場合、ほかの 人には 聞こえません。おとなの 10〜25%ほどが 感じると いわれ、めずらしい ものでは ありません[7]。

この 音は、耳では なく、のうの 音を わかる ばしょ(ちょうかくひしつ)で 作られると、せつめいされて います[7]。

では、耳は かんけい ないのでしょうか。そうでは ありません。耳から のうに とどく 合図が かわると、のうの ようすが かわる ことが あるのです[8]。

大きな 音を ずっと きくと、有毛細胞ゆうもうさいぼうが こわれる ことが あります。人の 有毛細胞ゆうもうさいぼうは、また 生えて きません[6]。だから 大きな 音は、耳を まもる ために ちゅういが いります。

音は脳の中で感じられる

耳鳴りは、外に音源がないのに感じる音で、多くの場合、他の人には聞こえません。成人の10〜25%が経験するとされますが、重い病気に結びつくことはまれです[7]。数字は資料によって幅があり、MSDマニュアルでは人口の10〜15%と書かれています[8]。

NIDCD(アメリカの国立聴覚・コミュニケーション障害研究所)は、この「ないはずの音」を脳の聴覚皮質が作ると説明します[7]。

耳の変化が、引き金になる

MSDマニュアルによると、耳鳴りは聴覚皮質の異常な神経活動で起こると考えられ、その乱れは、蝸牛・聴神経・脳幹・聴覚皮質という聴覚の道すじからの入力が妨げられたり変わったりして生じます。最も多いのは、騒音や加齢による感音難聴を伴う場合です[8]。

大きな音による難聴の多くは、有毛細胞が傷つき死ぬことが原因です。人の有毛細胞は、鳥やカエルの仲間とちがって、再び生えてきません。大きな音は耳鳴りも起こしえます[6]。

耳の液や有毛細胞の変化が、脳への入力を変える。その結果、脳が「ないはずの音」を作るのかもしれません。

耳鳴りは外部に音源のない音の知覚で、NIDCDは成人の10〜25%にあるとし、重い疾患に結びつくことはまれとする[7]。MSDマニュアルは人口の10〜15%とし、資料間で幅がある[8]。そのため、有病率は一つの数字に決めず、幅で示すのが妥当だ。

NIDCDは、この幻の音を脳の聴覚皮質が生み出すと説明する[7]。ただしこれは耳が無関係という意味ではない。MSDマニュアルは、自覚的耳鳴を聴覚皮質の異常な神経活動と考え、その活動の乱れが、聴覚路(蝸牛・聴神経・脳幹核・聴覚皮質)からの入力の阻害や変化によって生じるとする。最も多いのは騒音性や加齢による感音難聴を伴う場合である[8]。

有毛細胞については、騒音性難聴の大半が有毛細胞の損傷と死によるもので、ヒトの有毛細胞は鳥や両生類のものと異なり再生しない[6]。ただし、内リンパ液の電位の乱れや有毛細胞の損傷が、耳鳴りの神経活動にどう変わるのかという詳しい経路は、ここで使った資料では扱われていない。

5. みずの なみを、じぶんの 目で みて みよう

5. 声が水面をふるわせる様子を、見てみよう

5. 出口 ── 水面で振動を見る体験と、資料の読みどころ

おおきな ボウルに みずを いれて、テーブルに おきます。口を みずの 近くに ちかづけて、ひくい こえで「うー」と 声を 出して みましょう。みずの おもてが、ふるえるかも しれません。

ただし、ふるえが 小さくて 見えない ことも あります。ちょうしを かえて ためして みてください。

耳の おくでは、音が こんなふうに えきたいを ゆらして います。ただし 耳の 中の ゆれは、もっと ずっと 小さい ものです。

耳なりが きに なる ときは、おうちの 人に はなして みましょう。

大きめのボウルに水を入れて、テーブルに置きます。口を水面に近づけて、低い声で「うー」と出してみましょう。水面がふるえるかどうか、よく見てください。

ふるえが小さくて見えないこともあります。声の高さや、水面との距離を変えてみてください。

耳の奥でも、音は液体の波に変わっています。ただし耳の中の動きは、これよりずっと小さいものです。

もっと読みたくなったら、大阪大学医学部薬理学の解説[3]や、MSDマニュアルの「耳鳴」の解説[8]を開いてみてください。耳鳴りが気になるときは、おうちの人に話してみましょう。

水を入れたボウルの水面近くで低い声を出し、水面のふるえを観察する。ふるえが小さく見えないこともあるため、声の高さや距離を変えて試す。耳の中の動きは、これよりずっと小さい。

資料を読むなら、内リンパ液の電位とイオン環境は大阪大学医学部薬理学の解説[3]、メニエール病はNIDCDのページ[4]と厚生労働省の資料[5]、耳鳴りの定義と脳の関わりはNIDCD[7]とMSDマニュアル[8]が読める。液の電位の乱れが耳鳴りにどう結びつくのかは、さらに調べる価値のある問いだ。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:MSDマニュアル、アメリカの国立聴覚・コミュニケーション障害研究所(NIDCD)、大阪大学医学部、厚生労働省の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. MSDマニュアル家庭版「耳」。https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/耳-鼻-のどの生物学/耳 (蝸牛の構造と音が神経信号になる流れについて)
  2. NIDCD “How Do We Hear?”。https://www.nidcd.nih.gov/health/how-do-we-hear (基底膜の進行波と有毛細胞について。英語)
  3. 大阪大学医学部 薬理学「内リンパ液のK+循環」。https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/pharma2/?p=311 (内リンパ液の組成と高電位について)
  4. NIDCD “Ménière’s Disease”。https://www.nidcd.nih.gov/health/menieres-disease (メニエール病と内リンパ水腫について。英語)
  5. 厚生労働省 医療機器評価資料(間歇的中耳加圧装置)。https://www.mhlw.go.jp/content/11124500/001609125.pdf (メニエール病の定義について)
  6. NIDCD “Noise-Induced Hearing Loss”。https://www.nidcd.nih.gov/health/noise-induced-hearing-loss (騒音と有毛細胞について。英語)
  7. NIDCD “Tinnitus”。https://www.nidcd.nih.gov/health/tinnitus (耳鳴りの定義と脳の関わりについて。英語)
  8. MSDマニュアル プロフェッショナル版「耳鳴」。https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/耳の問題がある患者へのアプローチ/耳鳴 (耳鳴りが起こる聴覚路について)

なおした ところ

更新履歴

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