このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ショベルカーは、ちいさな レバーで どうして おおきく うごくの?

ショベルカーの腕は、運転席の小さなレバーでなぜ大きく動くのか

小さなレバーで、なぜ何トンもの腕が動くのか ── 油圧ショベルのしくみとワイヤ式との違い

分野:技術

げんばで「ユンボ」と よばれる ショベルカー。この「ユンボ」は、もとは フランスの かいしゃの しょうひんの なまえでした[7]。

それにしても、のっている ひとが レバーを ちょっと うごかすだけで、おもい うでが うごくのは どうしてでしょう。1965ねんの さいしょの こくさんの あぶらの ショベルは、りょう手と 足で 6ぽんの レバーを うごかして いました。あぶらの ふしぎな はたらきと、むかしの ショベルとの ちがいが わかります。

工事現場で「ユンボ」と呼ばれるショベルカーの、その「ユンボ」は、もとはフランスの会社の製品名でした[7]。それが日本で、油圧ショベル全体の代名詞のように広まっています。

それにしても、運転席の小さなレバーを動かしただけで、何トンもある腕が思いどおりに動くのはなぜでしょうか。1965年の国産第1号機UH03は、両手と両足を使って6本のレバーを操作しました。油の力のしくみと、ワイヤで引いていた昔のショベルとの違い、日本で広まった理由が分かります。

現場で「ユンボ」と呼ばれる機械の名は、もとはフランスの会社の製品名である[7]。一般には油圧ショベル(バックホウ型が主流)という。何トンもの腕が、運転席の小さな操作で動くのはなぜか。1965年のUH03は、手と足で6本のレバーを操作し、掘削の1サイクルに約15〜20秒かかった。

パスカルの原理による力の増え方、シリンダとモータの使い分け、ワイヤ式から油圧式への転換、日本で急に広まった理由を、日本建設機械工業会(JCMA)の資料などで読むと分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. うんてんせきの レバーと、おもい うでの ふしぎ

1. 小さなレバーで、何トンもの腕が動く

1. 運転席の操作と、全部が油圧という設計

こうじの ばしょで、ショベルカーが つちを ほって います。のっている ひとの て もとには、レバーが あるだけです。

ところが うごかして いる うでは、とても おもい ものです。ショベルカー ぜんたいの おもさは、小さい タイプでも 6トン みまん、大きい タイプは 25トン いじょうです[1]。

この 車は、したに はしる ぶぶんが あり、その うえに くるりと まわる ぶぶんが のって います。うでは 3つに わかれ、つけねから「ブーム」「アーム」「バケット」と よびます[1]。

ひみつは、エンジンで あぶらに 力を もたせ、その あぶらで ぜんぶを うごかして いる ことです[1]。では、あぶらで どうして 大きな 力が でるのでしょう。

工事現場の運転席で、操縦する人の手元にあるのはレバーです。それを少し倒すだけで、何トンもある腕が地面を掘り、土をすくい上げます。

日本建設機械工業会(JCMA)の資料では、油圧ショベルは機械の質量で大きさを分けています。6トン未満がミニショベル、10〜25トンが中型、25トン以上が大型です[1]。ミニでも軽い乗り物ではありません。

形は、下に走るための部分(多くはクローラ、いわゆるキャタピラ)があり、その上に回転する部分がのっています。そこから伸びる腕が、根元から「ブーム」「アーム」「バケット」の3つです[1]。今のものは、土砂を手前にかき寄せて掘るバックホウ型がほとんどで、地面より上も下も掘れます[1]。

力のもとはディーゼルエンジンですが、エンジンが腕を直接動かすわけではありません。エンジンでポンプを回して高圧の油をつくり、その油で、すべての動作を動かしています[1]。では、油でなぜ大きな力になるのでしょうか。

運転席の操作装置を倒すだけで、数トンから数十トンの機械が掘削する。JCMAの資料は、油圧ショベルを機械質量で区分し、1トン未満をマイクロ、6トン未満をミニ、6〜10トンを小型、10〜25トンを中型、25トン以上を大型とする[1]。ミニでも軽い乗り物ではない。

構造は、下部の走行体(多くはクローラ式)に上部旋回体をのせ、そこにブーム・アーム・バケットの作業装置がつく形である[4]。現在の主流は、土砂を機体側にかき寄せて掘るバックホウ型で、地面より上方も下方も掘削できる[1]。原動機は、ほとんどがディーゼルエンジンである[1]。

この機械の設計の特徴は、エンジンの力を、歯車やワイヤで各所に配るのでなく、すべて油に置きかえる点にある。エンジンで油圧ポンプを回して高圧の油をつくり、その油で油圧シリンダや油圧モータを動かす。すべての動作が油圧で制御されている[1]。では、油の圧力が、なぜ小さな操作を大きな力に変えるのか。

2. あぶらは、どうして 力もちに なるの?

2. 密閉した油が、力を大きくする

2. パスカルの原理 ── 面積の比で力が増え、距離が減る

ふしぎの ひみつは、300ねんいじょう まえに 見つかった きまりに あります。1653ねん、フランスの パスカルが、とじこめた えきたいの 力の はたらきを 見つけました[3]。

とじこめた あぶらの 一ぶを おすと、おなじ つよさの 力が、あぶらの ぜんぶに つたわります[3]。

ここで、せまい ところと ひろい ところを あぶらで つなぎます。あぶらで つないだ ひろい ほうは、おなじ つよさ(あつりょく)なら、ひろさに おうじた 大きな 力が でます[3]。ひろさが 10ばいなら、力も 10ばいです。

ただし ただで とくを する わけでは ありません。ひろい ほうが うごく きょりは、10ぶんの 1に なります。

ヒントは、1653年にフランスのパスカルが見つけたとされる法則にあります。「密閉した容器の中で静止している液体の一点で圧力が増すと、液体のすべての点で同じ大きさの圧力の増加が起きる」というものです[3]。

これを使って、細い筒と太い筒を油でつなぎます。圧力がどこでも同じなら、力は「圧力×面積」で決まるので、面積が大きい側には、それに比例した大きな力が生まれます[3]。細い側の面積が1、太い側が10なら、同じ圧力でも太い側の力は10倍です(計算例)。

ただし、力が増えても得をするわけではありません。油の量は変わらないので、太い側が動く距離は、細い側の10分の1になります。細い側を10cm押しても、太い側は1cmしか動きません。力は大きくなり、動きはゆっくりで小さくなる、という取り引きです。

この原理が水圧機や油圧機の土台になっています[3]。では、ショベルの中では、この力をどう使い分けているのでしょうか。

パスカルの原理は、1653年にパスカルが発見したとされ、密閉容器内の静止流体の一点で圧力が増すと、流体内のすべての点で同じ大きさの圧力の増加が見られる、というものである[3]。

これを力に読みかえる。小さな断面積S1に力K1を加えると、圧力はp=K1/S1になる。この圧力は油でつながった大きな断面積S2にも同じにかかるため、大きい側には K2=p×S2 の力が生じる[3]。力は面積の比で増える。S2がS1の10倍なら、力も10倍である(計算例)。

ただし、エネルギーまで増えるわけではない。油は縮まないとみなせるので、押しこんだ油の体積と、押し出される油の体積は等しい。そのため大きい側の動く距離は、面積比の逆に小さくなる。10倍の力を得るかわりに、動く距離は10分の1になる。力と距離の積は、おおまかに変わらない。

この原理は、水圧機・油圧機の原理として知られる[3]。次は、この力を腕の動きや車体の回転にどう使い分けるかを見ていく。

3. うでを うごかすのと、車を まわすのは ちがう ぶひん

3. 押す・引くはシリンダ、回すのはモータ

3. 油圧シリンダと油圧モータ ── 往復運動と回転運動の使い分け

ショベルカーの 中では、あぶらの 力を つかう ぶひんが 2しゅるい あります。

ひとつは「シリンダ」です。あぶらの 力で ぼうを おしたり ひいたり します。ブーム・アーム・バケットは、これで うごきます[4]。ふとい ぼうが のびたり ちぢんだり して、うでが 上げ下げ されるのです。

もうひとつは「モータ」です。あぶらの 力で くるくる まわります。車が まわる うごきと、はしる うごきは、モータの しごとです[4]。

ぼうを おす うごきと、まわる うごき。ちがう うごきを、おなじ あぶらで つくり わけて います。

では、あぶらを つかわない むかしの ショベルは、どうやって うごいて いたのでしょう。

ショベルの中で油の力を使う部品は、大きく2種類あります。

1つは油圧シリンダです。油の圧力を、棒(ロッド)が出入りする往復運動に変えます。ブーム・アーム・バケットを動かす作業装置は、このシリンダで動いています[4]。太い銀色の棒が伸び縮みして、腕を上げ下げしていると考えると分かりやすいでしょう。

もう1つは油圧モータです。油の圧力で回転します。上の部分をくるりと回す旋回と、クローラを回して進む走行は、モータの仕事です[4]。旋回や走行をシリンダが担っているわけではない点に注意が必要です。

ヤンマーの解説は、ポンプでつくられた高圧の油が、コントロールバルブを通って、それぞれのシリンダやモータに送られると説明しています[4]。バルブは、どの動作へ油を送るかを選ぶ関所のような役目です。

押す動きにも回る動きにも同じ油が使えるので、1台で穴を掘り、向きを変え、移動できます。では、油圧が使われる前のショベルは、どうやって動いていたのでしょうか。

油圧の力を機械的な動きに変える部品を、アクチュエータという。油圧ショベルでは、JCMAの資料にあるとおり、油圧シリンダと油圧モータが主役である[1]。

作業装置(ブーム・アーム・バケット)は油圧シリンダで動かす。シリンダは、油の圧力を、シリンダロッドの往復運動に変える部品である。いっぽう、旋回と走行は油圧モータの回転で動かす[4]。旋回は油圧モータが受け持つ。直線の動きと回転の動きは、別の部品が受け持つ。

油の通り道には、コントロールバルブがある。ポンプでつくられた高圧油は、バルブを経て各シリンダやモータに送られる[4]。バルブでどの動作に油を流すか、どれだけ流すかを決めるので、運転者の操作に応じて、各動作の速さや力を調整する。

では、油圧が使われる前の機械は、どうやって腕を動かしていたのか。

4. むかしの ショベルは、ワイヤで ひっぱって いた

4. 蒸気とワイヤの時代、傾斜地では曲がれなかった

4. 蒸気ショベルと機械式 ── ワイヤ式の限界

むかしの ショベルは、あぶらでは なく、ワイヤの ロープで うごいて いました。1830ねんだいに、じょうきの 力で うごく ショベルが うまれたと いわれます[5]。

てつどうを つくる しごとで つかわれました。アメリカの オーティスという ひとが、1830ねんだいに つくったと つたえられて います[5]。

ワイヤ式は、エンジンの 力を ウィンチで ロープを まきとって、うでを うごかします[1]。でも、やまみちや かたむいた ところでは、車が うまく まがれませんでした[2]。

車が おもくて、おもさの ちゅうしんが たかい ために、じばんの よい たいらな ところが おもな しごとばでした[2]。

油圧の前のショベルは、蒸気機関で動く機械でした。最初のパワーショベルとして、米国のウィリアム・スミス・オーティス(オーチスと書く資料もある)の名が知られています。1830年代に蒸気ショベルを作ったとされます。鉄道車両にクレーンのようなものを載せ、蒸気の力で滑車を通してアームとバケットを動かし、鉄道の建設に使われたと伝えられています[5]。

その後の機械式ショベルは、エンジンの動力を機械的に伝え、ウィンチでワイヤロープを巻き取ったり巻き戻したりして動かす形式になります[1]。

この方式には弱点がありました。走行は、上の部分からシャフトで伝えた動力をクラッチを通して左右のクローラに伝えるので、傾斜地では方向転換が難しいなど、制約が大きかったのです。車体は重く重心が高く、地盤のよい平らな現場が中心でした。腕の動きも油圧ほど細かくできず、操作もとても難しい機械でした[2]。

現在は、超大型を除いて、機械式はほぼ姿を消し、油圧式に取って代わられています[1]。では、油圧ショベルはどこで生まれ、日本にはいつ来たのでしょうか。

油圧が登場する前のショベルは、蒸気機関による機械式であった。ウィリアム・スミス・オーティス(オーチス表記もある)が1830年代に蒸気ショベルを製作したとされる。鉄道車両にクレーン状の装置をのせ、蒸気の力で滑車を介してアームとバケットを動かし、マサチューセッツ州の鉄道建設で使われた[5]。なお、JCMAの資料は考案者を別の名前と1837年で記しており、出典どうしで細部が食い違う。

その後の機械式ショベルは、エンジンの動力を機械的に伝達・分配し、各動作をウィンチ機構によるワイヤロープの巻き取り・巻き戻しで行う形式である[1]。

この方式の限界は、日本の現場の条件に重なる。走行は上部からシャフトで伝わる動力をクラッチ経由で左右のクローラへ分けるため、傾斜地ではステアリングが切れにくい。また、車体は重く重心が高いので、地盤のよい平地の現場が中心になる。作業機は油圧ほど細かく動かせず、操作も大変難しい[2]。

現在、機械式は超大型を除きほぼ姿を消した[1]。では、操作が簡単で細かく動く油圧式は、いつ、どこで生まれ、日本でなぜ急に広まったのか。

5. ヨーロッパで うまれ、日本で いっきに ふえた

5. 狭い日本の現場で、油圧ショベルが一気に増えた

5. 油圧ショベルの誕生と、日本での急増 ── 台数と地形の条件

あぶらの ショベルは、ヨーロッパで うまれました。1950ねんごろと いう せつと、フランスの ポクランしゃが 1951ねんに だしたと いう せつが あり、はっきり ひとつには きめられません[2][6]。

日本には 1961ねんごろ、フランスの かいしゃと てを むすんだ 会社から、はいって きました[1]。

すると 日本で、とても ふえました。1970ねんごろは 8000台、1973ねんには 2万台を こえました。1990ねんには 5万台を こえ、世界の 半分より おおく なりました[2]。

その わけとして あげられて いるのは、やまや やわらかい じめんが おおく、せまい ばしょの しごとが おおかった ことです。うごかしかたが かんたんで、こまかく きれいに ととのえられる ことも あげられて います[2]。

油圧ショベルは、ヨーロッパで生まれました。ただし「世界初」を1社・1年に決めるのは難しく、JCMAの資料は1950年に西ドイツで開発とし、フランスのポクラン社が1951年にTUという油圧ショベルを出したという記述もあります[1][6]。ポクラン社は1961年に、車体が360度回れるTY45も出しました[6]。

日本では、1961年に新三菱重工がフランスのシカム社と提携して発売し、1963年に油谷重工が続きました。1965年に日立製作所(現・日立建機)が自社開発の機械を出します[1]。

そこからの増え方が目立ちます。国内の需要は、1970年ごろで約8000台、1973年に2万台を超え、1990年には5万台を超えました。世界の需要は10万台弱だったので、日本だけで半分を超えた計算です[2]。8000台から2万台は3年で約2.5倍、1990年までの20年では約6倍です(概算)。ただし、この「半分」は1990年の台数で、今の割合ではありません。

資料があげる理由は、一般の土木向けの機械があまり広まっていなかったこと、傾斜地・やわらかい地盤・狭い現場が多い地形、そして操作が簡単で細かな整形もできることです[2]。

狭い現場向けの機種もあります。車幅の中で旋回できる超小旋回の機械は、狭い道や、道路を1車線だけ使う工事に使われます[1]。

油圧ショベルは欧州で誕生した。ただし出典によって細部は異なる。JCMAの資料は、1950年に西ドイツで開発されたとし[1]、フランスのポクラン社が1951年に油圧ショベルTUを、1961年には全周旋回のTY45を出したという記述もある[6]。「世界初」を1社・1年に断定するのは避けたほうがよい。

日本への導入は、海外メーカーとの技術提携が先行した。表によると、新三菱重工がシカム社(仏)と提携して1961年4月に発売し、油谷重工が1963年に続き、日立建機(当時は日立製作所)が1965年7月に自社開発の機種を発売した[1]。

その後の伸びは急である。国内需要は1970年ごろ約8000台、1973年に2万台超、1990年には5万台を超え、世界需要10万台弱の50%を超えた[2]。8000台から2万台は3年で約2.5倍、1990年までの20年で約6倍になる(概算)。この50%は1990年の数字で、現在の割合ではない。2012年の資料の筆者は、今も世界の油圧ショベルの70%程度が日本で開発されていると推定するが、あくまで筆者の推定である[2]。

なぜ日本で急増したのか。同資料は、一般土木向けの施工機械がまだあまり普及していなかったこと、傾斜地・軟弱地・狭い現場が多い地形、操作が簡単で細かな整形もできることをあげる[2]。前の章で見た機械式の弱点が、そのまま日本の条件にあたるので、納得しやすい(筆者の整理)。車幅内で旋回できる超小旋回機は、狭路や1車線だけを使う作業に用いられる[1]。

では、最初に国産された機械は、どのように動かされていたのか。

6. さいしょの こくさんは、手と 足で そうさ した

6. 1965年の国産第1号は、両手と両足で操作した

6. UH03 ── 2ポンプ2バルブと、足のペダルによる操作

1965ねん、日立せいさくしょが「UH03」を うりだしました。ぜんぶ 日本の ぎじゅつで つくった さいしょの あぶらの ショベルです[2]。おもさは 8.7トンでした。

のりこむと、レバーが 6ぽん あります。うでと まわる うごきの ための ものが 4ほん、はしる ための ものが 2ほんです。ブームと まわる うごきは、左右の 手で そうさします[2]。

アームと バケットは、レバーの ねもとの ペダルを 足で ふみました。りょう手と 足を ぜんぶ つかって うごかした のです。

この 車は、ポンプを 2つ つかう しくみで、いっしょに ふたつの うごきを しても うごかしやすく なりました[2]。

1965年、日立製作所の建設機械部門(現・日立建機)が、純国産技術による日本初の油圧ショベルUH03を発売しました。バケットの容量は約0.3立方メートル、全体の重さは8.7トンです[2]。2011年度には、日本機械学会の機械遺産に認定されました[2]。「純国産技術」とあるのは、外国と提携した機種が先にあったためです。

運転席には、6本のレバーがありました。掘る・旋回するための4本と、走るための2本です。ブームと旋回は左右の手で、アームとバケットはレバーの根元についたペダルを足で操作しました[2]。手も足も使う、体全体の操縦だったことが分かります。

中身にも工夫がありました。当時の主流は1つのポンプに1つのバルブをつなぐ方式でしたが、UH03は、今と基本的に同じ2ポンプ2バルブの油圧システムを採りました。これで、複数の動作を同時に行うときの操作性と作業速度が良くなりました[2]。掘って、旋回して、土を落とすという1回の作業の流れは、約15〜20秒だったとされます[2]。

ブームは、2本のシリンダで動かしていました[2]。この機械が、日本の現場で広まっていく土台の1つになったといわれます。

日本で最初の国産機にあたるのが、1965年に日立製作所の建設機械製造部門(現・日立建機)が開発・発売したUH03である。バケット容量は0.3立方メートル(資料により0.35)、総質量は8.7トンで、「純国産技術による日本初」とされる。2011年度に日本機械学会の機械遺産に認定された[2]。ここで「純国産技術」と限定されているのは、技術提携による機種がすでに先行していたためで、「日本初」とだけ書くのは不正確になる。

操作は、レバー6本(掘削・旋回用に4本、走行用に2本)で、ブームと旋回を左右の手で、アームとバケットはレバー根元のペダルを足で操作した[2]。操作の簡単さが普及の理由にあげられていたが、初期の機械では、手と足をそろえて動かす必要があったことになる。

設計面の要点は、油圧システムである。当時主流の1ポンプ1バルブ方式に対し、UH03は現在と基本的に同じ2ポンプ2バルブ方式を採用した。その結果、複数の動作を同時に行う複合動作の操作性が改善し、作業速度も向上した[2]。ブームは2本のシリンダで動かし、掘削1回のサイクルは約15〜20秒だった[2]。

ポンプを2つにすると、1つのポンプの油を複数のシリンダやモータが奪い合うことが減る、と考えられる(筆者の推測。資料はこの理由まで書いていない)。腕を上げながら向きを変える、という人間の自然な動きに近づいたのが、複合動作の改善である。

こうして機械の性能が上がるうちに、機械の呼び名も、現場で独特の広まり方をした。

7. 「ユンボ」って、そもそも なんの なまえ?

7. 製品名だった「ユンボ」が、代名詞になるまで

7. 「ユンボ」の由来と、公的な場面での「バックホウ」

「ユンボ」は、もとは フランスの シカムしゃ(いまは ユンボしゃ)の しょうひんの なまえです[7]。

1961ねんに、日本の しんみつびしじゅうこうという 会社が、この きかいを 日本で つくって「ユンボ」の なまえで うりました。それが ひろまって、あぶらの ショベルを ぜんぶ「ユンボ」と よぶ ように なりました[7]。

きゅうじんの こうこくでは、字が すくなくて すむからだ、と いう はなしも あります。ただ、たしかな りゆうでは ありません[7]。

おおやけの ばでは「バックホウ」と よぶ ことが あります[7]。

「ユンボ」という言葉は、もとはフランスのシカム社(現ユンボ社)の製品の呼び名でした[7]。

1961年に新三菱重工が、その機械を日本で作る形で、「ユンボ」の名で売り出しました。この名前が、油圧ショベル全体の代名詞として広まったと説明されます[7]。商品の名前が、同じ種類の機械すべての呼び名になった例です。

なぜ広まったかについて、求人広告の字数が少なくて済むからだ、という説があります。「ユンボ」なら3文字で済む、という話です。ただし「といわれる」程度の説明で、確かな由来とは言えません[7]。

公的な場面では「バックホウ」(バックホー)と呼ばれることがあります[7]。前の章で見たとおり、現在の油圧ショベルは土砂を手前にかき寄せて掘るバックホウ型がほとんどなので[1]、実際の機械の特徴とも合っています。

「ユンボ」は、もとはフランスのシカム社(現ユンボ社)の製品呼称である。1961年に新三菱重工が国産化して「ユンボ」の名で発売したことから、この名前が油圧ショベルの代名詞として広まった[7]。商標や製品名が、同種の機械全体の一般名になる現象の1例である。なお前の章の表で、新三菱重工の1961年4月の機種がシカム社との提携と記されていること[1]とも矛盾しない。

普及の理由として、求人広告の文字数が少なくて済むためという説がある。「ユンボ」なら3文字で済む、というものだが、確定した由来ではない[7]。出典はWikipedia系の辞書サイトであり、一次資料ではない点にも注意したい。

公的な場面では「バックホウ」(バックホー)と呼ばれることがある[7]。JCMAの資料が述べるとおり、現在の油圧ショベルのほとんどがバックホウ型で[1]、この名称は機構の種類を表している。「ユンボ」は商品名の由来、「バックホウ」は機構の型を指す呼び名と読み分けると、場面ごとの使い分けも理解しやすい。

8. こうじの ばしょで、ぼうを かぞえて みよう

8. 外から見て、シリンダの本数を数えてみる

8. 現場で確かめる ── 作動部の数と、資料の読み方

こうじを して いる ところを みかけたら、おとなと いっしょに、フェンスの そとから ショベルカーを みて みましょう。ちかづいたり、中に はいったり しては いけません。

うでの つけねに、ぎんいろの ふとい ぼうが ついて いませんか。それが シリンダです。いくつ あるか かぞえて みましょう。ブーム、アーム、バケットを うごかす シリンダが ついて います。きかいに よって つきかたは ちがいます[4]。

くるりと 車が まわる ときは、シリンダでは なく、モータが はたらいて います[4]。

ショベルカーの うごきを ゆっくり 見ると、あぶらの 力を ひとつずつ つかい わけて いる ことが 見えて きます。

工事をしている場所を見かけたら、おとなといっしょに、フェンスの外からショベルの腕を観察してみてください。内側には入らず、遠くから見るだけにします。

腕のあちこちに、銀色の太い棒が付いているのが見えるはずです。これがシリンダです。ブーム、アーム、バケットのそれぞれに付いているので、何本あるか数えてみましょう[4]。機械の大きさによって、見える数や付き方が少し違うかもしれません。

上の部分が回るときや、走るときは、動かしているのがシリンダではなくモータです[4]。腕の動きと回る動きを見比べると、「押す・引く」と「回す」の違いがつかめます。

もう少し調べたくなったら、日本建設機械工業会(JCMA)の資料[1]が、油圧ショベルの種類や大きさの分け方を日本語で説明しています。UH03については、日本建設機械施工協会の「建設の施工企画」2012年1月号の記事[2]が、開発のようすを詳しく書いています。

身近な現場で、機械の仕組みを自分の目で確かめるなら、おとなといっしょに、フェンスの外から作業装置を観察するのがよい。家では、ショベルの絵を紙に描き、シリンダの位置を見比べてもよい。ブーム・アーム・バケットにつくシリンダの本数を数え、旋回や走行のときは、動かしているのがモータであることを思い出して見比べる[4]。ブームを2本のシリンダで動かしたUH03のように[2]、機種によって本数や付き方が変わる部分もありうる。

数字の読み方も確認しておきたい。1990年の「世界需要の50%超」は当時の台数による値で、現在の割合ではない。2012年資料の「世界の約70%が日本で開発」は、執筆者の推定である[2]。最初の油圧ショベルの発祥は、資料により1950年の西ドイツ説と、フランスのポクラン社の1951年説に分かれる[1][6]。

調べを進める入口は2つある。JCMAの建築部会資料[1]は、油圧ショベルの区分や機種の表がまとまっている。「建設の施工企画」2012年1月号のUH03の記事[2]は、機械式との比較や台数の推移が書かれている。この2つを読み比べると、「なぜ日本で急に広まったのか」を自分の目で検討できる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本建設機械工業会などの公的な資料を中心に、事典、メーカー解説、英語版の百科事典、辞書サイトを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 日本建設機械工業会(JCMA)建築部会資料「2.1.1 油圧ショベル」。https://www.jcmanet.or.jp/kikaibukai/kenchiku/pdf2/020101.pdf (基本の仕組み、機械式ショベル、大きさの分け方、日本の機種の表について)
  2. 田中利昌「UH03の紹介」、日本建設機械施工協会『建設の施工企画』2012年1月号。https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2012/01/062.pdf (UH03、機械式の弱点、日本で広まった理由と台数について)
  3. コトバンク「パスカルの原理」。https://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86-114375 (パスカルの原理と力の増え方について。事典の記述)
  4. ヤンマー建機コラム「油圧ショベル・ミニショベルの仕組み」。https://www.yanmar.com/jp/construction/tips/column/basis_02.html (シリンダとモータの使い分けについて。メーカーの解説)
  5. William Otis(Wikipedia 英語版)。https://en.wikipedia.org/wiki/William_Otis (蒸気ショベルの特許について。百科事典の記述で、特許原本は見ていない)
  6. Poclain(Wikipedia 英語版)。https://en.wikipedia.org/wiki/Poclain (フランスのポクラン社の油圧ショベルについて。百科事典の記述)
  7. Weblio辞書「ユンボ」。https://www.weblio.jp/content/%E3%83%A6%E3%83%B3%E3%83%9C (「ユンボ」の由来と正式名称について。辞書サイトの記述)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。