1. 目を つぶると、どうして 赤く 見えるの?
1. 明るい窓に向かって目をつぶると、なぜ赤っぽく見えるのか
1. 閉じたまぶたを通る光:赤い光が届きやすい
ひるまの まどの ほうを むいて、目を つぶって みます。まっくろに なる はずなのに、なんだか 赤い ような、だいだいいろの ような 色が 見えませんか。
まぶたは、かみの ように ぴったり 光を とめる ものでは ありません。うすい ひふで できていて、中には 血が ながれる 血管が たくさん あります[3]。
そとの 光は、まぶたの 中を とおるとき、血の 色の えいきょうを うけて 赤く なると せつめい されて います。光の 色の うち、赤い ほうが とおりやすく、青い ほうは とおりにくいのです[3]。
では、まぶたは 光を どれくらい とおすのでしょう。
赤く見えるのは、まぶたが光に色をつけるから
昼間の窓のほうを向いて目をつぶると、視野は黒ではなく、赤やオレンジに近い色になります。外の光は、まぶたを通って網膜まで届いているからです。
まぶたの皮膚は薄く、中に血管がたくさん走っています。まぶたを通り抜ける光は、血の色を帯びて赤っぽくなる、という説明があります[3]。まぶたの組織が赤い側の波長をよく通し、青い側の波長を通しにくいことも、赤みの理由として挙げられています。
この説明は、子ども向けの解説記事が一般向けに整理したものです。どの色がどれくらい通るのかは、測定した研究で確かめられています。次の章で、その数字を見てみます。
明るい光源に向かって目を閉じたとき視野が赤みを帯びるのは、まぶたが可視光を一様には遮らないからである。まぶたには血管が豊富で、通過する光が血液の色を帯びる、という説明がある[3]。同時に、まぶたの組織自体が長波長側の光をよく通し、短波長側を通しにくいことも要因として挙げられている。
ただし、これは一般向けの解説に基づく整理であり、「血の色のせい」と「組織の波長依存の透過」の寄与がそれぞれどの程度かまでは、本稿の資料からは分からない。確かなのは、波長によって届く量が違うという点で、その大きさは測定で示されている。
では、その差は実際にどれほどか。次章で、測定値を2つの研究で比べる。
2. まぶたは、光を どれくらい とおすの?
2. まぶたを通る光の割合は、測り方で変わる
2. 測り方で変わる数字:まぶたを通る光と、見た目の明るさ
ある けんきゅうでは、まぶたを とおる 光の わりあいを はかりました。まぶたに 当たった 光 100の うち、赤い 光は 9ほど、みどりの 光は 0.5ほどが とおりました[1]。
この けんきゅうの 数字で 9÷0.5を すると、赤い 光は みどりの 光の 18ばい とおって いました。まぶたは、赤を とおしやすいようです。
ところが、べつの けんきゅうでは、ちがう 数字が でました。おおさかの 大学の せんせいたちが、33人の 目を つぶった ときの 「見た目の あかるさ」を はかると、赤は 52ほど、青は 4.5ほどでした[2]。
こちらは、人が どれだけ あかるく 感じるかを もとに した 数字で、人に よって ちがいも 大きかったそうです。数字が ちがうのは、はかって いる ものが ちがうからだと 考えられます。
ここでも、赤は あかるく、青は くらく 感じられました。
2つの研究が報告した、色ごとの数字
まぶたを通る光の割合を測った研究の1つでは、波長ごとの割合が報告されています。赤い光(波長630ナノメートル。波長は光の色の目安です)は約9%、緑の光(550ナノメートル)は約0.5%、青緑の光(490ナノメートル)は約0.4%でした[1]。この研究の報告値で9÷0.5を計算すると、赤は緑の約18倍です。
大阪公立大学の酒井英樹教授らは、33人が目を閉じたときの「実効透過率」を測りました。平均は赤が52.4%、黄が26.2%、緑が21.6%、青が4.5%で、白い光では42.7%でした[2]。こちらも、赤が高く青が低いという向きは同じで、この研究の平均値で赤を青で割ると約11.6倍になります。
数字がちがうのは、測っているものがちがうから
酒井教授らの値は、従来の報告の最大で約10倍とされ、個人差も大きいと報告されています[2]。実効透過率は、人が見た目の明るさとしてどう感じるかを基準にした値なので、まぶたの物理的な透過率とは別のものです。そのため、2つの数字をそのまま並べて「どちらが正しい」と決めることはできません。
はっきり言えるのは、どちらの研究でも赤が最も通り、青や緑が通りにくいことです。では、通る光がほとんどない暗い部屋では、目をつぶった視野は何色になるのでしょうか。
まぶたの分光透過率を測った研究では、波長630nmで約9%、550nmで約0.5%、490nmで約0.4%と報告されている[1]。この研究の報告値で赤と緑の比は9÷0.5=18、約18倍である。長波長側の光のほうが、まぶたを通りやすいことになる。
一方、大阪公立大学の酒井英樹教授らは、33人を対象に、閉眼時の「実効透過率」を測定した。平均値は赤52.4%、黄26.2%、緑21.6%、青4.5%、白42.7%で、標準偏差も赤で31.5など大きく、個人差が大きいことが分かる[2]。この研究の平均値で赤を青で割ると約11.6倍で、色による差の向きは先の研究と一致する。
なぜ数字がここまで違うのか。実効透過率は、人が目を閉じたときの見た目の明るさを基準にした指標であり、まぶたに入る光と通り抜ける光の物理的な比である透過率とは、定義が異なる。報告でも、従来の値の最大約10倍と説明されている[2]。2つの数字は競合するものではなく、別の量を測っていると読むのが自然である。
ただし、「実効透過率」が具体的にどのように算出されるかは本稿で参照した範囲では書かれておらず、また両者の差がどこまで測定条件や被験者の違いで説明できるかも、この資料だけでは言えない。確かなのは、波長依存性の向きが一致していることである。
では、まぶたを通る光がごくわずかな場所、つまり暗い部屋の中では、閉じた目に何が見えるのか。
3. くらい へやで 目を つぶると、なにいろに 見えるの?
3. 光の少ない場所で見える「暗い灰色」
3. 固有灰色(エイゲングラウ):黒より少し明るい暗闇
カーテンを しめた くらい へやで、目を つぶって みます。まっくろ、と 思うかも しれません。
でも、光が すくない ところで 見える 色は、まっくろでは なく、うすい はいいろに 近いと いわれます。この 色は、「こゆうはいいろ」という 名前が ついて います[4]。
ふだんの あかるさの 中で 見る くろい ものより、すこし あかるく 見えると いわれます[4]。
そうだとすると、光が ないのに すこし あかるい ものが 見えるのは、ふしぎです。目の 中では、なにが おきて いるのでしょう。
黒より、少し明るい灰色
カーテンを閉めた暗い部屋で目をつぶっても、完全な黒ではなく、暗い灰色のもやのようなものが見える、と説明されることがあります。光の少ない場所で見える一様な暗い灰色は、「固有灰色(エイゲングラウ)」と呼ばれています[4]。
この灰色は、ふだんの明るさの中で見る黒い物体より、少し明るく見えます。このように見える現象が、固有灰色として知られています。
この呼び名だけでは、なぜ目をつぶると暗く感じるかまでは分かりません。そこで、目の中で起きていることを次の章で見ます。光がないのに、なぜ少し明るい灰色が見えるのでしょうか。
4. 光が ないのに、目の中で なにが おきて いるの?
4. 光がなくても、網膜は静かにならない
4. ロドプシンの熱による自然な反応:暗いノイズの正体
目の おくには、もうまくと いう、光を うける ところが あります。その 中の 小さな つぶ(しさいぼう)には、光を かんじる 「ロドプシン」という ぶんしが あります。
この ぶんしは、光が こなくても、まれに 自分で はんのうして しまう ことが あります。ねつの 力で、ひとりでに 動くのです。その 合図は、ほんとうの 光が きた ときの 合図と、くべつが つきません[4]。
光が ないのに、ロドプシンが 光を うけた ときと にた 合図を 出す ことが あります。1980年の 研究では、カエルの 細ぼうで、この 合図が ロドプシン 1つぶんの はんのうだと しめされました[5]。目の 中には たくさんの 細ぼうが あるので、小さな 合図が かさなって、かすかな 明るさに なる かのうせいが あります。
では、光が なくても 光が 見える ことは、ほかにも あるのでしょうか。
光のセンサーが、熱で勝手に反応する
網膜には、薄暗い場所でのわずかな光を捉える視細胞があり、その1つに「桿体」があります。桿体の中には、光を受け取る分子のロドプシンがあります。
真っ暗でも、ロドプシンは熱の力で自然に反応してしまうことがあります。その信号は、本物の光子(光のつぶ)による信号と区別できません[4]。桿体は網膜の中にたくさんあるので、小さな信号が重なる可能性があります。
1980年の実験が示したこと
1980年、ベイラーらはヒキガエルの桿体で、暗闇の中の電気的なゆらぎ(暗ノイズ)を調べました。そのなかの離散的な信号が、ロドプシン1分子の熱による自然な活性化によって起きていると示しています[5]。この大きさは、1956年にバーローが、暗闇に慣れたヒトの視覚の統計を説明するために想定した「暗い光」と合うとされます[5]。
つまり、完全な暗闇でも、網膜は光のような信号を自分で作り出すことがある、と考えられています。では、光ではない刺激でも、網膜は光の信号を作るのでしょうか。
網膜の桿体では、光受容分子ロドプシンが、光子を吸収しなくても、熱エネルギーによって自発的に異性化することがある。この自発的な活性化が生む信号は、実際の光子による信号と区別できない、とされる[4]。桿体は網膜に多数あるため、こうした小さな信号が重なる可能性がある。
この仕組みは、1980年にベイラー、マシューズ、ヨウらが、ヒキガエルの桿体で記録した電気的な暗ノイズの解析から示された。離散的な信号は、ロドプシン1分子の熱による自発的な活性化に由来すると解釈された[5]。その大きさは、バーロー(Barlow、1956)が暗順応したヒトの視覚の統計を説明するために想定した「暗い光」(dark light)の大きさと合うとされる[5]。
ここから導かれるのは、暗い中で見える微弱な明るさの少なくとも一部が、外から来る光ではなく、視細胞の内部で生じる自発的な信号であるという可能性である。ただし、どの程度が分子の熱によるもので、どの程度が脳の処理によるのかまでは、参照した資料では切り分けられていない。
では、光ではない刺激でも、網膜は光の信号を出すのか。次章では、目を押したときに見える光を取り上げる。
5. 目を おすと、光が 見えるのは どうして?
5. 目を押すと光が見えるのは、光以外の刺激にも網膜が反応するから
5. 光覚(フォスフェン):眼球の変形と神経節細胞の活動
光が 当たって いないのに、光や もようが 見える ことを、「こうかく(フォスフェン)」と いいます[6]。目を ぎゅっと おしたり、こすったり した ときに 見える 光も、その なかまです。
目を おしたり こすったり した ときに、光が 見える ことは あります。光の かわりに、おす 力が もうまくを しげきして いると 考えられて います。
むかしから 知られていて、ニュートンも 目を ゆびで おして、色の ついた 光の わを 見たと つたえられて います。ギリシャの 古い 本にも、にた ことが 書かれていると いわれます[6]。
こすって いないのに 光が よく 見える ときや、きゅうに ふえた ときは、がんかの せんせいに そうだんしましょう[8]。
光以外の刺激で起きる「光」
光が目に入っていないのに、光や模様が見える感覚を「光覚(フォスフェン)」といいます。光以外の刺激でも起こります[6]。目をこすったときにも起こることがある、とMSDマニュアルも説明しています[8]。
この現象は昔から知られていました。ニュートンは、目を指で押すと反対側に色のついた光の輪が見えることを記録した、と伝えられています。古代ギリシャの文献にも、目を押したときに見える光の記述があるといいます[6]。
眼球を押すと、神経の反応が変わる
1989年にグリュッサーらは、暗闇で眼球を変形させる実験をしました。その結果、網膜神経節細胞のうち「オン中心型」が活動し、「オフ中心型」は抑えられました[7]。オン中心型は、光が当たったときに強く反応するタイプです。押された網膜が、光が来たときと似た反応を見せたことになります。
こすっていないのに光が頻繁に見える、あるいは急に増えたと感じるときは、眼科に相談するよう案内されています[8]。
光が入射していないのに光や模様が知覚される現象は、光覚(フォスフェン)と呼ばれる。光以外の刺激でも起こる[6]。目をこすったときにも起こることがある点は、MSDマニュアルでも述べられている[8]。
歴史的には、ニュートンが指で目を押し、反対側に色のついた光の輪が見えることを記録したと伝えられ、古代ギリシャの文献にも圧迫による光の記述があるとされる[6]。ニュートン自身の記述は二次資料による紹介の範囲で、「伝えられる」と読むのが安全である。
神経の応答としては、グリュッサーらが1989年に、暗闇で眼球を変形させると、網膜神経節細胞のうちオン中心型が比較的一貫して活動し、オフ中心型は抑制されたと報告した[7]。オン中心型は、受容野の中心に光が当たると活動が増える細胞である。したがって、機械的な圧迫が、光が当たったときに似た応答のパターンを作ると解釈できる。
一方、こすっていないのに光視症が頻繁に起きる、あるいは急に増えた場合は、眼科での相談が案内されている[8]。目を押す行為そのものを試すことは勧められず、この章の話は、暗闇の中でも網膜が信号を作り得る例として読むのがよい。
6. まどべと くらい へやで、目を つぶって くらべよう
6. 窓ぎわと暗い部屋で、目をつぶって見え方を比べる
6. 閉眼視野を比べる:明るさ・向き・色の変化
つぎの 3つを、おうちの 人と いっしょに ためして みましょう。どれも、ただ 目を つぶる だけです。
1つめは、ひるまの まどの ほうを むいて 目を つぶります。なにいろに 見えますか。たいように むかっては いけません。
2つめは、まどに せなかを むけて つぶります。1つめと くらべて、どちらが あかるいでしょう。
3つめは、へやを できるだけ くらくして、目を つぶります。さいしょの 色と くらべて、ちがうでしょうか。
目を おしたり、こすったり しては いけません。見え方を ことばに して、ノートに 書いて おくと、あとで くらべられます。
必要なのは、目をつぶることだけです。次の3つで、見え方を比べてみてください。
- 昼間の窓のほうを向いて目をつぶり、見える色を言葉にする(太陽は直接見ない)
- 窓に背を向けて目をつぶり、明るさがどう変わるかを比べる
- 部屋をできるだけ暗くして目をつぶり、見える色と明るさを、1つ目と比べる
窓の向きや部屋の明るさで、見える色や明るさはどう変わるでしょうか。自分の見え方を言葉にしておくと、ここで読んだ数字や説明と照らし合わせられます。
こすったり押したりはしないでください。こすっていないのに光が頻繁に見える、あるいは急に増えた場合は、眼科に相談するよう案内されています[8]。
手がかりになる観察は、目を閉じたまま、明るさと向きを変えて見え方を比べることである。昼間の窓の方向(太陽は直接見ない)、窓に背を向けた方向、できるだけ暗くした部屋の3つで、見える色と明るさを言葉にする。まぶたの透過率が波長で違うなら、赤みは明るい方向で強く、暗い部屋では変わるはずだ、という予想を立てられる。
数字を調べたくなったら、まぶたの透過率の測定(Biermanら、J Biomed Opt、2011)、閉眼時の実効透過率(Sakai、Color Research & Application、2023)、暗ノイズの記録(Baylorら、1980)、眼球変形時の神経節細胞の応答(Grüsserら、Vision Research、1989)が、本稿の出典に挙げた原典にあたる。透過率の値は、手元の資料では検索結果の要約で確かめたものがあるため、引用するときは原文の確認をすすめる。
目を押したりこすったりする実験は勧めない。光視症が頻繁に起きる、急に増えたと感じる場合は、眼科への相談が案内されている[8]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
研究論文の数字は、検索結果の要約や大学のニュースで確かめたものがあります。引用するときは、原文もあわせて確認してください。
- Bierman et al. (2011) Measuring and predicting eyelid spectral transmittance, Journal of Biomedical Optics 16(6). https://spiedigitallibrary.org/journals/journal-of-biomedical-optics/volume-16/issue-06/067011/Measuring-and-predicting-eyelid-spectral-transmittance/10.1117/1.3593151.full (まぶたを通る光の割合)
- 大阪公立大学 研究ニュース(酒井英樹教授ら、目を閉じたときの実効透過率)。 https://omu.ac.jp/en/info/research-news/entry-20214.html (33人の測定)
- The Conversation, Curious Kids: Why do we see different colours when we close our eyes? https://theconversation.com/curious-kids-why-do-we-see-different-colours-when-we-close-our-eyes-154378 (赤く見える理由の説明)
- Eigengrau (Wikipedia). https://en.wikipedia.org/wiki/Eigengrau (暗い灰色、暗闇でのロドプシンの自然な反応)
- Baylor, Matthews, Yau (1980) 桿体の暗ノイズ。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1274605 (ロドプシン1分子の自然な活性化)
- Phosphene (Wikipedia). https://en.wikipedia.org/wiki/Phosphene (光覚の定義と歴史)
- Grüsser et al. (1989) Vision Research. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2800346/ (眼球変形と神経節細胞の応答)
- MSDマニュアル家庭版 光視症と飛蚊症。 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home (目をこすったときの光視症、受診の目安)
なおした ところ
更新履歴
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