1. 小さい つぶほど、すりぬけるの?
1. 小さい粒ほど抜けやすい、とは限らない
1. 0.3μmは「最小の粒子」ではない ── 定義の中に置かれた数字
ほこりや けむりの つぶは、とても 小さいです。0.3マイクロメートルは、1ミリの 千分の 1の、そのまた 3わりほどの 大きさです。
小さい つぶほど、フィルターの すきまを すりぬけそうに 思えませんか。じつは そうとは かぎりません。小さすぎる つぶは、ふらふら 動きまわって、フィルターの せんいに ぶつかりやすく なります[2]。
HEPAは、アメリカの エネルギーしょうの 本では「0.3マイクロメートルの つぶを 99.97%いじょう とる」ことなどが じょうけんに なっています[1]。1万この つぶが 入って きたら、通りぬけるのは 3こまで、と いう 計算です。
日本でも、HEPAは 0.3マイクロメートルの つぶを 99.97%いじょう つかまえる ものと しょうかいされて います[3]。
0.3が いちばん 小さい つぶでは ないのなら、なぜ この 大きさなのでしょう。まずは、フィルターが つぶを つかまえる しくみを 見てみます。
空気中のほこりや煙の粒は、とても小さなものです。0.3マイクロメートルは、1ミリの1000分の1(1マイクロメートル)のさらに3割ほどの大きさです。
粒が小さければフィルターのすき間を抜けやすい、と考えたくなります。しかし厚生労働省の会議資料には、粒子は小さくなるほどフィルターを漏れてくるわけではない、とあります[2]。
HEPAの定義を見てみましょう。アメリカのエネルギー省のハンドブックは、HEPAフィルターを「0.3マイクロメートルの粒を99.97%以上取りのぞく」などの条件を満たす使い捨てのろ過器としています[1]。99.97%は、1万個の粒が入ると抜けるのが3個ほど、という計算になります。
日本でも、JIS Z 8122がHEPAを定格流量で0.3マイクロメートルの粒を99.97%以上集め、初期の圧力損失が245パスカル以下のものとしていると、家電の解説記事で紹介されています[3]。
0.3が最小の粒でないなら、この大きさにはどんな意味があるのでしょうか。まず、フィルターが粒を捕まえる仕組みを見ます。
HEPAを定義する数字として最もよく知られるのは、0.3μm・99.97%である。アメリカのエネルギー省(DOE)のハンドブックは、HEPAフィルターを「0.3μm粒子の除去効率が99.97%以上」などの条件を満たす使い捨てのろ過器と定める[1]。99.97%は、1万個の粒子が入って通過が3個程度という水準である。
日本については、家電の解説記事が、JIS Z 8122の内容として「定格流量で粒径0.3μmの粒子を99.97%以上捕集し、初期圧力損失が245Pa以下」という条件を紹介している[3]。ここではJIS原文ではなく、この二次的な紹介に依っている。
ここで引っかかるのは、0.3μmが最小の粒子ではないことだ。厚生労働省の会議資料(2008年)は、粒子は粒径が小さくなるほどエアフィルタを漏れてくるわけではない、と明記している[2]。小さいほど通りやすい、という素朴な直感と逆の向きの性質が、定義の裏にあることになる。
では、その逆向きの性質は、どんな捕集の仕組みから生まれるのか。
2. おおきい つぶも ちいさい つぶも つかまるのに、どうして まんなかが のこるの?
2. 大きい粒も小さい粒も捕まるのに、中間が残るのはなぜか
2. 慣性・拡散・さえぎり ── 捕集効果の谷間にある粒径
まず 大じな ことが あります。フィルターは、ふるいでは ありません。つぶより 小さい あなで とめて いるのでは なく、中に ある せんい 1ぽん 1ぽんが、つぶを つかまえて います[2]。
たとえば、せんいを 竹やぶの 木に 見立てて みましょう。そこへ、いろいろな 大きさの つぶが とんで きます。
大きくて 重い つぶは、風の 向きが かわっても まっすぐ すすもうと して、木に ぶつかります。これを「かんせい」と いいます。
とても 小さい つぶは、ふらふらと 動きまわる(ブラウン運動)ので、いつのまにか 木に 近づいて くっつきます。これを「かくさん」と いいます[1]。
ところが、その まんなかの 大きさの つぶは、まっすぐにも すすまないし、ふらふらも しにくい のです。のこるのは、せんいの 近くを 通った ときに ふれる「さえぎり」だけ。この あたりが、いちばん つかまえにくい 大きさの めやすです[1]。ただし、これは たとえで、ほんとうの フィルターは もっと ごちゃごちゃして います。
では、その「いちばん つかまえにくい あたり」を、どうして 0.3と きめたのでしょう。
ここで一つ、大事な前提があります。HEPAフィルターは、ふるいのようなものではありません。粒より小さいすき間で止めるのではなく、フィルターの表面と内部にある繊維の1本1本が、粒を捕まえています[2]。
捕まえ方には、主に三つあります。大きい粒は、空気が曲がっても慣性でまっすぐ進もうとして繊維にぶつかります。これが慣性です。小さい粒はブラウン運動でふらふらと動きまわり、繊維に近づいてくっつきます。これが拡散です[2]。三つめのさえぎりは、粒が繊維のすぐそばを通ったときに触れて捕まる効果です。
厚生労働省の資料は、慣性は粒が大きく流れが速いほどよく効き、拡散は粒が小さく流れが遅いほどよく効くと説明しています[2]。そのため、大きい粒は慣性で、小さい粒は拡散で捕まります。
では、間の大きさはどうでしょうか。DOEのハンドブックによれば、慣性と拡散の効果がどちらも弱くなる粒径があり、そこでは、さえぎりだけが働きます[1]。これが「最も通りぬけやすい粒径」の考え方です。ただし、その正確な値は、繊維の太さやフィルターの作り、風の速さで変わります[1]。
では、その「通りぬけやすい付近」を、どうして0.3と決めたのでしょうか。
HEPAが漏らしやすい粒子の大きさを理解するには、まず「ふるい」のイメージを捨てる必要がある。エアフィルタは、粒子より小さい穴で止めるのではなく、表面だけでなく内部にもある繊維の1本1本が粒子を捕集する[2]。
捕集には、慣性・さえぎり・拡散の効果が関わる。慣性は粒径と流速が大きいほど効き、拡散(ブラウン運動による接触)は粒径と流速が小さいほど効く[2]。このため、粒径が小さくなるにつれて漏れが単調に増えるのではなく、大きい側では慣性、小さい側では拡散が捕集を担う。
この二つの効果は、粒径が中間のところで同時に弱まる。DOEのハンドブックはこれを、慣性と拡散の力がともに最小で、さえぎりだけが影響を受けない粒径があるためと説明する[1]。効率が最も低くなるこの粒径が「最も通りぬけやすい粒径」であり、その値は繊維の直径、フィルターの構造、流速に左右される[1]。つまり、これは一つの定数ではなく、条件で動く谷の位置である。
この「谷」の位置と、定義に書かれた0.3μmは、どう結びついているのか。
3. なぜ「いちばん つかまえにくい あたり」で しけんするの?
3. 「いちばん厳しい粒」で試すという考え方
3. 試験粒径の選び方 ── 最も厳しい条件を代表にする
いろいろな 大きさを ぜんぶ しらべるのは たいへんです。そこで、いちばん 通りぬけやすい 大きさを 先に ためす、と いう 考え方が あります。
いちばん きびしい 大きさで しっかり とれて いるか 分かれば、だいたいの 目安に なります。ただし、ほかの 大きさで どのくらい とれるかは、フィルターや 風の 速さで ちがいます。
こうせいろうどうしょうの しりょうには、長い あいだ、フィルターが いちばん 通しやすい 大きさは 0.3マイクロメートルと いわれてきた、とあります。しけんに つかう つぶも、この 大きさを 考えて 決められて きました[2]。
ただし、これは「0.3が いつでも いちばん つかまえにくい」と いう 意味では ありません。あとで 見ますが、フィルターや 風の 速さで、いちばんの 場所は 少し うごきます。
では、その しけんの つぶは、どうやって 作るのでしょう。
粒の大きさは無数にあります。その一つ一つで効率を測るのは大変です。そこで、フィルターにとって最も厳しい大きさの近くで試し、いちばん厳しい条件での性能を確かめます。ほかの大きさの効率は条件によって変わるので、あくまで目安です。
厚生労働省の会議資料には、長年、エアフィルタが最も通しやすい粒径は0.3マイクロメートルといわれてきて、性能試験の粒子もこの大きさを念頭に決められてきた、と書かれています[2]。
ただし、同じ資料は、実際に測ると結果が違ったことも紹介しています。ある種類のガラス繊維のろ材では最も通りやすい粒径が約220ナノメートル(0.22マイクロメートル)、静電気の力を使うろ材では約50ナノメートル(0.05マイクロメートル)だったといいます。これらは当時の特定のろ材の例で、一般的な値ではありません[2]。
0.3は、「だいたいこのあたり」という便利な目印として長く使われてきた数字、といえそうです。
では、試験に使う「大きさのそろった粒」は、どう用意するのでしょうか。
すべての粒径で効率を測れば手間は大きい。そこで、最も通りぬけやすい粒径付近で効率を確かめ、厳しい条件での性能の目安とする、という考え方を使う。ほかの粒径の効率は条件によって異なり、この方法はそれを保証するものではない。0.3μmは、この「最も厳しい条件を代表させる」考え方と結びついてきた数字である。
厚生労働省の会議資料は、長年、エアフィルタの最も通過しやすい粒径は0.3μm(300nm)とされ、性能試験粒子もこのサイズを念頭に設定されてきたと述べる[2]。ただし、この選定の経緯を示す一次資料は今回参照した範囲にはなく、「0.3が選ばれた理由は物理的に導かれた」とは断定できない。
実測では、結果は一様ではなかった。同じ資料は、当時の検定ろ材について、ガラス繊維ろ材で約220nm、静電気を利用したろ材で約50nmが最も通過しやすい粒径だったとの測定を紹介する[2]。いずれも特定のろ材の例であり、一般値ではない。
つまり0.3μmは、フィルターが最も通しやすい粒径そのものではなく、慣習として定着した代表値という性格を持つ。では、この代表値で試すための粒は、どのように作り、どう大きさを確かめるのか。
4. しけんの つぶは、どうやって 作るの?
4. 試験用の粒は、どうやって大きさをそろえるのか
4. 単分散エアロゾルの作り方と測り方 ── DOPと光散乱
しけんを するには、大きさが ばらばらでは こまります。そろった つぶが ひつようです。
むかしの 研究者たちは、大きさの そろった つぶを 作りやすい 薬の DOP(フタルさんジオクチル)を、しけんに つかう ことに しました。そのころの 考え方で、0.3マイクロメートルの まわりの つぶに 目を つけて いたと つたえられます[4]。
やり方は、DOPを あたためて けむりのように 出し、そこから 大きさの そろった つぶを 作ります。その つぶを、光に あてて しらべます[1]。
つぶに 光が あたると、光は ちらばります。その ちらばり方は、つぶの 大きさによって かわります。そのため、光を 使って、つぶの 大きさを 見わけられます。DOEの 本では、光の ある 向き(へんこう角)が 29度の とき、つぶは 0.3マイクロメートルだと 見わける、と 書かれています[1]。
ところで、この「0.3」は、つぶ 1つ 1つが ぜんぶ 0.3、と いう 意味なのでしょうか。
試験では、大きさのそろった粒を、安定して作る必要があります。カムフィルというフィルターメーカーの解説によれば、昔の研究者たちは、粒の大きさの幅がせまいものを作れるDOP(フタル酸ジオクチル)を試験用に選びました。当時の考えでは、0.3マイクロメートル前後の粒に注目していたそうです[4]。
DOEのハンドブックによると、ろ材の性能は、加熱したDOPの蒸気から作った大きさのそろったエアロゾルで確かめます。そのエアロゾルに光を当て、前方に散らばる光の強さを測る装置(光散乱式の光度計)で、粒の量を測ります[1]。
粒の大きさは、光の偏光角で見分けます。ハンドブックには、エアロゾルの大きさがそろっているとき、偏光角29度が粒径0.3マイクロメートルにあたると書かれています[1]。
ここに、「0.3」という言い方の落とし穴があります。粒は、本当に全部が0.3マイクロメートルなのでしょうか。
試験を再現性のあるものにするには、粒径がそろった粒子を作る必要がある。カムフィルの解説は、昔の研究者たちが、粒径分布のせまい粒子を作れる点でDOP(フタル酸ジオクチル)を選び、当時の理論で0.3μm前後の粒子に注目していたと述べる[4]。ただし、これはメーカーによる二次的な歴史の紹介であり、0.3μmを選んだ物理的な理由までは説明していない。
DOEのハンドブックによれば、ろ材の性能試験では、加熱したDOPの蒸気から単分散(粒径がほぼそろった)エアロゾルを作り、前方散乱光を測る光度計で通過量を調べる[1]。粒径は、散乱光の偏光角から読みとれる。単分散の場合、偏光角29度が粒径0.3μmに対応する[1]。この関係は「粒径がそろっている」ことが前提であり、実際の粒がそろっていなければ読み取りは崩れる。
この前提こそが、次の論点につながる。つまり、「0.3μmの粒子で試験した」という表現は、どの程度正確なのか。
5. 「0.3マイクロメートル」って、ほんとうは なんの 大きさ?
5. 「0.3」は、数で数えた大きさか、重さで数えた大きさか
5. 質量基準と個数基準 ── 「0.3μmで試験する」という言い方の幅
じつは、しけんに つかう つぶは、ぜんぶが ぴったり 0.3では ありません。大きい つぶも 小さい つぶも まざって います。
ここで、すなに 小石が まざった ばしょを 思いうかべて ください。数で 数えれば、すなの ほうが ずっと 多い。でも、重さを くらべれば、少ない 小石の 重さが めだちます。数え方で、目立つものが かわる れいです。つぶの 大きさの まんなかを あらわす ものでは ありません。
しけんの つぶも、重さを もとに した まんなかの 大きさは 0.3マイクロメートルくらい、数を もとに した まんなかの 大きさは 0.2マイクロメートルより 小さい、と ある ざっしでは せつめいされて います[5]。この ざっしは「0.3マイクロメートルで しけんする」と いう 言い方は、きびしく いうと 正しくない、と してきして います。
日本の ぼうじんマスクの けんていでも、同じ 考え方が 出て きます。こうせいろうどうしょうの 2008年の しりょうでは、数を もとに した まんなかの 大きさが 0.1マイクロメートルの つぶは、重さを もとに すると 0.25マイクロメートルくらいに なります[2]。
ここまで「0.3」を 見て きました。では、いちばん 通りやすい 大きさは、ほんとうに 0.3なのでしょうか。
実際の試験用の粒は、すべてが0.3マイクロメートルではなく、大きさに幅があります。このため、中央値をどう数えるかで数字が変わります。
身近な例で考えてみましょう。砂場の砂と小石を思いうかべてください。数で数えると砂が圧倒的に多いのに、重さの合計で比べると、少数の小石が目立ちます。同じ集まりでも、数えかたで「中心」が動きます。これは数え方で目立つものが変わる例で、中央径そのものを表すわけではありません。
フィルトレーション・ニュースという業界誌の解説は、DOPの試験用エアロゾルは、重さを基準にした中央径が約0.3マイクロメートルでも、数を基準にした中央径は0.2マイクロメートル未満だと指摘しています。そのため、「0.3マイクロメートルで試験する」という表現は、厳密には不正確だというのです[5]。
日本の防じんマスクの検定でも、似た考え方が出てきます。厚生労働省の2008年の資料では、塩化ナトリウムの粒(平均粒径0.06〜0.1マイクロメートル)またはDOPの粒(0.15〜0.25マイクロメートル)を使い、数を基準にした幾何平均径が0.1マイクロメートル、幾何標準偏差が1.8のとき、重さを基準にすると約0.25マイクロメートルになります。この考え方は、最も通りやすい粒径を300ナノメートルとみる従来の流れに沿ったものとされています[2]。現行の規則は、この記事では取り上げていません。
では、肝心の「最も通りやすい粒径」そのものは、いつも0.3付近なのでしょうか。
実際の試験エアロゾルは完全に単分散ではなく、粒径に分布がある。そのため、「0.3μm」が質量基準の代表径なのか、個数基準なのかで意味が変わる。業界誌Filtration Newsの用語解説は、DOP試験エアロゾルの重さを基準にした中央径は約0.3μmだが、数を基準にした中央径は0.2μm未満であると述べ、「0.3μmで試験する」という言い方は厳密には不正確だと指摘する[5]。
同じ事情は日本の防じんマスクの検定にもあらわれる。厚生労働省の資料(2008年時点の記述)は、試験粒子として塩化ナトリウム(平均粒径0.06〜0.1μm)またはDOP(0.15〜0.25μm)を挙げる。数を基準にした幾何平均径0.1μm・幾何標準偏差1.8のとき、重さを基準にした幾何平均径は0.25μmになるという[2]。数え方を変えるだけで、同じ粒の集まりが0.1μmにも0.25μmにもなる。
この資料は、そうした設定を、最も通りやすい粒径を300nmとみる従来の流れを踏襲したものとしている[2]。ただし、これは2008年時点の記述であり、現行の規則の内容とは限らない。なお、上の数値の変換は、資料にある式を前提とした値であり、筆者が独自に別の粒径分布で検算したものではない。
つまり0.3μmは、一つの物理量というより、数え方と試験方法の両方に結びついた「目安」としての顔を持つ。では、「最も通りぬけやすい粒径」は、本当にこの付近に収まるのか。
6. いちばん 通りやすい 大きさは、いつも 0.3なの?
6. 最も通りぬけやすい粒径は、フィルターごとに動く
6. MPPSの考え方 ── 製品ごとに最悪点を探す欧州規格
じつは、いつも 0.3とは かぎりません。DOEの 2003年の 本には、そのころ 作られて いた げんしりょく むけの HEPAの ろ紙で、風の 速さが 1びょうに 1フィート(30センチくらい)の とき、いちばん 通りぬけやすい 大きさは 0.1マイクロメートル あたり、と あります[1]。0.3より 小さい 場所です。
そこで ヨーロッパの きまり(EN 1822)は、やり方を かえました。0.3と きめて しけんするのでは なく、フィルターごとに「いちばん 通りぬけやすい 大きさ」を さがして、その 大きさで とれる わりあいを はかります[6]。
この はかり方で、H13は 99.95%いじょう、H14は 99.995%いじょう と 決められて います[6]。ただし、はかる つぶの 大きさが ちがうので、数字だけを 見て 99.97%と くらべる ことは できません。
0.3は、まちがいでは ありません。「だいたい この あたり」と いう、長く つかわれて きた めやすです。そして フィルターごとの 本当の いちばんは、さがさないと 分からない、と いう わけです。
実際には、最も通りぬけやすい粒径は、いつも0.3マイクロメートルとは限りません。DOEのハンドブック(2003年)は、当時作られていた原子力用のHEPAろ紙では、設計の風速(毎秒1フィート、約30センチ)のとき、最も通りぬけやすい粒径が0.1マイクロメートル付近だと述べています[1]。
0.3は、その付近をざっくり指す便利な数字でした。しかし厳しく見るなら、フィルターごと、条件ごとに最悪の大きさが少しずつずれます。
そこで、欧州の規格EN 1822は、試験のやり方そのものを変えています。まず、そのフィルターで最も通りぬけやすい粒径(MPPS)を探し、その大きさで効率を測って等級を決めます[6]。たとえばH13は総合効率が99.95%以上、H14は99.995%以上と定められています(局所の効率はそれぞれ99.75%以上、99.975%以上)[6]。
数字だけ見ると、H13の99.95%は、HEPAの定義の99.97%より低く見えます。でも、測る粒の大きさの決め方がちがうので、数字だけを並べて優劣はつけられません。
0.3を代表にする方式と、製品ごとに最悪を探す方式。どちらも、「フィルターが最も粒子を通しやすい条件で試す」という同じ発想から出ていることが、ここまでで見えてきます。
最悪点が0.3μmにあるとは限らないことを、DOEのハンドブック(2003年)は明示している。当時製造されていた原子力用HEPAろ紙の最も通りぬけやすい粒径は、設計流量毎秒1フィート(約30cm)で0.1μm付近であり、風速を変えれば最低効率の位置もずれる[1]。厚生労働省の資料も、ガラス繊維ろ材で約220nm、静電気ろ材で約50nmという測定を挙げていた[2]。つまり0.3μmは、条件によって0.1μm側にも、それより小さい側にも外れうる。
この事情に応えたのが、欧州規格EN 1822のMPPS(Most Penetrating Particle Size)の方式である。まず製品ごとに、最も粒子が抜けやすい粒径を探し、その粒径で効率を測定して等級を決める[6]。MANN+HUMMELの解説では、H13は総合効率99.95%以上、H14は99.995%以上、局所効率はそれぞれ99.75%以上、99.975%以上とされる[6]。
数字の読み方には注意がいる。H13の99.95%は、DOEの定義の99.97%より低く見える。しかしH13は、その製品が最も漏らしやすい粒径で測った値であり、一方のDOEの定義は0.3μmで測る値だ。測る粒径の決め方が異なる以上、数値を単純に並べて優劣は決められない。99.95%は1万個中5個、99.995%は10万個中5個までの通過に相当する。
二つの方式は、「フィルターが最も粒子を通しやすい条件で試す」点では同じ発想に立つ。違いは、厳しい粒を一律に0.3μmで代表させるか、製品ごとに探すかにある。ただし、この規格の詳細と、DOP以外の試験物質への移行の状況は、この記事では扱わない。
7. おうちの はこや せつめいしょで さがして みよう
7. 製品の説明書で「何の粒で試したか」を探す
7. 製品の説明にある「試験条件」を読み解く
おうちに くうきせいじょうきや そうじきが あれば、はこや せつめいしょを 見て みましょう。「HEPA」「99.97%」「0.3」の ことばが 書いて あるかも しれません。
書いて あったら、考えて みて ください。この 数字は、どんな 大きさの つぶで しけんした ものでしょう。ヨーロッパの H13や H14と 書いて ある ものも あります。それは、フィルターごとの いちばん 通りやすい つぶで はかった、という 意味でした[6]。
まだ 分からない ことも あります。0.3が はじめに えらばれた くわしい いきさつは、今回 しらべた しりょうでは 分かりませんでした。いつか 自分で 調べて みたい 人の ために、まだ のこされた もんだいです。
つぎに 空気の そうじの 話を 聞いたら、数字の 横に ある「何の つぶで?」を さがして みませんか。
家に空気清浄機や掃除機があれば、箱や取扱説明書を見てみましょう。「HEPA」「99.97%」「0.3」といった言葉が書いてあるかもしれません。EN 1822の等級(H13、H14など)が書かれていることもあります。
見つけたら、この記事で見てきたことを思い出してください。その数字は、どんな粒で試したものでしょうか。0.3マイクロメートルで試した99.97%と、製品ごとに最も通りぬけやすい粒で測ったH13の99.95%は、同じ物差しではありません[1][6]。
0.3が最初に選ばれた詳しい経緯は、この記事で使った資料からは追いきれていません。ここは、これから読める原典が残っている部分でもあります。
書いてある数字の横に「何の粒で」という一言があるかどうかを、探してみませんか。見つけたら、その製品が何を基準に自分の力を示しているのかが分かってきます。
製品の仕様に「HEPA相当」「99.97%」「0.3μm」などの記載があれば、その試験条件を読む手がかりが、この記事で整理した内容にある。確認すべきは、試験粒子の種類と、重さ基準か数基準か、流速、そしてフィルターごとに最も通しやすい粒径を調べた値かどうかである。
0.3μmで測った99.97%と、MPPSで測ったH13の99.95%は、測る粒が異なるので直接には比べられない[1][6]。この食い違いは、どちらが優れているかの問題ではなく、「厳しい粒」を一律に決めるか、製品ごとに探すかという設計思想の違いである。
未解決の点も残る。0.3μmが最初に選ばれた経緯を示す一次資料は、この記事では確認できなかった。また日本のJIS原文とDOEの原文は、本記事ではそれぞれ二次紹介とハンドブックの記述に頼っている。原典(DOEハンドブック、厚生労働省の会議資料、EN 1822の解説)にあたって、数値の条件を自分で読み直すことを勧める。
数字の裏にある「何の粒で、どう試したか」を探す習慣は、HEPA以外の性能表示を読むときにも使える。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
フィルターの定義、捕集の仕組み、試験用の粒、欧州規格の確認に使いました。JIS Z 8122は原文を見ておらず、解説記事による紹介です。
- 米国エネルギー省「DOE-HDBK-1169-2003 Chapter 3」 https://www.energy.gov/documents/doe-hdbk-1169-2003chapter-3pdf (HEPAの定義、捕集の仕組み、試験用エアロゾル)
- 明星敏彦「エアフィルタによるナノ粒子の除去について」(厚生労働省会議資料、2008年) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/05/dl/s0530-7d.pdf (捕集効果、0.3の位置づけ、粒径の基準)
- 家電Watch「現代家電の基礎用語 HEPAフィルターとは」 https://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word/2008/10/16/3037.html (JIS Z 8122の紹介)
- Camfil「History of product testing」 https://camfil.com/en/insights/air-quality/history-of-product-testing-with-anders-sundvik (DOPが選ばれた経緯)
- Filtration News「Filtration terminology」 https://www.filtnews.com/?p=4758 (質量基準と個数基準の違い)
- MANN+HUMMEL「DIN EN 1822」 https://airfiltration.mann-hummel.com/en-uk/insights/filter-classification/din-en-1822.html (EN 1822のMPPS方式、H13・H14)
なおした ところ
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