1. キーボードの ならびを 作った ショールズ
1. QWERTY配列を作ったショールズ
1. QWERTY配列は、「ジャム防止」のために作られたのか
今 つかって いる キーボードの もじの ならびは、「QWERTY(クワーティー)」と よばれる。1867年、アメリカの ショールズと いう 人が、はじめの タイプライターを 作った ときは、ABCじゅんに ちかい ならびだった[2]。
でも、そのあと なんども ならびが かえられて、1882年、いまと おなじ QWERTYの ならびに なった[2]。
よく きく りゆうは、「はやく 打つと きかいが つまるから、わざと おそく なる ように した」と いう はなしだ。でも、この はなしは まちがって いるかも しれない、と 考える 人たちが いる。ほんとうの りゆうは、まだ はっきり しないのだ[3]。
今使っているキーボードの文字の並びは、「QWERTY(クワーティー)」と呼ばれる。1867年、アメリカのクリストファー・レイサム・ショールズという人が最初のタイプライターを作ったときは、ABC順に近い並びだった[2]。
その後、何度も並びが変えられ、1882年、レミントン社の「スタンダード・タイプライターNo.2」で、今と同じQWERTYの並びが完成した[2]。
よく聞く理由は、「速く打つと機械が詰まるので、わざと打つ速度を落とすためにこの並びにした」という話だ。しかし、この説には反論もある。QWERTY配列を分析すると、続けて打つことの多い2文字が、ランダムな配列より近くに集まっている頻度が高いという指摘がある。わざと打ちにくくしたのなら、この結果は説明がつきにくい。ただし、これだけで設計者の意図を完全に否定できるわけではなく、本当の理由は、いまもはっきりしていない[3]。
現在使われているキーボードの文字配列は「QWERTY配列」と呼ばれる。クリストファー・レイサム・ショールズが1867年に製作した最初のタイプライターは、ABC順に近い配列だった。その後1872年、1874年と改良が重ねられ、1882年発売のレミントン社「スタンダード・タイプライターNo.2」で、MとCとXのキー位置が変更され、現在のQWERTY配列が完成した[2]。
QWERTY配列の由来として最も広く知られているのは、「タイプライターの機構が貧弱で、速く打つとタイプバーが絡まってしまうため、あえて打鍵速度を落とすようにキーを配置した」という説である。しかし、この「ジャム防止説」には反論もある。QWERTY配列を分析すると、英語で連続して打たれることの多い2文字の組み合わせが、ランダムな配列と比べてむしろキーボード上で近くに配置されている頻度が高いという指摘があり、意図的に打鍵を遅くしたとする説明とは矛盾するようにみえる。ただし、この分析だけで設計者の意図を確定できるわけではなく、真の理由はいまも定説がない[3]。
2. モールスしんごうを うけとる 人たちが、ならびを かえた
2. モールス信号を受け取る人たちが、配列を変えた
2. モールス信号の受信都合が、キー配置を変えた
京都大学の 安岡孝一さんの しらべに よると、でんしん(モールスしんごうで メッセージを おくる しくみ)を あつかう 人たちの いけんが、この ならびに おおきく かんけいして いたと いう[1][2]。
たとえば、英語で よく つかう「T」の もじは、上の だんの まん中に うつされた。もじを さがしやすく する ためだと いわれて いる[1]。
京都大学の安岡孝一さんの研究によると、電信(モールス信号でメッセージを送るしくみ)を扱う技師たちの意見が、配列づくりに大きく関係していたという[1][2]。
安岡さんによれば、モールス信号には、「Z」と「SE」という2文字の組み合わせが、受信の途中では区別しにくいという問題があった。次の文字を受け取ってから、急いでZかSEかを打ち分ける必要があったため、Sの位置などが動かされたとされる[2]。英語でよく使う「T」も、探しやすいように上の段の真ん中に移されたといわれている[1]。
機械のジャムを防ぐためではなく、電信の現場からの「使いにくい」という声を受けて、少しずつ改良が積み重ねられた結果が、QWERTY配列なのだ。
安岡孝一・安岡素子による研究(京都大学)は、QWERTY配列の成立に電信技師が深く関わっていたと指摘している[2]。
安岡らによれば、当時アメリカで使われていたモールス信号では、「Z」と「SE」という組み合わせが、受信の途中では判別しにくいという問題があった。電信を受信しながらタイプする技師は、続く文字を受け取ってから急いでZかSEかを打ち分ける必要があり、この事情がキーの移動に反映されたとされる。英語で2番目によく使われる文字である「T」も、探しやすいよう上段中央に置かれたといわれている[1][2]。
つまりQWERTY配列は、1つの明確な設計思想にもとづいて一から作られたものではなく、電信の現場からの改良要求を受けて、段階的に組み替えられていった結果である[1]。
3. もっと はやく 打てる はずだった、ドボラックはいれつ
3. もっと速く打てるはずだった、ドボラック配列
3. ドボラック配列は、本当にQWERTYより速いのか
1932年、アメリカの オーガスト・ドボラックと いう 人が、QWERTYより はやく 打てる ように かんがえた あたらしい ならび「ドボラックはいれつ」を つくった[4]。
1944年の しらべでは、この ならびで 打つと、はやさが 75パーセントも 上がったと いう けっかが 出た。でも 1956年の べつの しらべでは、QWERTYと おなじくらい はやい、と いう けっかに なった[4]。
けっきょく、いまも ほとんどの 人が QWERTYを つかって いる。
1932年、アメリカのオーガスト・ドボラックという人が、QWERTYより速く打てるように工夫した新しい配列「ドボラック配列」を考えた[4]。
1944年にアメリカ海軍が行った調査では、この配列で訓練すると、タイピングの速さが平均75%も上がったという結果が出た。ところが、この調査には、ドボラック自身が何らかの形で関わっていたとの指摘もある。1956年に別の機関(GSA)が行った調査では、QWERTYもドボラック配列と同じくらい速い、という結果になった[4]。
その後の研究でも、ドボラック配列がはっきり優れているという証拠はあまり見つかっていない。それでも、いまもほとんどの人がQWERTYを使い続けている。
1932年、ワシントン大学の教授オーガスト・ドボラックは、英文タイピングの効率を高めることを目的に、指の移動距離を最小化するよう設計された新しい配列(ドボラック配列)を考案した[4]。
1944年、アメリカ海軍が行った調査では、QWERTYに習熟したタイピスト14名がドボラック配列を50時間訓練しただけで、平均75%もタイピング速度が向上したと報告された。しかし、この調査結果については、ドボラック自身が調査に何らかの形で関与していたことを理由に、客観性を疑問視する指摘がある。1956年に米国一般調達局(GSA)が行った調査では、QWERTYはドボラック配列と少なくとも同程度、場合によってはそれ以上に効率的だという結果が出た[4]。
1990年には、経済学者リーボウィッツとマーゴリスが論文「The Fable of the Keys」で、QWERTYがドボラック配列より劣っているという証拠はほとんど見つからないと結論づけている[4]。このように、理論上の優位性だけでは、すでに広く普及したQWERTYを置き換えるには至らなかった。この現象は経済学で「経路依存性」と呼ばれる。
4. 日本ごの キーボードも、五十音じゅんでは ない
4. 日本語のキーボードも、五十音順ではない
4. かな配列にも、普及しなかった「新JIS配列」があった
日本ごの キーボードにも、ひらがなが わりあてられて いる。でも、これも 五十音じゅんでは ない。
1923年、山下芳太郎と いう 人が、アメリカの 会社に、かなの タイプライターを ちゅうもんした。でも 山下は、かんせいした タイプライターが とどく 前に、びょうきで なくなって しまった[5]。
1986年には、もっと 打ちやすい あたらしい かなの ならび(新JISはいれつ)も 作られた。でも、みんな もう QWERTYの ならびに なれて いたので、あまり ひろまらなかった[6]。
日本語のキーボードにも、ひらがなが割り当てられている。でも、これも五十音順ではない。
1923年、山下芳太郎という人が、日本語をローマ字だけで書けるようにしようと活動していて、アメリカのアンダーウッド社に、かなのタイプライターを注文した。1923年1月に設計の打ち合わせをしたが、山下は同じ年の4月、完成したタイプライターが届く前に、病気で亡くなってしまった[5]。
その後もかなの配列は何度か作り直され、1970年に電電公社が作った配列が、今のパソコンのかな配列のもとになっている[1]。
1986年には、文字の使われる頻度を統計で調べて作った、もっと打ちやすいはずの新しい配列(新JIS配列)も発表された。しかし、すでにみんな元のJIS配列やQWERTYに慣れていたため、あまり広まらず、1999年には規格そのものがなくなってしまった[6]。日本にも、ドボラック配列とよく似た運命をたどった配列があったのだ。
日本語のキーボードのかな配列も、五十音順ではない。
その起源は1923年にさかのぼる。ローマ字論者だった山下芳太郎は、日本語をタイプライターで効率よく書く方法を模索し、アメリカのアンダーウッド・タイプライター社を訪れて、かな文字タイプライターの設計を依頼した。1923年1月に設計者バーナム・クース・スティックニーと打ち合わせをして発注したが、山下は帰国後まもなく病に倒れ、同年4月7日、完成したタイプライターが日本に届く前に世を去った[5]。
かな配列はその後も改良が重ねられ、1970年に電電公社が制定した配列が、現在のJISかな配列のもとになっている[1]。
1986年には、高校教科書や新聞コラムなど延べ130万字以上を統計的に分析し、頻度の高い文字を1打鍵で、そうでない文字を2打鍵で入力できるよう設計した「新JIS配列」がJIS規格として制定された。理論上はより効率的な配列だったが、既存のJIS配列にすでに習熟したユーザーが多く、パーソナルコンピュータ用としてはほとんど普及せず、1999年に規格から廃止された[6]。ドボラック配列と同じく、理論上の効率の高さだけでは、普及した規格を置き換えるには不十分だったことを示す事例である。
5. 今は「ローマ字にゅうりょく」が ほとんど
5. 今はローマ字入力を使う人がほとんど
5. かな入力は、ローマ字入力に置き換わった
今、日本語を パソコンで うつ とき、ほとんどの 人は「ローマ字にゅうりょく」を つかって いる。かなを 1つずつ 打つ「かなにゅうりょく」を つかう 人は、10人に 1人も いない[7]。
アルファベットの ばしょさえ おぼえれば、日本語も うてる。だから ローマ字にゅうりょくが えらばれやすいのだろう。
今、日本語をパソコンで打つとき、ほとんどの人は「ローマ字入力」を使っている。かなを1つずつ打つ「かな入力」を使う人は、およそ1割ほどしかいないという調査もある[7]。
アルファベットのキーの場所さえ覚えれば、日本語も英語も同じキーボードで打てる。かな入力のように、ひらがな専用の配列を新しく覚える必要がないことが、ローマ字入力が広く使われている理由の1つと考えられる。
現在、日本語のキーボード入力では、ローマ字入力を使う人が大多数を占める。ある調査では、ローマ字入力がおよそ9割、JISかな入力はわずか1割という結果が報告されている[7]。
ローマ字入力は、1回のかな入力に2キーを要する場合が多く、打鍵数だけで見ればかな入力より効率が悪いとされることもある。それでも普及した背景には、アルファベットキーの位置さえ覚えれば英語入力とキーボードを共有でき、新たに専用の配列を習得する必要がないという学習コストの低さがあると考えられる。
6. せかいには、ほかにも いろいろな ならびが ある
6. 世界には、ほかにもいろいろな配列がある
6. AZERTYやQWERTZは、言語によって配列を変えている
フランスでは「AZERTY(アゼルティー)」、ドイツでは「QWERTZ(クベルツ)」と よばれる、すこし ちがう ならびの キーボードが つかわれて いる[8]。
ドイツごでは「Z」を「Y」より よく つかうから、と いわれて いて、うちやすい 場しょに「Z」が おかれて いる[8]。ことばに よって、つかう もじが ちがうから、ならびも すこし かわるのだ。
フランスでは「AZERTY(アゼルティー)」、ドイツ語圏では「QWERTZ(クベルツ)」と呼ばれる、少し違う配列のキーボードが使われている[8]。
ドイツ語ではアルファベットの「Y」より「Z」の方がよく使われることが一因とされ、QWERTYの「Y」と「Z」の位置を入れ替えて、Zを打ちやすい場所に置いている[8]。フランス語のAZERTYも、アクセント記号など、フランス語特有の文字に配慮して、QWERTYから配置が変えられている。
言語によって、よく使う文字や記号が違うから、キーボードの配列もそれぞれの言語に合わせて少しずつ変わっているのだ。
世界には、QWERTY以外にも、言語ごとに異なる配列のキーボードが存在する。フランス語圏で使われる「AZERTY」は、QWERTYからA・Qの位置、Z・Wの位置が入れ替わり、記号の配置も異なる。ドイツ語圏で使われる「QWERTZ」は、YとZの位置が入れ替わっている[8]。
ドイツ語ではアルファベットの出現頻度としてYよりZの方が高く、Zを打ちやすい位置に置くことも、この違いの理由の一つとされる。AZERTYも、フランス語のアクセント記号などを入力できる配置になっている[8]。
QWERTY配列自体は技術的な制約から生まれたものだが、各国・各言語圏に広まる過程で、その言語の文字の使用頻度に合わせた微調整が加えられてきたのである。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
じぶんの キーボードを しらべて みよう。
- 上の だんを 見る。「QWERTYUIOP」と ならんで いたら、それが QWERTYはいれつだ。
- おうちの 人に、むかしの ワープロや パソコンの キーボードを 見せて もらう。いまと おなじ ならびか、くらべて みよう。
自分のキーボードを調べてみましょう。
- キーボードの上の段を見る。「QWERTYUIOP」と並んでいたら、それがQWERTY配列です。
- パソコンの設定画面で「キーボードレイアウト」を見る。Dvorak配列やフランス語配列(AZERTY)に切り替えられる機能があるか探してみましょう。切り替えてAのキーがどこにあるか探すと、配列の違いを実感できます。
- パソコンの設定(Windowsなら「言語と地域」、Macなら「キーボード」設定)を開く。QWERTY以外に、Dvorak配列や、AZERTY・QWERTZなど各国語の配列が用意されているか確認する。
- 実際に配列を切り替えて、AやZのキー配置がどう変わるかを確かめる。体に染みついたQWERTYの配置とどれだけ違うかを、指の動きで体感できる。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
- 国立国語研究所「パソコンのキーボードは、なぜABC順・五十音順ではないのですか」。 https://kotoba.ninjal.ac.jp/qa/yokuaru/qa-35/ (QWERTY配列・かな配列とも、電信・タイプライターの現場からの改良要求で段階的に組み替えられたこと、Tが上段中央に移されたこと、1970年電電公社版がかな配列のもとになったこと)
- 日本語版ウィキペディア「QWERTY配列」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/QWERTY配列 (ショールズの1867年初期モデルから1882年のレミントン・スタンダード・タイプライターNo.2までの配列変遷、モールス信号のZとSEの判別問題、安岡孝一氏の研究内容)
- ナゾロジー「キーボードがなぜ『QWERTY配列』になったか知ってる?『ある言葉』の打ちやすさが理由だった」。 https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/75667 https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/75667/2 (ジャム防止説への統計的な反証。QWERTY配列は連続して打つ頻度の高い2文字がランダム配列より近くに配置されている頻度が高いこと)
- 日本語版ウィキペディア「Dvorak配列」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/Dvorak配列 (1932年オーガスト・ドボラックによる考案、1944年アメリカ海軍調査での75%向上という結果とその客観性への疑問、1956年GSA調査、1990年リーボウィッツとマーゴリスの論文「The Fable of the Keys」)
- 日本語版ウィキペディア「山下芳太郎」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/山下芳太郎 (1923年1月のアンダーウッド社への発注、設計者バーナム・クース・スティックニー、山下が1923年4月7日に病気で死去したこと、タイプライターが同年5月に日本に届いたこと)
- 日本語版ウィキペディア「新JIS配列」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/新JIS配列 (1986年のJIS C 6236制定、高校教科書等延べ130万字の統計分析にもとづく設計、パーソナルコンピュータ用としてほとんど普及せず1999年に規格から廃止されたこと)
- ダイヤモンド・オンライン「『ローマ字入力』vs『かな入力』対決――タイピングが速いのはどっちだ?」。 https://diamond.jp/articles/-/320276 (ローマ字入力がおよそ9割・JISかな入力がおよそ1割という調査結果)
- 日本語版ウィキペディア「AZERTY」「QWERTZ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/AZERTY https://ja.wikipedia.org/wiki/QWERTZ (フランス語圏のAZERTY、ドイツ語圏のQWERTZの配置とその違い、ドイツ語でYよりZの出現頻度が高いこと)
なおした ところ
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