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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

コインを 24000かい なげても、ぴったり はんぶんには ならない?

コインを24000回投げても、表はぴったり半分にならない ── 「大数の法則」の本当の意味

大数の法則 ── 24000回の硬貨投げ(ピアソン)から、独立性・成立条件まで

分野:歴史・文化

むかし、ある 人が コインを 24000かい なげました。おもてが 出たのは 12012かい。ぴったり はんぶんの 12000かいには なりませんでした[4]。

それなのに、「たくさん なげると わりあいは ちかづく」と いわれます。どういう ことでしょう。あたり2ほんの くじを つかって、たしかめて みましょう。

昔、ある人が硬貨を24000回投げたところ、表は12012回でした。ぴったり半分の12000回にはなりませんでした[4]。それでも「回数を増やすと割合は確率に近づく」と言われます。

この二つは、どうつながるのでしょうか。10本中2本が当たりのくじと、コイン投げの記録、「次は裏の番」という思いこみを手がかりに、大数の法則が何を言っていて、何を言っていないのかが分かります。

ピアソンは硬貨を24000回投げ、表は12012回(割合約0.5005)だった[4]。半分の12000回との差は12回にすぎないが、ぴったり一致はしていない。それでも大数の法則は「回数を増やすほど割合が確率に近づく」と述べる[1]。

では、近づくとは何が近づくことなのか。当たり確率0.2のくじ、歴史上の硬貨投げ、「表が続いたら次は裏」という誤解を通して、この法則の言い分と、成り立つための条件が分かる。

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1. あたり2ほんの くじで、ふたりとも はずれるのは めずらしい?

1. 10本中2本が当たりのくじを、2人で引いたら

1. 当たり確率0.2のくじ ── 2回続けて外れる確率は0.64

10ぽんの うち、あたりが 2ほんの くじが あります。ひとり ずつ ひいて、ひいたら もとに もどす ことに します。

ひとり目が はずれる わりあいは、10 のうち 8。ふたり目も おなじです。ふたりとも はずれる わりあいは、およそ 64パーセントです。

つまり、ふたりで ひいて どちらも はずれる ことは、とても よく あります。だから、すぐに 「このくじは あたりが ないんじゃない?」と うたがわなくても だいじょうぶです。

では、なん人 ひいたら、あたりが 出るのでしょうか。

10本のうち2本が当たりのくじを、1人引くたびに戻すことにします。1回引いて当たる確率は2/10、つまり0.2です。

2人続けて外れる確率は、0.8に0.8をかけて0.64。約64%です。2人で引いても、少なくとも1人は当たるのは、残りの約36%にすぎません。

このくらいの回数では、当たりが出なくても不思議ではありません。では、平均すると何人目で当たるのでしょうか。

10本中2本が当たりのくじを、引くたびに戻す設定で考える。1回で当たる確率は p = 2/10 = 0.2 で、外れる確率は0.8だ。各回が独立なので、2回続けて外れる確率は 0.8 × 0.8 = 0.64になる。

回数が2回では、当たりが出ないほうが過半数なのだ。この少ない回数の結果から「当たりが入っていない」と結論するのは早い。では、期待としてはどのくらい引けば当たりに届くのか。次の章でその平均を計算する。

2. 「へいきん5人め」なら、5人で かならず あたる?

2. 「平均5人目で当たる」は、「5人以内に必ず当たる」ではない

2. 最初の当たりまでの回数 ── 戻す場合の1/pと、戻さない場合の11/3

ひいた くじを もどす ときは、あたりが 出るまでに へいきんで 5かいです[6]。10ぽんの うち 2ほんが あたりだから、10 を 2 で わった 数です。

ただし、「5かい ひけば かならず あたる」では ありません。1かい目で あたる ことも あります。5かい ひいても ぜんぶ はずれる ことも、およそ 3 わり あります。

もどさずに ひいていく と、へいきんは 3.7 かいくらいに なります。ひく たびに はずれが へって、あたりやすく なるからです。

ただし これは、ならべ方を かんがえた ときの ものです。ほんとうの くじの あたりやすさを ほしょうする ものでは ありません。

引いたくじを戻す場合、1回で当たる確率が毎回変わらないので、最初に当たるまでの回数の平均は 1÷0.2 で5回です[6]。さいころで1の目が出るまでの回数なら、平均は6回になります。

ただし「平均5回」は、5回以内に必ず当たるという意味ではありません。5回続けて外れる確率は0.8を5回かけた約0.33で、3回に1回ほどは5回引いても当たりません。

引いたくじを戻さない場合は、引くたびにはずれが減って当たりやすくなります。10本から2本の当たりの並び方は45通りで、最初の当たりの位置の平均は11/3、つまり約3.7番目です[7]。戻す場合より短くなります。

これは理想化した計算です。実際の抽選の確率を保証するものではありません。

当たり確率pが毎回変わらないとき、最初の当たりまでの回数の期待値は 1/p になる(幾何分布)[6]。p = 2/10 なら5回である。同じ考え方で、さいころで1が出るまでは平均6回となる。

だが平均は「5回で必ず当たる」ことを意味しない。1回目で当たる確率は0.2、5回引いて全部外れる確率は 0.8⁵ ≒ 0.33(自分で計算した値)で、平均に達しても当たらない場合は珍しくない。

では戻さない場合はどうか。当たり2本を10本の並びに入れる並べ方は45通りあり、最初の当たりの位置の平均は11/3 ≒ 3.67番目だ。負の超幾何分布の式 rK/(N−K+1) に、外れ本数K=8、当たり1本目までを数えるr=1を入れると、当たり前に引く外れが平均8/3本になる。当たりの1本を足せば11/3で、直接の数え上げとも一致する[7]。引くたびに外れが減る分、戻す場合の5回より短い。

ここで注意したいのは、これが理想化したモデルの計算だということだ。実際の抽選の確率を保証するものではない。

3. コインを ものすごく たくさん なげた 人たち

3. 4040回と24000回 ── コインを投げ続けた人たちの記録

3. ビュフォンとピアソンの硬貨投げ ── 割合は近づくが、一致はしない

コインを たくさん なげて、おもてが 出る わりあいを しらべた 人が いました。

ビュフォンという 人は、4040かい なげて、おもてが 2048かい。わりあいは 0.507 くらいです[4]。ピアソンという 人は、24000かい なげて、おもてが 12012かい。わりあいは 0.5005 くらいです[4]。

どちらも ぴったり はんぶんには なりませんが、かなり ちかい 数です。なげる かいすうを ふやすと、はんぶんに ちかづく ことが 多いのです。まいかい ぜったいに ちかづく、というわけでは ありません。

ピアソンの 12012かいは、はんぶんの 12000かいより、たった 12かい おおいだけです。

ビュフォンは硬貨を4040回投げて、表が2048回でした。割合は約0.507です[4]。ピアソンは24000回投げて、表が12012回、割合は約0.5005でした[4]。回数は、JSTOR Dailyの記事で伝えられているものです。

割合が0.5に近づいたのは、ピアソンのほうです。ただし、表の回数と半分の回数の差は、ビュフォンが28回、ピアソンが12回で、回数の差は大きくなったり小さくなったりしています。近づくのは差ではなく、割合です。

本物の硬貨を35万757回投げた研究では、投げ始めと同じ面で止まる確率が0.508と報告されています[8]。この研究でも、偏りはわずかで、表が出やすいという話ではありません。

大数の法則は、同じ試行を繰り返すほど、ある事象の割合が確率に近づくというものだ[1]。では実際の記録はどうか。ビュフォンは4040回で表2048回(割合約0.5069)、ピアソンは24000回で表12012回(割合約0.5005)と伝えられる[4]。

注目したいのは、近づくのが「割合」であって「回数の差」ではない点だ。半分との差は、ビュフォンで2048 − 2020 = 28回、ピアソンで12回である。差の絶対値は回数が増えても広がりうるが、全体の回数に対する割合は小さくなる。そのため、回数を増やすと割合は0.5に近づく傾向がある(毎回かならず単調に近づくわけではない)[3]。

もう一つ。35万757回の硬貨投げを使った研究では、投げ始めと同じ面で止まった確率が0.508(95%信頼区間0.506〜0.509)で、ぴったり50%ではなかった[8]。ただしこれは「表が出やすい」ではなく「投げ始めと同じ面が出やすい」という結果で、個人差もあり、偏りもわずかだ。

4. おもてが 4かい つづいたら、つぎは うら?

4. 表が4回続いたら、次は裏が出やすくなるのか

4. 「次は裏の番」という誤解 ── 独立性と、偏りが薄まる仕組み

コインを なげたら、おもてが 4かい つづきました。5かい目は、うらが 出やすい でしょうか。

こたえは、いいえ。5かい目も おもてと うらの わりあいは、1/2 ずつの ままです[5]。コインは、さっきまでの ことを おぼえて いないからです。

でも、「たくさん なげると はんぶんに ちかづく」とは、どう つながるのでしょう。

はじめの かたよりは、あとから うめあわされるのでは ありません。あとの たくさんの 回に かくれて、うすまって いくのです。

公平な硬貨で表が4回続いても、5回目に表が出る確率は1/2のままです[5]。次は裏の番になるという考えは、ギャンブラーの誤謬と呼ばれます。

では、大数の法則と矛盾しないのでしょうか。資料には、少数の観察が期待値と一致する原理はなく、一方に偏った連続がすぐ他方で打ち消されることもない、と書かれています[3]。

たとえば最初の10回で表が8回出たとします。割合は0.8です。その後の990回がちょうど半々なら、全体は1000回中503回で、割合は0.503に近づきます。これは考え方を見るための仮の計算ですが、偏りは打ち消されず、薄まっています。

公平な硬貨で表が4回続いた後でも、5回目に表が出る確率は1/2のままだ[5]。各回が独立だからである。「次は裏の番」と考えるのは、ギャンブラーの誤謬と呼ばれる。

では、なぜ割合は0.5に近づくのか。資料は、少数の観察が期待値と一致する原理はなく、一方に偏った連続がすぐに他方で打ち消されることもない、と述べる[3]。大数の法則は「あとで埋め合わせが起きる」と主張しているのではない。

簡単な計算で見てみよう。最初の10回で表が8回(割合0.8)出たとする。以降の990回が半々で、表が495回なら、全体は1000回中503回で割合は0.503だ。あとの試行は最初の偏りを打ち消さない。しかし全体が大きくなるため、偏りは割合の中で薄まる。これは仮定を置いた計算であり、実際の結果を予言するものではない。

5. だれが この きまりを たしかめ、なんと なづけたの?

5. ベルヌーイが20年取り組み、ポアソンが名前をつけた

5. ベルヌーイの「黄金定理」とポアソンの命名 ── 成り立つ条件と限界

この きまりを、はじめて きちんと しょうめいした 人は、スイスの ヤコブ・ベルヌーイです。かれは これを「おうごん ていり」と よび、20ねんも とりくんだ もんだいだと いったと つたえられて います[2]。

ベルヌーイの 本は、かれが なくなった 8ねん あとの 1713ねんに、おいの ニコラウスに よって 出されました[2]。

「大数の ほうそく」という 名前は、1837ねんに ポアソンが つけました[3]。

大数の法則を初めて厳密に証明したのは、ヤコブ(ジャック)・ベルヌーイです。彼はこれを「黄金定理」と呼び、20年取り組んだ問題だと述べたと伝えられています[2]。

その著作『推測術』は、彼の死の8年後の1713年に、甥のニコラウスによって出版されました[2]。「大数の法則」という名前は、1837年にポアソンがつけたものです[3]。

この法則には条件があります。毎回の結果が互いに影響せず、同じ確率の試行であることなどです[9]。

この性質を最初に厳密に証明したのは、ヤコブ・ベルヌーイである。彼はこれを「黄金定理」と呼び、20年取り組んだ問題と述べたとされる[2]。著作『推測術(Ars Conjectandi)』は、彼の死(1705年)の8年後、1713年に甥のニコラウスによって出版された[2]。

名前がついたのは、ずっと後だ。1837年にポアソンが「la loi des grands nombres」と呼んだ[3]。

この法則は、どんな場合でも成り立つわけではない。一般の数値データの平均については、各回が独立で同じ分布に従い、有限の期待値がある場合に成り立つ。期待値のないコーシー分布では、標本平均は収束しない[9]。これは硬貨の表の割合とは別の話で、冒頭の硬貨やくじは、各回が独立で確率が変わらないので当てはまると考えられる。

6. くらしの なかで、どんな ところに つかわれて いる?

6. 1人では分からなくても、集団なら見通せる ── 保険と店の収益

6. 個人の予測ではなく集団の割合 ── 保険料の算出とルーレットの収益

ひとりの 人に なにが おこるかは、わかりません。でも、たくさんの 人を あつめると、おこる ことの わりあいは、だいたい きまって きます。

この かんがえ方は、けがや びょうき、かじに そなえる ほけんの しくみに つかわれて います[1]。

あたるか はずれるか、ひとりずつの けっかは ばらばらです。でも、たくさん つづけると わりあいは おちついて きます。

保険の仕組みも、大数の法則に基づいているとされます。1人ひとりの出来事が起こる時期は分かりませんが、多くの人を集めると、年齢や性別ごとの割合が一定の値に近づきます。そのため、保険料を計算できます[1]。

ルーレットでも、1回の勝ち負けは予測できません。それでも店側の収益は、回数が多いと予測できる割合に近づくといわれます[3]。

1回ごとの結果は分からなくても、集団や回数が増えると、割合は見通せるようになります。

保険の料金設定は、大数の法則を根拠にしている。1人の出来事の時期は予測できないが、多くの人を集めると年齢・性別ごとの発生率が一定の値に近づくため、保険料を計算できる[1]。個人の未来を言い当てているのではなく、集団の割合を使っている点が重要だ。

同様に、ルーレットの1回ごとでは店側が負けることもあるが、回数が多くなると収益は予測できる割合に近づく[3]。

この二つは、冒頭の疑問ともつながる。1回、2回では大きくぶれても、回数や人数が増えると、割合は確率に近づく。ただし、それは次の1回の結果を知る手がかりにはならない。

7. コインを なげて、じぶんで ためして みよう

7. 自分のコインで、10回と100回を比べてみよう

7. 出口 ── 硬貨投げの記録と、資料の読みどころ

1円玉か 10円玉を つかって、10かい なげて、おもてが なんかい 出たか かいて みます。これを 3かい くりかえします。

そのあと、100かい なげて、おもての わりあいを しらべます。10かいの ときと くらべて、どう ちがうでしょう。ぴったり はんぶんに ならなくても、だいじょうぶです。

コインは、かるく なげて、ゆかに おとして ください。とんだ コインが 目に あたらないように、気を つけます。

もっと しりたく なったら、「大数の ほうそく」や「ギャンブラーの ごびゅう」を しらべて みて ください。

硬貨を10回投げて表が出た回数を記録する、という実験を3回繰り返します。続けて100回投げて、表の割合も記録します。10回ずつの記録と100回の記録では、割合のばらつきがどう違うか比べてみましょう。

投げるときは、床に落とす程度の軽い高さで、顔や目に向けて飛ばないようにしてください。

もっと確かめたくなったら、10回を何セットか、100回を何セットか投げて、表の割合の散らばり方を比べてみてください。回数が多いセットほど、0.5のまわりに集まるかどうかが見えてきます。

硬貨を10回投げて表の回数を数える作業を3回行い、続けて100回投げて割合を出す。10回ずつの記録のばらつきと、100回の割合の近さを比べる。ぴったり半分にならなくてよい。安全のため、顔や目に向けて投げないこと。

資料を読むなら、法則の定義と応用は辞典の解説[1]、ベルヌーイの歴史は『推測術』の解説[2]、硬貨投げの実験は報道[4]と論文[8]が読める。論文は英語だが、投げ始めと同じ面の割合の定義が冒頭にある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:辞典、百科事典、報道記事、論文を突き合わせた。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. コトバンク「大数の法則」。https://kotobank.jp/word/大数の法則 (法則の定義と保険への応用について)
  2. Wikipedia「Ars Conjectandi」。https://en.wikipedia.org/wiki/Ars_Conjectandi (ベルヌーイと著作の出版について)
  3. Wikipedia「Law of large numbers」。https://en.wikipedia.org/wiki/Law_of_large_numbers (名前の由来、少数回のばらつき、ルーレットの収益について)
  4. JSTOR Daily「Statistics of Coin Tosses」。https://daily.jstor.org/statistics-of-coin-tosses-theater-geeks (ビュフォンとピアソンの硬貨投げの記録について)
  5. Wikipedia「Gambler's fallacy」。https://en.wikipedia.org/wiki/Gambler%27s_fallacy (表が続いた後の確率について)
  6. Wikipedia「Geometric distribution」。https://en.wikipedia.org/wiki/Geometric_distribution (最初の当たりまでの回数の平均について)
  7. Wikipedia「Negative hypergeometric distribution」。https://en.wikipedia.org/wiki/Negative_hypergeometric_distribution (戻さない場合の平均について。数値は自分で計算)
  8. Bartoš ほか「Fair coins tend to land on the same side they started」(arXiv 2310.04153)。https://arxiv.org/html/2310.04153v4 (35万757回の硬貨投げの研究について)
  9. Wikipedia「大数の法則」。https://ja.wikipedia.org/wiki/大数の法則 (成り立つ条件について)

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