このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ピカッと 光る かみなりは、上から? 下から?

一番明るい稲光は、地面から雲へ駆け上がる

雷の発生機構 ── 積乱雲内の電荷分離、ステップトリーダ、帰還雷撃、雷鳴までの距離

分野:自然

ピカッと 光った あと、ゴロゴロと 音が します。あの 光は、雲から 地面へ 走って いるように 見えますね。

ところが、いちばん 明るく 光る ところは、下から 上へ のぼって いくと いわれます。どういう ことなのか、いっしょに 見て いきましょう。

空がピカッと光ると、光の筋が雲から地面へ落ちていくように見えます。ところが、あの一番明るい光は、よく見られるタイプの落雷では、じつは地面から雲へ向かって走っていると説明されています。

その前に雲の中で何が起きているのか、電気はどうやって分かれるのか、そして光と音の時間差から雷までの距離を知る方法まで、順にたどります。

雷は、積乱雲の中にできたプラスとマイナスの電荷の偏りを、放電によって解消する現象である[2]。見えている強い稲光は、よく見られる負極性の落雷では、雲から地面へ落ちる光ではなく、地面から雲へ駆け上がる帰還雷撃の発光とされる[1]。

このメモでは、大阪大学の解説[1]を軸に、日本気象協会[2]、気象庁[3]、電気設備メーカーの解説[4][5]を突き合わせ、電荷分離から雷鳴と距離の見積もりまでを整理する。電荷分離の仕組みそのものは未解明の部分が大きい点も含める。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. どんな 雲から かみなりは 生まれるの?

1. 雷を生む積乱雲は、とても高くなる

1. 積乱雲のスケール ── 雷を起こす雲

かみなりを 生む 雲は、せきらんうんと よばれる、とても 大きな 雲です。高さは 10キロを こえ、ときには 空の ずっと 上まで とどく こともあります[3]。

この 雲の 中では、あたたかい 空気が 上へ 上へと のぼって います。そこで 氷の つぶが できて、ぶつかり合います[2]。

氷の つぶの 中には、あられも 入って います。あられが どう 育つかは、前の メモ「あられとひょうは、なにが ちがうの?」で 読めます。

とても背の高い雲

気象庁の解説では、積乱雲は高さが10キロメートルを超え、ときには成層圏にまで達することもあります。水平の広がりは数キロから十数キロほどで、1つの積乱雲がもたらす現象は30分から1時間ほど、狭い範囲で起きます[3]。

中で氷の粒がぶつかる

強い上昇気流で積乱雲ができると、雲の中には霰(あられ)や氷晶(小さな氷の結晶)ができます。これらがぶつかり合うことで、雲の中の電気が分かれていく、というのが基本の考え方です[2]。霰がどう育つかは、前の記事「あられとひょうは何がちがうのか」で書きました。

気象庁によれば、積乱雲は高さが10kmを超え、ときに成層圏まで達する。水平の広がりは数km〜十数kmで、1つの積乱雲がもたらす現象は30分〜1時間程度、局地的である[3]。

日本気象協会の解説では、上昇気流で積乱雲ができ、霰や氷晶が形成され、その衝突で電荷の分離が起こる。偏りが一定以上になると放電が起こる[2]。霰は気象庁の予報用語で直径5mm未満の氷の粒であり、成長の過程は前稿「霰と雹の違い」で扱った。

2. 電気は、どうやって 分かれるの?

2. 霰と氷晶がぶつかると、電気が分かれる

2. 着氷電荷分離仮説 ── 霰と氷晶の衝突帯電

雲の 中の ある 高さ、夏には 6キロ ぐらいの ところで、あられと、氷の 小さな けっしょうが ぶつかります。すると、あられには マイナスの 電気、けっしょうには プラスの 電気が たまる、という 考えが あります[1]。

上へ のぼる 風などの えいきょうで、重い あられは 下の ほうに、軽い けっしょうは 上の ほうに 集まりやすく なります。だから 雲の 上は プラス、まん中あたりは マイナスに なります。

ふうせんを 頭に こすると かみが くっつくのと、にています。ただし 雲の 中では、氷の つぶが ぶつかって 電気を ためて います。

マイナス10℃付近の出会い

大阪大学の牛尾知雄氏の解説では、雲の中でマイナス10℃付近の高度(夏はおよそ6キロメートル前後)で霰と氷晶が衝突すると、霰がマイナス、氷晶がプラスに帯電すると考えるのが基本です。この「着氷電荷分離仮説」は高橋劭博士が唱えたもので、現在いちばん信頼されている説とされています[1]。

雲の中の電気の並び方

上昇気流などの影響で、重い霰は雲の下のほうに、軽い氷晶は上のほうに位置しやすくなるため、積乱雲の上部にプラス、中部にマイナスの電気がたまります。ごく下のほうに小さなプラスの領域もありますが、ここでは省きます[1]。

たとえるなら、ふうせんを髪にこすったときの静電気に似ています。ただし雲の中では、氷の粒どうしのぶつかり合いで起きるので、仕組みは同じとは限りません。

牛尾によれば、マイナス10℃付近の高度(概ね夏季は6km前後)で霰と氷晶が衝突する際に、霰が負、氷晶が正に帯電するというのが基本的な考え方である。この着氷電荷分離仮説(高橋劭による)が現在最も信頼される説とされる[1]。

上昇気流などの影響もあり、霰は雲の下方、氷晶は上方に位置しやすく、その結果、積乱雲の上部が正、中部が負の電荷構造になる。最下部には小さな正電荷領域(ポケット正電荷領域)も存在するが、原典はその理由の説明を省いている[1]。一般向けの解説には、放電が始まる目安として空気の絶縁の限界(約300万V/m)を挙げるものもあるが、ここでは扱わない。

3. まだ わかって いない こと

3. なぜ電気が分かれるのかは、まだ解明の途中

3. 未解明の点 ── 電荷分離の仕組み

雲の 中で、どうして 電気が 分かれるのでしょうか。この おおさかだいがくの 本には、しくみは まだ すっかり わかって いるわけでは ない、と 書かれて います[1]。

この 本は 2016年の ものです。

むかしから 見なれた かみなりにも、まだ ふしぎが のこって います。

「なぜ雲の中で電荷が分離するのか」について、大阪大学の解説は「現在においても、その仕組みが解明されているわけではない」という趣旨を述べています[1]。先ほどの着氷電荷分離仮説も、最も信頼されているとはいえ、仮説の1つです。

ただし、この記述は2016年時点のものです。だからこそ、身近な雷にまだ調べる余地が残っている、と言えます。

牛尾は「何故、雲内で電荷が分離するのか」という問いに対し、現在においてもその仕組みが解明されているわけではないと述べる[1]。着氷電荷分離仮説は有力だが、確立した結論ではない。

この記述は2016年5月号のものである。「いまも未解明」と断定せず、「2016年の解説では未解明とされた」と読むのが安全である。最新の状況は、気象学会や大学の一般向け解説で調べるとよい。

4. 光る 前に、かいだん みたいに おりて くる

4. 稲光の前に、見えにくい先ぶれが階段状に降りてくる

4. ステップトリーダ ── 雲から地面へ進む先行放電

かみなりには、雲の 中で おわる ものと、地面まで とどく ものが あります[1]。地面まで とどく ときは、まず 雲から 見えにくい 電気の みちが、そろそろと おりて きます。

この みちは、少し すすんでは 止まり、また すすみます。まるで かいだんを おりるようです[1]。

ある しりょうでは、50メートルほど すすんでは、ほんの 少し 休む といいます[4]。ただし、数字は しりょうに よって ちがいます。

雲の中で終わるものと、地面に届くもの

雷の放電は、雲の中で終わる雲放電と、地面に届く落雷の2種類に大きく分けられます。落雷の大多数は、雲のマイナスの電気が地面へ流れる負極性落雷とされています[1]。

進んでは止まる先ぶれ

落雷は、雲から放電が進んでは止まりを繰り返し、枝分かれしながら地面に向かう「ステップトリーダ」から始まります[1]。ある企業の解説では、約50メートル進むごとに30〜90マイクロ秒止まり、高さ3000メートルの雲から約0.02秒で地面に近づくといいます[4]。ただし別の資料では約20メートルなど数字が異なるので、目安として読んでください。

雷放電は、雲内で完結する雲放電と、地面に達する落雷に大別され、落雷の大多数は雲の負電荷が地面へ放電する負極性落雷である[1]。

落雷は、放電が進んでは停止しを繰り返し、枝分かれしながら地面へ向かうステップトリーダで始まる[1]。ある解説では、1ステップは約50mで30〜90μsの休止をはさみ、雲高3000mから約0.02秒で地表に近づくとされる[4]。進展距離と休止時間は資料で差があるため、桁の目安と考えるべきである。

5. 目に 見える 光は、下から 上へ

5. 一番明るい光は、地面から雲へ駆け上がる

5. 帰還雷撃 ── 地面から雲へ走る主放電

雲から おりて きた みちが、地面に ちかづくと、地面の ほうからも お出むかえの みちが のびて きます。ふたつが つながると、大きな 電気が 一気に 流れます[1]。

そのとき、よく ある かみなりでは、地面から 雲へ むかって、強い 光が かけのぼります。この 地面から 雲へ かけのぼる 光が すすむ 速さは、光の 速さの 3分の1 ぐらい だと されます[1]。

わたしたちが 「ピカッ」と 見るのは、この 光です。一回の かみなりで、この 光が 何回も くりかえす ことが あり、へいきんで 3回から 4回ほど という ほうこくが あります[1]。

地面からのお迎え

先ぶれのリーダが地面近くまで来ると、地面側からも「お迎え」のリーダが伸びてきて、2つがつながります。すると大きな電流が流れ、よく見られる負極性の落雷では、強い発光が地面から雲に向かって駆け上がります。この発光が帰還雷撃で、地面から雲へ駆け上がる速さは、光の速さの約3分の1です[1]。

何度も光る

1つの落雷で、帰還雷撃は繰り返し起きることがあり、平均は3〜4回程度という報告があります。最初の帰還雷撃で流れる電流の平均は約3万アンペア(30キロアンペア)程度という報告もあります[1]。ただし、これは平均で、1回ごとに大きく違います。

雷が「チカチカ」して見えるのは、この繰り返しのせいかもしれません。

リーダが地面に近づくと、地上側からも迎えのリーダが伸び、両者が結びつくと大電流が流れて、負極性落雷では、強い発光が地面から雲内へ上昇する。この発光が帰還雷撃であり、その上昇の速さは光速の約3分の1とされる[1]。

牛尾は、1回の落雷で帰還雷撃が平均3〜4回程度繰り返される、初回の電流の平均は約30kAという報告がある、と紹介している[1]。いずれも平均であり、1事例ごとの幅は大きい。電流の値は資料によっても3000A〜20万Aと幅があり[4]、単一の数字で語れない。

6. 光と 音の ずれで、きょりが わかる

6. 雷鳴は衝撃波、光と音の時間差から距離を見積もる

6. 雷鳴の発生と、閃光から距離を求める式

かみなりの 通り道の 空気は、ほんの 一しゅんで とても あつく なります。ある しりょうでは、3万度ほどと いいます。これは 太陽の おもてより、5ばいぐらい 高い 数字です[4]。

あつく なった 空気は、一気に ふくらみます。その ゆれが 音と なって とどきます。これが かみなりの 音です[4]。

光は ほとんど 一しゅんで とどき、音は おくれて とどきます。光って から 音が 聞こえるまでの 秒数を かぞえ、340を かけると、およその きょりが メートルで わかります[5]。

10びょうなら 340×10で 3400メートル、つまり やく3.4キロです。3びょう いないなら やく1キロ いないと いう ことです[5]。

音の 速さは 気温で かわるので、340は 目安です。

雷鳴の正体

雷の通り道の空気は一瞬で約3万℃に熱せられ、急に膨らんで衝撃波になり、それが雷鳴として聞こえるといいます。太陽の表面が約6000℃なので、その約5倍です[4]。

光ってから音まで何秒?

光はほぼ一瞬で届き、音はゆっくり届くので、光ってから音が聞こえるまでの秒数に音速をかけると、落雷地点までの距離がわかります。音速を秒速340メートルとして、距離(m)=340×秒数です。10秒なら約3.4キロメートル、3秒以内なら約1キロメートル以内です[5]。音速は気温で変わるので、340は目安です。

雷が近いときは、窓から離れて建物の中にいましょう。

放電路の空気は一瞬で約3万℃に達するとされ、急膨張して衝撃波となり、雷鳴として聞こえる[4]。太陽表面は約6000℃なので、その約5倍にあたる。

閃光から雷鳴までの時間tを測れば、落雷地点までの距離d(m)を d≒340×t で見積もれる[5]。t=10sなら約3.4km、t≦3sなら約1km以内である。音速は気温に依存するため、340m/sは目安の値である。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

かみなりが 鳴った 日に、たてものの 中で まどから はなれた ところから、光って から 音が 聞こえるまで、なんびょうか かぞえて みましょう。外には 出ません。どのくらい 遠いか、340を かけて 考えて みます。

本や ホームページで しらべるなら、きしょうちょうの「せきらんうんって どんな 雲?」が 日本語で 読めます。

今日できること:雷が聞こえたら、建物の中の窓から離れた場所で「1、2、3…」と秒を数え、光ってから音までの時間を測ってみましょう。数秒おきに繰り返すと、雷が近づいているのか遠ざかっているのかがつかめます。外には出ないでください。

公式情報:気象庁「積乱雲ってどんな雲?」や、日本気象協会「雷のしくみ」は、日本語で読めます。

大阪大学の牛尾による解説[1]は、電荷分離から落雷までの流れが日本語で通して読める。雲の規模は気象庁[3]、仕組みの概要は日本気象協会[2]が読みやすい。

ステップトリーダなどの数値は資料で差があるため[4]、複数の資料を並べて見比べると、どこまでが確かでどこからが目安かが分かる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の数値のうち、企業サイトの解説によるものは目安として扱った。

  1. 牛尾知雄「雷放電と積乱雲の科学」大阪科学技術館(2016年5月号) https://www.sci-museum.jp/wp-content/themes/scimuseum2021/pdf/study/universe/2016/05/201605_04-09.pdf (電荷分離・放電・帰還雷撃)
  2. 日本気象協会 tenki.jp「雷のしくみ」 https://tenki.jp/bousai/knowledge/7d21e41.html (雷の概要)
  3. 気象庁「積乱雲ってどんな雲?」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tenki_chuui/tenki_chuui_p2.html (積乱雲の大きさ)
  4. 音羽電機工業「雷放電現象」 https://www.otowadenki.co.jp/basic4/ (リーダの速さ・雷鳴・温度)
  5. 音羽電機工業「光と音で雷の距離を知ろう」 https://www.otowadenki.co.jp/knowledge_distance/ (距離の求め方)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。