1. おとした 芯は、どこで おれた?
1. 落としたシャープペンの芯は、どこで折れたのか
1. 落下実験では、芯はペン先から約1.3cmで折れた
つくえから シャープペンを おとして、ひろったら 芯が おれて いた。そんな ことは ありませんか。
ある 高校生たちが、これを じっけんで しらべました。0.5ミリの 芯が 入った ペンを おとして、芯が どこで おれるかを 見たのです[6]。
すると 芯は、ペンさきから やく 1.3センチの ところで おれました。芯を つかんで いる ところ(チャック)の あたりです。
ただし、つかったのは 1しゅるいの ペンと 芯だけです。どの ペンでも そう なる、とは いえません。
では、そもそも どうして ほそい 芯は おれやすいのでしょう。
机から落ちたシャープペンを拾ったら、芯が折れていた。誰でも一度は経験することです。この「どこで折れるのか」を、岐阜県立恵那高校の生徒が課題研究(2023年度)で調べています[6]。
0.5mmの芯を入れたシャープペンを落とすと、芯はペン先から約1.3cm、芯をつかむチャックの部分で折れました。落とす高さを変えても、折れる位置に大きな変化はなかったと報告されています。一方で、高さと折れる回数の間には、単純な比例関係は見られませんでした。
ただし、使ったペンも芯も1機種ずつの高校生の探究です。すべてのシャープペンに当てはまる法則として読むのは、強すぎます。
それでも、芯が折れる場所はペンの内部にあるという点は、このメモの出発点になります。まず、細い芯がなぜ折れやすいのかから見ていきましょう。
シャープペンを落としたとき、芯はどこで折れるのか。岐阜県立恵那高校のSSH課題研究(2023年度)は、0.5mmの芯を入れたシャープペンを落とす実験で、芯がペン先から約1.3cmの芯チャック部で折れることを示した[6]。落とす高さを変えても、折れる位置に大きな変動はなかったという。
ただし、落とす高さと折れる回数の間に単純な比例関係は見られなかった。しかも用いたのは芯・ペンとも各1機種であり、一般法則として扱うことはできない。
それでも、折れた位置が芯の露出部ではなく、ペン内部の保持部であったことは示唆に富む。芯の強度を論じるとき、材料の性質に加え、ペンがどのように芯を保持し、衝撃を受け止めるかも考える必要があるからだ。そこでまず、細い芯が本質的に抱える弱点を整理する。
2. ほそい 芯は、どうして おれやすい?
2. 細い線で書きたい、でも細いほど折れやすい
2. 細い芯の弱点 ── 描線の細さと折れやすさのトレードオフ
むかしの シャープペンの 芯は、1ミリから 1.5ミリほどの 太い ものだけでした[1]。太い 芯は おれにくいけれど、字は 太く なります。
もっと 細い 字を 書きたい。そこで 芯は 0.9、0.7、0.5ミリと 細く なり、1968年には 0.3ミリも 出ました[1]。
ところが、芯が 細く なると、おれやすく なります。みつびし えんぴつの とっきょにも、細い 芯は 線が 細く 書ける けれど、書きごこちが わるく、おれやすい、と 書かれています[4]。
細くて、おれにくくて、書きごこちも いい。この ぜんぶを かなえる ために、まず 芯の ざいりょうが かわりました。
1960年より前のシャープペン用の替え芯は、直径1〜1.5mmの太いものしかなく、折れやすいものでした[1]。太ければ折れにくい代わりに、線も太くなります。
もっと細い線で書きたいという願いに応えて、芯は0.9mm、0.7mm、0.5mmと細くなり、1968年には0.3mmも登場しました[1]。
ところが、細くすると今度は折れやすくなります。三菱鉛筆の特許には、芯径が細い芯は描線が細く描けるものの、書き味が悪く折れやすい、という課題が書かれています[4]。細さ、強さ、書き味は、同時に満たしにくい組み合わせだったことが分かります。
この三つを両立させるために、最初に手が入ったのが芯の材料でした。
3. 芯の ざいりょうは、どう かわった?
3. 粘土から樹脂へ、芯の材料が変わった
3. 材料の改良 ── 粘土から合成樹脂、そしてナノダイヤ
えんぴつの 芯は、こくえんに ねんどを まぜて かためた ものです。シャープペンの 芯では、ねんどの かわりに、じゅし(プラスチックの なかま)を まぜて 作ります[2]。
この じゅしの 芯を、ぺんてるが 1960年に 世界に さきがけて 発売しました。細くても おれにくい 芯が 生まれ、ノックして 使う シャープペンが ひろがる きっかけに なりました[1]。
まぜる じゅしや ねんどが 多いと かたくて うすい 芯、少ないと やわらかくて こい 芯に なります[2]。
いまも ざいりょうの くふうは つづいています。みつびし えんぴつは、芯に ナノダイヤを まぜた シャープ芯を 出していて、強く 書いても おれにくい、と 公式ページで せつめいしています[3]。
でも、芯が 強く なっても、ペンの 中で 芯が ぐらぐら していたら、おれて しまいそうです。ペンさきは、どう くふうして いるのでしょう。
鉛筆の芯は、黒鉛と粘土を焼き固めたものです。シャープペンの芯は、細くしても折れにくくするために、粘土の代わりに樹脂を黒鉛に混ぜて作ります[2]。混ぜる樹脂や粘土の量が多いと硬くて薄い芯に、少ないと柔らかくて濃い芯になります[2]。
この方式で作った「ハイポリマー芯」を、ぺんてる(当時は大日本文具)が1960年に世界に先駆けて発売したと紹介されています[1]。細くても折れにくい芯が生まれ、ノック式シャープペンの普及を後押ししました。
材料の工夫は今も続きます。三菱鉛筆の「ユニ ナノダイヤ」は、芯にナノダイヤを配合することで、筆圧を高めても折れにくく、なめらかにくっきり書けると、公式ページが説明しています[3]。
ただし、芯がどれだけ強くなっても、それを支えるペン先がゆるければ、力は芯の一点にかかります。先ほどの実験で折れた場所が、ペンの内部だったことを思い出してください。
では、材料の側では何が変わったのか。鉛筆の芯が黒鉛と粘土を焼き固めたものであるのに対し、シャープ芯は粘土の代わりに樹脂を黒鉛に混ぜて作る[2]。混ぜる樹脂や粘土の量が多いと硬くて薄い芯に、少ないと柔らかくて濃い芯になる[2]。
この粘土を樹脂に置き換えた「ハイポリマー芯」を、ぺんてる(当時は大日本文具)が1960年に世界に先駆けて発売した、と紹介されている[1]。細くても折れにくい芯が可能になり、ノック式の普及を後押ししたという。なお、発売年は資料により1960年とも1962年ともされる。
その後も改良は続く。三菱鉛筆の「ユニ ナノダイヤ」は、公式ページによると、芯にナノダイヤを配合して、筆圧を高めても折れにくくしている[3]。
ただし、材料の改良は芯単体の話である。落下実験で折れたのがペン内部の保持部であったことを踏まえると、次に問うべきは、ペンが芯にかかる力をどう扱っているかである。
4. ペンさきは、芯を どう まもる?
4. 隙間を埋めて芯をつかみ、バネで力を逃がすペン先
4. ペン先は、3面ホールドとスプリングと二重カバーで芯を守る
プラチナ万年筆の「オ・レーヌ シールド」(2014年6月10日 はつばい)は、芯を まもる ことを うりに した シャープペンです[5]。
ペンさきの ぶひんと 芯を 出す ぶひんの あいだには、すきまが ありました。そこを 4つの ぶひんで うめて、芯を 3つの めんで しっかり つかみます。
ペンの 中の バネ(スプリング)は、芯に かかる 力を すいとります。ペンさきの カバーは 二じゅうに なっていて、ショックが つたわりにくく なって います。
つまり 芯を 太くしたり かたくしたり するだけでなく、芯に 力が とどく 道すじを かえる くふうも あるのです。
では、この ペンは どれくらい おれにくいのでしょう。
プラチナ万年筆の「オ・レーヌ シールド」(2014年6月10日発売)は、芯を守る仕組みをペン側に作り込んだシャープペンです[5]。
先端パーツと芯を繰り出すパーツの間には、隙間がありました。そこを4つのパーツで埋めることで、芯を3面でしっかり保持します。さらに内部のスプリングが力を吸収し、二重構造のペン先カバーが衝撃を伝わりにくくしています。
材料を強くする方法と違い、こちらは芯に力が伝わる経路を変える方法です。芯が強くなっても、保持がゆるければ力が一点に集中しかねません。その保持を整えることが、もうひとつの守り方になっています。
では、こうした工夫でどれくらい折れにくくなったのでしょうか。
ペン側の工夫は、実際の製品にどう現れているのか。プラチナ万年筆の「オ・レーヌ シールド」(2014年6月10日発売)のプレスリリースによれば、先端パーツと繰り出しパーツの隙間を4パーツで埋め、芯を3面でホールドする[5]。内部のスプリングが力を吸収し、二重構造のペン先カバーが衝撃を伝わりにくくする。
材料の改良が芯自体の耐える力を上げるのに対し、この構造は芯へ伝わる力の経路を変えるものである。両者は競合せず、組み合わせて使える。
では、その効果はどう示されているのか。
5. 「15ばい おれにくい」は、ほんとう?
5. 「約15倍」という数字は、どこまで信じられるか
5. 自社測定の倍率と、規格にある「曲げ強さ」
プラチナ万年筆は、この ペンの 芯の おれにくさを、同じ 会社の ふつうの シャープペンの やく 15ばい、それまでの 自分の ペンの やく 1.5ばいと しています。これは 会社が 自分で はかった 数字です[5]。
ほかの 会社の ペンと くらべた 数字では ありません。はかり方も ちがうかも しれません。
じつは シャープペンの 芯には、日本の 規格(JIS)が あります。そこでは ひんしつとして「まげづよさ」が きめられて います[7]。
数字を 見たら、「だれが、どう はかったのかな」と 考えて みると いいですね。
プラチナ万年筆は、この製品の芯折れ強度を、同社の一般的なシャープペンの約15倍、従来品の約1.5倍としています[5]。これは自社測定の数字です。
つまり、他社製品との比較ではなく、測り方も業界共通のものとは限りません。大きな倍率は目を引きますが、「何と比べて、誰が測ったのか」が付いて初めて意味を持ちます。
シャープペンの芯には、JIS S 6005:2019という規格があります。日本筆記具工業会が原案を作り、品質の項目に「曲げ強さ」が入っています[7]。ただし、JISの「曲げ強さ」と、メーカーが示す「約15倍」が同じ測り方とは限りません。数字を読むときは、何をどう測った値かを分けて考えるといいでしょう。
6. じぶんの ペンで たしかめて みよう
6. 自分のペンで、芯を出す長さを比べてみる
6. 出口 ── 自分のペンで試す観察と、資料の読みどころ
じぶんの シャープペンで、芯の 出す 長さを かえて みましょう。芯を 1ミリぐらい 出した ときと、5ミリぐらい 出した ときを くらべます。
どちらでも 同じ 字を 書いて、どちらが おれやすいか、書きごこちは どうちがうか、見て みましょう。ペンの さきを 人に むけない ように してください。
ペンの せつめいが 書いて ある 紙に、芯を まもる くふうが 書いて あるか、さがして みましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:高校の課題研究、メーカーの発表・公式ページ、特許、規格の紹介ページ、解説ページを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- ベストカレンダー「シャー芯の日」。https://bestcalendar.jp/dates/kinenbi/138763 (1960年の樹脂芯、昔の芯の太さ、芯の細さの変遷について。ぺんてるの情報に基づく二次資料)
- さいたま市 サイエンスナビ(鉛筆とシャープ芯の材料)。https://www.city.saitama.lg.jp/sciencenavi/tanoshimu/004/p030618.html (黒鉛と粘土・樹脂の混ぜ方と硬さについて)
- 三菱鉛筆 ユニ ナノダイヤ 製品ページ。https://www.mpuni.co.jp/products/mechanical_pencils/leads/kaeshin/nano_dia/uni03_202nd.html (ナノダイヤ配合芯の公式説明)
- JP5138317B2「多層芯体及びその製造方法」(三菱鉛筆)。https://patents.google.com/patent/JP5138317B2/ja (細い芯の課題の記述)
- プラチナ万年筆 プレスリリース「オ・レーヌ シールド」(共同通信PRワイヤー、2014年)。https://kyodonewsprwire.jp/release/201406021050 (ペン先の保持構造と、自社測定の芯折れ強度について)
- 岐阜県立恵那高校 SSH 課題研究「シャーペンの落下する高さと芯が折れる関係」(2023年度)。https://school.gifu-net.ed.jp/ena-hs/ssh/R05ssh/sc2/22321.pdf (落下実験で芯が折れた位置について)
- 日本規格協会 JIS S 6005:2019「シャープペンシル用芯」(プレビュー。目次・序文)。https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_s_06005_000_000_2019_j_ed10_ch.pdf (規格の原案作成者と、品質に曲げ強さがあることについて)
なおした ところ
更新履歴
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