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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

なかゆびは、てのなかで どんな はたらきを して いるの?

中指は握る力をどれだけ受け持ち、薬指はなぜつられて動くのか

握力の約3.5〜3.8割を担う中指は、動かすと薬指がついてくる指でもある

分野:からだ

ぎゅっと にぎる とき、4本の ゆびの なかで いちばん ちからを だして いる ゆびは、なかゆびだと いう けんきゅうが あります。ぜんぶの ちからを 10と すると、なかゆびだけで 3.5から 4ほどです。

ところが、その なかゆびだけを うごかそうと すると、くすりゆびが ついて きます。ちからもちなのに、ひとりで うごくのは にがてなのです。この メモを よむと、なかゆびの はたらきと、くすりゆびが ついて くる ようすが わかります。

親指をのぞく4本の指でぎゅっと握るとき、いちばん力を出しているのは中指です。2つの研究で、握る力全体の3.5〜3.8割ほどを、中指が受け持っていました。ところが、その中指だけを動かそうとすると、薬指がいっしょに動いてしまいます。力持ちなのに、ひとり立ちは苦手なのです。

中指の長さと位置、握る力の分け前、つられて動く指の構造。この順に、研究で分かっていることと、まだ言えないことを分けて読みます。

親指をのぞく4本の指で握る力を測った2つの研究で、中指は全体の約35%と約37.5%を受け持ち、どちらも最大だった。ところが同じ中指は、1本だけ動かそうとすると薬指がつられて動き、単独で動かしにくい指でもある。力が強いのに独立性が低いのは、どういうことか。

この記事では、中指の位置と長さ、握る力の分担、指ごとに違う力の出しやすさ、つられ動きについて分かっている構造と、まだ言えないことを見ていく。ただし割合は測定条件で変わる値であり、一人ひとりの手にそのまま当てはまるわけではない。

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1. なかゆびは、てを ひろげると どこに あるの?

1. 手を広げると、中指はどこにいる指なのか

1. 手の中央で最も長い指:位置と長さから見た中指

手を ひろげて、じっと みて みましょう。なかゆびは、ひとさしゆびと くすりゆびの あいだに あります。5本の なかで、いちばん ながい ゆびです。

じしょにも、「手の 3ばんめの ゆびで、5本の なかで いちばん ながい」と かいて あります[2]。

ある かいせつ記事では、なかゆびを 手の まんなかの「じく」のような ゆびだと たとえて います[1]。ものを にぎった とき、ほかの ゆびと ちからを あわせて、ものを ぐらぐらさせない のだそうです。

ただ、これは わかりやすく した たとえです。ほんとうに ちからを だして いるのか、はかった ひとが います。

手を広げて、指を1本ずつ見てみましょう。中指は人差し指と薬指のあいだにあり、手のちょうど真ん中を通ります。辞典には「手の三番目の指で、五本の指の中で一番長い」と書かれています[2]。

解説記事には、中指を動きを導く「中心軸」のような指だとする説明があります。物を握ったときは、ほかの指と協力して物を安定させるそうです[1]。ただし「中心軸」は一般向けのたとえで、解剖学の用語ではありません。長いことが多いという点は辞典と合います。

位置が真ん中で、いちばん長い。そこから「いちばん働き者かもしれない」と考えたくなります。では、実際に力を出している割合は、どうなのでしょうか。測った人たちがいます。

中指は、親指を数えれば手の3番目の指にあたり、人差し指と薬指のあいだに位置する。辞典は「五本の指の中で一番長い」としている[2]。ただし、これは辞典の簡略な記述であり、長さの理由まで述べたものではない。

一般向けの解説記事は、中指を動きを導く「中心軸」のような存在とし、物を握るときは他の指と協力して物を安定させると述べる[1]。この「中心軸」は解説上の比喩で、解剖学上の定義ではない。位置が中央で最も長ければ、力にも関わっていると推測できるが、推測のままでは根拠にならない。では、実際に握る力の何割を中指が受け持っているのか。握力を指ごとに分けて測った研究がある。

2. ぎゅっと にぎる とき、4本の うち ちからを だして いる ゆびは?

2. 握る力は、4本の指でどう分け合われているのか

2. 握力の指別の分担:2つの独立した測定が示す中指の割合

1998ねんに、50人の ひとが きょうりょく して くれた けんきゅうが あります。きかいの にぎり手を ぎゅっと にぎって、ゆびごとの ちからを はかりました[3]。

けっかは、ひとさしゆびが 25、なかゆびが 35、くすりゆびが 26、こゆびが 15ほど。ぜんぶの ちからを 100と したときの わりあいです。なかゆびが いちばん おおきく でました。

のちの 2009ねんの けんきゅうでも、おとこの人 46人で はかりました。なかゆびが 37.5、くすりゆびが 28.7、ひとさしゆびが 20.2、こゆびが 13.6でした[4]。ちがう グループが べつの ひとたちで はかっても、なかゆびが いちばんでした。

なかゆびと くすりゆびを たすと、6わりから 6わり 6ぶんほど。ちからの おおくは、この 2本が だして います。こゆびは、しっかり にぎる ために 1本ぶん はたらいても、ぜんたいの 7ぶんの 1ほどです。

すうじは、はかった ひとや にぎり方で かわります。「なかゆびが いつも この わりあい」と いう ことでは ありません。

1998年、健康な50人(100の手)が協力して、握力計つきの取っ手を握る実験が行われました。指ごとの力が全体に占める割合は、人差し指が約25%、中指が約35%、薬指が約26%、小指が約15%でした。取っ手の太さや利き手、握る力の強さを変えても、この傾向は同じだったと報告されています[3]。

2009年には、別のグループが男性46人で、取っ手の幅を45〜65mmに変えて測りました。中指が37.5%、薬指が28.7%、人差し指が20.2%、小指が13.6%で、順位は先の研究と同じ、中指が最大でした[4]。

数字を足してみると、見えてくることがあります。中指と薬指の合計は、1998年の研究で約61%、2009年の研究で約66%です(上の数字を足した、わたしの計算です)。握る力の6割以上を、この2本で出していることになります。小指は13.6〜15%で、全体の7分の1ほどです。

ここで気をつけたいのは、2つの研究で参加者も取っ手の条件も違うことです。35%と37.5%のずれは、集団や条件の違いで生じた幅と考えられ、「中指はちょうど○%」とは言えません。「3.5〜3.8割ほど」という幅で受け取るのがよさそうです。

握力を指ごとに分けて測ると、中指はどの程度を担うのか。Talsania と Kozin(1998)は、健康な50人(100手)で電子握力計を用い、各指が全握力に占める割合を求めた。人差し指約25%、中指約35%、薬指約26%、小指約15%で、中指が最大だった。この傾向は取っ手の太さ、利き手、握力の強さによらず一貫していたという[3]。

これだけでは、1つの研究の結果にすぎない。そこで別の研究を見ると、Kong ほか(2009)は男性46人で、取っ手の幅45〜65mmの条件のもと、4本の力の合計に対する割合を、中指37.5%、薬指28.7%、人差し指20.2%、小指13.6%と報告した[4]。研究グループも参加者も別なのに、中指が最大という点は一致している。一方で、35%と37.5%は一致していない。握り方や取っ手の形、参加者の違いで値が動くためと考えられ、記事では「約3.5〜3.8割」と幅で書く。

さらに合計を計算すると、中指と薬指は、前者で約61%、後者で約66%を占める(これは割合の単純な足し算である)。握力の6割以上を中指と薬指が出す一方、小指は約14〜15%と、約7分の1にとどまる。なお、これらの研究が測ったのは親指をのぞく4本の割合であり、親指を含む手全体の力の分担ではない。また、握る力で中指が大きいことは、指先でつまむ動作での役割を示すものではない。

3. ゆびごとに、ちからが でやすい ふとさは ちがうの?

3. 指ごとに、力の出しやすい太さは違った

3. 取っ手の幅と指別の力:研究者が弓なりの形を勧めた理由

2009ねんの けんきゅうの なかまが、2007ねんにも ほうこくを して います。にぎり手の はばを かえて、どの ゆびが どの ふとさで ちからを だしやすいかを しらべました[5]。

すると、ちからが でやすい はばは、ゆびごとに ちがって いました。1つの ふとさが、5本ぜんぶに ぴったり、という わけでは ないのです。

けんきゅうした ひとたちは、「まんなかが ふとい、ゆみのような かたちの にぎり手が、どうぐに むいて いる」と まとめました。まんなかで ささえる なかゆびと くすりゆびに ちからが でる ように、ということでしょうか。

これは、はかった けっかから でた けつろんです。そう かんがえた くふうが、どうぐの もちて づくりに いかせるかも しれません。

先ほどの2009年の研究と同じグループは、2007年の学会でも報告しています。取っ手の幅を変えながら、指ごとに最も力が出る幅を調べたものです[5]。

結果は、力が最大になる幅が指によって違う、というものでした。どれか1つの太さが、4本ぜんぶにとって最適とは限りません。そこで研究者たちは、真ん中が太い、弓なりに曲がった形の取っ手が、道具に向くと結論しました。2007年の発表と2009年の論文で、結論は同じです[5][4]。

この話から言えるのは、握る力は「手全体の力」ではなく、4本の指がそれぞれの得意な位置で出す力の合計だということです。どの指が何割を出すかも、持つ物の太さで少し変わるのでしょう。研究は男性が対象で、子どもや女性でも同じ幅になるかは、この資料からは分かりません。

握力が指ごとの力の合計だとすれば、取っ手の太さを変えたとき、どの指が有利になるのか。Kong ほか(2007)は、取っ手の幅を変えて指ごとに力を測り、最適な握り幅が指によって異なることを示した。この結果から、人間工学的な設計として、中央が太い弓なりの輪郭をもつ取っ手が望ましいと結論している。2009年の論文版でも、同じ結論が述べられている[5][4]。

弓なり、つまり中央がふくらんだ取っ手は、握ったとき、手のひらの中央側を通る中指・薬指の部分で太くなる。この形が、指ごとの最適幅の違いに合うと研究者は考えた、と読める。ただしこの対応づけは、資料の記述から私が補った解釈である。

なお、2009年の研究の参加者は男性46人にかぎられ、握る道具も実験用の取っ手である。この結果を、子どもの手や日常の道具一般にそのまま当てはめることはできない。

5. じぶんの 手で、たしかめて みよう

5. 自分の手で、つられ動きと握り方を確かめる

5. 自分の手で、2つの研究の結果を追試してみる

きょう できる こと

つくえに 手を ぺたんと おいて、ゆびを 1本ずつ ひょいと もちあげて みましょう。おやゆびから こゆびまで、じゅんばんに やります。どの ゆびが いちばん むずかしいか、おうちの ひとと くらべて みても おもしろいです。

つぎに、ふとい ペンと ほそい ペンを にぎって、どちらが ちからを いれやすいかも、くらべて みましょう。ゆびごとに、ちからの でやすい ふとさが ちがうという はなしと つながります。

しらべる とき

この メモの しゅっしょの おおくは えいごの ろんぶんです。さいしょの 一歩として、じしょで「なかゆび」を ひいて みましょう。

今日できること

机に手をぺたんと置いて、指を親指から小指まで1本ずつ持ち上げます。どの指が持ち上げにくいか、周りの人と比べてみると、人によって違うかもしれません。

次に、太いペンと細いペンを握って、力を入れやすいほうを比べてみます。指ごとに力の出しやすい太さが違うという話に、つながります。

資料を読むなら

この記事の出典の多くは英語の論文です。まずは日本語の辞典で「中指」を引くところから始められます[2]。論文は、Kong ほか(2009)の要旨が CDC のサイトで読めます[4]。

今日できること

机に手を置き、親指から小指まで1本ずつ持ち上げて、つられ動きの程度を観察できる。これは2000年の実験の簡易的な追試にあたり、10人の結果と自分の手を比べる手がかりになる。ただし厳密な測定ではなく、結果は人によって異なる。

握り幅の効果は、太さの違う筆記具を握り比べて確かめられる。2007年・2009年の研究[4][5]の結論を、自分の手で試す形になる。

資料を読むなら

Talsania と Kozin(1998)[3]と Kong ほか(2009)[4]の要旨は、無料で読める。握力を指別に分けるときの測定条件(取っ手の幅、参加者)を確かめると、「約3.5〜3.8割」という幅の意味が分かる。独立性の議論は Häger-Ross と Schieber(2000)[6]、腱の構造は von Schroeder と Botte(2001)の総説[7]が入り口になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. ナゾロジー(中指の役割の解説記事). https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/198095 (中指の位置と役割の一般向け解説)
  2. 東京書籍 新選国語辞典 系「中指」. https://www.tkgje.jp/entries/04000/04281_nakayubi.html (中指の定義と長さ)
  3. Talsania JS, Kozin SH. The effect of grip on handle size and hand dominance. J Hand Surg (Edinb) 1998. https://scholarlyworks.lvhn.org/surgery/848 (指ごとの握力の割合)
  4. Kong YK ほか. Ergonomics 52(5), 2009. https://stacks.cdc.gov/view/cdc/187324 (別グループによる指ごとの割合)
  5. Kong YK ほか. HFES 51st Annual Meeting, 2007. https://stacks.cdc.gov/view/cdc/188705 (指ごとに最適な握り幅が違うこと)
  6. Häger-Ross C, Schieber MH. J Neurosci 20(22), 2000. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6773164 (指の動きの独立性)
  7. von Schroeder HP, Botte MJ. Clin Orthop Relat Res, 2001(PubMed ID 11210972). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11210972/ (腱間結合と指の独立した伸展)

なおした ところ

更新履歴

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