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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おじぎそうは、おとされつづけると、とじなくなるの?

落とされ続けたオジギソウは、なぜ葉を閉じなくなったのか ── 「慣れ」か「疲れ」か

オジギソウは、くり返し落とされると葉を閉じなくなるのか ── 習慣化説と運動疲労説

分野:生きもの

おじぎそうの はちを、たかさ 15センチから スポンジの うえに おとす じっけんが ありました。なんども なんども くりかえすと、おじぎそうは、そのうち とじなく なったと いいます[3]。

どうして とじなく なったのでしょう。なれたのか、つかれたのか、けんきゅうしゃの あいだでも いけんが わかれて います。この きじを よむと、はが とじる からだの しくみと、とじる ことの いみが わかります。

鉢植えのオジギソウを15cmの高さから何度も落とし続けると、そのうち葉を閉じなくなった。そう報告した実験があります[3]。しかも、鉢を振ると、葉はちゃんと閉じたそうです。

これは、オジギソウが「もう平気だ」と覚えたからなのか、それとも動かしすぎて疲れただけなのか。研究者の間でも見方が分かれています。この記事を読むと、葉が閉じる体のつくり、信号の速さ、閉じることの意味、そしてこの論争の中身が分かります。

ポットのオジギソウを高さ15cmから繰り返し落下させると、やがて葉を閉じなくなるという実験が報告されている。振動を与えると閉じたため、単純な疲労ではなく学習(習慣化)だと解釈され、その反応は28日後にも残っていたという[3]。ただし、この解釈には異論もある。

では、葉が閉じる体のしくみはどうなっていて、疲労と習慣化は何が違うのか。そもそも閉じることに、植物にとってどんな意味があるのか。この記事を読むと、運動器官の構造、信号の速さ、防御の実験、そして論争の論点が分かる。

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1. おじぎそうを なんかいも おとすと どうなる?

1. 鉢を何百回も落とすと、オジギソウはどうなるのか

1. 繰り返し落下実験 ── 閉じなくなった葉と、振ると閉じる葉

おじぎそうは、さわると はを とじます。では、さわる のでは なく、はちごと ストンと おとしたら、どうなるでしょう。

ある けんきゅうでは、はちを 15センチの たかさから スポンジへ おとしました。5びょうから 10びょうごとに 60かい。それを 1にちに 7かい くりかえしました[3]。

はじめは、おとすたびに はが とじました。でも、くりかえすうちに、とじない ことが ふえて いったと いいます。はちを ふると、また とじました。

どうして とじなく なったのか。それを かんがえる まえに、はが とじる しくみを のぞいて みましょう。

実験では、鉢植えのオジギソウを15cmの高さからスポンジへ落としました。間隔は5〜10秒、60回続けて落とし、それを1日に7セット行いました[3]。計算すると、多い日には1日420回ほど落としたことになります。

最初は、落とすたびに葉が閉じました。ところが繰り返すうちに、落としても閉じなくなったと報告されています。ここで大事なのは、鉢を振ると葉が閉じたことです。閉じる力そのものが尽きたわけではなさそうだ、と考えられました[3]。さらに、28日後に調べ直しても、その反応が残っていたと報告されています。

「落下は無害だ」と学んだのか、それとも動かしすぎて疲れただけなのか。答えを探すには、葉が閉じる体のつくりを知る必要があります。

この実験(Gagliano ら, 2014)では、ポット植えのオジギソウを高さ15cmからスポンジ上へ落下させた。5〜10秒間隔で60回を1セットとし、1日7セット(最大で計420回)を繰り返した[3]。すると、しだいに落下では閉じなくなった。一方、ポットを振ると閉じたため、感覚や運動の機能が失われたのではなく、落下という刺激だけに反応しなくなったと解釈された[3]。28日後の再試験でも反応の低下が残っていたと報告されている。

この結果は、植物に「学習」があるかという議論の材料になった。解釈が本当に妥当かを考えるには、葉が閉じる体の側の条件を先に押さえる必要がある。

2. はは どうやって とじるの?

2. 葉を閉じる「関節」は、水の出入りで動く

2. 運動器官(葉枕ようちん)の構造と、水の移動による屈曲

おじぎそうの はの つけねには、ふくらんだ ところが あります。ここを、葉枕ようちんと いいます[1]。

ここは、みずで うごく ちょうつがいの ようなものです。さわられると、ここに ある さいぼうから みずが おしだされて、しぼみます。そのため、はが ぱたんと おちます[1]。

うごくのは すうびょうです。でも、もとに もどるには 10ぷんから 20ぷんぐらい かかると いわれます[2]。とじるのは はやく、ひらくのは ゆっくりなのです。

オジギソウの葉は、小葉と小葉、小葉と葉柄、葉柄と茎のつけ根に、葉枕ようちんという運動器官を持っています。ここが、水の力で曲がる「蝶番」のはたらきをします[1][2]。

触られると、葉枕の細胞からカリウムイオンや塩化物イオンが出ていきます。中と外の濃さの差がくずれるため、細胞の水が押し出されて水圧が下がり、細胞がしぼみます[1]。刺激の後は、葉枕の下側の体積が減り、上側が増えると報告されています。水が下の半分から上の半分へ移るのです[2]。

ここまで数秒。ところが元の位置に戻るには、10〜20分ほどかかります(本によって10〜12分とも約20分とも書かれるため、幅で示します)[2]。閉じるのは速く、開くのは遅い。この差は、あとで論争を読むときのヒントになります。

葉が閉じる場所は、小葉と小葉柄、小葉柄と葉柄、葉柄と茎の各つけ根にある葉枕ようちんという運動器官である[1]。刺激が届くと、運動細胞からK⁺とCl⁻が細胞外へ移動し、浸透圧の差がくずれて水が押し出される。その結果、膨圧が下がって細胞がしぼみ、葉が動く[1]。ここでは、葉枕の下側の体積が減って上側が増える、つまり水が下半分から上半分へ移ることで曲がると説明される[2]。

動作は数秒で終わる。だが、元に戻るのには約10〜20分かかる。文献によって10〜12分、約20分と幅があるため、ここでは幅で示す[2]。閉じるのは速く、戻るのは遅い、という非対称は、繰り返し刺激した場合に何が起こるかを考える手がかりになる。

3. さわった ところから、はまで しらせは どう とどくの?

3. 触った合図は、歩くより遅い速さで伝わる

3. 触れた刺激の信号は、どれくらいの速さで伝わるのか

さわった しらせは、でんきと カルシウムの しんごうと なって からだの なかを つたわります[4]。

その はやさは、1びょうに 5ミリメートルぐらいです[4]。あるく はやさより、ずっと ゆっくりです。

しんごうが はの つけねに とどくと、0.1びょうぐらいあとに はが うごきだします[4]。

触れた刺激は、活動電位という電気の信号と、カルシウムイオンの信号になって体の中を伝わります。速さは、触れたときの活動電位で1秒に約5.5mm、傷を受けたときは約4.3mm。カルシウムの信号は、小葉の葉脈で1秒に約1.3mmと報告されています[4]。

人の神経の信号のような超高速ではありません。歩く速さよりも、ずっと遅いのです。それでも、信号が葉枕に届いてからおよそ0.1秒(最大でも0.15秒)後には、葉が動き出します[4]。

では、こうまでして葉を閉じる理由は何でしょうか。

刺激の伝達は、活動電位とCa²⁺シグナルの2つで確認されている。伝播速度は、接触で誘発した活動電位が約5.52 mm/秒、傷では約4.3 mm/秒、Ca²⁺は小葉の葉脈で約1.31 mm/秒である[4]。動物の神経のような高速ではなく、mm/秒の単位にとどまる。

一方、Ca²⁺の上昇は葉の運動に最大0.15秒先行した[4]。信号は遅いのに、届いてからの応答は速い。この対比が、この植物の動きの特徴である。なお、触覚のセンサーの全体像はまだ分かっていないとされる[1]。では、この動きは植物にとって何の役に立つのか。

4. はを とじる ことには、どんな いみが あるの?

4. 葉を閉じると、バッタは食べにくくなる

4. 防御の実験 ── 動かない株はバッタに約2倍食べられた

けんきゅうしゃは、ゲノムへんしゅうと いう ぎじゅつで、おじぎしない おじぎそうを つくりました。しんごうは つたわるのに、はが うごかないのです[4]。

この おじぎしない かぶと ふつうの かぶを、バッタに たべさせて くらべました。おじぎしない かぶは、はの 30パーセントぐらいを たべられました。ふつうの かぶは、15パーセントぐらいです[4]。

おじぎする ほうが、たべられる りょうが はんぶんぐらいに なったのです。バッタが すごした じかんも、みじかく なりました。

研究チームは、葉枕をつくる遺伝子(ELP1B1とELP1B2)をゲノム編集で壊し、「おじぎしないオジギソウ」を作りました。信号は正常に伝わるのに、葉は動きません[4]。

この株と普通の株に、バッタ(オンブバッタの仲間)を放して比べたところ、動かない株は葉の質量の約30.7%を食べられ、普通の株は約15.3%でした。ほぼ2倍の差です。バッタが株にとどまった時間も、動かない株で約143分、普通の株で約80分でした[4]。

報道では、バッタが食べ始めると葉が次々に閉じ、バッタは食べるのをやめて移動したと紹介されています[5]。足場を失うためではないかと考えられていますが、これは推測です。食害がゼロになるわけではなく、およそ半分に減る、というのがこの実験の結果です。

閉じることに、こんなはっきりした意味があるなら、なぜ落とし続けられたときには閉じなくなるのでしょうか。

閉じる意味を検証するため、葉枕を形成する遺伝子ELP1B1とELP1B2をCRISPR-Cas9で破壊した変異体が作られた。この株は運動器官を欠くが、傷への信号伝達は正常に保たれていた[4]。信号の有無と運動の有無を分けられるので、「動くこと」の効果だけを調べられる。

バッタ(オンブバッタの仲間、Atractomorpha lata)に食べさせたところ、変異体は葉の質量の約30.7%、野生型は約15.3%を失った(約2倍)。バッタの滞在時間も変異体で約143分、野生型で約80分だった[4]。動くことで食害が減ることは示されたが、ゼロにはならない。理由として、バッタが足場を失うことなどが報道で挙げられているが、推測の域を出ない[5]。この防御的な意味づけは、落下実験の解釈にも関わる。

5. なれたのか、つかれたのか

5. 「慣れた」のか「疲れた」のか ── 分かれる見方

5. 習慣化説と運動疲労説 ── 何が争点なのか

おとされて とじなく なった おじぎそう。ある けんきゅうしゃは、「もう へいきだと なれた のではないか」と かんがえました。ふると とじたので、ただ つかれた だけでは ない、と いう みかたです[3]。

でも、ちがう いけんも あります。「うごき すぎて つかれた だけでも、せつめいが つく」と いう ものです[6]。

どちらが ただしいのかは、まだ はっきり きまって いません。

落とし続けた実験を行ったグループは、振ると閉じることを根拠に、「落下は危険ではないと慣れた」という見方を示しました[3]。

これに対し、2017年(オンライン公開)にBieglerは、この実験のデータの多くは慣れではなく運動の疲れで説明でき、オジギソウに慣れがあるかどうかは不確かだ、と論じたと紹介されています[6]。

前の章で見たように、この植物の葉は、閉じるのは数秒で速く、戻るのに10〜20分かかります。何度も動かした後に反応が弱まったとき、それが「学んだ」からなのか「体が追いつかなかった」からなのかは、外から見ただけでは決めにくい。そのため見方が分かれているのだと考えられます。

Gaglianoらは、振動で閉じたことから、感覚・運動の疲労ではなく習慣化(非連合学習の一種)と解釈した[3]。これに対しBiegler(2017年にオンライン公開、2018年刊行, Oecologia)は、データの多くは運動疲労で説明でき、オジギソウにおける習慣化の存在は不確かだと論じた[6]。

争点は、「刺激ごとに反応が変わる」ことをどこまで「学習」と呼べるかにある。習慣化と運動疲労は、どちらも「同じ刺激に反応しなくなる」ように見える点が共通する。振動で閉じたという事実は、単純な疲労では説明しにくいと解釈されたが、疲労説の側は、データの多くを疲労で説明できると論じている。

結論は出ていない。ただ、閉じるのが速く戻りが遅いという体のつくり(2章)は、疲労説を検討する際の重要な条件になる。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おじぎそうが てに はいったら、はを 1まいだけ、そっと ゆびで さわって みましょう。とけいを みて、ひらくまでの じかんを はかります。10ぷんから 20ぷんは かかるかも しれません。

なんども さわったり、はちを おとしたり しては いけません。かぶが よわって しまうからです。

オジギソウが手に入ったら、葉を1枚だけそっと指で触り、閉じてから開くまでの時間を時計ではかってみてください。何分かかるでしょうか。

鉢を落とすなど、株に負担のかかることはしないでください。もう一つ、葉が閉じるまでの数秒と、開くまでの10〜20分をくらべてみてください。「閉じるのは速く、開くのは遅い」ことが、疲れの説明とどうつながるか、自分の言葉で考えてみると面白いでしょう。

観察としては、葉を1枚だけ軽く触り、閉じてから開くまでの時間を計るとよい。文献の10〜20分という幅の中に入るか、株の状態でどう変わるかを見てみる。株に負担をかけるため、繰り返し落下させる追試はしない。

資料としては、Hagiharaら(2022, Nature Communications)、Gaglianoら(2014, Oecologia)、Biegler(2017, Oecologia)が読める。とくにBieglerの論文は、Gaglianoらへの反論なので、あわせて読むと論点が見える。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. Mechanical Signaling in the Sensitive Plant Mimosa pudica L. (Plants, 2020) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7284940 (葉枕の構造・イオンの移動)
  2. Mimosa pudica pulvinus movement mechanism https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3115350 (水の移動・戻る時間)
  3. Gagliano et al. (2014) Oecologia https://doi.org/10.1007/s00442-013-2873-7 / 西オーストラリア大学ニュース「Clever plants learn behaviour」(2014) https://news.uwa.edu.au/201404286629/april-2014/clever-plants-learn-behaviour (落下実験の内容)
  4. Hagihara et al. (2022) Nature Communications https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9663552 (信号の速さ・動かない株・バッタの実験)
  5. Newswitch「オジギソウ」の報道 https://newswitch.jp/p/39071 (バッタが去った様子の紹介)
  6. Biegler (2017年オンライン公開, 2018年刊行) Oecologia 186(1), Insufficient evidence for habituation in Mimosa pudica https://doi.org/10.1007/s00442-017-4012-3 (異論の紹介)

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