1. 空から ふって きた 旗って、ほんとうなの?
1. 空から降ってきたという旗は、いつから国旗なのか
1. 空から降ってきた旗の伝説は、いつ語られ始めたのか
昔、デンマークの 王さまが たたかって いる とき、空から 赤と 白の 十字の 旗が ふって きて、みんなが 元気を 出したと いう お話が あります。1219年の ことと されて います。
この お話は 伝説で、ほんとうに 空から ふって きたかは わかりません。この お話が 本に 書かれたのは、それから 300年 ぐらい あとの 1500年代の はじめです。
はっきり して いるのは、この 赤と 白の 旗が、1300年代の なかばごろには デンマークの 旗として 使われて いた ことです。いまも 使われて いる 国の 旗の 中では、世界で いちばん 古い なかまの ひとつです。
この デンマークの 旗を、となりの 国は どう 見て いたのでしょう。
デンマークの国旗は「ダンネブロ」と呼ばれます。1219年、いまのエストニアにあたる土地での戦いのさなかに、空から降ってきたという伝説があります[1]。
この話が歴史家によって文章に書かれたのは、16世紀の初めになってからです[1]。1219年の出来事から300年ほど後に、言い伝えとして記録されたことになります。
国旗として定着したのは
確かな記録として語られるのは、14世紀の半ばごろです。このころにデンマークの旗として定着し、現在も使われ続けている最古の国旗の一つといわれます[1]。「最古」と呼ぶ基準は資料によって幅があるので、「最も古いものの一つ」と受け取っておくのが安全です。
では、この古い旗を、ほかの国はどのように見ていたのでしょうか。
ダンネブロの伝説は、1219年にデンマーク軍がいまのエストニアで戦った際、赤地に白い十字の旗が空から降りてきたとするものである[1]。ただし、この話が歴史家によって初めて文章に記されたのは16世紀初頭で[1]、出来事から約300年が過ぎている。伝説は同時代の記録ではなく、後世に語られた由来話として扱うのが妥当である。
伝説と区別すべき事実は、14世紀半ばごろにこの旗がデンマークの旗として定着し、以後、継続的に使われている点である[1]。資料はこれを「世界最古級の国旗」と表現するが、何をもって「国旗」の始まりとするかは定義に左右される。したがって「最古」と断定せず、「最も古いものの一つ」とするのが妥当である。
では、この旗は、デンマークの外でどう受け止められ、どのように北欧の旗の共通点に結びついたのか。
2. となりの 国は、デンマークの 旗を まねしたの?
2. 十字は、デンマークの旗から広がったのか
2. 共通の十字は、手本と連帯の二つの理由で説明できる
国ごとに ちがう 理由が あります。まず、ノルウェーは 長いあいだ、デンマークと いっしょの 国として、デンマークの 旗を そのまま 使って いました。1814年までの ことです。
スウェーデンは、1500年代に 旗を 作った とき、デンマークの 赤と 白の 十字の 旗を 手本に したと 考えられて います。
フィンランドと アイスランドは、少し ちがいます。この 2つの 国では、十字は 「ほかの ほくおうの 国との つながり」を あらわすと いわれて います。
つまり、十字は、長く 使われたり、手本に されたり、ほくおうの なかまの しるしとして えらばれたり して、ひろがったようです。では、どうして 十字なのに、色は 国ごとに ちがうのでしょう。
国ごとに事情は異なりますが、資料から見える理由は大きく三つあります。
長く同じ旗を使った国
ノルウェーは、1814年より前はデンマークと同じ国の一部で、デンマークのダンネブロを使っていました[2]。見慣れた十字の旗が、そのまま暮らしの中にあったことになります。
手本にしたと考えられる国
スウェーデンの旗の歴史は16世紀半ばにさかのぼります。スウェーデンの国立公文書館は、手本はデンマークから取り入れられたものだろう、という趣旨の説明をしています[3]。
つながりを示すために選んだ国
フィンランドの旗の十字は、ほかの北欧諸国とのつながりを示すものとされます[6]。アイスランドの旗も、十字はスカンディナヴィア(北欧)とのつながりを表すと説明されます[7]。
十字は同じでも、色はそれぞれ違います。その理由を、もっとも細かく記録が残るノルウェーの旗づくりから見てみましょう。
共通の十字を説明する手がかりは、資料から読み取れる範囲で三つある。
第一は、継続使用である。ノルウェーは1814年までデンマーク・ノルウェー連合の一部で、デンマークのダンネブロを使っていた[2]。十字の旗は、ノルウェーの人々にとって見慣れたものだったと考えられるが、議会の記録がこの点を理由として挙げているわけではなく、この部分は筆者の推測である。
第二は、手本である。スウェーデンの旗の歴史は16世紀半ばにさかのぼり、国立公文書館は、手本が長くダンネブロを象徴としてきたデンマークから取り入れられたのだろうと述べる[3]。スウェーデンは、現在の旗が正式に導入されたのは1906年だが、使われ始めたのは1500年代からとされる[4]。
第三は、連帯である。フィンランド旗の十字は、ほかの北欧諸国との結びつきを示すとされ[6]、アイスランド旗の十字もスカンディナヴィアとの関係を表す[7]。この二つは、「手本」というより「仲間であること」の表明という説明に近い。
限界もある。資料には、十字がこれらの国で採用された経緯の詳しい議論は含まれていない。したがって「デンマークの旗がすべての旗の祖先」と断定はできない。では、色が違うのはなぜか。もっとも記録が詳しいノルウェーから見てみる。
3. ノルウェーは、どうして 新しい 旗を ほしがったの?
3. ノルウェーの議会は、どうして自分たちの旗を作ったのか
3. 1821年のノルウェー議会は、なぜ新しい旗を決めたのか
1814年から、ノルウェーは スウェーデンと 連合を 組みました。それまで 使って いた デンマークの 旗は 使えなく なり、ふねで 荷物を はこぶ 商売には、スウェーデンの 旗に ななめの 十字を くわえた 旗しか ありませんでした。
そこで 1821年、ノルウェーの 議会は、自分たちの 旗を 作ろうと 提案しました。形は 十字、色は 赤と 白と 青。これは、フランスや アメリカの 旗に 使われた、自由の 色でした。
この 形を 考えたのは、フレデリック・メルツァーと いう 議員です。5月4日の とうひょうで、いちばん 多くの ひょうを 集めました。
ところが、スウェーデンの 王さまは、旗の 形を 議会が 決める ことに 反対でした。それでも 王さまの めいれいで、商売に 使う 旗として みとめられました。
やがて 1898年、連合の しるしは 旗から 消えて、いまの 形に なりました。
ノルウェーが 自由の 色を えらんだように、ほかの 国も、色には 自分たちの 理由を こめて いるのでしょうか。
1814年以降、ノルウェーはスウェーデンと連合を組みました。それまで使っていたダンネブロは使えなくなり、船で荷物を運ぶ商売のための旗は、スウェーデンの旗の隅に赤と白の聖アンデレ十字(斜めの十字)を加えた連合旗しかありませんでした[2]。
1821年の提案
1821年、ノルウェー議会(ストーティング)は新しい旗を提案しました。条件は、十字の形であること、赤・白・青の三色であること。この三色は自由の色であり、フランスとアメリカの革命の旗に使われた色だと説明されています[2]。
案を出した議員はフレデリック・メルツァーです。5月4日に議会が再開されたとき、メルツァーの案が最も多くの票を集めました[2]。現在のノルウェーの旗は、この案にあたります。
国王との意見の違い
スウェーデン国王のカール14世ヨハンは、旗の形を議会が決める権限をもつことに反対でした。それでも王室令により、商売に使う旗として承認します[2]。その後、1898年の国旗法で、連合を表す紋章がノルウェーの旗から取り除かれ、いまの形になりました[2]。
では、色の理由が分かりやすい他の国はどうでしょうか。
1814年にデンマーク・ノルウェー連合が終わり、ノルウェーはスウェーデンとの連合に入った。この結果、ダンネブロは使えなくなり、商業用にはスウェーデンの旗の隅に赤と白の聖アンデレ十字を加えた連合旗だけがあった[2]。新しい旗を求める動きは、こうした事情から起きた。
そこでノルウェー議会は1821年、新しい旗を提案した。条件は、十字の形で、赤・白・青の三色であること。三色は自由の色で、フランスとアメリカ合衆国の革命旗に使われた色と説明されている[2]。ここで注目したいのは、十字の形が議会の案に最初から含まれていた点である。それを選んだ理由は、資料には書かれていない。
議員のフレデリック・メルツァーの案は、5月4日の議会で最も多くの票を得た[2]。現在のノルウェーの旗は、この案にあたる。ところが、スウェーデン国王カール14世ヨハンは、旗の形を議会が決める権限を持つこと自体に反対した。国王は、王室令で商業旗としてのみ承認する形を取った[2]。旗は、まず商売の旗として認められた形である。
その後、1898年の国旗法で連合を表す紋章が旗から削除され、現在の形になった[2]。ノルウェーの旗は、十字の形をデンマークと共有しながら、色は自由という理念から選ばれた点で、デンマークともスウェーデンとも異なる。
では、ほかの国はどのように色を決めたのか。
4. 色は、国ごとに どう 決めたの?
4. スウェーデン、フィンランド、アイスランドの旗の色はどこから来たのか
4. 色の由来は国ごとに異なり、形の共通点とは別に決まっている
スウェーデンの 旗は、青い 地に 黄色の 十字です。この 青と 黄色は、スウェーデンの しるしに ある、青い 地に 3つの 金の かんむりの 色から きて います。
フィンランドの 旗は、白い 地に 青い 十字で、1918年に 法律で 決まりました。青と 白は、詩人の トペリウスが 「湖の 青と、冬の 白い 雪」と 言った 色に あたります。
アイスランドの 旗は、1915年から 国の 旗として 使われて います。青と 白に 赤が くわえられて います。
形は 同じ 十字でも、色は 国の しるしや しぜんから 取って いる、と いう わけです。では、デンマークの 人たちは、あの 古い 旗を どう 使って きたのでしょう。
十字は共通でも、色には国ごとの理由があります。
スウェーデン:国章の色
スウェーデンの旗の青と黄は、青地に三つの金の王冠を描く国章の色に由来します[3]。大きな国章では、盾が黄色の十字で四つに分けられていて、旗の十字と結びつけて説明されることもあります[4]。現在の旗は1906年に正式に導入されましたが、使われ始めたのは1500年代からとされます[4]。
フィンランド:湖と雪
フィンランドの旗は、1918年5月29日の法律で正式に定められた、青い十字の白い旗です[5]。詩人のサカリアス・トペリウスは、旗の色を「湖の青と、冬の白い雪」と表しました[5]。下絵を描いたのは、スネルマンとトゥーッカネンという芸術家です[6]。
アイスランド:赤を足した青と白
アイスランドの旗は1915年から公式の旗で、青と白に赤が加えられています[7]。
こうして見ると、十字は共通でも、色は国章、自然、自由という別々の理由から選ばれています。ところで、いちばん古いデンマークの旗自身は、国民にどう迎えられたのでしょうか。
色の由来は国ごとに異なる。スウェーデンの青と黄は、青地に三つの金の王冠を描く国章の色に由来する[3]。大きな国章では盾が黄色の十字で四分されており、旗の十字と結びつけて説明されることがある[4]。ただし、この結びつけは説明の仕方の一つにすぎず、旗の十字がそこから生まれたという意味ではない。デンマークの赤白の十字旗を手本にしつつ、色は自国の国章に合わせたと読むのが自然である(この整理は筆者による)。
フィンランドの旗は、1918年5月29日に法律で公式に採用された。旗は白地に青い十字である[5]。青と白は、詩人トペリウスが「湖の青と冬の白い雪」と表した色にあたる[5]。十字は、ほかの北欧諸国とのつながりを示すとされ、下絵は芸術家のスネルマンとトゥーッカネンが描いた[6]。
アイスランドの旗は1915年から公式で、青と白に赤が加えられ、十字はスカンディナヴィアとのつながりを表すとされる[7]。
整理すると、ノルウェーは自由の色、スウェーデンは国章、フィンランドは自然の色という具合に、色はそれぞれ別の理由で決まっている。一方で十字には、手本・継続使用・連帯という説明が重なる。「似ている」の中身は、形の共通性と、色の独立性が組み合わさっている。
では、これらの手本となったデンマークの旗は、デンマーク国内でどう扱われてきたのか。
5. デンマークの人は、この 旗を 自由に 使えたの?
5. 古いダンネブロは、国民にいつから自由に使われたのか
5. 禁止から家庭の旗へ:ダンネブロが国民のものになった過程
おどろく ことに、1834年、デンマークの 王さまは、ふつうの 人が この 旗を 使う ことを 禁止しました。
その あと、1850年ごろに、たたかいから 帰って きた 人たちが 見たのは、家々に かざられた 赤と 白の 旗でした。使っては いけないと 言われた 旗が、人々の 家に 広がって いたのです。
いまは、旗の 使いかたを 決める 法律は なく、あんないだけが あります。そして 1913年から、毎年 6月15日は 「ヴァルデマーの日」として、旗と 伝説を いわう 日に なって います。
意外なことに、1834年にはデンマーク王が、ふつうの市民がダンネブロを使うことを禁止しました[1]。
家々にあふれた旗
ところが、1850年ごろ、戦いのあとに帰ってきた兵士たちを迎えたのは、民家に掲げられた赤と白の旗でした[1]。禁じられていたはずの旗が、このころには暮らしの中に広がっていたことが分かります。
いまのデンマークでは、最も一般的なタイプの国旗の使い方を決める法律はなく、案内(ガイドライン)があるだけです[1]。1913年からは、毎年6月15日が「ヴァルデマーの日」とされ、旗と伝説が祝われています[1]。
国のしるしだった旗が、人々が自分の手で掲げる旗になっていく。この変化は、北欧の旗を考えるうえでも、手がかりになりそうです。
1834年、デンマーク王は一般市民がダンネブロを使うことを禁止した[1]。旗は、国王や国のものという位置づけだったことを示している。
ところが、第一次シュレースヴィヒ戦争(1848〜1850年)に勝って帰国した兵士たちが目にしたのは、民家に掲げられた赤と白の旗だった[1]。禁止された旗が、十数年のうちに家庭に広まったことになる。ここでは戦争の経緯には立ち入らず、旗が国民の側に移った時期として、この出来事だけを取り上げる。
現在のデンマークでは、最も一般的な国旗の使い方を決める法律はなく、ガイドラインのみがある[1]。毎年6月15日は、1913年以来「ヴァルデマーの日」とされ、旗と起源の伝説が祝われる[1]。
この流れは、ノルウェーの議会が自由の色で旗を選んだことや、フィンランドで詩人が旗の色を自然にたとえたことと重なる。デンマークの旗は、国王が使い方を決めるものから、人々の暮らしにも広がっていった。この見方は筆者の整理であり、資料が一つの流れとして述べているわけではない。
6. ほかの 旗も 見て みよう
6. 世界の旗の本で、十字の旗を見くらべる
6. 旗の本で比べ、原典に当たる
きょう できる こと
おうちや 学校の 図書館に ある 国の 旗の 本や 地図帳を ひらいて みましょう。この ページで 見た 5つの 国の 旗には、十字が あります。十字の 色や 形を、ならべて 見くらべて みます。
見つけたら、ノートに 「どの 国の 旗が、いちばん デンマークの 旗に 近いか」を 書いて みましょう。
旗の本で見くらべる
学校や地域の図書館にある国旗の本や地図帳で、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランドの旗を探します。十字の色の数、背景の色、十字が旗の中のどこにあるかを、図に描き写して比べてみてください。
色の由来を並べてみる
旗の色や十字の位置は本で比べ、色の由来(自由、国章、湖と雪)は、この記事の説明と照らし合わせてみてください。本に由来が載っていたら、記事との違いも見つかるかもしれません。デンマークの伝説の旗を、ほかの国の人はどう見ているのか、という問いも次の調べものの種になります。
旗の本で比べる
図書館の国旗の本で、五つの旗の十字の位置・色数・背景色を比較し、本稿の整理(継続使用・手本・連帯、そして色の由来の違い)に当てはまるか確かめる。当てはまらない旗があれば、それが次の疑問になる。
原典に当たる
ノルウェーの旗の経緯は議会のページ[2]、スウェーデンの手本の話は国立公文書館のページ[3]、デンマークの旗の歴史は[1]で読める。これらはスウェーデン語や英語の資料なので、まずは日本語の国旗図鑑や地図帳で五つの旗を並べて見比べ、由来は本稿の説明と照らし合わせるとよい。
なお、十字がフィンランドやアイスランドで採用された詳しい経緯や、デンマークの旗を「世界最古」と呼ぶ基準の議論は、今回の資料には含まれていない。ここが次に調べるときの手がかりになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- denmark.dk「Dannebrog: The flag that fell from the sky」(デンマーク外務省の公式サイト). https://denmark.dk/people-and-culture/dannebrog-800-years/ (英語。デンマークの旗の伝説、定着、使用の禁止と広がり)
- ノルウェー議会(Stortinget)「The Norwegian flag」. https://www.stortinget.no/no/english/About-the-Storting/the-norwegian-flag/ (英語。ノルウェーの旗の決定過程)
- スウェーデン国立公文書館(Riksarkivet)「Vimpel」. https://riksarkivet.se/vimpel (スウェーデン語。旗の手本と色の由来)
- Lex.dk「Sveriges nationalflag」. https://lex.dk/Sveriges_nationalflag (デンマーク語。スウェーデンの旗の導入と国章)
- finland.fi「The Finnish flag」. https://finland.fi/?p=4335 (英語。フィンランドの旗の法律と色の意味)
- Lex.dk「Finlands nationalflag」. https://lex.dk/Finlands_nationalflag (デンマーク語。フィンランド旗の十字と下絵)
- Lex.dk「Islands nationalflag」. https://lex.dk/Islands_nationalflag (デンマーク語。アイスランド旗の十字)
なおした ところ
更新履歴
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