ページが 出るまでに、なんかい「いって もどる」の?

ウェブページが表示されるまでの1秒間に、通信は何回「行って帰る」のか

ウェブページが表示されるまでの1秒間に起きていること:DNS・TCP・TLS・HTTPを、往復の回数で数える

分野:技術

やまに むかって「やっほー」と いうと、しばらくして、こえが もどって きます。とおい やまほど、まつ じかんは ながく なります。

ウェブページを 見る ときも、すこし にています。パソコンは、あいての コンピュータと なんども「いって もどる」を して、ようやく ページを 見せて くれます。その かずを、かぞえて みましょう。

東京からアメリカのロサンゼルスまで、光ファイバーの中を光が走っても、往復には約88ミリ秒かかります。計算で出した、これより短くならない値です。

ページを開くとき、パソコンは、この「行って帰る」を何回するのでしょうか。ページが見えるまでの1秒ほどの時間を、往復の回数で数えてみます。

東京からロサンゼルスまで、光ファイバーの中を光が進んでも、往復には約88ミリ秒かかる。距離と光の速さから求めた、これより短くならない値だ。

ページを開くとき、通信はこの往復を何回するのか。DNS、TCP、TLS、HTTPを、往復の回数で数え、TLS 1.3やQUIC、CDNが、光の速さを変えずに待ち時間を減らしてきた工夫までたどる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ小学校高学年むけ中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. どのくらい まてる? 1びょうの ものさし

1. 待てる時間の目安と、1秒という持ち時間

1. 待てる時間:0.1秒・1秒・10秒と、いまの目安

クリックして、すぐに ページが 出ると、「はやい」と 思います。まつ じかんには、3つの めやすが あります。0.1びょうは「すぐ」。1びょうは「かんがえが とぎれない」。10びょうを こえると、気もちが ほかへ いきやすく なります[1]

この めやすは、1968ねんの けんきゅうが もとに なっています[1]

この 1びょうぐらいの あいだに、パソコンと あいての コンピュータは、なにを して いるのでしょう。まず、どうしても はやく できない ものから 見ましょう。

ページが出るまで、何秒なら待てるのでしょうか。ヤコブ・ニールセンは1993年に、3つの目安を挙げました。0.1秒は「すぐに反応した」と感じる限界、1秒は「考えの流れが途切れない」限界、10秒は「画面に注意を向け続けられる」限界です[1]

この目安のもとは、1968年と1991年の研究です[1]

いまのウェブでは、ページでいちばん大きな部分(大きな画像や文字のかたまり)が見えるまでの時間が、目安の一つです。ページを開いた回数のうち4分の3で、2.5秒以内に見えれば「良い」とされます[2]

この1秒から数秒を「通信に使える持ち時間」と考えて、何に使われるのかを順に見ていきます。まず、どうしても縮められないものから。

待たされていると人が感じる時間には、目安がある。ヤコブ・ニールセンは1993年に、応答時間の限界を3つ挙げた。0.1秒は、システムがすぐ反応したと感じられる限界。1秒は、考えの流れが途切れない限界。10秒は、画面に注意を向け続けられる限界だ[1]

この助言は30年前からほぼ同じだ、とニールセンは書き、根拠に1968年のミラーと1991年のカードらの研究を挙げている[1]

いまのウェブでは、ページ内でいちばん大きな画像や文字のかたまりが見えるまでの時間(LCP)が、指標の一つだ。ページの読み込みの75%で2.5秒以内に収まることが「良い」の目安とされる[2]

以下では、この1秒から数秒を「通信に使える予算」と見て、使いみちを順にたどる。最初に、どうしても減らせない項目から。

2. ひかりでも、いって もどるのに じかんが かかる

2. 光の速さでも縮まらない、往復の時間

2. 光でも縮まらない時間:往復の下限(RTT)

やまに むかって「やっほー」と いうと、こえが もどるまで、とおい やまほど まちます。ただし ほんとうは、やまびこは おとが はねかえる だけです。ネットでは、あいての コンピュータが うけとって、へんじを つくって おくります。

ひかりは、ケーブルの なかを 1びょうに 20まんキロメートルぐらい すすみます[3]。それでも、とうきょうから アメリカの ロサンゼルスまで いって もどるのに、88ミリびょう(0.088びょう)ぐらい かかります。ひかりが すすむ じかんだけでも、さっきの 0.1びょうに ちかい ながさです。

とうきょうと おおさかなら、4ミリびょうぐらい。うみの むこうは、20ばい いじょうです。ページを 見るまでに、この「いって もどる」は、なんかい いるのでしょう。

光ファイバーの中を進む光でも、距離のぶんだけ時間がかかります。光は真空中で秒速約30万km。ガラスの中では、屈折率(約1.5)のぶんだけ遅くなります[3]。ざっくり割ると、光ファイバーの中の光は、秒速約20万kmです。

東京からロサンゼルスまでの直線距離は約8,800kmです。秒速20万kmなら、片道で約44ミリ秒、往復で約88ミリ秒。この「行って帰る」時間を、RTT(ラウンドトリップ・タイム)といいます。光が進むだけの理論上の下限でも、さきほどの0.1秒の目安に近い値です。

たとえるなら山びこです。山に向かって「やっほー」と叫ぶと、山が遠いほど、返事が戻るまで待ちます。ただし本当は、山びこは音がはね返るだけです。通信では、相手のコンピュータが受け取って、返事を作って送り返します。

88ミリ秒は、ケーブルが直線で、機器の処理時間がゼロの場合の下限です。実際の海底ケーブルは直線ではないので、もっとかかります。海底ケーブルについては、別のメモで書きました。同じ計算で、東京と大阪(約400km)は往復約4ミリ秒。海の向こうは、国内の20倍以上です。

ページを見るまでに、この往復は何回いるのでしょうか。

光ファイバーの中を進む光でも、距離のぶんだけ時間がかかる。光の速さは、真空中で秒速約30万km。物質の中では、真空中の速さを屈折率で割った速さになり、ガラスの屈折率は約1.5だ[3]。単純に割ると、光ファイバーの中の光は秒速約20万kmになる。

東京とロサンゼルスの直線距離は、緯度・経度から求めて約8,800km。これを秒速20万kmで進むと、片道で約44ミリ秒、往復で約88ミリ秒になる。この往復にかかる時間をRTT(ラウンドトリップ・タイム)という。光が進むだけの理論上の下限でも、前章の0.1秒の目安に近い。

88ミリ秒は、ケーブルが直線で、機器の処理時間がゼロの場合の下限だ。実際の海底ケーブルは、直線ではなく、もっと長い道のりを通る(海底ケーブルのメモ)。同じ計算で、東京と大阪(約400km)なら往復約4ミリ秒。海の向こうは、国内の20倍以上の「往復の値段」になる。

以降は、この往復=RTTを単位にして数える。ページを1枚出すのに、往復は何回いるのか。

3. なまえから ばんごうを しらべる

3. 名前を番号にする、DNSと近道

3. 名前を番号にする:DNSと、キャッシュという近道

ブラウザに なまえを うつと、まず、あいての ばんごうを しらべます(DNS)。インターネットの メモにも かきました。しらべた こたえは、ちかくの コンピュータが おぼえて おきます[4]

にかいめからは、とおくまで いかずに、ちかくの おぼえて いる こたえで すむ ことが あります。ともだちの いえの ばしょを、いちど しらべたら てちょうに かいて おくのと にています。ただし ほんとうは、こたえには おぼえて おく じかんが きまって いて、すぎると すてられます。

ブラウザーにURLを打つと、まず必要なのは、相手の番号(IPアドレス)です。名前から番号を調べる仕組みがDNSで、インターネットのメモにも書きました。

何も保存されていなければ、問い合わせは、ルートサーバー、.jpや.comのような末尾を担当するサーバー、そのドメインを担当するサーバーの順にたどります[4]。1回ごとに往復がいります。

そこで、答えは保存されます。パソコンやキャッシュサーバーは、問い合わせの結果を、決められた時間(TTL)のあいだ保存して、使い回します。時間が過ぎたら捨てます[4]。一度調べた友だちの家の場所を、手帳に書いておくのと似ています。ただし本当は、手帳と違って、書いておく時間が決まっています。

同じ名前を2回目に引くときは、遠くまで行かず、近くの保存で答えられることがあります。最初の一歩は、保存があるかどうかで、往復がほぼ要らない場合から、何度も要る場合まで変わります。次は、番号が分かった相手に、最初の一言を届ける段階です。

ブラウザーにURLを打つと、まず必要なのが、相手の番号(IPアドレス)だ。名前から番号を調べる仕組みがDNSで、詳しくはインターネットのメモで書いた。

保存が何もなければ、問い合わせは、ルートサーバー、TLD(.jpや.comなどの末尾)を担当するサーバー、そのドメインを担当する権威サーバーへと、順にたどる[4]。1回ごとに往復が要る。

そこで、答えは保存される。パソコンやキャッシュサーバー(リゾルバー)は、問い合わせの結果を、レコードごとに決められたTTLの間、保存して再利用する。TTLが切れたら破棄する[4]。同じ名前を2回目に引くときは、遠くの権威サーバーまで行かず、近くの保存分で答えられることがある。

この最初の一歩は、保存があるかどうかで、往復がほぼ要らない場合から、複数回要る場合まで変わる。次は、番号が分かった相手に、最初の一言を届ける段階だ。

4. さいしょの ひとことが とどくまで、3かい

4. 最初の一言が届くまでに、3往復

4. 最初の1バイトまで3往復:TCP・TLS・HTTP

でんわの「もしもし」「はい」に にた あいさつ(TCP)で、1かい。つぎに、ほかの 人に よまれない ための あんごうの やくそく(TLS)で、1かい[6]。そして「ページを ください」(HTTP)で、また 1かい。あわせて 3かいです。

ただし ほんとうは、あいさつの なかみは、おたがいの ばんごうを そろえる しごとです[5]

アメリカの ロサンゼルスの あいてなら、1かいが 0.088びょうなので、3かいで 0.26びょうぐらい。ページの なかみは、まだ ひとつも とどいて いません。では、なかみは、どう あつまるのでしょう。

番号が分かったら、相手との接続を作ります。まず、電話の「もしもし」「はい」のようなあいさつ(TCP)で、1往復。ただし本当は、あいさつの中身は、お互いに使う番号をそろえる作業です[5]

次に、httpsのページでは、暗号の方式や鍵を決めます(TLS)。TLS 1.2までは2往復かかりました。2018年のTLS 1.3で、新しい接続の取り決めは1往復になりました[6][7]

ここまで済んで、やっと「このページをください」という要求(HTTP)を送ります。返事の最初の1バイトが戻るまで、さらに1往復です。東京からロサンゼルスの相手に、初めてつなぐときの内訳は、次のとおりです。

東京からロサンゼルスの相手に、初めてつなぐときの往復の内訳(下限の計算)
段階往復ここまでの下限
TCPの接続1往復約88ミリ秒
TLS 1.3の取り決め1往復約176ミリ秒
HTTPの要求と、返事の最初の1バイト1往復約264ミリ秒

最初の1バイトが着くまでに、約0.26秒。1秒の持ち時間の4分の1あまりが、ページの中身が1つも届かないうちに、往復だけで消えます。TLS 1.2なら、1往復増えます。DNSの問い合わせと機器の処理時間は含んでいません。では、最初の1バイトが届いたあと、ページの中身はどう集まるのでしょうか。

番号が分かったら、相手と接続を作る。TCPは、SYN、SYN-ACK、ACKという3つのメッセージのやりとりで、双方が使う番号をそろえてから通信を始める[5]。こちらは、SYN-ACKが戻るまで、先へ進めない。ここで1往復。

httpsのページでは、続いてTLSで、暗号の方式と鍵を取り決める。TLS 1.2までは、データを送れるようになるまでに2往復かかった。2018年8月のTLS 1.3(RFC 8446)で、新しい接続の取り決めは1往復になった[6][7]

暗号が整って、ようやくHTTPの要求を送る。返事の最初の1バイトが戻るまで、さらに1往復かかる。東京からロサンゼルスの相手に、初めてつなぐときの内訳を、下限の計算で並べる。

東京からロサンゼルスの相手に、初めてつなぐときの往復の内訳(下限の計算)
段階往復ここまでの下限
TCPの接続1往復約88ミリ秒
TLS 1.3の取り決め1往復約176ミリ秒
HTTPの要求と、返事の最初の1バイト1往復約264ミリ秒

最初の1バイトが着くまでに、光の速さのままでも約0.26秒。1秒の予算の4分の1あまりが、まだ中身のない往復だけで消える。TLS 1.2なら、さらに1往復増える。DNSの問い合わせと機器の処理時間は含まない、直線距離での下限だ。最初の1バイトのあとで、ページの中身はどう集まるのか。

5. 1まいの ページは、ファイルの あつまり

5. 1ページは、何十ものファイルの集まり

5. 1ページは何十ものファイル:HTTP/1.1からHTTP/2へ

さいしょに とどくのは、もくじのような ファイル(HTML)です。その なかに「がぞうを ください」「もじの かたちを ください」と、ほかの ファイルの ことが かいて あります。

1まいの ページで、ファイルは 70ぐらい、と いわれます[8]。1ぽんの みちに まとめて はこぶ ほうほう(HTTP/2)も できました[9]。それでも、いって もどる かずは、まだ へらせるのでしょうか。

最初に返ってくるのは、たいてい1つのHTMLファイルです。その中に、見た目を決めるCSS、動きをつけるJavaScript、画像、文字のデザイン(フォント)など、別のファイルのことが書かれています。ブラウザーは、HTMLを読みながら、それらを追加で要求します。

HTTP Archiveの調査では、2025年7月のデータで、1ページのリクエスト数の中央値は、パソコンで77、スマートフォンで72でした。いちばん多いのは、JavaScriptのファイルです[8]

HTTP/1.1では、同時にたくさん取るために、サーバーへの接続を複数作りました[9]。新しい接続を作るたびに、前の章のあいさつがいります(つないだ接続を使い回せる場合もあります)。2022年のHTTP/2(RFC 9113)は、1つの接続の上で、複数のやりとりを同時に行えるようにしました[9]

順番の壁もあります。HTMLが届かないと、どのファイルが必要かも分かりません。ブラウザーには、HTMLを読む本体とは別に、先に見つけて要求する仕組み(プリロードスキャナー)があります[10]。それでも、数十の要求は、往復の壁にぶつかります。この待ちを、どう減らしているのでしょうか。

最初に返ってくるのは、たいてい1つのHTMLファイルだ。その中に、スタイルシート(CSS)、JavaScript、画像、フォントなど、別のファイルへの参照が書かれている。ブラウザーは、HTMLを読みながら、それらを追加で要求する。

HTTP Archiveの調査によると、2025年7月のデータで、1ページのリクエスト数の中央値は、デスクトップで77、モバイルで72だった。いちばん多いのはJavaScriptのファイルだ[8]

HTTP/1.1では、同時にたくさん取るために、サーバーへの接続を複数作ってきた[9]。新しい接続を作るたびに、前章のあいさつが要る(つないだ接続を使い回せる場合もある)。2022年のHTTP/2(RFC 9113)は、1つの接続の上で、複数のやりとりを同時に行えるようにした[9]

順番の壁もある。HTMLが届かないと、どのファイルが必要かも分からない。ブラウザーには、HTMLを読む本体とは別に、先に見つけて要求する仕組み(プリロードスキャナー)がある[10]。それでも、数十の要求は往復の壁にぶつかる。この待ちを、どう減らしてきたのか。

6. いって もどる かずを、へらす くふう

6. 往復を減らす工夫:TLS 1.3・QUIC・コピーを近くに

6. 往復を減らす工夫:TLS 1.3・QUIC・コピーを近くに置く

ひかりの はやさは かえられません。だから、いって もどる かずを へらします。あいさつを ひとつに まとめたり[6][12]、おなじ ものの コピーを ちかくの コンピュータに おいたり します[15]

ロサンゼルスまで いかずに、とうきょうに コピーが あれば、いって もどるのは 4ミリびょうぐらいの はなしに なります。でも、とどいても、まだ えには なりません。ブラウザは、どう するのでしょう。

光の速さは変えられません。そこで、往復の回数と、1回の往復の距離を減らす工夫が重ねられてきました。

回数を減らす工夫の1つが、TLS 1.3です。新しい接続の取り決めを、2往復から1往復にしました。前に一度つないだ相手には、0-RTTという方法で、最初のメッセージと一緒に暗号化したデータを送れます。ただし、途中で捕まえられた最初のデータが、もう一度実行されても防げない、という弱さがあり、規格はこれを性能との引き換えとして書いています[6][7]

QUICは、TCPのあいさつに当たる接続の確立と、TLS 1.3の取り決めを一体にして、接続の確立を速くします[12]。Googleが2013年に実験として始めたもので[13]、2021年にIETFがRFC 9000として標準にしました[11]。TCPの上ではなく、UDPの上に作られています。既存の機器やネットワークに広げやすくするため、と規格には書かれています[11]。新しい仕組みを広げる難しさは、IPv6のメモにも出てきました。

HTTP/3(RFC 9114、2022年)は、HTTPをQUICの上で動かします。HTTP/2はTCPの1本の接続を使うので、パケットが1つ失われると、関係のないやりとりまで止まります。QUICは、やりとりごとに別々に扱えるので、その止まりを避けやすくなります[14]

もう1つは、距離を縮める工夫です。CDNは、同じ内容のコピーを世界のあちこちのサーバーに置き、利用者に近いサーバーが答える仕組みです。距離が遠いほど、そのぶん遅延が大きくなるので、近くのサーバーが答えれば、往復は安くなります[15]。東京や大阪にコピーがあれば、往復は、2章の計算で数ミリ秒台です。でも、届いただけでは、まだ画面は絵になりません。ブラウザーは、届いたものをどう組み立てるのでしょうか。

光の速さは変えられない。そこで、往復の回数と、1回の往復の距離を減らす工夫が重ねられてきた。

回数を減らす工夫の1つが、TLS 1.3(RFC 8446、2018年8月)だ。新しい接続の取り決めを、2往復から1往復にした。すでに一度つないだ相手には、0-RTTという方法で、最初のメッセージと一緒に暗号化したデータを送れる。ただし、攻撃者に捕捉された0-RTTのデータが再実行される(再送攻撃)ことへの保証がない、という弱さがあり、規格はこれを性能との引き換えとして書いている[6][7]。標準になるまでには、2013年の提案から数年の議論があった[7]

QUICは、TCPの3ウェイハンドシェイクに当たる接続の確立と、TLS 1.3の取り決めを一体にして、接続の確立を速くする[12]。Googleが2013年に実験として始め[13]、2021年にIETFがRFC 9000として標準にした[11]。TCPではなくUDPの上に作られたのは、既存の機器やネットワークに展開しやすくするため、と規格に書かれている[11]。新しい仕組みを、古い仕組みの上に広げる難しさは、IPv6のメモの互換性の壁とも重なる。

HTTP/3(RFC 9114、2022年)は、HTTPをQUICの上で動かす。HTTP/2はTCPの1本の接続を使うので、パケットが1つ失われると、関係のないやりとりまで止まる(head-of-line blocking)。QUICは、ストリームごとに別々に扱えるので、その止まりを避けやすくなる[14]

もう1つは、距離を縮める工夫だ。CDNは、同じ内容のコピーを世界のあちこちのサーバーに置き、利用者に近いサーバーが答える仕組みだ。距離が遠いほど、そのぶん遅延が大きくなるので、近くのサーバーが答えれば、往復は安くなる[15]。東京や大阪にコピーがあれば、往復は、2章の計算で数ミリ秒台になる。だが、届いただけでは、まだ画面は絵にならない。ブラウザーは、届いたものをどう組み立てるのか。

7. とどいた ものを、えに する

7. 届いたものを、画面に描く

7. 届いたものを絵にする:DOM・CSSOM・描画

とどいた ものは、すぐに えに なるわけでは ありません。ブラウザが、もじと いろと おおきさを くみあわせて、がめんに かきます。

ぜんぶ とどくのを またずに、とどいた ぶんから つくりはじめます[10]。はじめの あいてなら、いって もどるのは、まず 3かい。おなじ あいての ファイルは、つないだ ままで もらえます。

届いたバイトは、まだ画面ではありません。ブラウザーは、HTMLを読んでページの構造(DOM)を、CSSを読んで見た目のルール(CSSOM)を作ります。2つを合わせて、描画のための木を作り、大きさと位置の計算(レイアウト)、画面への描き込み(ペイント)へ進みます[10]

HTMLの解析は、全部届くのを待たず、届いた分から始まります。CSSを待つあいだも、HTMLの解析とダウンロードは止まりませんが、通常のJavaScriptの実行は待たされます[10]

遅れて届いた画像などで、レイアウトが計算し直されることもあります[10]。1章の目安(いちばん大きな部分が見えるまで)は、こうして組み立てられたページの、その時刻を測ります[2]。冒頭の問いに戻ると、初めての相手なら、最初の1バイトまでに3往復(DNSを除く)です。同じ相手のファイルは、つないだ接続を使い回せます。ページを見るまでの1秒には、この往復と、ブラウザーの組み立ての両方が入っています。

届いたバイトは、まだ画面ではない。ブラウザーは、HTMLを読んでDOM(ページの構造の木)を、CSSを読んでCSSOM(見た目のルールの木)を作る。2つを合わせてレンダーツリーを作り、レイアウト(大きさと位置の計算)、ペイント(画素への描画)へ進む[10]

HTMLの解析は、全部届くのを待たず、届いた分から始まる。CSSを待つあいだも、HTMLの解析とダウンロードは止まらないが、通常のJavaScriptの実行は待たされる[10]

遅れて届いた画像などで、レイアウトが計算し直されることもある[10]。1章のLCPは、こうして組み立てられたページで、いちばん大きな部分が描かれた時刻を測る[2]。冒頭の問いに戻ると、初めての相手なら、最初の1バイトまでに3往復(DNSを除く)。同じ相手のファイルは、つないだ接続を使い回せる。「1秒」には、この往復と、ブラウザーの組み立ての両方が入っている。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの 人と いっしょに、ブラウザの「デベロッパーツール」の「ネットワーク」を ひらいて、ページを よみこみなおして みましょう。ファイルが、ながい ぼうの ならびで 見えます[16]

さがして みる

  • ながい ぼうは、どの ファイルかな。もういちど ひらいたとき、みじかく なった ぼうは あるかな。
おねがい

ひらいた がめんは、おうちの 人と いっしょに 見て ください。しゃしんを ネットに のせたり、ほかの 人に おくったり しないで ください。

ブラウザーの開発者ツールで、ページの往復を見ることができます。「ネットワーク」のタブを開いて、ページを再読み込みしてみましょう。家の人といっしょにやってください。

タイミングを見る

  • 1つのファイルを選んで、「タイミング」を見る。DNSの検索、接続(TCPとTLSのあいさつを含みます)、サーバーの返事を待つ時間などが、分けて表示されます[16]
  • 2回目に開いたとき、どの欄が短くなるか、なくなるかを見る。この章で数えた往復のうち、消えるものがあるはずです。
安全のために

ネットワークの記録には、ログインの情報が入っていることがあります。画面の写真をSNSなどに載せたり、記録をファイルに書き出して他の人に渡したりしないでください。

原典で確かめる

  • RFC 8446の2.3節で、0-RTTの再送攻撃の注意を読む。1往復を減らす代わりに、何を手放したのかが書かれています[6]
  • Web Almanacの「Page Weight」の章で、リクエスト数の年ごとの変化を見る。2025年の中央値のほか、過去の年の値と比べられます[8]

自分のブラウザーで確かめる

  • 開発者ツールの「ネットワーク」で、1つのリクエストの「タイミング」を見る。DNS Lookup、Initial connection、Waiting(TTFB)、Content Downloadの内訳が出る[16]。国内のサイトと海外のサイトで、Initial connectionの長さを比べたとき、2章の往復の計算と合うか。2回目に開くと、どの欄が短くなるか。
安全のために

ネットワークの記録には、ログインの情報が入っていることがあります。画面の写真をSNSなどに載せたり、記録をファイルに書き出して他の人に渡したりしないでください。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:標準を決める文書(RFC)、Nielsen Norman Group、web.dev、MDN、Chrome for Developers、HTTP Archive、Cloudflareのブログ、JPNIC、天文学辞典、Googleの論文のページを使いました。英語の資料は、内容を日本語で説明しています。このメモは、これらの団体のものではなく、個人のまとめです。距離と時間の数字は、緯度・経度と光の速さから求めた目安です。

  1. Jakob Nielsen「Response Times: The 3 Important Limits」Nielsen Norman Group(1993年)。 https://www.nngroup.com/articles/response-times-3-important-limits/ (0.1秒・1秒・10秒の目安と、もとの研究。英語の資料)
  2. web.dev「Largest Contentful Paint (LCP)」(Google)。 https://web.dev/articles/lcp (いちばん大きな部分が見えるまでの時間と、2.5秒の目安。英語の資料)
  3. 天文学辞典「屈折率」(日本天文学会、2019年6月更新)。 https://astro-dic.jp/refractive-index/ (屈折率の定義と、ガラスの値。光の速さの計算のもと)
  4. JPNIC ニュースレター No.51「インターネット10分講座:DNSキャッシュ」(2012年8月)。 https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No51/0800.html (DNSの問い合わせの順番と、キャッシュとTTL)
  5. RFC 9293「Transmission Control Protocol (TCP)」(2022年)。 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9293 (TCPの3ウェイハンドシェイク。英語の資料)
  6. RFC 8446「The Transport Layer Security (TLS) Protocol Version 1.3」(2018年8月)。 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc8446 (1往復の取り決めと、0-RTTの再送攻撃の注意。英語の資料)
  7. Cloudflare「A Detailed Look at RFC 8446 (a.k.a. TLS 1.3)」(Cloudflareのブログ、2018年8月)。 https://blog.cloudflare.com/rfc-8446-aka-tls-1-3/ (TLS 1.2は2往復、TLS 1.3は1往復。標準になるまでの経緯。企業のブログ。英語の資料)
  8. HTTP Archive「Web Almanac 2025:Page Weight」(2026年1月公開。データは2025年7月)。 https://almanac.httparchive.org/en/2025/page-weight (1ページのリクエスト数の中央値。英語の資料)
  9. RFC 9113「HTTP/2」(2022年)。 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9113 (HTTP/1.1の複数接続と、HTTP/2の同時のやりとり。英語の資料)
  10. MDN Web Docs「How browsers work」(Mozilla)。 https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/Performance/Guides/How_browsers_work (ページが描かれるまでの流れ。英語の資料)
  11. RFC 9000「QUIC: A UDP-Based Multiplexed and Secure Transport」(2021年)。 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9000 (QUICがUDPの上に作られた理由。英語の資料)
  12. Cloudflare「HTTP/3: the past, the present, and the future」(Cloudflareのブログ、2019年9月)。 https://blog.cloudflare.com/http3-the-past-present-and-future/ (QUICが、TCPの3ウェイハンドシェイクとTLS 1.3の取り決めを一体にすること。企業のブログ。英語の資料)
  13. Adam Langley ほか「The QUIC Transport Protocol: Design and Internet-Scale Deployment」SIGCOMM 2017(Google Research)。 https://research.google/pubs/the-quic-transport-protocol-design-and-internet-scale-deployment/ (QUICが2013年の実験から始まったこと。英語の資料)
  14. RFC 9114「HTTP/3」(2022年)。 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9114 (HTTP/2の止まりと、QUICの上のHTTP。英語の資料)
  15. MDN Web Docs「CDN」(Mozilla、用語集)。 https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Glossary/CDN (コピーを近くに置く仕組みと、距離と遅延の関係。英語の資料)
  16. Chrome for Developers「Network features reference」(Google)。 https://developer.chrome.com/docs/devtools/network/reference (ネットワークのタイミングの内訳。英語の資料)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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