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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ちょうりつしは どうして 音を わざと ずらして あわせるの?

調律師はなぜ、音を「ぴったり」に合わせないのか:毎秒7回のうなりを残し、高音は高めに伸ばす

ピアノ調律は理論値に合わせる作業ではない:毎秒約7回のうなりを数え、硬い弦のために音階を「伸ばす」理由

分野:技術

ピアノの ちょうりつしは、音を けいさんどおりの 数字に ぴったり あわせるとは かぎりません。高い 音は すこし 高めに、ひくい 音は すこし ひくめに あわせる やり方が あります。けいさんが ただしいのに、どうして わざと ずらすのでしょう。

この メモを よむと、ちょうりつしが 耳で きく「うなり」の しくみと、音を のばして あわせる わけが わかります。

平均律のファとラを重ねると、毎秒およそ7回の「うなり」が残ります。調律師はそのうなりを消さず、回数を手がかりに音を整えていきます。しかも高い音は理論値より高く、低い音は低めになるように「伸ばして」合わせます。計算が正確なら、なぜわざわざずらすのでしょうか。

この記事では、調律師が耳で聞いている「うなり」の正体と、本物の弦が計算どおりに鳴らない理由が分かります。

ピアノの調律は、各音を音律の理想の周波数に合わせ込む作業だと思われがちだが、平均律のファとラを重ねると毎秒約7回のうなりが残る。調律師はこれを消さず、回数を手がかりに音を決める。しかも実際の調律では、高音は理論値より高く、低音は低く「伸ばして」合わせる。計算が正確なら、なぜ理論値をあえて外すのか。

この記事では、うなりの回数を手がかりに音を決める手順と、弦の硬さが計算を狂わせる仕組み、そして伸ばす幅の大きさが分かる。

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1. きかいで ぜんぶ ぴったりに すると、どう なるの?

1. 機械の針を全部「ぴったり」にすると、響きはどうなる?

1. 1音ずつ理想値に合わせても、なぜ響きが整わないのか

音の 高さを はりで しめす きかいが あります。88この 音を、この きかいで ぜんぶ ぴったりに あわせれば、ピアノは かんぺきに なりそうです。

ところが ちょうりつの 話を する ページでは、ちょうりつの ねらいは、1つ1つの 音を 数字に あわせる ことでは ないと かいて あります。いくつかの 音を いっしょに ならした とき、音が ずれて きこえる ところを みんなで すこしずつ ならして、聞いて いやな 気もちが しない ひびきに する ことが ねらいだそうです。

どの 音の うなりを どれだけ のこすかには はばが あって、ちょうりつしが 聞きながら きめます。日本でも 外国でも、おんさと ちょうりつしの 耳で あわせるのが ふつうだと いいます。

では 耳は、なにを 聞きわけて いるのでしょう。てがかりは「うなり」です。

音の高さを針で示すチューナーを使って、88鍵の音を1つずつぴったり合わせれば、ピアノ全体も正確になりそうです。ところが調律の解説では、調律の目的は各音を音律の理想値にできるだけ合わせることではないとされています。複数の音を同時に弾いたときに「うなり」として現れるゆがみを全体に分散させ、聞いて不快でない響きにすることが目的だと書かれています[1]。この目的に唯一の正解はなく、どの音のうなりをどれだけ残すかには幅があり、調律師が聞きながら決める、とも説明されています。

西欧や日本では、音叉と調律師の耳で調律するのが主流だそうです[2]。1音ずつ理想値に設定しても、音の強さで高さの感じ方が変わること、倍音が変化すること、弦どうしが共鳴することを考えると、楽器全体の響きは今ひとつになるからです。ただし、ピアノ用のチューナーやアプリがないわけではなく、耳が大きな役割を担うという程度の話です。

では、調律師の耳は何を聞き分けているのでしょうか。手がかりになるのが「うなり」です。

88鍵の1音ずつを、針で高さを示すチューナーでぴったり合わせれば、ピアノ全体も正確になる。そう考えるのは自然だが、調律の解説を読むと話はそう単純ではない。調律の目的は、各音を音律が決めた理想の周波数に近づけること自体ではなく、複数の音を同時に弾いたときに「うなり」として現れるゆがみを全体に分散させ、聞いて不快でない響きにすることだとされる[1]。しかもこの目的に唯一の正解はなく、そこに職人の判断が入りこむ余地がある、と同じ解説は述べる[1]。どの音のうなりをどれだけ残すかには幅があり、調律師が聞きながら決めるということだ。

西欧や日本では、音叉と調律師の耳で調律するのが主流だという[2]。理想値に1音ずつ設定しても、音の強さで高さの感じ方が変わること、倍音が変化すること、弦どうしが共鳴することまで考えると、楽器全体の響きは今ひとつになるからだ。ただし、ピアノ用のチューナーやアプリが使われないという意味ではなく、耳が大きな部分を担う、という程度の話である。

では、耳は何を聞き分けているのか。調律師が手がかりにするのが、2つの音を重ねたときに生じる「うなり」である。

2. 「うなり」って なに? 2つの 音を かさねると

2. 「うなり」とは何か:2つの音のずれが、音の大きさのゆれになる

2. うなりの回数は何で決まるのか:整数倍の基音と、平均律の例

すこしだけ ちがう 高さの 2つの 音を いっしょに ならすと、「ウォン、ウォン」と、音が 大きく なったり 小さく なったり します。これが「うなり」です。

うなりの 回数は、2つの 音が 1びょうに ふるえる 回数の ちがいと おなじです。たとえば、1びょうに 440回 ふるえる 音と 444回の 音なら、1びょうに 4回 うなります。ずれが 小さいほど ゆっくりで、ぴったり あうと うなりは きえます。

ふしぎな ことに、ふるえる 回数が ちょうど 2ばいの 音どうしは、いっしょに ならしても うなりが きこえにくく なります。220回と 440回の ような くみあわせです。

それなら、うなりを ぜんぶ けせば ちょうりつは おわり…、では ないのです。ピアノでは、うなりを わざと のこす くみあわせが あります。

わずかに高さの違う2つの音を同時に鳴らすと、音が大きくなったり小さくなったりを繰り返します。これが「うなり」です。1秒あたりのうなりの回数は、2つの音の周波数(1秒間に弦が振動する回数)の差と同じになります。440ヘルツと444ヘルツなら、毎秒4回です(私が置いた単純な例です)。ずれが小さいほどゆっくりになり、ぴったり合えば消えます。

対照的なのが、整数倍の関係にある音です。220ヘルツと440ヘルツのように、片方がちょうど2倍の周波数なら、同時に鳴らしてもうなりは目立たず、きれいに調和した音になりやすくなります[3]。整数倍からずれるほど、うなりとして聞こえやすくなります。ただしこれは基音どうしの話で、ピアノでは倍音どうしのずれがうなりになることもあります。

では、うなりを全部消せばよい調律になるのでしょうか。実は、ピアノでよく使われる平均律では、うなりが残る組み合わせが出てきます。たとえば長3度のファ(F)とラ(A)では、ファの5倍音とラの4倍音がわずかにずれ、その差がうなりとして聞こえます[3]。純正律という別の合わせ方なら一致してうなりが消えるので、平均律は、うなりが出ることを前提にした合わせ方だといえます[3]。

消せないうなりを、調律師はどう扱うのでしょうか。

2つの音の周波数がわずかに違うと、合成された音は強まったり弱まったりを繰り返す。これが「うなり」で、1秒あたりの回数は、2音の周波数の差に等しい。440Hzと444Hzなら毎秒4回になる(私が置いた単純な例)。差が小さいほどゆっくりで、一致すれば消える。

対照的に、220Hzと440Hzのように一方が整数倍の周波数をもつ組み合わせは、同時に鳴らしてもうなりは目立たず、調和した響きになりやすい[3]。整数倍からずれるほど、うなりとして聞こえやすくなる。ただしこれは基音どうしの話で、ピアノでは倍音どうしのずれがうなりになることがある。

ところが、うなりを全部消すことがゴールなら、平均律は成り立たない。平均律の長3度、たとえばF4(349.2Hz)とA4(440Hz)では、Fの5倍音(約1746Hz)とAの4倍音(1760Hz)が一致せず、差は約14Hz、つまり毎秒約14回のうなりが生じる。純正律なら両者は一致して消える[3]。この資料は、平均律自体がうなりを前提にした合わせ方だと述べている。

この14回は、高いほうのF4・A4の例である。実際に調律で数える音域に近い、1オクターブ下のF3(約174.6Hz)とA3(220Hz)で同じ計算をすると、F3の5倍音が約873Hz、A3の4倍音が880Hzで、差は約7Hz、毎秒7回ほどになる(この検算は私が行った)。周波数が半分なら、差も半分になる。うなりは音域で速さが変わる。

消えないうなりを前提にするなら、調律師はそれを敵とみなさず、使うはずだ。実際にはどう使うのか。

3. ちょうりつしは、うなりを かぞえて 音を きめる

3. 周波数ではなく、うなりの回数を数えて音を決めていく

3. 約230本の弦を、うなりの回数と3本の弦のそろえ方で整える手順

ピアノには、げんが 230本ほど あります。その ぜんぶを、きかいの 数字だけで あわせるのでは ありません。ちょうりつしは、うなりが 1びょうに なん回に なるかを きいて、音を きめて いきます。

はじめは、おんさの 440回の 音と、ピアノの「ラ」を いっしょに ならして、うなりが きえるように あわせます。そこから、となりあう 音を かさねて、うなりの 回数が きめた 数に なるように、1つずつ ふやして いきます。たとえば ファと ラを かさねると、1びょうに 7回ほどです。7回は、手を 1びょうに 7回 たたく はやさです。

中ほどの 音が きまれば、おなじ 音を 高い ほうと ひくい ほうへ ひろげて いきます。

ピアノは、中くらいから 高い 音まで、1つの 音に げんが 3本 あります。まん中の 1本を きめたら、ほかの 2本を まん中に あわせて、うなりを けします。1本ずつ フェルトで 音を とめて、きき わけるのです。

さて、ここまでの けいさんは「げんは ふつうの ばねの ような もの」と かんがえて いました。ほんとうの げんは、そうなのでしょうか。

調律師は、個々の音の周波数より、うなりの回数に着目して音をそろえていきます。周波数どおりに基音だけをそろえると、それにともなう倍音が合わず、全体の響きとしては収拾がつかなくなるためです[5]。ピアノ1台には約230本の弦があり、弦1本あたり約80キロの張力がかかっています[4]。これを1本ずつ整えるので、手がかりは決まった手順になります。

まず、音叉をたたいて440ヘルツを出し、ピアノのラとのうなりを聞き、うなりが出ないように合わせます(目標が440ヘルツの場合です)[5]。そこから、完全5度や4度、長3度といった音の組み合わせで、うなりの回数が決まった数になるよう割り振っていきます。例として、レとソの組み合わせは毎秒0.7回ほど、ファとラの長3度は毎秒7回ほどが挙げられています[5]。0.7回は約1.4秒に1回、7回は約0.14秒に1回の計算です(私の検算)。1オクターブあまりの中音域で割り振り、その基準を全音域へオクターブごとに広げていきます[5]。この数字は目安で、調律師ごとの流儀にも幅があるとされます。

ピアノは中・高音域で1つの音に3本の弦があります(低音域は太い1〜2本)。中央の弦が決まったら、左右の弦を合わせる番です。片方をフェルトで消音しながら、中央の弦にもう一方を合わせ、うなりを消します[6]。3本が同じ高さにそろって、はじめて1つの音が出来上がります。

ここまでの計算は、弦が理想どおりに鳴る前提でした。本物の弦は、その前提どおりでしょうか。

調律師は、個々の音の周波数よりも、うなりの回数に着目して音をそろえる。周波数どおりに基音だけをそろえても、それにともなう倍音が合わず、全体の響きとしては収拾がつかなくなるためだ[5]。ピアノ1台にはおよそ230本の弦があり、1本あたり約80キロの張力がかかるという楽器店の説明がある[4]。80キロ×230本は約18トンになる(私の検算)。弦全体で、小型トラックの荷台が何台も要るほどの力を受けていることになる。

手順はこうなる。音叉で440Hzを出し、ピアノのラとのうなりが出ないように合わせる(目標の基準が440Hzの場合)。そこから、完全5度、4度、長3度の組み合わせで、うなりの回数が決まった数になるよう割り振る。例として、レとソは毎秒0.7回ほど、ファとラの長3度は毎秒7回ほどが示されている。1オクターブあまりの中音域で基準を作り、オクターブごとに全音域へ広げていく[5]。先ほどの検算で出た7回は、この数字と一致する。ただし回数は調律師ごとの流儀で幅があり、目安として読むべきだ。

中・高音域では1音に3本の弦があり、低音域は太い1〜2本になる。中央の弦が決まったあと、左右の弦を、片方をフェルトで消音しながら中央の弦に合わせ、うなりを消す[6]。3本が同じ高さになって初めて、1つの音として響く。

ここまでの計算は、弦が理想の弦として振る舞う前提だった。しかし本物の弦は鋼の線で、硬い。その硬さは、計算にどんなずれを持ちこむのか。

4. かたい げんだと、どうして 高い 音を 高めに するの?

4. 本物の弦は硬い:高い音は高めに、低い音は低めに「伸ばす」理由

4. インハーモニシティで、ピアノの音階を伸ばす

ピアノの げんは はがねで、すこし かたい ものです。かたい げんは、もとの 音に かさなる 小さな 音(ばいおん)が、2ばい、3ばいよりも すこし 高く なります。これを「インハーモニシティ」と いいます。高い ばいおんほど、ずれは 大きく なります。

すると、けいさんどおりの 数字に あわせても、うなりが けいさんどおりに なりません。

そこで ちょうりつでは、オクターブを 2ばいより すこしだけ ひろく あわせます。高い 音は けいさんより 高く、ひくい 音は けいさんより ひくく なります。「のばす」と いいます。のばし方は、ピアノごと、音の 高さごとに ちがいます。

どれくらい のばすかは、きまった 数字では ありません。ピアノを ちょうりつする 人が、耳で たしかめながら きめます。

ある じっけんでは、ばいおんを ずらした ピアノらしい 音を 耳で きいて あわせて もらいました。すると、のばした 音に にた ならびに なりました。耳も、かたい げんの くせを かんじて いるのかも しれません。

のばした 音の ならびは、そもそも どの 高さの「ラ」から はじまって いるのでしょう。その「ラ」の 話を します。

実際の弦は、理想の弦と違って硬さがあります。そのため、高い倍音ほど整数倍よりわずかに高くずれます(インハーモニシティ)。ずれは高次の倍音ほど大きくなります[7]。弦の硬さのせいで、計算どおりの周波数に合わせても、うなりが計算どおりになりません。

そこで調律では、オクターブを2対1よりわずかに広く合わせる「オクターブ伸長」(ストレッチ)が行われます。高音は理論値より高く、低音は理論値より低くなります。伸ばし方は楽器ごと、音域ごとに違い、全音域での伸びは、英語版Wikipediaの解説に「±35セント程度のこともある」という目安が出ています[8]。1セントは半音の100分の1なので、35セントは半音の約3分の1です。440ヘルツの音を35セント高くすると約449ヘルツになります(2の1200分の35乗で私が計算しました)。この±35は目安で、固定の値ではありません。

伸ばすのは弦のせいだけでしょうか。フィンランドのアアルト大学の研究では、調律師15人とオーケストラ奏者18人に、倍音がずれた「ピアノらしい音」を聞いて調律してもらいました。すると、聞いて調整したこの実験では、その調律曲線は、伸ばし方を表すレールズバック曲線に似て、倍音がきれいな音のときとは有意に違ったと報告されています[9]。調律の考え方では、伸びた音階を弦のインハーモニシティで説明するのが通説だともされます。耳で合わせても弦の癖に沿う結果になった、という1つの研究です。

伸ばした音階を支える基準の「ラ」は、いつ、誰が決めたのでしょうか。

実際の弦は硬さをもつため、高い倍音ほど整数倍からずれやすく、わずかに高くなる。この現象がインハーモニシティで、ずれは高次の倍音ほど大きい[7]。その結果、計算どおりの周波数に基音を合わせても、うなりの回数は計算どおりにならない。第2章でF3とA3の5倍音・4倍音の差を7回と置いたのは、弦が理想的な場合の値であって、実際の弦ではここからずれる。

この食いちがいに対応して、ピアノの調律ではオクターブを2対1よりわずかに広く合わせる、オクターブ伸長(ストレッチ)が行われる。高音は理論値より高く、低音は低くなり、伸ばし方は楽器ごと・音域ごとに異なる。全音域での伸びは、±35セント程度のこともあるという目安が英語版Wikipediaの解説に出ているが、二次資料の目安で、固定値ではない[8]。1セントは半音の100分の1で、35セントは半音の約0.35倍。440Hzを35セント上げると、440×2^(35/1200)≒449Hzで、約9Hzの違いになる(私の検算)。

伸ばす理由は、弦の硬さだけとは限らない。アアルト大学のJaatinenとPätynen(2022、JASA)は、調律師15人とオーケストラ奏者18人に、聞こえ方を手がかりに音を調律させた。倍音をずらした「ピアノらしい」音で作られた調律曲線はレールズバック曲線に似ており、倍音がきれいにそろった音の曲線とは有意に違った[9]。同論文は、ピアノ調律の考え方として、伸びた音階を弦のインハーモニシティで説明するのが通説だと述べる。つまり、1つの研究の範囲では、耳が決めた結果にも弦の性質が映っていたことになる。

ただし、この実験は協力者が聞いて合わせた結果であり、現場の調律師全員の手順を示すものではない。計算と耳の食いちがいを埋めるのが調律師の仕事だとして、その基準になるラの高さは、いつどのように決まったのか。

5. もとに なる「ラ」の 高さは、いつ きまったの?

5. 基準の「ラ」はいつ決まったのか:A440と4月4日

5. 基準音A=440Hzの標準化:1939年のロンドン会議から1975年のISOまで

ちょうりつの もとに なる 音は、「ラ」で、1びょうに 440回 ふるえる 高さです。ラは えいごで Aと かきます。

この 高さに みんなで そろえる ことに なった きっかけは、1939年の 5月です。ロンドンで、フランスや ドイツ、オランダ、イタリア、イギリスの 代表が あつまって、440回で あいました。そのあと 1955年と 1975年に、せかいの きまり(ISO)に つながりました。

それまでは、国や 時代で ばらばらでした。1860年代の フランスでは 435回、イギリスの ちょうりつしの 1899年の ラは 439回、と いう れいが あります。もし 440回の 音と 435回の 音を いっしょに ならすと、1びょうに 5回 うなります。

4月4日は「ピアノちょうりつの 日」です。ラは Aで、4月は えいごで April。どちらも Aで はじまり、440と 4が ならぶ ことからだそうです。1993年に、世界の ちょうりつしの きょうかいが きめました。

調律の出発点は、音叉のラです。この基準が440ヘルツで広く共有されるようになったのは、案外新しいことです。1939年5月、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、イギリスの代表がロンドンの放送会館に集まり、A=440ヘルツを基準とする合意をしました。その後、1955年にISO勧告R16、1975年にISO 16へとつながっていきます[10]。

それ以前は、国や時代によって基準がまちまちでした。1860年代のフランスではA=435ヘルツ、1899年のイギリスのピアノ調律師はA=439ヘルツ、といった例があります[10]。440と435を同時に鳴らせば、周波数の差は5なので、毎秒5回のうなりが出る計算です(私の検算)。数ヘルツの違いでも、耳に聞こえるうなりになります。

ところで、4月4日は「ピアノ調律の日」です。基準のA音が4月(April)の頭文字にあたり、周波数が440ヘルツであることから、国際ピアノ製造技師調律師協会(IAPBT)が1993年に定めたとされます[11]。

基準の「ラ」から、うなりを数えて伸ばす。これを、自分の耳でたしかめることはできないでしょうか。

調律の出発点は、音叉が出すラ(A)である。この基準がA=440Hzとして標準化された経緯は、思いのほか新しい。1939年5月、ロンドンの放送会館にフランス、ドイツ、オランダ、イタリア、英国の代表が集まってA=440Hzを基準とする合意をし、それが1955年のISO勧告R16、1975年のISO 16へとつながった[10]。

それ以前の基準は、国や時代で違った。フランスでは1860年代にA=435Hz、英国のピアノ調律師の間では1899年にA=439Hzとされた例がある[10]。440Hzと435Hzを同時に鳴らせば、差は5Hzなので毎秒5回のうなりが出る(私の検算)。わずか数Hzの違いが、聞き取れるうなりになる。第2章で見たとおり、うなりは周波数の差そのものだからだ。

4月4日が「ピアノ調律の日」とされる由来も、この440Hzにある。基準のA音がApril(4月)の頭文字であり、周波数が440Hzであることから、国際ピアノ製造技師調律師協会(IAPBT)が1993年に定めたと紹介されている[11]。

基準が決まれば、そこから先は、うなりを数えて音を割り振り、弦の硬さに合わせて伸ばす作業になる。その一端は、自宅でも体験できないか。

6. うなりを じぶんの 耳で ききたい

6. うなりを自分の耳で聞き、回数を手で数えてみる

6. うなりの回数を手で数え、リコーダーで聞き、原資料を読む

けいさんして みよう

「ラ」の 440回の 音と、444回の 音を ならしたら、1びょうに なん回 うなるでしょうか。ひき算を して みましょう。(答えは 4回です。)

手で かぞえて みよう

つくえを 1びょうに 7回、トントントンと たたいて みましょう。ファと ラの うなりの はやさです。1回は 1びょうの 7分の 1しか ありません。とても はやい ゆれです。

耳で ききたい とき

友だちと 2人で、リコーダーで おなじ ゆびづかいで いっしょに ふきます。1人が すこしだけ 高く なるように ちょうせつ すると、うなりが きこえる ことが あります。きこえなくても だいじょうぶです。うまく いかなければ、上の けいさんで たしかめれば じゅうぶんです。大きな 音で 長く ふくのは やめましょう。

計算してみる

ラの440ヘルツと、444ヘルツを同時に鳴らしたら、うなりは毎秒何回でしょうか。周波数の引き算で、答えは4回です。さらに、毎秒7回(ファとラの長3度の目安)なら、1回あたり約0.14秒です。机を1秒に7回たたくと、その速さの感覚がつかめます。

リコーダーで聞く

友だちと2人でリコーダーを持ち、同じ指づかいで同時に吹きます。片方が少しだけ高くなるよう調整すると、うなりが聞こえることがあります。聞こえなくても失敗ではありません。できなければ、上の計算で回数を確かめれば十分です。耳が痛くならないよう、小さめの音で、長くは吹かないでください。

日本語で読める資料

調律の知識をまとめた研究ページ[1][3][5]は日本語で読めます。うなりの数え方の計算例と、中音域の調律の手順が載っています。

計算と体験

440Hzと444Hzなら毎秒4回、F3とA3の5倍音・4倍音の差なら毎秒約7回(周期は約0.14秒)。机をその間隔でたたくと、数字が速さとして実感できる。耳で確かめるなら、リコーダー2本を同じ指づかいで小さめの音で吹き、1人が音をわずかに高くなるよう調整する。うなりが聞こえることがあるが、聞こえなくても、計算で確かめれば足りる。

原資料の読み方

日本語で読めるのは、調律の目的を述べたページ[1]、うなりの回数による調律の計算[3]、中音域の中央の弦[5]と左右の弦[6]の手順で、いずれも個人運営の研究サイトにある。伸長と基準音の経緯は、英語のWikipediaの項目[7][8][10]が出発点になり、伸長と人の聴覚の関係はAalto大学の論文要旨[9]に当たれる。伸ばす幅の目安±35セントは英語の解説にある数字なので、英語の資料は大人と一緒に読み、日本語の調律師団体やメーカーの資料と見比べるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. 音楽研究所「調律の知識」 https://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/Tuning/piano_tuner.html (調律の目的)
  2. 音楽研究所「調律と音律」 https://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Other/Trivia/tuning.html (音叉と耳による調律)
  3. 音楽研究所「うなりの回数による調律」 https://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/Tuning/haul.html (うなりと平均律)
  4. 島村楽器「ピアノのメンテナンス」 https://www.shimamura.co.jp/update/?p=75780 (弦の本数と張力)
  5. 音楽研究所「中音域の中央の弦の調律」 https://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/Tuning/middle_tuning.html (うなりの回数で割り振る手順)
  6. 音楽研究所「中音域の左右の弦の調律」 https://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/Tuning/middle_side_tuning.html (3本の弦をそろえる手順)
  7. Wikipedia「Inharmonicity」 https://en.wikipedia.org/wiki/Inharmonicity (硬い弦の倍音のずれ)
  8. Wikipedia「Stretched tuning」 https://en.wikipedia.org/wiki/Stretched_tuning (オクターブ伸長と±35セントの目安)
  9. Jaatinen & Pätynen (2022) Effect of inharmonicity on pitch perception and subjective tuning of piano tones, JASA https://research.aalto.fi/en/publications/effect-of-inharmonicity-on-pitch-perception-and-subjective-tuning/ (伸ばした調律と聴き方の研究)
  10. Wikipedia「A440 (pitch standard)」 https://en.wikipedia.org/wiki/A440_(pitch_standard) (440Hzの標準化の経緯)
  11. ブルーバックス「今日はこんな日」 https://gendai.media/articles/-/63789 (ピアノ調律の日)

なおした ところ

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