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ハイオクは つよい ガソリン なの? ── 「火の つきにくさ」の ひみつ

ハイオクは「強い」ガソリンではない? ── エンジンが選ぶ「火のつきにくさ」の話

ハイオクの正体は「自己着火しにくさ」── オクタン価・点火時期の制御・価格差の理由

分野:技術

ガソリンスタンドの ハイオクは、「パワーが つよい ガソリン」だと おもって いませんか。じつは、ハイオクの 大きな とくちょうは、火が つきにくい ことだと いわれます。

火が つきにくいのに、どうして えらばれるのでしょう。レギュラーとの ちがいと、ねだんの ちがいが わかります。

ハイオクは「パワーの強いガソリン」と思われがちですが、ハイオクとレギュラーを分ける数字(オクタン価)が表しているのは、強さではなく、ノッキングという異常な燃え方の起こしにくさです。つまり、火のつきにくさに近い性質です。

火がつきにくいガソリンが、なぜエンジンに必要なのでしょうか。指定外のガソリンを入れたときの車の守り方や、1リットルあたり約10円といわれた価格差の理由まで分かります。

ハイオクとレギュラーを分けるオクタン価は、出力の強さではなく、ノッキング(異常燃焼)のしにくさを表す指標だ。JIS K 2202ではレギュラー相当が89以上、ハイオク相当が96以上と定められている[1][2]。

では、火がつきにくいことがなぜ価値になるのか。高圧縮比のエンジンとの関係、指定外の燃料を入れたときの点火時期の制御、約10円といわれた価格差の理由が分かる。

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1. ハイオクは、パワーが つよいの?

1. 「パワーが強いガソリン」ではなかった

1. オクタン価が表すのは出力ではない

スタンドの ポンプには、「レギュラー」と「ハイオク」が ならんで います。ハイオクの ほうが ねだんが 高いので、「その ぶん つよいのかな」と おもいますよね。

ところが、ハイオクと レギュラーを わける 数字(オクタンか)は、パワーの つよさを あらわして いません。あらわして いるのは、「ノッキング」という わるい もえ方を しにくい かどうか、です[1]。

ノッキングは、ガソリンが 思った タイミングと ちがって もえて しまう ことです。では、どうして ガソリンの 火の つきにくさが、車に とって 大じなのでしょうか。

ガソリンスタンドでは、ハイオクがレギュラーより高く売られています。では、値段が高いぶん、パワーも強いのでしょうか。

ところが、この2つを分けるオクタン価という数字が表しているのは、出力の強さではありません。ノッキングという異常燃焼の起こしにくさ、つまりアンチノック性の指標です[1]。

火のつきにくさに近い性質、と考えると、ハイオクの見え方が変わります。燃えやすいガソリンのほうが、エンジンには都合がよさそうなのに、なぜ燃えにくいほうが選ばれるのでしょうか。

オクタン価は、イソオクタンを100、ノルマルヘプタンを0と定め、両者を混ぜた標準燃料の中のイソオクタンの容積百分率で表す[1]。基準になっているのは出力ではなく、ノッキングという異常燃焼の起こしにくさ(アンチノック性)である[1]。

したがって、オクタン価が高いガソリンは「馬力が出る燃料」ではなく、「圧縮・燃焼の途中で自己着火しにくい燃料」と読むほうが近い。では、なぜそれが必要になるのか。エンジン側の事情から見ていく。

2. 火が つきにくい ほうが、エンジンは たすかる

2. 燃えにくいほうが、エンジンに都合がよいわけ

2. 高圧縮比エンジンとノッキング

かけっこを おもいうかべて ください。「よーい、ドン」の ごうずの まえに、とび出して しまう人が いたら、フライングです。エンジンの 中でも、にた ことが おきます。

ほんとうは、プラグという ぶひんが 火花を 出して、そこから 火が ひろがって いく とおりに、ガソリンが もえて ほしいのです。ところが、火が とどく まえに、のこりの ガソリンが 自分で もえ出して しまう ことが あります。これが ノッキングです。

ただし 本とうは、ガソリンが 走る わけでは ありません。ぎゅっと 力を かけた エンジンほど、「火が とどく まえの フライング」が おきやすく、火の つきにくい ガソリンが ひつようになる、という はなしです[1]。

では、そのための 数字は、どんな ふうに きまって いるのでしょうか。

エンジンは、決めた瞬間にプラグの火花で火をつけ、その火が広がっていくことでガソリンを燃やす機械です。ところが、火が広がって届く前に、燃え残ったガソリンが自分で燃え出してしまうことがあります。それが異常燃焼のノッキングです。

辞典によると、ガソリンの成分が合わないと、とくに高圧縮比のエンジンでノッキングが起こりやすくなります[1]。ガソリンを強く押しつぶすエンジンほど、自己着火しにくいガソリンが必要になる、ということです。

たとえるなら、かけっこで、前の走者が来る前に次の人が飛び出してしまうようなものです。ただし本当は、ガソリンが走るわけではなく、燃えるタイミングがずれるという話です。

火がつきにくさは、数字でどう決まっているのでしょうか。

高圧縮比のエンジンでは、ガソリンの成分が適さないとノッキングと呼ばれる異常燃焼が起きやすい[1]。エンジンは点火プラグの火花から火炎が広がって混合気を燃やす設計だが、火炎が届く前に未燃の混合気が自己着火すると、この設計から外れる。

そのため、高圧縮比などノッキングしやすい設計のエンジンでは、自己着火しにくい、つまりオクタン価の高い燃料が必要になる[1]。

では、レギュラーとハイオクの境目の数字は、どこにあるのか。次の章で規格と実際の値を見る。

3. 89と 96、ふたつの 数字

3. 規格の「89以上」「96以上」と、実際に売られている値

3. JIS K 2202の下限値と流通値

日本の きまり(JIS)では、オクタンかが 89 いじょうが レギュラー、96 いじょうが ハイオクと される、と 車の ニュースに 書いて あります[2]。

ただ、これは「これより 下は だめ」と いう さかいめの 数字です。じっさいに 売られて いる ガソリンは、レギュラーが 91ほど、ハイオクが 98 いじょうと いわれます[3]。

この 数字は、ひつような ときに、ためす ための エンジンで しらべて きめます。そのくらい、ていねいに はかる 数字です。

では、レギュラーの 車に ハイオクを 入れて いいのか。ハイオクの 車に レギュラーを 入れると どうなるのか。そこが 気に なります。

日本の規格(JIS K 2202)は、オクタン価89以上を「レギュラー」、96以上を「ハイオク」と定めている、と自動車メディアが紹介しています[2]。ただし、これは下限の数字です。

実際に流通しているものは、報道によるとレギュラーが91程度、ハイオクが98以上とされます[3]。規格の下限値と、売られている実際の値は、分けて考える必要があります。

ところで、この数字は試験用の専用エンジンで決められます。人がにおいや色で判断するのではなく、エンジンのノッキングの出方で比べて決めます。

では、指定とちがうほうを入れたら、車の中では何が起きるのでしょうか。

JIS K 2202(自動車ガソリン)は、オクタン価89以上を2号ガソリン(レギュラー)、96以上を1号ガソリン(プレミアム、ハイオク)と規定する、と自動車メディアは伝える(値は二次資料による)[2]。ただし、これは規格の下限であり、報道によると流通品はレギュラーが91程度、ハイオクが98以上とされる[3]。規格値と実測の流通値を混ぜて語ると、数字が食いちがって見える。

なお同じ報道では、欧州のレギュラー相当が基本95RON、ハイオク相当が98RONとされる[3]。日本の規格値もRON(研究法オクタン価)の表記であり、並べるには測定法の表記をそろえる必要があるため、単純に「欧州のほうが高い」とは言い切れない。

オクタン価の測定は、圧縮比などを変えられる標準の試験エンジンで、参照燃料とのノッキングの出方を比べて行う。ここまでが数字の話で、次は、その数字が合わないエンジンで何が起きるかを見る。

4. ちがう ガソリンを 入れると、車は どうなる?

4. 指定とちがうガソリンを入れると、車の中で何が起きるか

4. ノックセンサーと点火時期のリタード制御

オクタンかが ひくい ガソリンを 入れると、ノッキングが おきやすく なります。でも、いまの 車には、ノッキングを かんじる ぶひん(ノックセンサー)が ついて いる ことが あります[4]。

この ぶひんが ノッキングを みつけると、車の コンピューターが、火を つける じかんを 少し おくらせて、エンジンを まもります[5]。

そのかわり、ねんひが わるく なったり、アクセルを ふんでも へんじが にぶく なったり する ことが あると、ほうこく されて います[5]。

だから、「だいじょうぶ」と いいきれません。ながく つかうと 車に よくない ことも あり、メーカーの 中には、指定外の ガソリンで 出た ふぐあいを ほしょうしない ところも あります[4]。まずは 車の とりあつかい せつめいしょで、なにを 入れる 車かを たしかめましょう。

オクタン価の低い燃料を入れるとノッキングが起きやすくなります。それでも、現在の車にはノックセンサーが付いていて、ノッキングを検知するとコンピュータが点火時期を調整する仕組みがある、とJAFは説明しています[4]。

点火時期を遅らせる制御(リタード)が働くと、ノッキングによるエンジンへの負担を抑えます。ただし、燃費が悪くなったり、アクセルを踏んだときの反応が鈍くなったりすると報告されています[5]。

すぐに走れなくなることはまずないとされますが、長く使えば性能低下や故障につながるおそれがあり、メーカーによっては指定外燃料による不具合を保証の対象外としています[4]。「壊れないから大丈夫」ではなく、指定された燃料を使うのが基本です。

では、車を守るために手間のかかっているハイオクは、どうして高いのでしょうか。

低オクタン価の燃料ではノッキングが起きやすいが、現在の車はノックセンサーで検知し、コンピュータが点火時期を調整できる。そのため、すぐに走行へ支障が出ることはまずない[4]。

ただし、この制御は点火時期を遅らせるリタード制御であり、エンジンへの負担は抑えられるものの、燃費の悪化とレスポンスの低下が報告されている[5]。すぐに故障することはまずないが、長期使用では性能低下や故障につながる可能性があり、一部メーカーは指定外燃料による不具合を保証対象外としている[4]。

指定燃料を守る理由は、この「守る仕組み」が万能ではないところにある。では、なぜハイオクは高いのか。

5. ハイオクは、どうして ねだんが 高いの?

5. ハイオクの価格差は、何のコストか

5. 高オクタン価化の処理・清浄剤・銘柄としての販売

ハイオクは、レギュラーより 1リットルで 10円ほど 高いと、むかし、石油会社が 話して いました[6]。いまの ちがいは、これと ちがう ことも あります。

わけは、ふたつ。オクタンかを 高める しごとに おかねが かかる こと。もうひとつは、エンジンの 中の よごれを つきにくくする ざいりょうを 入れて いる こと、です[6]。

オクタンかの 高い せいぶんは、「せっしょくかいしつ」という 方ほうで つくれる、と いわれます。石油から とれる ナフサという 油を、しょくばいを つかって しょり して つくります[7]。

レギュラーは、会社が ちがっても 同じ きかくで つくられ、どこの スタンドでも ほぼ 同じに なるよう、せいぞうされます[3]。

ハイオクがレギュラーより1リットルあたり約10円高い理由について、石油元売り会社(JXTGホールディングス当時)は、オクタン価を高める処理と、エンジン内部の汚れを付きにくくする清浄剤のコストが価格に反映されているため、と説明しています[6]。この約10円は取材当時の目安で、現在の差は固定ではありません。

オクタン価を高める方法の一つが接触改質です。石油から取れるナフサを、白金系の触媒を使って高温で処理し、オクタン価の高いガソリン成分(芳香族炭化水素)をつくる工程です[7]。

一方、レギュラーは各社共通の規格品として、成分に違いが出ないよう精製されると説明されます。ハイオクは各社が銘柄として売るため、価格に上乗せが生じるとされます[3]。ブランドの差が性能の差になるかどうかは、この説明だけでは決められません。

ここまで分かったうえで、自分の車のガソリンを、どう調べればよいでしょうか。

ハイオクがレギュラーより1Lあたり約10円高い理由について、元売り側は、オクタン価を高める処理のコストと、エンジン内部の汚れを付きにくくする合成清浄剤の費用が価格に反映されているため、と説明している(JXTG当時)[6]。この約10円は取材当時の目安であり、現在の差は固定値ではない。

オクタン価を高める工程の代表が接触改質で、直留重質ナフサを白金系触媒を使って高温で処理し、高オクタン価のガソリン成分(芳香族炭化水素)をつくる[7]。

もう1つの要因は流通の形だ。レギュラーは各社共通の規格品として、輸送を融通し合えるよう成分に違いが出ないよう精製されるのに対し、ハイオクは各社が銘柄として販売するため、価格に上乗せが生じるとされる[3]。ブランド差が性能差かどうかは、この説明だけでは決められない。

以上の価格差の説明は、元売り側の説明と報道をもとにしたものである。自分の車に何を入れるかを判断する材料は、次の章で扱う。

6. 自分の 車の 「すきな ガソリン」を しらべよう

6. 自分の車の「指定燃料」を探してみよう

6. 出口 ── 指定燃料の確かめ方と、資料の読みどころ

おうちの 人に、車を 止めて エンジンを 切った あと、ガソリンを 入れる ところの ふたを 開けて もらいましょう。ふたの うらや そばに、「ハイオク」や 「レギュラー」と かいて ある ことが あります。

車は うごいて いない とき、エンジンを とめて から、車の そとから 見ます。ガソリンスタンドの 中では、火を つかわず、スタッフの 人の 言う ことを きいて ください。

見つかったら、ふしぎです。どうして その 車は、その ガソリンを えらんだのでしょう。せつめいしょの 「ガソリン」の ところも 見て みましょう。

家の車や、親戚の車の給油口のふたを見てみましょう。ふたの裏側や近くに、「ハイオク」や「レギュラー」と書いてある車があります。取扱せつめいしょの「燃料」のページにも、同じことが書かれているはずです。

安全のため、見るのは車が止まっていて、エンジンを切ってからにしてください。ガソリンスタンドでは、スタッフの人の指示に従い、火は使わないでください。

見つけたら、考えてみましょう。この車がその指定になっているのは、エンジンの何と関係があるのでしょうか。圧縮比や、ノッキングという言葉を、取扱説明書やメーカーの資料で探してみるのも一つの手です。

身近な確かめ方は、自分の車の給油口の内側表示と、取扱せつめいしょの燃料の項目だ。そこに書かれた指定燃料は、エンジン側の事情(圧縮比など)から決まっている。

資料としては、辞典のオクタン価の項目[1]、JAFの車のトラブル相談[4]が、確かめる範囲が分かりやすい。接触改質[7]は、石油精製の中で高オクタン価の成分をつくる仕組みを読みたい人に向く。規格そのもの(JIS K 2202)の原文にあたると、数字の定義や試験法がさらに分かる。

安全のため、給油口の確認は車を止めてエンジンを切ってから行い、スタンドの中では火気を使わないこと。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

二次資料(辞典・自動車メディア・JAF)が中心。規格原文の確認は有料のため、規格の数字は複数の資料の一致で確かめた。

  1. コトバンク「オクタン価」。https://kotobank.jp/word/オクタン価 (オクタン価の定義、高圧縮比エンジンとノッキング)
  2. くるまのニュース(JIS規格の記述)。https://kuruma-news.jp/post/815104 (JISの89以上・96以上について)
  3. ベストカーWeb(ガソリンの真実)。https://bestcarweb.jp/?p=43008 (流通しているオクタン価、欧州の値、レギュラーとハイオクの売り方について)
  4. JAF Mate Online(JAF)。https://jafmate.jp/car/troubleconsultation_20220727.html (ノックセンサーと点火時期の調整、保証について)
  5. ベストカーWeb(混ぜても大丈夫?)。https://bestcarweb.jp/?p=1507369 (リタード制御と燃費・レスポンスについて。報道)
  6. くるまのニュース(JXTG談)。https://kuruma-news.jp/post/165446 (価格差の理由についての石油会社の説明。報道)
  7. コトバンク「接触改質」。https://kotobank.jp/word/接触改質 (高オクタン価成分をつくる工程について)

なおした ところ

更新履歴

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