1. しぼった ミルクは、どうして まいにち はこぶの?
1. 生乳は、なぜ毎日工場へ運ばれるのか
1. 生乳は貯められない ── 毎日または隔日の集荷と、日々の処理
ぼくじょうで しぼった ばかりの ミルクを、「なまにゅう」と よびます。この なまにゅうは、ためて おけません。いたみやすいので、まいにち、または 一日 おきに 集めて、こうじょうで 牛にゅうや バターなどに かえて いきます[1]。
さかなやさんの 朝を おもいうかべて ください。さかなは その日の うちに 売りたいし、ひものなら とっておけます。なまにゅうも おなじ ように、「まてない もの」から さきに さばく ひつようが あります。ただし 本当は、さかなと ちがって、なまにゅうは 毎日 でて くるので、とまらない ところが たいへんです。
では、まてない ものから さばく とき、どんな じゅんばんに なるのでしょう。
牧場でしぼったばかりの牛乳を、生乳と呼びます。生乳は毎日生み出され、いたみやすく、ためておけません。そのため毎日、または1日おきに集められ、乳業工場で日々、牛乳や乳製品に加工されます[1]。
魚屋さんの朝を思い浮かべてみてください。鮮魚はその日のうちに売りたいし、干物ならとっておけます。生乳も、待てないものから先にさばくことになります。ただし魚とちがって、生乳は牛がいるかぎり毎日出てくるので、「止められない」のが特徴です。
待てないものから先に、とは、具体的にどんな順でしょうか。
生乳は毎日生産され、腐敗しやすく貯蔵性がない。そのため毎日または隔日で集荷され、乳業工場で日々、牛乳・乳製品に処理・加工される[1]。毎日出てくるものを止められないことが、これ以降の話の前提になる。
魚の鮮魚と干物にたとえると、前者は早く売る必要があり、後者は待てる。生乳の用途にも似た区別があるが、ちがうのは供給が日々続く点で、処理先をその日のうちに決め続けなければならない。では、その優先順位は何に従うのか。
2. なにから さきに つくるの?
2. 賞味期限の短いものから先に作られる
2. 仕向け順 ── 飲用等向、生クリーム等・チーズ向、脱脂粉乳・バター等向
こうじょうの せんに ならぶ じゅんばんは、いたみやすい ものが さきです。いちばん さきが、のむ 牛にゅう。つぎが、なまクリームと チーズ。さいごが、バターと だっしふんにゅうです[2]。
バターや だっしふんにゅうは、のこりの ミルクを うけとる やくめを もちます。これは、きまりで 1ばん・2ばんが きまって いる わけでは なく、いたむまでの 日かずが みじかい ものを さきに しょりする、という やりかたです。
では、どれくらいの りょうが、それぞれに まわるのでしょう。
順番は、賞味期限の短い製品から優先して処理する、というものです。①飲む牛乳など、②生クリームやチーズ、③脱脂粉乳やバターなどの順になります[2]。法律で順位が決まっているのではなく、処理の優先順です。
平成28年度の内訳
この年の生乳生産量は約735万トン。飲用等向けは約406万トン、生クリーム等・チーズ向けは約169万トン、脱脂粉乳・バター等向けは約155万トンでした[3]。406÷735で、飲用は約55%です。ほかの2つは、それぞれ2割あまりになります(自家消費などは別なので、合計は735万トンにはなりません)。
牛乳が半分以上を占めるのだとしたら、牛乳の売れ行きが変わると、バターのほうはどうなるのでしょうか。
仕向け順は、賞味期限の短い製品から優先的に処理される。①飲用等向、②生クリーム等向・チーズ向、③脱脂粉乳・バター等向である[2]。これは処理上の優先順であり、法令で順位が定められているわけではない。
平成28年度は、生乳生産量約735万トンに対し、飲用等向が約406万トン、生クリーム等・チーズ向が約169万トン、脱脂粉乳・バター等向が約155万トンだった(自家消費等は別)[3]。406÷735より、飲用は約55%、他の2つは各2割強である。そのため、飲用や生クリーム・チーズの需要の増減が、最後の脱脂粉乳・バターの製造量や在庫にそのまま影響する[2]。この年度の数字は「いまの割合」ではない点に注意が要る。
牛乳が過半を占めるなら、牛乳の需要が動く夏と冬で、何が起きるのだろうか。
3. なつは 牛にゅうが たりなく なるの?
3. 夏は牛乳が足りなくなり、北海道から生乳が運ばれる
3. 季節のずれ ── 夏に減る生産、夏に増える飲用と、北海道からの移出
牛は、あつさに よわい どうぶつです。なつは、しぼれる ミルクが へります。ところが、のむ 牛にゅうは なつに よく うれ、ふゆに へります[1]。
なつに 牛にゅうが たりなく なりそうな ときは、北海道の ミルクを ほかの 県などへ はこびます。そして、のこりで 北海道が バターなどを つくります[1]。
つまり、牛にゅうが さきだと、バターは いつも「あとまわし」に なるのです。
4. あまった ミルクは、すてるの?
4. 余った生乳は、保存のきくバターと脱脂粉乳になる
4. 最後の受け皿 ── 余った生乳を脱脂粉乳・バターへ回すことの意味
あまった ミルクは、すてません。ながく おける だっしふんにゅうや バターに かえます[1]。牛にゅうの あまりや たりなさは、さいごには バターと だっしふんにゅうの りょうに あらわれます。
牛にゅうは いたみやすいので、ねだんが さがりやすいと されます[4]。バターと だっしふんにゅうは、その ゆれを うけとめる クッションです。
バター 200グラムを つくるには、ミルクが 4リットルより すこし おおく いります[5]。まず、ミルクから クリームを わけ、まぜて バターの つぶに します。
生乳が余ったときは、捨てずに、保存のきく脱脂粉乳やバターなどに加工します。これは酪農家の収入を守ることにもなります。全国の牛乳の需給の調整は、最終的に、脱脂粉乳とバターの形で現れます[1]。
牛乳は保存が難しく、さまざまな理由で供給過剰と価格の急落が起こりやすいとされます。しかも酪農の生産体制をつくり直すには、3〜5年以上かかります[4]。だから、飲むほうが余ったときの「逃げ場」が必要になります。
バターができるまで
バター200gを作るのに、生乳が約4.2〜4.4Lいります。生乳を遠心分離器にかけてクリーム(脂肪分約40%)を分け、殺菌・冷却し、8〜12時間ねかせたあと、かき混ぜて大豆ほどのバターの粒にします[5]。
ところで、クリームを取り出したあとには何が残るのでしょうか。
生乳が余ったときは廃棄せず、保存のきく脱脂粉乳やバター等に加工して、酪農家の収益を確保する。全国的な牛乳の需給調整は、最終的に脱脂粉乳・バターの形で現れる[1]。牛乳は保存性が低く、冷夏や災害時の供給網の乱れなどでも供給過剰と価格暴落が起こりやすく、生産体制の構築に3〜5年以上かかるため、供給を後から調整しにくい[4]。保存のきく製品が、その緩衝になる。
バター200gには生乳約4.2〜4.4Lが必要で、生乳を遠心分離して脂肪率約40%のクリームを取り、殺菌・冷却、8〜12時間のエージング、チャーニングを経て粒になる[5]。
クリームを取った残りの脱脂乳は、どこへ行くのか。ここに、次の問題の種がある。
5. バターは たりないのに、だっしふんにゅうは あまるの?
5. バターと脱脂粉乳は同時にできるのに、片方だけ余る
5. 需要のずれ ── 同時に出る二つの製品と、令和3年度の数字
バターを つくる ときは、クリームを わけた のこりが でて、これが 脱脂粉乳の もとに なります。バターを つくる ところから、だっしふんにゅうの もとも でて くるのです。
ところが、ほしい 人の かずは おなじでは ありません。国の まとめでは、いまの つくる りょうだと、だっしふんにゅうだけが ざいこに つもる、と かかれて います[1](れいわ5ねん ごろ)。
コロナの ころ、牛にゅうが うれにくく なると、ながく おける バターと だっしふんにゅうに まわる ミルクが ふえました。れいわ3ねんどは、バターが 5.8%、だっしふんにゅうが 13.7%、まえの ねんより ふえました[6]。
国の しくみも、こうした あまりと たりないを ささえて います。つぎは そこを のぞきます。
バターを作ると、クリームを取ったあとに脱脂乳が残り、それが脱脂粉乳の原料になります。つまりバターの製造は、脱脂粉乳の原料も生みます。ところが、バターが欲しい人と脱脂粉乳が欲しい人は、同じ数ではありません。国の整理では、現在の生産量だと、脱脂粉乳だけ在庫が積み上がる状況でした(令和5年時点)[1]。
コロナ禍のとき
令和元年度末からのコロナ禍では、長期保存のきくバターと脱脂粉乳に生乳が回る量が増えました。令和3年度の生産量は、バターが7万5085トン(前年度比5.8%増)、脱脂粉乳が15万9710トン(同13.7%増)でした。一方、牛乳等向けの生乳は0.9%減りました[6]。
乳製品は、毎年の輸入のルールとも関係しています。1993年のGATTウルグアイ・ラウンド合意以降、脱脂粉乳やバターなどは、生乳に換算して毎年13万7202トンを輸入する義務があります[2]。
では、こうした調整のお金の面は、どうなっているのでしょうか。
バターの製造では、脂肪を取った後に脱脂乳が残り、これが脱脂粉乳の原料側になる(分離工程[5]からの推論による)。バターの製造は脱脂粉乳の原料も生むが、両者の需要にはずれがあり、令和5年の国の整理では、現在の生産量では脱脂粉乳のみ在庫が積み上がる状況とされた[1]。
ところが、需要が動けば、最後の用途が増減する。令和元年度末からのコロナ禍では、長期保存可能なバター・脱脂粉乳への仕向けが増え、令和3年度の生産量はバター7万5085トン(前年度比5.8%増)、脱脂粉乳15万9710トン(同13.7%増)となった。一方、牛乳等向けの生乳は0.9%減だった[6]。
なお、脱脂粉乳・バターなどには、1993年のGATTウルグアイ・ラウンド合意以降、毎年生乳換算で137,202トンを輸入する義務がある[2]。国内の需給の見方には、この輸入も含まれる。
では、需給の変動を酪農家はどう受け止めているのか。価格の面を見る。
6. ねだんは、どう きまるの?
6. 同じ生乳でも、使い道によって乳価がちがう
6. 用途別取引 ── 昭和30年代までの一本価格と、生産者補給金
おなじ ミルクでも、なにに つかうかで ねだんが ちがう ことが あります。これを「ようとべつ とりひき」と いいます[1]。
バターなどの ざいりょうに なる ミルクは、ねだんが、ミルクを つくる ひようを したまわる ことが あります。そこで 国は、「せいさんしゃ ほきゅうきん」と いう おかねを だして、ささえて います[1]。
むかしは ちがいました。しょうわ30ねんだいまでは、牛にゅうも バターも ひとつの ねだんで こうじょうに わたし、こうじょうが つかいみちを えらんで いました[4]。
今の生乳は、用途(飲む牛乳向け、脱脂粉乳・バター向けなど)に応じて乳価を決める「用途別取引」で売られます[1]。輸入品と競う加工原料乳は、乳価が酪農家の生産コストを下回ることがあるため、国が生産者補給金を出します[1]。
昔は、そうではありませんでした。昭和30年代までは、牛乳向けも乳製品向けも混ぜた一本の価格で乳業に出荷し、どの用途にするかは乳業が選んでいました。そのため牛乳の価格が分かりにくく、供給が余った時期には乳価の交渉が進みにくくなりました。昭和40年代以降に、用途別の取引の枠組みが少しずつ整いました[4]。
こうして、「牛乳が先、バターは最後」という順番が、お金の面でも支えられることになります。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら ── 資料の案内
今日 できること
いえに ある 牛にゅうパックの うらを みて、しょうみきげんが いつか さがして みましょう。バターの はこや ヨーグルトの ふたと、きげんの ながさを くらべて みましょう。「まてる もの」と「まてない もの」の ちがいが みえて きます。
おうちの 人と
おうちの 人に、「なつと ふゆで 牛にゅうの ねだんや うり場は かわる?」と ききながら、スーパーで 見て みましょう。
今日できること
家にある牛乳パック、生クリーム、バター、粉ミルクの賞味期限を見比べてみましょう。製品によって、保存できる期間がどれだけちがうかが見えてきます。
出かけてできること
スーパーで、夏と冬に牛乳や生クリーム、バターの棚のようすを見比べてみましょう。
公式情報
農林水産省の「生乳需給をめぐる情勢」やJミルクの需給見通し資料は、図や数字がのっていて、続きを調べる入口になります。
今日できること
牛乳・生クリーム・バターの賞味期限(脱脂粉乳があれば、その期限も)を並べ、製品ごとの保存期間の違いを観察する。
資料を読むなら
- 農林水産省「生乳需給をめぐる情勢」 ── 季節差、北海道から都府県への移出、脱脂粉乳の在庫。
- Jミルク「需給見通し補足説明資料」 ── 仕向け順と、年度ごとの用途別数量。
- 農畜産業振興機構『畜産の情報』 ── 令和3年度のバター・脱脂粉乳の生産量。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数字は、平成27・28年度、令和3年度など、資料ごとの年度のものです。最新の割合は、各機関の統計で確かめてください。
- 農林水産省「生乳需給をめぐる情勢」令和5年11月 https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/attach/pdf/seinyujukyu-2.pdf (集荷・季節差・移出・受け皿・乳価・補給金・脱脂粉乳の在庫)
- Jミルク「需給見通しに関する補足説明資料」平成29年9月 https://www.j-milk.jp/gyokai/jukyu/f13cn00000002gcm-att/hn0mvm00000051cd.pdf (仕向け順・義務的輸入)
- Jミルク「需給見通し補足説明資料」平成28・29年度版 https://www.j-milk.jp/gyokai/jukyu/f13cn00000002g4w-att/hn0mvm0000002955.pdf (用途別の数量)
- 農林水産省「生乳の用途別取引と需給調整の考え方」 https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/attach/pdf/seinyujukyu-18.pdf (用途別取引の歴史・牛乳の保存性)
- 明治「バターができるまで」 https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/butter/manufacture/ (バターに要る生乳の量と工程)
- 農畜産業振興機構『畜産の情報』2023年7月号 https://www.alic.go.jp/content/001227958.pdf (令和3年度のバター・脱脂粉乳の生産量)
なおした ところ
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- 初版を公開。
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