1. あみの あなを ふさぐと、えに なるの?
1. 穴をふさいだ部分が「白」、あいた部分が「絵」になる
1. 孔版の原理 ── メッシュと乳剤のマスク
ざるを 思い うかべて ください。ざるの 下に かみを おき、上から 水を そそぎます。ざるの あなが ぜんぶ あいて いれば、かみは 水で ぜんぶ ぬれます。
では、ざるの 一ぶに テープを はって、あなを ふさいだら どうでしょう。テープの ところは ぬれず、あなの あいた ところだけ ぬれます。ふさぎかたを 「まる」や「ほし」の かたちに すれば、ぬれる ところが まるや ほしに なります。
スクリーン印刷の はんは、これと にて います。とても こまかい あみに、ふさぐ まくが ついて いて、あいた ところから インクが とおります[2]。
ただし 本当の あみは、目に 見えないほど こまかい あなが たくさん ならんで います。それを 上手に ふさぐ ために、次の 章の 「ひかり」の わざが 出て きます。
網に、絵の形の「ふた」をする
スクリーン印刷は、孔版印刷の一種です。孔版とは、版に開いた孔(あな)をインクが通り抜けて刷る方式のことです[1]。
完成した版は、乳剤と呼ばれる樹脂の膜でメッシュがふさがれた部分と、メッシュがそのまま出ている部分に分かれます[2]。ふさがれた所はインクが通れず、出ている所だけインクが通って、それが絵になります。
家庭のざるの一部を紙でふさいで水を流すと、ふさいでいない所にだけ水が落ちます。原理はそれに近いものです。ただし本物のメッシュの穴は細かく、インクは水よりずっと粘り気があるので、ただ流すだけでは通りません。
網の素材
いま使われる網は、テトロンやナイロンといった合成繊維、またはステンレスなどの金属線です[3]。細い糸を織って作るので、糸のすき間が小さな穴になります。
2. インクは、どうやって したに おりるの?
2. ゴムのへらで押して、何枚でも同じ絵を刷る
2. スキージによる転写と連続印刷
インクは ねばねば して いて、はんの あなから 自分では おちて きません。そこで、ゴムの へらで 上から ぐいっと おします。この へらを、スキージと よびます[2]。
おされた インクは、あみの あなを とおって、はんの 下に おいた ぬのや かみに うつります[2]。
はんを あげて、つぎの ぬのを おき、また おします。これを くりかえすと、おなじ えが なんまいも できます[2]。
3. はんの「ふた」は、ひかりで つくるの?
3. 光が当たらなかった所が、インクの通る穴になる
3. 感光乳剤による製版と光の利用
あみの あなを、ひとつずつ ふさぐのは たいへんです。そこで、光に あたると かたまる ねばねばの まくを つかいます。
まず、あみ ぜんたいに この まくを ぬります。つぎに、えの かたちで 光を さえぎって、上から 光を あてます。光が あたった ところは かたまり、あたらなかった ところは かたまりません。
さいごに 水で あらうと、かたまらなかった ところだけ ながれて、あなが あきます[1]。ここを インクが とおります。
「光が あたった ところが えに なる」と 思いがちですが、じつは ぎゃくです。光が あたらなかった ところが、インクの とおる あなに なります。
感光乳剤を塗って、光を当てる
版を作る(製版)とき、メッシュには紫外線で硬化する感光乳剤を塗ります。次に、紫外線を当てる露光を行います。このとき、紫外線が当たらず硬化しなかった部分の乳剤は、水で洗い流されます。すると、その部分のメッシュが出て、インクの通り道になります[1]。
つまり、光が当たった所が固まって残り、当たらなかった所が穴になります。絵の形に光をさえぎっておけば、その絵の形がそのまま穴になります。英語の技術解説にも、光が当たった所は硬化し、絵で覆われた所は柔らかいまま洗い流されるという説明があります[5]。
写真の薬品が、版づくりに入ってきた
光で版を作る発想は、写真と結びついて広がりました。歴史の解説によると、1910年ごろから、印刷の職人たちが、写真に使う光に反応する薬品を使った実験を始めたといいます。先駆者として、ロイ・ベックら3人の名が挙げられています[4]。
製版では、メッシュに紫外線で硬化する感光乳剤を塗布し、露光する。紫外線が当たらず硬化しなかった部分の乳剤は水で洗い流され、メッシュが露出する[1]。つまり、光が当たった部分が硬化して残り、当たらない部分(絵柄で光が遮られた部分)が穴になる。光が当たった所が穴になると考えたくなるが、実際は逆だ。英語の技術解説にも、UVで硬化した領域以外、つまり絵柄に覆われて光が当たらなかった部分の、まだ柔らかい水溶性の乳剤を洗い流す、という趣旨の説明がある[5]。
この方法の歴史について、Sullivan(2011)は、1910年ごろ、写真の発達と並行して、スクリーン印刷の職人が感光性の化学反応を使う方法を試し始めたと述べ、ロイ・ベック、チャールズ・ピーターズ、エドワード・オーウェンの3人を先駆けに挙げる[4]。人名の綴りは資料によって揺れることがあり、ここでは Sullivan の記述に従う。
なお、乳剤には種類があり、露光にかかる時間も異なるが、時間は機材や乳剤で変わるため、この記事では具体的な数字は挙げない。
4. どうして「シルク」と いうの?
4. 「シルク」の名は、絹の網の名残
4. 起源の説と、「シルク」「セリグラフィー」という呼び名
シルクは、きぬ という いみです。むかしは、この あみに、ほんものの 絹の いとを つかって いたからです[6]。
いまは、ナイロンや テトロンと いった、人が つくった いとが おもに つかわれて います[6]。でも、「シルク」という なまえだけは のこりました。
かたを つかって えを うつす やりかたは、大むかしの 中国に さかのぼると いわれて います[4]。
絹から化学繊維へ
シルクスクリーンは、もともと絹で作った網を意味します。のちにナイロン、ポリエステル、金属も使われるようになりました[4]。絹を使っていた頃の名前が、そのまま残っている形です[6]。
型を使う方法の歴史
型を使って刷る方法は、中国の宋の時代(960〜1279年)にさかのぼるとされます。日本などのアジアの国々も、工夫を加えたと説明されています[4]。ただし、これは「一般にそう言われている」という説明で、当時の版が現代のような網だったとは、この資料からは分かりません。
西洋で身近になった形の特許は、1907年にイギリス人のサミュエル・サイモンが取ったものです。主に絹や麻、紙などに、高価な壁紙を刷るのに使われました[4]。日本の友禅染や型染にヒントを得て、イギリスで絹を使って印刷したのが始まり、という日本語の解説もあります[6]。ただし、この説明は一つの解説にしか見つからないので、参考程度にとどめます。
アーティストが使う名前
芸術として刷る人たちは、産業用と区別するために、「セリグラフィー」という言葉を使うようになったと説明されています。絹を意味するラテン語と、書く・描くを意味するギリシャ語を合わせた言葉です[4]。
「シルクスクリーン」は、もとは絹製メッシュを使う版を指した。のちにナイロン・ポリエステル・金属も網に用いられるようになった[4]。日本語の解説では、初期に本物の絹を使っていたから、と名の由来を説明する[6]。現在の主流は、ナイロン・テトロンなどの合成繊維とされる[6][3]。
起源については、Sullivan(2011)が、型を使う方式は一般に中国の宋代(960〜1279年)に帰され、日本など他のアジア諸国も工夫を加えたと述べる[4]。これは「とされる」の域を出ず、当時の版がメッシュを張った現代の形だったかどうかは、この資料からは判断できない。
西洋で最もなじみのある形のスクリーン印刷は、英国人サミュエル・サイモン(Samuel Simon)が1907年に特許を取ったもので、主に絹・麻・紙などに高価な壁紙を刷るのに使われた[4]。日本語の民間解説には、日本の友禅染・型染にヒントを得て、英国で絹を使って印刷したのが始まりとするものがあるが[6]、これは一つの解説に見られる説で、ここでは一つの説として紹介する。
芸術としての利用を産業用と区別する語としては、「セリグラフィー(serigraphy)」がある。絹を意味するラテン語と、書く・描くを意味するギリシャ語に由来すると説明される[4]。時期や命名者は資料によって説明が異なるため、ここでは挙げない。
5. Tシャツの ほかにも、つかわれて いるの?
5. ガラスや電子部品にも刷られている
5. 用途の広がりと、加工の幅
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
おうちの Tシャツや トートバッグの えを、ちかくで 見て みましょう。えの ふちが くっきり して いるか、さわると すこし もりあがって いるか、たしかめます。ただし、すべての えが スクリーン印刷とは かぎりません。ちがう やりかたの ものも あります。
えの ふちが あみの めの ように 見える ことも ありますが、それだけでは スクリーン印刷か どうかは きめられません。
今日できること
家にあるTシャツやトートバッグの絵柄を、近くでよく見てみましょう。絵のふちがくっきりしているか、触ると少し盛り上がっているかを比べます。ただし、すべての絵柄がスクリーン印刷とは限らず、別の方法で付けられたものもあります。
ふちに網の目のようなぎざぎざが見えることもありますが、それだけではスクリーン印刷かどうかは決められません。
資料を読むなら
業界各社の技術解説(出典欄の日本語の資料)は、図解つきで版づくりを説明しています。名前の由来や歴史は、出典欄の解説から読み始められます。
今日できること
手元のTシャツやトートバッグの絵柄を、近くで観察してみる。ふちの輪郭、触ったときの盛り上がり、インクの厚みが手がかりになる。ただし、これらが見えても、それだけでスクリーン印刷と決めることはできない(別の方式でも似て見えることがある)。判断のむずかしい場合は、無理に決めなくてよい。
資料を読むなら
日本語の技術解説(出典[1][2][3])は、製版と印刷の工程を、写真や図で確かめられる。名前の由来や歴史は、出典[6]の日本語の解説から読み始められる。起源や日本との関わりは、資料によって強さが違うので、複数を突き合わせて読むとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典は、製版・印刷の仕組み([1][2][3][5])、歴史と名前の由来([4][6])に使った。
- 日本特殊織物「スクリーン印刷の工程」 https://www.nt-jp.com/products/screen/process.php (孔版の原理・製版と印刷の工程)
- アサダメッシュ「スクリーン印刷の仕組み」 https://asadamesh-global.com/jp/useful-information/how_screen_printing_works/ (乳剤とメッシュ、スキージによる転写)
- マツダスクリーン「スクリーン印刷とは」 https://matsuda-screen.co.jp/knowledge_base/what-is-screen-printing/ (現在のメッシュの素材と用途)
- Sullivan, "History of screen printing" (JTPM/Chico State, 2011) https://www.csuchico.edu/turner/_assets/documents/history-of-screen-printing.pdf (歴史・名前の由来・平らでない面への印刷)
- Anatol「Understanding the different types of screen printing emulsions」 https://anatol.com/blog/understanding-the-different-types-of-screen-printing-emulsions (光が当たった所が硬化する説明)
- HANDo「シルクスクリーンとは」 https://www.hando-horizon.com/silkscreen/about/ (「シルク」の名の由来)
なおした ところ
更新履歴
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