このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

けいこうペンは、どうして あんなに めだつの?

蛍光ペンの色はなぜ目立つのか ── 見えない光を見える光に変える仕組み

蛍光色の発光機構 ── 紫外線の吸収と可視光の上乗せ、蛍光増白剤との共通性

分野:技術

けいこうペンで せんを ひいた プリントを コピーすると、あの あかるい いろが、なんだか ぼんやり します。ぬった ばしょは おなじなのに、ふしぎです。

けいこうペンの ひかりの ひみつを、しらべて みました。

蛍光ペンで線を引いたプリントをカラーコピーすると、あの目立つ明るさが、コピーのほうでは出にくいと説明されています。同じ場所に、同じ色で塗ったはずなのに、どうしてでしょうか。

蛍光ペンの中身、洗濯洗剤で服が白く見える理由、蛍光塗料をつくった兄弟の話を、メーカーや解説サイトの説明でたどります。

蛍光ペンの線は、カラーコピーで複写すると蛍光の明るさが再現されない、と物理の解説は述べる[3]。原本とコピーの差は、蛍光物質が紫外線を可視光に変えるという仕組みで説明できる[2]。三菱鉛筆・パイロットの説明を軸に、解説サイトや花王の資料を突き合わせ、発光の仕組み、色による差、蛍光増白剤との共通性、蛍光塗料の来歴を整理する。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. コピーすると、なにが きえるの?

1. コピーでは、明るさだけが消える

1. 複写で失われるもの ── 色ではなく蛍光

ある せつめいでは、カラーコピーを すると、コピーされた せんには 蛍光けいこうの もとが ふくまれない ので、あかるさが でないと いいます[3]。

いろの かたちは うつせても、ひかりの ひみつまでは うつせない、と いう ことです。

では、けいこうペンの インクには、なにが はいって いるのでしょうか。

アメリカの大学の物理の解説によると、カラーコピーで複写すると、コピーされた線には蛍光を出す化学物質が含まれません。そのため、蛍光ペンの明るさは再現されないそうです[3]。

コピー機は、色の見た目をまねて印刷します。目立つ明るさの原因が、色そのものとは別のところにあるなら、コピーで消えるのも説明がつきます。その「別のところ」が、蛍光ペンのインクに入っている物質です。

WTAMUの物理解説は、カラーコピーでは複写された線に蛍光物質が含まれないため、蛍光の明るさは再現されないと述べる[3]。コピー機は色の見た目を再現するが、原本の目立ち方の一部は、色ではなく蛍光という別の光の寄与による、という読みになる。

どの程度暗くなるかは機種や条件で変わる。以下では仕組みの説明を、国内メーカーの資料と突き合わせて確かめる。

2. けいこうペンは、じぶんで ひかるの?

2. 見えない光を、見える光に変える物質

2. 蛍光物質のはたらき ── 紫外線の吸収と可視光の放出

けいこうペンは、くらい ところで じぶんから ひかる わけでは ありません。

インクの なかに、めに みえない 紫外線しがいせんを、めに みえる ひかりに かえる ものが はいって います[1]。しがいせんを ふくむ ひかりが あたると、ひかるのです[2]。

たとえるなら、ボールを うけとって、べつの ボールに なげ かえす かかりの ようです。ただし ほんとうは ボールでは なく、ひかりの エネルギーです。

ホタルイカの ひかりは、からだの なかの はんのうで じぶんで つくる ひかりでした。けいこうは ちがって、そとから きた ひかりが ひつようです[2]。

蛍光ペンのインクには、目に見えない紫外線を目に見える光に変える蛍光物質が入っています[1]。パイロットの説明では、紫外線を含む光が当たると、この物質が紫外線のエネルギーを吸収し、可視光に変えて放出します[2]。

光る仕組みを、もう少しくわしく見てみます。物質の中の電子が紫外線のエネルギーをもらって高い状態に上がり、元の状態に戻るときに余ったエネルギーを光として出します。途中で一部のエネルギーが熱などに使われるため、出てくる光は吸収した光より波長が長く、エネルギーが低くなるそうです[5]。紫外線が目に見える光になるのは、そのためです。

自分で光るわけではないので、暗闇では光りません。パイロットは、紫外線を含む光がある環境でだけ光って見えると説明しています[2]。ホタルイカのように体の中の化学反応で自分から光る発光とは、別の現象です。

三菱鉛筆は、蛍光ペンのインクに「目に見えない光(紫外線)を目に見える光へ変える蛍光物質」が含まれると説明する[1]。パイロットも、紫外線を含む光が当たると蛍光物質が紫外線のエネルギーを吸収し、可視光に変えて放出すると述べ、紫外線を含む光がある環境でのみ光って見えるとする[2]。外からの光を必要とする点が要になる。

過程は、分子中の電子が高エネルギーの紫外線を吸収して励起状態になり、基底状態へ戻る際に余剰エネルギーを光として出す、と解説される。途中で振動などにエネルギーの一部を失うため、放出光は吸収光より波長が長い(エネルギーが低い)[5]。紫外線が可視光として現れる理由がここにある。

生物発光は、ルシフェリンなどの化学反応で自ら光る別の現象であり、外部の励起光を要する蛍光とは原理が異なる。

3. どうして いつもより あかるく みえるの?

3. 反射した光に、新しい光が足される

3. 反射光への上乗せ ── 可視光が増えて見える理由

ふつうの いろは、あたった ひかりの うち、その いろの ぶんだけを はね かえして みえます。

けいこうペンは、はね かえした ひかりに、しがいせんから かえた あたらしい ひかりが たされます。だから、みえる ひかりが ふえて、めに とどきます[4]。

それで、まわりの いろより あかるく、あざやかに みえるのです。

ふつうの色は、当たった光の一部を反射して見えます。蛍光の色では、それに加えて、蛍光で生まれた可視光が反射光に足されます。日光のように、可視光と紫外線がそろった光の下では、通常の色より物理的に明るくなる、と物理の解説は述べています[3]。

未来工学研究所の説明では、蛍光ペンの線の光は「蛍光色素が出す光」「ペンの色素が反射する光」「当てた光の反射」の合計になり、可視光の範囲では反射光だけのときより光が多くなって鮮やかに見えます[4]。

コピーで明るさが消えたのも、これで説明できます。コピーされた線には蛍光物質がないので、「足される光」の部分がありません。

蛍光は、ある色の光を吸収し、それより波長の長い別の色の光を出す現象である。日光のように可視光と紫外線を含む光の下では、蛍光で生じた可視光が物体の反射光に足され、通常の色より物理的に明るくなる[3]。未来工学研究所は、蛍光ペンの線の光量を蛍光色素の発光・ペン色素の反射光・当てた光の反射の合計と整理し、可視光の範囲では反射光だけのときより光が多くなるため鮮やかに見えると述べる[4]。

1章の複写の話は、この説明と整合する。複写された線に蛍光物質が含まれなければ、上乗せ分が失われる。ただし、上乗せでどれだけ明るくなるかは色や条件で変わるため、「何倍」といった数字は挙げない。

4. いろによって、ひかりかたは おなじ?

4. 色によって、光って見える強さがちがう

4. 色による差 ── 蛍光物質の色と、インクの組み合わせ

ぜんぶの いろが おなじ つよさで ひかる わけでは ないようです。

パイロットは、とくに ひかって みえやすい いろは、きいろと ピンクだと せつめい して います。オレンジも よく ひかるそうです[2]。

それいがいの いろは、インクの くみあわせで つくられる ので、ひかって みえる ていどが いろに よって ちがいます。

また、けいこうペンの せんの したの もじが すけて みえるのは、いろの もとの りょうが ふつうの ペンより すくないから、とも せつめい されて います[2]。

三菱鉛筆は、蛍光物質そのものが出す色は黄と桃に限られ、他の色はインクの組み合わせで作られるので、光って見える程度は色によって異なると説明しています[1]。パイロットは、とくに光って見えやすいのは黄色とピンクで、オレンジもよく光ると述べています[2]。

中身の色素は、化学の解説サイトによると、黄色にはピレン系、ピンクにはローダミン系、オレンジにはクマリン系などの組み合わせが使われる例があります[5]。ただし、これは一例で、メーカーや製品によって成分は違います。

線の下の文字が透けて見えるのは、色のもとの量が普通のペンより少ないからだとパイロットは説明しています[2]。

三菱鉛筆は、蛍光物質が発する色は黄と桃に限られ、他の色はインクの組み合わせで作られるため光って見える程度は色で異なる、と説明する[1]。パイロットは、光って見えやすいのはイエローとピンク、オレンジもよく光るとする[2]。「全色が同じ強さで蛍光を出す」わけではない。

色素の例として、イギリスの化学解説サイトはイエローにピレン系(ピラニンなど)、ピンクにローダミン系、オレンジにクマリン系とキサンテン系の組み合わせを挙げる[5]。同サイトは緑・青・紫にも色素を挙げており、三菱鉛筆の「黄と桃に限られる」という説明とは表現が異なる。成分はメーカー・製品で違うため、どちらも一例として読むのが妥当だろう。

線の下の文字が透けるのは、インクの色のもとの量が普通のペンより少ないためとパイロットは述べる[2]。

5. しろい ふくも おなじ しくみ?

5. 白い服の「白さ」にも、同じ仕組みが使われる

5. 蛍光増白剤 ── 青白い蛍光で白さを増す

しろい ふくや タオルには、ひかりに ふしぎな しくみを もつ くすりが つかわれる ことが あります。紫外線しがいせんを、あおじろい ひかりに かえて、しろさを ましてくれるのです[6]。

けいこうペンと おなじ しくみです。ペンは きいろや ピンクの ひかりを だし、しろい ふくの くすりは あおじろい ひかりを だします[6][2]。

この くすりは、せんたくで おちて しまう ため、せんたく せんざいにも はいって います。ただし、きなりや パステルの ふくには つかわれません[6]。

花王の説明では、白い衣類には製造のときに蛍光増白剤が使われます。目に見えない紫外線を吸収して青白い光に変えるため、見た目の白さが増します。洗濯で落ちてしまうので、洗剤にも入っています[6]。

蛍光ペンの黄色やピンクの光と同じく、「紫外線を吸って、見える光に変える」仕組みです。出す光の色がちがうだけで、別の現象ではありません[2][6]。

なお、きなり色やパステル色の衣類には蛍光増白剤は使われておらず、蛍光剤入りの洗剤で洗うと色合いが変わることがある、とも説明されています[6]。

花王は、白い衣類には製造時に蛍光増白剤が使われ、目に見えない紫外線を吸収して青白い蛍光に変え、見た目の白さを増すと説明する。洗濯で落ちるため洗剤にも配合される[6]。パイロットの蛍光ペンの説明[2]と並べると、両者は「紫外線を吸収して可視光を放出する」という同じ原理で、蛍光ペンは黄・桃など、増白剤は青白い光を出す点が違う。

きなり・パステル色の衣類には蛍光増白剤は使われず、蛍光剤入り洗剤で洗うと色合いが変わることがある[6]。この「同じ原理」という整理は、2つの出典を並べた筆者の読みである。

6. さいしょの けいこう とりょうは、だれが?

6. 浴槽で生まれた蛍光塗料

6. 蛍光塗料の来歴 ── スウィッツァー兄弟と1934年の披露

1930ねんだいの アメリカに、ロバートと ジョセフの ふたりの きょうだいが いました。

ふたりは、けいこうの ものと シェラックと いう ものを まぜて、けいこうの とりょうを つくったと つたえられます。1934ねんに、マジシャンの たいかいで みせたそうです[7]。

この あかるい とりょうは、のちに ひとつの かいしゃの なまえにも なりました。

1930年代のアメリカで、スウィッツァー兄弟(ロバートとジョセフ)が、蛍光を出す物質とシェラックを混ぜて蛍光塗料を作ったと伝えられています。家の浴槽で実験を重ね、1934年に奇術師の大会で披露したそうです。ロバートは1936年に特許を得ました[7]。

兄弟は1946年に会社を作り、1969年に「デイグロ」という社名に改めました。第二次世界大戦中の信号用の明るい布でも知られています[7]。

蛍光ペンについては、ドイツのスタビロが1971年に発表した「ボス」を世界初の蛍光ペンとして紹介しています。ただし「世界初」は同社の紹介で、ほかの資料では確かめていません[8]。

クリーブランドの百科事典によると、スウィッツァー兄弟(ロバートとジョセフ)は1930年代、蛍光化合物とシェラックを混ぜる実験を家の浴槽で行い、1934年にオークランドの奇術師の大会で披露した。ロバートは1936年に特許を得た[7]。開発の年は資料でずれがあり「1930年頃」とする記述もあるため、ここでは「1930年代」にとどめる。

兄弟は1946年にSwitzer Brothers, Inc.を設立し、1969年にDay-Glo Color Corp.へ改称した[7]。蛍光ペンの起源としては、スタビロ(ドイツ)が1971年発表の「ボス」を世界初と紹介する[8]。ただし同社側の記述であり、ほかの資料では確かめていない。

7. まどぎわで みくらべて みよう

7. 昼の窓辺と部屋の中で、見え方を比べる

7. 見比べの手がかりと、資料の読み方

けいこうペンで、かみの はしに せんを ひいて みましょう。しろい ふくの そでと、ならべて ながめます。

ひるまの まどぎわと、へやの おくで、あかるさが どう かわるか、みくらべます。けいこうは しがいせんを ふくむ ひかりの したで ひかる ので[2]、ばしょに よって みえかたが ちがうかも しれません。

たいようを ちょくせつ みては いけません。しがいせんの ライトも つかいません。

蛍光ペンで紙の端に線を引き、白い服の袖と並べて、昼の窓辺と部屋の奥で見え方をくらべてみましょう。蛍光は紫外線を含む光の下で光って見える、とパイロットは説明しています[2]。場所や照明で明るさが変わるかどうか、目で確かめる手がかりになりそうです。

結果は、天気や時刻、部屋の照明でも変わります。1回で決めず、何回か見てください。太陽を直接見ないこと、紫外線ライトを使わないことは、必ず守ってください。

蛍光ペンの線と白い服を並べ、昼の窓辺と室内で明るさの見え方を比べる。蛍光は紫外線を含む光の下で見えるとされる[2]ので、場所や照明による差が出るかが観察のポイントになる。天気・時刻・照明で結果は変わるため、条件を書き留めて数回試す。太陽を直接見ない。紫外線ライトは目に有害なため使わない。

資料を読むなら、三菱鉛筆[1]とパイロット[2]のページが短く読みやすい。物理の視点はWTAMU[3]、色素の化学はCompound Interest[5]、白さの話は花王[6]。国内メーカー2社の説明と、上の解説を読み比べて、同じことを言っているか、言い方がちがう点はどこかを探してみてほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

このメモは、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. 三菱鉛筆「よくあるご質問(蛍光ペンが光る原理)」。https://www.mpuni.co.jp/customer/ans_110.html (紫外線を可視光に変える物質、色ごとの差)
  2. パイロット「かく、を学ぶ 蛍光ペンってどうして光って見えるの?」。https://www.pilot.co.jp/media/knowledge/027.html (紫外線の吸収と放出、光りやすい色、透ける理由)
  3. WTAMU Science Questions with Surprising Answers「What makes a fluorescent highlighter marker so bright?」。https://www.wtamu.edu/~cbaird/sq/2015/05/15/what-makes-a-fluorescent-highlighter-marker-so-bright/ (反射光への上乗せ、コピーで明るさが再現されないこと。英語の解説サイト)
  4. 未来工学研究所「おもしろ科学実験室 蛍光ペンの鮮やかなひみつ」。https://www.mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/250425.php (光量の合計の説明)
  5. Compound Interest「The Chemistry of Highlighter Colours」。https://www.compoundchem.com/2015/01/22/highlighters/ (電子の状態と波長、色ごとの色素の例。英語の解説サイト)
  6. 花王「製品Q&A 蛍光増白剤とは?」。https://www.kao.com/jp/qa/detail/15864/ (白い衣類の蛍光増白剤)
  7. Encyclopedia of Cleveland History「Switzer, Robert C.」。https://case.edu/ech/articles/s/switzer-robert-c (蛍光塗料の開発と会社の歩み。英語の資料)
  8. MARK'S「スタビロ 商品ページ」。https://marks.jp/product/stabilo.html (スタビロ「ボス」1971年。販売店による紹介)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。