1. あらう ものと、なめらかに する ものは、なにが ちがう?
1. 「洗う」と「整える」は別の仕事
1. 洗浄成分と整髪成分 界面活性剤の2つの型
シャンプーの おもな しごとは、よごれを おとして、あわを たてる ことです。そのために、「かいめんかっせいざい」という せいぶんが つかわれる ことが あります[9]。
コンディショナーや リンスは、しごとが ちがいます。あらった あとの かみに あぶらを おぎない、でんきを おこりにくくし、くしが とおりやすく する ものと せつめいされて います[1]。
おふろで たとえると、シャンプーは「よごれを おとす たわし」、コンディショナーは「はだを なめらかに する クリーム」の ような ちがいです。ただ、ほんとうの しくみは もっと ふくざつです。
どちらも 「かいめんかっせいざい」の なかまですが、シャンプーには あらうのに むいた タイプ、コンディショナーには かみに くっつくのに むいた タイプが つかわれる、と いわれて います[2]。ただし、この ぶぶんは、しりょうの ページを ひらいて たしかめられて いないので、「そういう ことも ある」くらいに よんで ください。
洗う成分
シャンプーで汚れを落とし、泡立てる役目をするのは、界面活性剤という成分です。高校生の課題研究の表では、ラウリル硫酸Naが洗浄剤として挙げられています[9]。成分解説サイトには、洗浄・泡立ちには陰イオン(アニオン)性の界面活性剤を使うという分類もあります[2]。ただし、全部のシャンプーが同じ種類でできているわけではなく、製品によって違います。
整える成分
日本化粧品技術者会の用語集は、ヘアリンス(ヘアトリートメント剤)を「洗髪した毛髪に油分を補い、静電気をおさえ、くし通りをよくして、つやや潤いを高める」もの、と説明しています[1]。主な成分として、陽イオン(カチオン)性界面活性剤、高級アルコール、保湿剤、油分が挙げられています。
界面活性剤は電荷の型で分類され、陰イオン性は洗浄・起泡、陽イオン性は帯電防止・コンディショニングに使われるとする解説がある[2]。ただしこの出典ページは、確認作業の時点で本文を開けなかったため、この分類は補助的な記述にとどめる。洗浄剤としてのラウリル硫酸Naは、高校生の課題研究の表でも確認できる[9]。全シャンプーが陰イオン性のみとは限らず、両性・非イオン性の併用もある。
日本化粧品技術者会の用語集は、ヘアリンス(ヘアトリートメント剤)を、洗髪した毛髪に油分を補い、静電気の発生を抑え、くし通りを向上させ、つやや潤いといった風合いを高める成分と定義し、主成分として陽イオン性界面活性剤・高級アルコール・保湿剤・油分を挙げている[1]。洗う側と整える側で成分が違うという大枠は、業界団体の用語集と高校生の課題研究の表から読み取れる。
2. かみは、どうして コンディショナーに くっつくの?
2. 髪はマイナス、成分はプラス
2. 毛髪表面の負電荷と陽イオン性界面活性剤の吸着
かみの ひょうめんは、マイナスの でんきを おびて いると せつめいされて います[1]。コンディショナーの せいぶんは、プラスの でんきを もって います[2]。
プラスと マイナスは ひきあいます。だから、コンディショナーの せいぶんは、かみの ひょうめんに くっつきます。くっついた せいぶんの、あぶらに なじむ がわが そとを むくので、かみが なめらかに なり、くしが とおりやすく なると いわれて います[1]。
じしゃくの Nきょくと Sきょくが くっつく ようすに にて います。ただ、じしゃくでは なく でんきの はなしです。
引き合って貼りつく
用語集によると、毛髪はマイナスに帯電しているため、プラスの電気をもつ陽イオン性界面活性剤が毛髪の表面に吸着します。すると、油になじむ側(親油基)が表面をおおい、なめらかになってくし通りがよくなるそうです[1]。
成分解説のサイトも、陽イオン性界面活性剤は水に溶けるとプラスのイオンになり、マイナスに帯電した皮膚や毛髪の表面に吸着する、という同じ説明をしています[2]。
海外の解説では
アメリカの科学ニュースサイトの解説記事(2014年)も、陽イオン界面活性剤の分子の一端のプラスの電気が、髪のマイナスの電気と結びつき、髪を包んでキューティクルの浮きを覆う、と書いています[3]。
SCCJの用語集は、毛髪はマイナスに帯電しているため、陽イオン性界面活性剤が毛髪表面に吸着し、その親油基が表面を覆うことでなめらかになりくし通りが良くなる、と説明する[1]。成分解説サイトも、陽イオン性界面活性剤は水中で親水基がプラスのイオンとなり、マイナスに帯電した皮膚・毛髪の表面に吸着して表面の性質を変えるとし、帯電防止とコンディショニングに用いられるとする[2]。
米国の解説記事(Storr, 2014)も、陽イオン界面活性剤分子の一端のプラス電荷が毛髪のマイナス電荷に結合し、毛を取り巻いてキューティクルの浮きを覆うと説明している[3]。日英3つの資料が同じ方向を向いているが、いずれも概説であり、毛髪の電荷は場所や状態によって一様ではない点までは扱わない。
3. あらった あとに ぬるのは、どうして?
3. 洗った「後」に使うわけ
3. 洗髪後の濡れ髪と使用順序、リンスインシャンプー
ぬれた かみは、こすれると いたみやすいと いわれて います。メーカーの けんきゅうでは、ぬれた かみを こすると、ひょうめんの うすい かわの ような ところが はがれて、したの ほうが みずで やわらかく なる ようすが みつかりました[6]。
あらう あいだと、あらった あとは、かみが さらされる ようすが ちがいます。だから、あらう せいぶんと、なめらかにする せいぶんは、じゅんばんに はたらくように つくられて います[4]。
「リンスインシャンプー」は、この ふたつを ひとつに まとめた ものです。あらう せいぶんが はたらいた あとに、なめらかにする せいぶんが はたらく ように くふうされて います。かみに よっては、きしみやすかったり、すすぎのこしで べたついたりする こともあると せつめいされて います[4]。
濡れた髪は傷みやすい
クラシエホームプロダクツの2016年の発表では、濡れた髪が摩擦を受けると、キューティクルの上のほうの層がはがれて、いちばん下の層が水でやわらかくなって露出することが確かめられたそうです。パサつきや広がりにつながる、と報じられています[6]。
1本にまとめると
リンスインシャンプーの解説では、洗浄成分のあとにコンディショニング成分が作用するよう設計されている、とされています[4]。その解説によると、髪質によってはきしみやすく、すすぎ残しがベタつきの原因になることもあるそうです。ただし、別々の製品に分けて使う理由については、この記事では確かめられていません。
クラシエホームプロダクツの研究(2016年5月発表)では、濡れた髪は摩擦を受けるとキューティクルの上層が剥がれ、最下層が露出して水で軟化し、パサつきや広がりにつながると確認された[6]。洗髪のあとに整える成分を置く設計は、こうした洗浄直後の状態を前提にしている。
リンスインシャンプーの解説では、洗浄成分が働いた後にコンディショニング成分が作用するように設計されているとされ、髪質によってはきしみやすく、すすぎ残しがベタつきの原因になりうると述べられている[4]。ここは商品解説の記事(二次資料)であり、洗う成分と整える成分を分けて使う理由の、メーカー公式の説明そのものは、この記事では確認できていない。
4. せっけんで あらうと、なぜ きしむの?
4. 石けんで髪がきしむ理由に、疑いが出た
4. 石けん洗髪後のきしみと2023年の企業研究
せっけんで かみを あらうと、きしむ ことが あります。げんいんとして、「せっけんが アルカリせいだから」「せっけんの かすが かみに つくから」と かんがえられて いました[5]。
2023ねん、ぎゅうにゅうせっけんの かいしゃが、この せつめいが ちがうかも しれない、と はっぴょうしました[5]。しらべると、アルカリせいも せっけんの かすも、げんいんの かのうせいは ひくいと でました。かわりに、かみの ひょうめんに カルシウムが ふえる ことが かんけい して いるかもしれない、と しめしました[5]。
ただし、これは ひとつの かいしゃの けんきゅうです。まだ「これで きまり」とは いえません。
これまでの説明
石けんで洗ったあとの髪がきしむのは、石けんがアルカリ性だから、あるいは金属石鹸(石けんが水の中のミネラルなどと結びついてできる、水に溶けにくいもの)が髪に付くから、と考えられていました[5]。
2023年の研究が示したこと
牛乳石鹼共進社は、2023年11月14日に、この研究の発表をしました(同年、バルセロナで開かれたIFSCC 2023でも発表)。それによると、石けんのアルカリ性が髪の表面の構造に影響することや、髪に金属石鹸が付くことは、きしみの原因である可能性が低いと分かりました。かわりに、髪の表面に増えるカルシウムが関わっている可能性が見つかったそうです[5]。
これは一つの企業の研究で、カルシウムが原因だと確定したわけではありません。定説がくつがえったというより、「疑いが出た」という段階と読むのが安全です。
石けん洗髪後のきしみは、石けんのアルカリ性や金属石鹸の付着が原因とされてきた。牛乳石鹼共進社は2023年11月14日にニュースリリースを出し、IFSCC 2023(バルセロナ)で発表した研究として、石けんのアルカリ性が毛髪表面構造に影響することや、金属石鹸が付着することが原因である可能性は低く、毛髪表面のカルシウムの増加が関与している可能性を見出したと報告した[5]。
企業の単独の研究であり、カルシウム説は「可能性」の段階である。第1〜3章の説明(陰イオン・陽イオンの電荷による吸着)とは別の話で、石けんで洗った髪のきしみを、コンディショナーの成分がどう和らげるかまでは、この資料からは分からない。
5. リンスと コンディショナーは、なにが ちがうの?
5. 「リンス」と「コンディショナー」の名前の違い
5. 呼称の曖昧さ 「リンス」の語義の変化
おみせには、リンス、コンディショナー、トリートメントと、いろいろな なまえが ならびます。これらを はっきり わける きまりは、今回 しらべた しりょうでは みつかりませんでした。メーカーごとに ちがうと せつめいする しりょうが あります[7]。
いちおうの めやすは あります。かみの ひょうめんを まもる ものを リンス、それに しっけなども うたう ものを コンディショナー、なかまで ととのえると うたう ものを トリートメントと よぶ ことが おおい、と いわれます[7]。でも、めやすは めやすです。
「リンス」は、えいごの rinse(すすぐ)から きた ことばです。にほんでは、あらった あとに かみを なめらかに する ものの なまえに なりました[8]。もとの いみと すこし ずれて います。
名前に決まりはあるのか
「リンス」と「コンディショナー」の使い分けについて、今回確認した資料では明確な定義は見つからず、メーカーごとに違うと説明する資料があります[7]。一般的には、髪の表面の保護に特化したものをリンス、保湿なども加えてうたうものをコンディショナー、内部の補修をうたうものをトリートメントと呼ぶことが多いようです。この整理は二次的な資料に基づくもので、法令や業界団体が定めたものではありません。
「リンス」の意味はどう変わった?
辞書によると、rinse は英語で「すすぐ」という意味ですが、日本語のリンスは「洗髪後に髪をなめらかに柔らかくし、もつれを取る製品」の意味に変わりました[8]。「すすぐ」ための液ではなく、髪にとどまる成分を指す名前になった、と考えられます。
「リンス」と「コンディショナー」の使い分けに明確な定義はなく、メーカーごとに異なるとされる。一般には、髪表面の保護に特化したものをリンス、保湿などもうたうものをコンディショナー、内部の補修をうたうものをトリートメントと呼ぶ傾向がある[7]。ただしこれは二次資料の整理であり、法令・業界団体による定義は今回の調査では見つからなかった。
「リンス」は英語のrinse(すすぐ)が、日本語では洗髪後に髪をなめらかに柔らかくしもつれを取る製品の意味に変化した語で、本来の語義とはずれがある[8]。名前が曖昧でも、第1〜2章で見たように、中身の成分の型(陽イオン性界面活性剤など)は、成分表示から確かめられる。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できること
おうちの シャンプーと コンディショナーの うしろに、「ぜんせいぶん」が かいて あります。おうちの 人と いっしょに、2つを ならべて よんで みましょう。
「ラウリルりゅうさんNa」のような なまえが シャンプーに、「〜アンモニウム」や「〜クロリド」のような なまえが コンディショナーに ならんで いる かも しれません[9]。ちがう なまえが ならんで いたら、ふたつの しごとが ちがう しるしかも しれません。みつからなくても、せいひんに よって せいぶんは ちがいます。
今日できること
家のシャンプーとコンディショナーの容器の裏にある、全成分表示を、大人と一緒に見比べてみましょう。
高校生の課題研究(岡山県立天城高校、2014年)の表には、シャンプー側にラウリル硫酸Na(洗浄剤)、コンディショナー側にベヘントリモニウムクロリド(陽イオン界面活性剤)が並んでいました[9]。家の製品にも、似た形の名前が見つかるでしょうか。見つからなくても、製品によって成分が違うだけで、間違いではありません。
もっと知りたくなったら
日本化粧品技術者会の用語集は、化粧品の用語をインターネットで調べられます。
成分表示を見比べる
家庭のシャンプーとコンディショナーの全成分表示を並べ、洗浄剤にあたる名前(ラウリル硫酸Naなど)と陽イオン性界面活性剤にあたる名前(ベヘントリモニウムクロリドなど)を探す。岡山県立天城高校の課題研究の表には、この2つがそれぞれ並んでいる[9]。ただし高校生の研究であり、製品による違いも大きい。表示の名前と働きの対応は、成分辞典などで確認してから判断する。
資料を読むなら
日本化粧品技術者会の化粧品用語集「ヘアリンス」の項目が、成分と働きを簡潔にまとめている。牛乳石鹼共進社の2023年11月14日のニュースリリースは、石けんのきしみ研究の内容を日本語で読める。英語の解説記事(Science Line, 2014)は、陽イオン界面活性剤の働きを一般向けに説明している。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の参照番号は、下のリストの番号に対応します。石けんのきしみ([5])は企業の単独研究、リンスとコンディショナーの呼び分け([7])は二次資料に基づいています。
- 日本化粧品技術者会 化粧品用語集「ヘアリンス」 https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1588 (コンディショナーの定義・毛髪への吸着)
- 化粧品成分オンライン「界面活性剤」「陽イオン性界面活性剤」 https://cosmetic-ingredients.org/surfactants/ (界面活性剤の分類と、洗浄・コンディショニングの働き。二次資料)
- K. Storr, How does hair conditioner work?, Science Line(2014年1月9日) https://scienceline.org/2014/01/how-does-hair-conditioner-work/ (米国の解説。電荷による吸着)
- coloria「リンスインシャンプー解説」 https://coloria.jp/magazine/articles/w7KQw (洗った後に整える設計・リンスインシャンプー。二次資料)
- 牛乳石鹼共進社 ニュースリリース(2023年11月14日) https://www.cow-soap.co.jp/common/pressrelease/202311/SoapHairSqueakinessCause.pdf (石けん洗髪後のきしみの研究)
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)クラシエ 濡れ髪ダメージ研究 https://newswitch.jp/p/4743 (濡れた髪と摩擦。報道)
- @nifty温泉「リンスとコンディショナーの違い」 https://onsen.nifty.com/onsen-matome/250212776554/ (名前の使い分け。二次資料)
- TKG 日英辞典「リンス」 https://www.tkgje.jp/entries/20000/20476_rinsu.html (rinseの意味の変化)
- 岡山県立天城高校 SSH課題研究「毛髪へのダメージについて」(2014年) https://www.amaki.okayama-c.ed.jp/SSH_2014/afp/H25/0406.pdf (成分表示の例。高校生の研究)
なおした ところ
更新履歴
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