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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

スピーカーに こえを むけると マイクに なる?

スピーカーに声を向けると、マイクになる? ── ドラムの低音を拾うSubkickまで

スピーカーとダイナミックマイクは逆向きの関係にある ── コイル・磁石・振動板と、ベルの電話・Subkick

分野:技術

スピーカーに むかって こえを だすと、スピーカーが マイクの やくめを する ことが あります。おとを だす きかいが、おとを ひろう きかいにも なるのです。

どうして、そんな ことが おきるのでしょう。ふたつの きかいの なかみを くらべて、ふるい でんわや ドラムの ろくおんの はなしまで たどると、わけが わかります。

スピーカーに向かって声を出すと、スピーカーがマイクのように働くことがあります。音を出す道具が、音を拾う道具にもなるのです。

なぜそんなことが起きるのでしょうか。スピーカーとマイクの中身を比べ、同じ型の装置を「話す」側にも「聞く」側にも使ったベルの電話や、ドラムの録音に使われる技まで見ていくと、その理由と、逆向きに使うときの得意・不得意が分かります。

最も一般的なダイナミック型スピーカーは、ダイナミックマイクと基本構成が同じで、マイクはそれを逆向きに動かした発電機のように働く[1]。つまり、スピーカーは条件しだいでマイクとして使える。

では、構成が同じなのになぜ別の製品として売られているのか。このメモでは、両者の原理、1876年のベルの電話、その後の送話器の変遷、逆向き使用の限界とSubkickの例を、複数の資料をつき合わせて読み、向きが逆でも用途で設計が分かれることが分かるところまでを示す。

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1. でんきを おとに かえる きかいと、おとを でんきに かえる きかい

1. スピーカーは「電気を音に」、マイクは「音を電気に」

1. 電流で動くスピーカーと、音で電圧を生むダイナミックマイク

スピーカーは、でんきを おとに かえます。マイクは、はんたいに おとを でんきに かえます。

スピーカーの なかには、まるい うすい まくと、まいた どうせんと、じしゃくが あります。どうせんに でんきが ながれると、じしゃくの ちからで まくが まえに うしろに ふるえます。その ふるえが くうきを ゆらして、おとに なります[1]。

ダイナミックマイクにも、まくと どうせんと じしゃくが あります。こえで まくが ふるえると、どうせんが じしゃくの なかで うごいて、でんきが うまれます[2]。

ふたつは、ぶひんの ならびが そっくりです。はたらく むきだけが、はんたいなのです。

スピーカーの中で起きていること

ダイナミック型のスピーカーでは、ボイスコイルというコイルに電流を流します。すると、永久磁石との相互作用でコイルが前後に動きます。コイルは振動板(コーン)につながっているので、コーンも動いて空気を揺らし、それが音になります[1]。

ダイナミックマイクの中で起きていること

ダイナミックマイクには、振動板に小さなコイルがついています。音の波で振動板が動くと、コイルも磁石の磁界の中を動き、電磁誘導によってコイルに変化する電圧が生じます[2]。

こうして並べると、振動板・コイル・磁石という3つの部品が共通していることが分かります。

ダイナミック型スピーカーでは、ボイスコイルに電流を流すと永久磁石との相互作用(電磁力)でコイルが前後に動く。コイルはダイアフラムまたはコーンにつながっているため、これが空気を押して音波になる[1]。

ダイナミックマイクはこの逆の経路をたどる。音波が振動板を動かし、振動板につながったコイルが磁界の中で動くと、電磁誘導によってコイルの両端に変化する電圧が生じる[2]。入力が電気か音かが違うだけで、部品は振動板・コイル・磁石の3つに共通する。では、この対応は、昔の人も使っていたのだろうか。

2. ほんとうに マイクの かわりに できるの?

2. 構造が似ているなら、スピーカーをマイクとして使えるのか

2. 構造の対応から、スピーカーを発電機として使う

ぶひんが おなじなら、スピーカーに こえを むけても、でんきが うまれるはずです。じっさい、ふつうの スピーカーは つくりが ダイナミックマイクに にて いて、はんたいに つかう ことが できる と いわれます[2]。

がっきの おみせの せつめいでも、ダイナミックマイクは コイルと じしゃくで できていて、スピーカーと ちょうど はんたいの はたらきを する と かかれて います[3]。

ただし、「できる」と「じょうずに できる」は べつの はなしです。そのことは、あとで みて いきます。

中身が共通なら、スピーカーに声を向けると、コイルが動いて電気が生まれるはずです。実際、一般的なスピーカーは構造がダイナミックマイクに似ているので、逆向きに使うとマイクとして働くと説明されています[2]。

スピーカーの解説でも、いちばん一般的なダイナミック型のスピーカーは、ダイナミックマイクと基本的な構成が同じで、マイクのほうは逆向きに、つまり発電機のように働くと書かれています[1]。日本の楽器店の解説も、ダイナミックマイクはコイルと磁石でできていて、スピーカーとちょうど逆のはたらきをしていると述べています[3]。

英語と日本語の別々の資料が、どちらもスピーカーとダイナミックマイクの構造が似ていると説明しています。

この構造の対応は、複数の資料に同じ形で書かれている。Wikipediaの「Microphone」の項は、一般的なスピーカーは振動板・コイル・磁石を持ち、構造がダイナミックマイクに似ているので、逆向きにマイクとして使えるとする[2]。「Loudspeaker」の項も、最も一般的なダイナミック型スピーカーがダイナミックマイクと基本構成を共有し、マイクは逆向きの発電機として働くと述べる[1]。

日本の楽器店の解説も、ダイナミックマイクはコイルと磁石でできており、スピーカーとちょうど逆のはたらきをするとする[3]。ここでは、複数の解説が共通して述べる仕組みを紹介している。では、この対応は、電話の時代にはどう使われていたのか。

3. むかしの でんわは、はなす ほうにも きく ほうにも おなじ かたちを つかった

3. ベルの電話は、同じ型の装置を「話す」側にも「聞く」側にも使った

3. 1876年のベルの電話 ── 同じ型の装置が送話と受話を担った

1876ねん、ベルという 人が つくった でんわき が あります。この でんわきは、いまの スマホとは ちがって、はなす ほうと きく ほうが おなじ かたちでした。

はなす ときは、こえで てつの うすい いたが ふるえて、でんきが うまれます。きく ときは、でんきで いたが ふるえて、くうきを ゆらし、こえが きこえます[4]。

おなじ かたちの でんわきを、はなす ほうと きく ほうに つかって いた のです。スピーカーと マイクが にて いる こと を、でんわが さきに つかって いた ようです。

ただし、ベルの でんわは コイルが うごく タイプでは なく、てつの いたと でんじせきを つかった つくりです。「げんりの なかま」と おぼえて ください。

鉄の板と電磁石でできた電話機

スミソニアン博物館が所蔵する1876年のベルの電話機は、鉄の振動板、電磁石、永久磁石でできています。1876年11月26日にボストンとセーラムの間で行われた実演で使われた2台のうちの1台とされます[4]。

送話に使うと、口もとの音で振動板が動き、電磁石に変動する電流が生じます。受話に使うと、電流で振動板が動いて空気が震えます[4]。つまり同じ型の装置が、送話側にも受話側にも使われました。

ただし、この電話機はコイルが動くダイナミック型ではなく、鉄片と電磁石を使う型です。ダイナミックマイクとは同じ形ではなく、「原理の仲間」と考えるのが正確です。

この対応を電話の時代に実際に使ったのが、ベルである。スミソニアン国立アメリカ歴史博物館が所蔵する1876年の電話機は、鉄の振動板・電磁石・永久磁石からなり、1876年11月26日のボストン〜セーラム間の実演で使われた2台のうちの1台とされる[4]。

この装置は、送話に使うと口もとの音波が振動板を動かして電磁石に変動電流を誘起し、受話に使うと電流で振動板が動いて空気を震わせた。同じ型の装置が送話にも受話にも使われたわけだ[4]。ただし、これは鉄片と電磁石による型で、コイルが動くダイナミック型とは構造が異なる。両者は、電気信号と振動を相互に変換できるという原理を共有する関係にある。

4. はなす ほうの ぶひんは、どう かわって いったの?

4. 同じ部品だった電話から、マイクはどう分かれていったか

4. 送話器の変遷 ── 磁石式から炭素式、そしてコンデンサーマイクへ

ベルの でんわは、1877ねんに おみせの サービスにも つかわれました。でも その あと、はなす ほうの ぶひんは、たんそを つかった ものに かわって いきます[4]。きく ほうは、じしゃくの かたちが のこりました。

1916ねんには、ウェンテという ぎじゅつしゃが、コンデンサーマイクを つくりました。それまでの たんその ものより、ひろい はんいの おとを、しぜんに ひろえた と いわれます[5]。

はなす ほうだけ、あたらしい しくみに うつって いった のです。

送話器は炭素式へ、受話器は磁石式のまま

ベルの電話機は1877年の商業サービスでも使われましたが、のちに送話器は炭素式のものに置き換わりました。一方、受話器には磁石式のものが残りました[4]。

コンデンサーマイクの登場

1916年には、ウェスタン・エレクトリック社のウェンテが、コンデンサーマイクを発明しました。それまでの炭素式より特性が平らで、自然さを保ったまま音を拾える、初めての本格的な高品質のマイクだったと説明されています[5]。

では、送話側の部品は、その後どうなったのか。ベル式の磁石送話は1877年の商業サービスで使われたが、のち送話器は炭素式(ブレイク型、エジソンの原理)に置き換わり、受話器は磁石式が残った[4]。送話と受話で、同じ原理の部品が別々の道をたどったことになる。

1916年にはウェスタン・エレクトリックのE. C. ウェンテがコンデンサーマイクを発明した(特許出願は同年12月20日、米国特許1,333,744)。炭素式より特性が平らで、自然さを保つ高品質の拾音を初めて可能にしたとされる。最初の設計は、直径1.9インチ・厚さ22ミクロンの振動板で、帯域は15kHzとされる[5]。

ここまでで、送話の側は部品の方式が分かれた。では、逆向きの使用に戻ると、得意・不得意はどう出るのか。

5. ぎゃくに つかうと、ぜんぶ うまく いくの?

5. 逆向きでも使えるが、得意・不得意がある

5. 逆向き使用の限界と、ドラム録音のSubkick

スピーカーを マイクに すると、いつでも きれいな おとに なる わけでは ありません。やすい スピーカーを マイクの かわりに つかう ことは ありましたが、きれいな おとを ひろう ためには むかない、という ことも いわれます。

スピーカーは、くうきを うごかす ために つくられた きかいです。マイクは、ちいさな おとを ひろう ために つくられた きかいです。つくる ときの ねらいが ちがうので、とくいな ことも ちがいます。

ただし、この ちがいを うまく つかった れいも あります。ドラムの ろくおんでは、ふるくから、スピーカーを バスドラムの まえに おいて、ひくい おとを ひろう わざが あります[6]。ヤマハは、この わざを せいひんに して「サブキック」と いう なまえで うりだしました[6]。

向きは逆でも、設計の目的が違う

スピーカーをマイクにしても高音質とは限らず、安価なスピーカーがマイク代わりに使われてきたものの、高い忠実度が求められる用途には向かないという指摘があります。ただしこれは掲示板で出た意見なので、一例として受け取るのがよいでしょう。

スピーカーは空気を動かして音を出すために、マイクは小さな音を拾うために設計されます。同じ部品でも、設計の目的が違えば得意・不得意が出ると考えられます。一方でダイナミックマイクは、構造が単純で丈夫で電源が要らないという長所も、日本の楽器店の解説で挙げられています[3]。

得意を生かした例、Subkick

ドラムの録音には、ヤマハのNS-10Mのウーファーなどのスピーカーをバスドラムの前に置き、スピーカーケーブルをDI経由でマイクプリアンプにつないで低音を拾う、昔からの技があります[6]。

ヤマハはこれを製品にして、SKRM-100 Subkickを出しました。6.5インチのスピーカー兼マイクを10インチのシェルに収めたもので、レビュー筆者の測定では低音の約63Hzにピークがあり、筆者は通常のバスドラム用マイクと混ぜると低音を補えたと述べています[6]。

スピーカーをマイクに使うと高音質になるとは限らない。安価なスピーカーがマイク代わりに使われてきたが、高忠実度の用途には向かないとの指摘がある。ただし、この指摘は掲示板で出た意見の一例にとどまる。設計目的の違い(スピーカーは空気を動かすため、マイクは小さな音を拾うため)によって得意・不得意が分かれる、という程度に読むのが適切だろう。対照的に、ダイナミックマイクは構造が単純で丈夫、電源が不要という利点が、日本の楽器店の解説で挙げられている[3]。

では、その性質をあえて生かした例はあるのか。ドラム録音には、Yamaha NS-10Mのウーファーなどのスピーカーをバスドラムの前に置き、そのケーブルをDI経由でマイクプリアンプに入れて低音を拾う古くからの技がある。ヤマハはこれを製品化したSKRM-100 Subkick(6.5インチのスピーカー兼マイクを10インチのシェルに収める)を出した。レビュー筆者の測定では低音の約63Hzにピークがあり、筆者は通常のバスドラム用マイクと混ぜると低音を補えたと述べている[6]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

スピーカーの なかに じしゃくが あるか、たしかめて みましょう。つかって いない ちいさな スピーカーが あれば、うしろ がわに、クリップを ちかづけます。じしゃくが あれば、クリップが くっつきます。つよく おしたり、わったり は しないでください。じしゃくは、スマホや カードには ちかづけないでください。

今日できること

スピーカーの中に磁石があるか、確かめてみましょう。使っていない小さなスピーカーがあれば、うしろ側にクリップを近づけます。磁石が入っていれば、くっつきます。強く押したり、分解したりはしないでください。磁石は、スマホやカード類には近づけないようにします。

資料を読むなら

ベルの電話機は、スミソニアン国立アメリカ歴史博物館の収蔵品ページ(英語)に写真があります。ドラム録音の話は、Tape Opのレビュー記事(英語)にあります。日本語では、楽器店のダイナミックマイクの解説が読みやすいです。

今日できること

使っていない小さなスピーカーのうしろ側に、クリップを近づけてみる。磁石があればくっつく。強く押したり分解したりしない。磁石はスマホ・カード類から離す。

資料案内

ベルの電話機は、参考情報源のスミソニアン国立アメリカ歴史博物館の収蔵品ページ(英語)で見られる。ドラム録音のSubkickは、Tape Opのレビュー記事(英語)に詳しい。日本語では、島村楽器のダイナミックマイクの解説が読みやすい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

百科事典・博物館・事業者・専門誌の記述を突き合わせた。一部は検索結果の抜粋にもとづく。

  1. Wikipedia, "Loudspeaker" https://en.wikipedia.org/wiki/Loudspeaker (スピーカーの原理、マイクとの共通構成)
  2. Wikipedia, "Microphone" https://en.wikipedia.org/wiki/Microphone (ダイナミックマイクの原理、逆向き使用)
  3. 島村楽器「ダイナミックマイク」解説 https://www.shimamura.co.jp/shop/dainichi/?p=3888 (スピーカーと逆のはたらき、長所)
  4. Smithsonian National Museum of American History, "Alexander Graham Bell's Large Box Telephone" https://www.si.edu/object/alexander-graham-bells-large-box-telephone:nmah_704159 (ベルの電話機の送話・受話、のちの炭素式)
  5. ETHW, "Edward C. Wente" https://ethw.org/Edward_C._Wente (コンデンサーマイクの発明)
  6. Tape Op, "Yamaha SKRM-100 Subkick" https://tapeop.com/reviews/gear/42/skrm-100-subkick (Subkickとスピーカーをマイクにする技)

なおした ところ

更新履歴

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