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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

いしがきの いしは、よこに そろえる? ななめに おく?

石垣の石は、横にそろえるか斜めに置くか:布積みと谷積みでちがうこと

横目地が通る布積みと、石を斜めに置く谷積み:せり持ち作用と排水から見る石の並べ方

分野:技術

おなじ いしを つかっても、ならべかたを ななめに すると、いしどうしが おしあって くずれにくくなる、と いわれています。ところが、いしの すきまが ひろいと、その ききめは ほとんど のぞめない、とも かかれています。

いしを どう おくと、なにが かわるのでしょう。この メモでは、いしの ならべかた、おしあう ちから、かわで みられる れい、みずの ぬけみちから、いしがきの つみかたの ちがいが わかります。

国土交通省の手引きによると、石を斜めに置いて積む「谷積み」では、石どうしが押し合って、横にそろえる「布積み」より安定すると言われています。ところが同じ手引きは、谷積みでも石のすき間が2〜3cmも開くと、その効き目はほとんど期待できないとも書いています。

置き方を変えるだけで何が変わり、どこまで頼れるのでしょうか。この記事では、石の並べ方、押し合う力、川で見られる例、水の抜け道から、石垣の積み方のちがいが分かります。

国土交通省の手引きは、石を斜めに置いて積む谷積みを、石材どうしに「せり持ち作用」が働き、布積みよりも安定性があると言われる方法として紹介している。しかし同じ手引きには、目地幅が2〜3cmもある谷積みの護岸は、かみ合わせが不十分で構造的に弱いという記述もある[1]。

石の置き方で何が変わり、その利点はどんな条件のもとで成り立つのか。この記事では、石の並べ方、せり持ち作用、河川護岸の例、排水の仕組みから、石垣の積み方のちがいが分かる。

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1. よこの せんが とおる いしがきと、ななめに おいた いしがき

1. 横の線が一本に通る石垣と、斜めに置いた石垣

1. 横目地が一直線に通る布積みと、斜めに置く谷積み

いしがきを じっと みると、いしと いしの あいだに すじが はしって います。この すじを、目地めじと いいます。

めじが よこに、まっすぐ 1ぽんの せんに なって とおる つみかたが あります。いしを 1だんずつ おなじ たかさに そろえて つむ、ぬのづみです。はままつ城じょうの いしがきは、ぬのの よこ糸が とおった ように つんだ ぬのづみだと、はままつしの ページに かいて あります[4]。

もうひとつは、いしを ななめに おいて、たにの かたちが できるように つむ たにづみです[1]。

おなじ いしがきでも、よこに そろえるか、ななめに おくかで、めじの すがたが ぜんぜん ちがいます。では、ななめに おくと、なにが いいのでしょう。

石垣をじっと見ると、石と石の間にすじが走っています。この石どうしの継ぎ目を目地と呼びます。

各段の高さをそろえて積み、横目地が水平に一直線になる積み方が布積みです[1]。浜松市の資料は、浜松城の石垣にこの積み方が使われていて、一段ずつ横に並べながら、布の横糸が通ったように積むと説明しています[4]。

これに対して谷積みは、一定の谷ができるように、石を斜めにして積む方法です[1]。

熊本市の資料は、石の並べ方による分け方として、この2つに「乱積み」を足しています。乱積みは、石の大きさがそろっていなくて、横目地が通らない積み方です。谷積みは「落積み」とも呼ばれると書かれています[2]。同じ石垣でも、目地がどう走るかで、積み方に名前がつくわけです。

目地の走り方が変わると、石に何が起きるのでしょうか。

石垣の石と石の継ぎ目が目地である。各段の高さをそろえて積み、横目地が水平に一直線になる積み方が布積みで、浜松市の資料は、浜松城の石垣に、石を一段ずつ横に並べて据え、布の横糸が通ったように積む技法が使われていると説明する[1][4]。

対する谷積みは、一定の谷ができるように石を斜めにして積む方法である[1]。熊本市の資料は、石材の並べ方による分類として、横目地が通る布積み、石が不揃いで横目地が通らない乱積み、石を斜めに積み上げる谷積み(落積みとも)の3つを挙げる[2]。

要するに、この分類は「目地が横に通るか、通らないか、斜めに走るか」という並べ方の区別である。では、目地を斜めに走らせることで、石には何が起きるのか。

2. ななめに おくと、いしどうしが おしあうって ほんとう?

2. 斜めに置くと、石どうしが押し合うと言われるのはなぜか

2. せり持ち作用は、何を前提にして働くのか

こくどこうつうしょうの てびきには、たにづみでは いしどうしに「せりもちさよう」が はたらく、と かいて あります。ななめの いしが おしあって、くずれにくくする はたらきの ことです。そして、ぬのづみより あんていして いると いわれて います[1]。

りょうてを つかって、かんがえて みましょう。ゆびを まっすぐ ならべるだけだと、かるく ひっぱるだけで はなれます。ゆびを くみあわせると、おたがいに ひっかかって、はなれにくく なります。ななめの いしも、となりあう いしと かみあう ように おさまると、ささえ あうのかも しれません。

ただし ほんとうの いしは、ゆびのように まがりません。それに、てびきは「いわれている」と かいて いて、たにづみなら ぜったいに つよい、とは かいて いません。

しかも、めじの はばが 2〜3センチも ひろがって、いしの かみあわせが ゆるいと、せりもちさようは ほとんど きたいできず、つくりが よわい と てびきは いいます[1]。ななめに おくだけでは たりず、いしを ぴったり かみあわせることが だいじなのです。

国土交通省の手引きは、谷積みでは石材どうしに「せり持ち作用」が働き、布積みよりも安定性があると言われている、と説明しています。せり持ち作用とは、斜めに置いた石が互いに押し合って、崩れにくくする作用のことです[1]。

両手の指で考えると、イメージしやすくなります。指をまっすぐ並べただけだと、軽く引くだけで離れますが、指を互い違いに組むと、引っかかり合って離れにくくなります。斜めに置いた石も、となりの石と組み合うように収まると、支え合うのかもしれません。ただし石は指のようには曲がらないので、これは大まかなたとえです。

この手引きは「言われている」という書き方で、谷積みなら必ず強いとまでは書いていません。それどころか、谷積みでも目地幅が2〜3cmもあって石のかみ合わせが不十分な護岸は、せり持ち作用がほとんど期待できず、構造的に弱いと指摘しています[1]。

斜めに置くことと、石をぴったりかみ合わせること。この2つは、谷積みの良さに関わるようです。では、谷積みはどこで見られるのでしょうか。

国土交通省の手引きは、谷積みの特徴をこう説明する。石材相互に「せり持ち作用」が働き、布積みよりも安定性があると言われている。せり持ち作用とは、斜めに置かれた石どうしが押し合い、全体を崩れにくくする作用を指す[1]。

ここで注意したいのは、断定の強さである。手引きは「言われている」という表現にとどめており、谷積みが布積みより必ず強いとは述べていない。しかも同じ手引きは、目地幅が2〜3cmもあって石どうしのかみ合わせが不十分な谷積みの河川護岸を例に、せり持ち作用がほとんど期待できず、構造的に弱いと指摘している[1]。

つまり、斜めに置くだけでなく、石が実際にかみ合っていることも必要である。そのため、谷積みという名前だけで強度は判断できない。では、この積み方は、実際にはどこで見られるのか。

3. かわの ごがんと おしろには、どんな つみかたが ある?

3. 川の護岸と城には、どんな積み方がある?

3. 川の護岸と城の石垣の積み方:石の性質も積み方に関わる

こくどこうつうしょうの てびきには、かわの ごがんの たにづみが のって います。あきたけんの よこてがわでは、いしを わって かたちを そろえた間知石けんちいしが、たにづみに されて います[1]。

のって いるのは、それだけでは ありません。ほりだした ままの 石を、3こで たにを つくるように おいた れいも あります[1]。

どうして つみかたが ちがうのでしょう。てびきは、いしを わって つかうか、そのまま つかうかで、つみかたが かわる ことが ある、と せつめいします。よこてがわと ひろせがわの れいで、わった いしは たにづみ、ほりだした ままの いしは らんづみに なって います[1]。

おしろでは、ふくいけんの しりょうが れいに あげる まつやま城じょうに、たにづみに ちかい「やはずづみ」が あります。おなじ おおきさの いしを、じめんの かたむきに そって おとしこむように つみ、めじが V字の かたちに つづいて いて あんてい している、と せつめいされて います[3]。

国土交通省の手引きには、谷積みの河川護岸の例が出ています。秋田県の横手川では、割り出した石材(間知石)を谷積みにした護岸があり、手引きには、野面石を3個の石で谷をつくるように積んだ谷積みの図や写真もあります[1]。

なぜ積み方がちがうのでしょうか。手引きは、石をそのまま使うか、割って使うかで、乱積みか谷積みかが変わる場合があると説明します。横手川と宮城県の広瀬川の例では、割った石は谷積み、掘り出したままの石は乱積みになっています[1]。その土地で手に入る石の性質が、積み方を決める一因になるようです。

城にも、谷積みに近い積み方があります。福井県の資料が各地の石垣の例として挙げる松山城の「矢筈積み」は、大きさの同じ石を、地盤の傾斜にそって落とし込むように積み、目地がV字形に連続して安定していると説明されています[3]。谷積みそのものとはいえませんが、斜めに置く工夫は、城と川の両方で使われていたと読めます。

斜めに石を置く工夫は、川の護岸にも城の石垣にも見られます。ところで、石垣には、置き方とは別のちがいもあります。

谷積みの例は、国土交通省の手引きでは河川護岸に多く示される。秋田県の横手川には、割り出した石材(間知石)を谷積みにした護岸があり、野面石を3個の石で谷をつくるように積んだ谷積みも図示されている[1]。

では、なぜ同じ川の護岸でも積み方が分かれるのか。手引きによれば、石材をそのまま使うか割って使うかという違いが生じ、その違いによって乱積みか谷積みかが変わる場合がある。例として、横手川と宮城県の広瀬川では、割って使う石は谷積み、掘り出したままの野面石は乱積みになっている[1]。つまり、積み方は設計者の好みだけでなく、手に入る石の性質にも左右される。

城の例としては、福井県の資料が、日本各地の石垣積みの種類のなかで松山城の矢筈積みを挙げている。大きさの同じ石を、地盤の傾斜にそって順に落とし込むように積み、目地がV字形に連続して安定していると説明される[3]。谷積みに近い形だが、同一とは断定しにくい。

ここまでは、石の「並べ方」の話だった。しかし石垣には、もう一つ別の軸がある。それが石の「加工の程度」であり、水の抜け方に関わってくる。

4. いしの けずりかたと、うらの 小いしは、みずを どう にがす?

4. 石の削り方と裏の小石は、水をどう逃がしているか

4. 加工の程度と裏込石:石垣は水をどう逃がすか

ぬのづみ、たにづみは、いしの「ならべかた」の ちがいです。いしを どれだけ けずるかは、また べつの ことです。

しぜんの いしを ほとんど けずらずに つむ ものが あります。いしの かたちが ふぞろいなので、めじに すきまが たくさんでき、みずが ぬけやすい、と ふくいけんの しりょうは せつめいします[3]。

こまかく けずって ぴったり くっつける つみかたも あります。すきまが すくない ぶん、みずが ぬけにくく なります。そこで、みずを だす あなが つくられる、と かかれた かいせつも あります[5]。

いしがきには、うらがわに ちいさな 石を つめた「うらごめいし」を つかう ものも あります。いしの うらに すきまを つくって、みずが とおりやすく する ものだと、こくどこうつうしょうの てびきに あります[1]。

石垣には、「並べ方」とは別に「石をどれだけ加工するか」という分け方もあります。熊本市の資料では、自然石をほとんど加工せずに積む野面積み、粗く割った石を積む打込接、細かく加工した石を積む切込接の3つです[2]。布積みと加工の程度は組み合わせることができて、福井県の資料は、福井城の石垣が布積みで、打込みハギと切込みハギの2種類でできていると説明しています[3]。

加工のちがいは、水の抜け方に関わります。野面積みは石の形が不揃いで、目地にすき間が多くできるので、排水がよいとされます[3]。逆に石を細かく削って密着させる切込みについて、Weblioの解説は、石材どうしが密着して排水できないため排水口が設けられると説明しています[5]。

石垣には、裏側に小石を詰めて水を逃がす工夫をしたものもあります。国土交通省の手引きによると、積んだ石の裏に詰める小さな石が「裏込石」で、石積みの裏面に通水をよくするためのものです[1]。石の後ろに水の通り道を作る例として読めます。

石垣には、並べ方とは独立した、石の加工の程度による分類がある。熊本市の資料は、自然石をほとんど加工せずに積む野面積み、粗割りした石を積む打込接、細かく加工した石を積む切込接の3つを挙げる[2]。この分類と布積み・谷積みは別の軸であり、組み合わせも可能である。福井県の資料は、福井城の石垣は布積みで、打込みハギと切込みハギの2種類の仕上げでできていると説明する[3]。

では、加工の程度は、水の抜け方とどう関わるのか。福井県の資料によれば、野面積みは石が不揃いで目地にすき間が多くできるため排水がよい。一方で、石を削って密着させる切込みは、石どうしの間に隙間が残らないので、水が抜けにくい。Weblioの解説は、密着して排水できないため排水口が設けられると説明している[3][5]。

石垣には、背後に排水の構造を備えるものもある。国土交通省の手引きによれば、裏込石は石積みの裏面に詰める石で、通水をよくする目的をもつ[1]。したがって、石垣の安定は「石の置き方」と「水の逃がし方」の両面から見る必要がある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

さんぽの とき、いしがきや、かわの いしづみを さがして みましょう。めじが よこに とおって いるか、ななめに はしって いるか、ばらばらかを みて みます。かわの ちかくでは、みずに ちかづかず、みちの くるまにも きを つけて、とおくから みるだけに します。

でかけて できること

おしろの いしがきを みる ときは、いしの おおきさと、めじの すがたを くらべて みましょう。

しりょうを よんで みる

こくどこうつうしょうの てびきや、くまもとしの しりょうが、ネットで みられます。

今日できること

散歩のとき、石垣や、川の石積みを探してみましょう。目地が横に通っているか、斜めに走っているか、ばらばらかを見ます。川の近くでは水に近づかず、道路の車にも気をつけて、遠くから見るだけにします。

出かけてできること

城の石垣を見るときは、石の大きさと、目地の走り方を見比べてみましょう。石が大きいところと小さいところで、目地の様子が変わっているかもしれません。

資料を読んでみる

国土交通省の「石積み構造物の手引き」や、熊本市・福井県の石垣の資料は、インターネットで公開されています。

近くで観察する

石垣や川の護岸を見て、目地が横に通るか、斜めに走るか、不揃いかを分類してみる。同じ川でも、場所によって積み方がちがうことがあるか確かめられる。川の近くでは水に近づかず、道路にも注意して、離れた場所から見る。

資料を読んでみる

国土交通省の「石積み構造物の手引き」には、河川護岸の谷積みの図や写真、目地幅が大きいときの注意が載っている。熊本市の「石垣の構造」は、石の並べ方と加工の程度の2つの分類を一枚で比べるのに向く。福井県の山里口御門の石垣修復の資料には、矢筈積みなど石垣積みの種類の説明がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で参照した資料です。積み方の名前や説明は、資料によって少しずつちがいます。

  1. 国土交通省「河川の石積み(石積み構造物の手引き)」 https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/stone-structure/s-1.pdf (布積み・谷積み・せり持ち作用・裏込石・河川護岸の例)
  2. 熊本市「石垣の構造」(熊本城調査研究センター資料) https://www.city.kumamoto.jp/kiji00361089/3_61089_423504_up_scz6s8hv.pdf (積み方の分類)
  3. 福井県「山里口御門石垣修復」資料 https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/sokou/kennto/yamazato_gensetsu_d/fil/siryou3.pdf (矢筈積み・野面積みの排水・福井城の石垣)
  4. 浜松市「浜松城公園 石垣」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kouen/isigaki/isigaki.html (浜松城の布積み)
  5. Weblio「石垣の積み方」 https://www.weblio.jp/content/%E7%9F%B3%E5%9E%A3%E3%81%AE%E7%A9%8D%E3%81%BF%E6%96%B9 (切込みと排水口の一般向け解説)

なおした ところ

更新履歴

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