このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

レシートの かみは、インクが ないのに どうして もじが でるの?

レシートに使われる感熱紙は、熱で文字を出す

感熱紙のしくみ:ロイコ染料と顕色剤、サーマルヘッドの熱と、色が消える理由

分野:技術

おみせで もらった レシートを、さいふに いれっぱなしに したら、しろく なって いた。そんな ことは ありませんか。そもそも あの かみに、インクは はいって いるのでしょうか。

買い物のあとに出てくるレシートは、印刷機の中にインクもリボンも見当たらないのに、黒い文字がくっきり並んでいます。しばらくして財布から出すと、その文字が薄れていることもあります。色はどこから来て、なぜ消えるのでしょうか。

レシートや券売機の切符に使われる感熱紙は、インクを使わずに文字を出す。色をつくるのは、紙に最初から塗ってある無色の染料と酸性の物質である。発色のしくみと、サーマルヘッドの構造、色あせの要因を、メーカー・学会・業界の資料を突き合わせて整理する。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. インクは、どこに あるの?

1. インクもリボンも要らない印字

1. 感熱方式:インクを使わない印字

ふつうの プリンターには、インクや、インクを ぬった リボンが はいって います。レシートを だす きかいには、それが ありません。[1]

かわりに、ちいさな ヒーターが かみに ふれて、ねつを つたえます。すると、ふれた ところだけ 黒く なります。

ぬれた ところが にじんだり、インクが とび ちったり しないので、もじが くっきり します。スイッチを いれて すぐ うごくのも とくちょうです。[1]

一般的なプリンターは、インクやインクを含ませたリボンを紙に押しあてて印字します。ところがレシートを出す機械には、そのどちらも入っていません。熱を出す部品が、紙に直接ふれるだけです[1]。

この方式には、いくつか利点があるとされています。熱源を紙に接触させるので、インクのにじみや飛び散りが起きにくく、印字がはっきりします。電源を入れてすぐに印字でき、インクやカートリッジが要らないぶん、機械の構造も簡単になります[1]。

では、インクがないのに、なぜ黒くなるのでしょうか。答えは、機械ではなく紙の側にあります。

サーマル方式の印字は、熱源を媒体に接触させて行う。インクの「滲み」や「飛び散り」が起こりにくく、電源投入とほぼ同時に印字でき、リボンやカートリッジも不要で構造が簡単になる利点が、業界の解説で挙げられている[1]。

この方式で文字になるのは、熱を受けた場所の色が変わる紙、すなわち感熱紙を使うからである。色の元は機械ではなく紙の側に用意されている。

2. かみの なかには、なにが あるの?

2. 紙には、無色の染料と酸が別々に塗ってある

2. ロイコ染料と顕色剤:発色層の中身

レシートの かみの おもてには、ふつうは 色の ない 染料せんりょうの こなと、酸さんの せいしつを もつ こなが、べつべつの つぶで ぬって あります。[2]

ふだんは、2つは はなれて いるので、色は つきません。ねつが かかると とけて、まざります。まざると、黒い 色が でます。[2] [3]

むらさきキャベツの しるに すを かけると 色が かわる、というのに すこし にて います。ただし ほんとうは、こちらは しるでは なく、かたい つぶが ねつで とけて おこる はなしです。

感熱紙の表面には、酸にふれると黒くなる性質をもつ染料(ロイコ色素)と、酸性の物質(顕色剤)が塗ってあります。ふだんは、どちらも固体の粒として分かれているので、反応は起こりません[2]。

そこに熱が加わると、2つが溶けて接触し、化学反応が起こって黒く発色します[3]。発色を速めるための物質などを加えることもある、と製紙メーカーの資料に書かれています[3]。

紫キャベツの汁に酢を加えると色が変わるのと、酸で色が出るという点は似ています。ただし感熱紙では、液体ではなく固体の粒が熱で溶けて出会う点が違います。

感熱紙の発色層には、酸に触れると黒くなる性質のロイコ色素と、酸性の化合物である顕色剤が塗られている。両者は常温では別々の固体で、熱を受けると溶融・接触し、反応して発色する[2][3]。発色を速める増感剤なども加えられる[3]。

この反応は、酸性・アルカリ性によって色が変わる性質をもつ。関東化学の解説では、発色した紙をアルカリ性の液に浸すとロイコ体に戻り、白くなると説明されている[5]。色を「足した」というより、無色の状態から切り替えたと考えるほうが実態に近い。

4. どんな ところで つかわれて いるの?

4. レシートだけでなく、切符や病院の出力にも

4. 普及の経緯と用途

この しくみは、レシートの ほかにも つかわれて います。きっぷや、ATMの めいさいなどです。[1]

びょういんで、からだの しゃしんを だす ところでも つかわれる ことが あると いわれます。[1]

ひろまった のは、1980ねんだいの ファクシミリから、と いわれて います。[1]

感熱記録は、1980年代にファクシミリ用として広がり始めたといわれます。今ではレシートのほか、切符、ATMの明細、医療でのX線・CT・MRIの画像出力などにも使われています[1]。

インクを補充する手間がなく、構造も簡単なので、決まった場所に置かれて短い文字や画像を大量に出す機械に向いていたのでしょう。ただ、その使い道の広さは、紙の性質と裏表でもあります。

サーマルヘッドを用いた感熱記録は、1980年代にファクシミリ用が牽引役となって急速に普及した。現在は切符、レシート、ATM明細のほか、医療のX線・CT・MRIの出力にも使われる[1]。ここで言えるのは普及の時期であり、原理の発明の時期ではない。

インクを持たず、構造が簡単で、電源投入直後から使える[1]。こうした性質が、据え置きの端末に採用される理由として、資料の記述と整合する。次章の弱点も、同じ発色のしくみから出てくる。

5. どうして もじが きえて しまうの?

5. 熱・光・油・薬品で、色が消えることがある

5. 退色の要因:発色の逆向きの変化

この かみは、ねつで 色が でる しくみです。だから、ねつが かかる ところに おくと、ぜんたいが 黒く なったり、もじが うすく なったり する ことが あります。[3]

ひなたの つよい 光や、水、あぶらが つく ことも、もじが きえる げんいんに なると いわれます。[3]

アルコールの ような くすりが ふれた ときも、うすく なる ことが あります。[2]

製紙メーカーの資料には、感熱紙が色あせる要因として、水分や油脂類の接触、高温や高湿の環境、直射日光や蛍光灯の光が挙げられています。溶剤や可塑剤を含むものがふれるときも同じだそうです[3]。

日本化学会の解説によると、時間がたったり、アルコールなどの薬品がふれたりすると、染料と顕色剤が離れるなどして色が消えることがあります[2]。財布の素材や保管環境によっては、退色の要因にふれることがあります。

色を出すしくみが熱で動く反応なので、熱や薬品で動きやすい、と考えると筋が通ります。

三菱製紙の資料は、退色の要因として、溶剤や可塑剤を含むもの・水分・油脂類の接触、高温・高湿の環境、直射日光や蛍光灯などの光を挙げる[3]。日本化学会の解説は、時間経過やアルコールなどの薬品の接触で、ロイコ染料と顕色剤が離れて色が消えると述べる[2]。

発色は、熱で溶けた2つが接触し、色素になる過程だった。したがって、起こりうる変化の例として、接触の状態が崩れる、あるいは色素が無色の形に戻れば、色は消えうる。関東化学の解説は、アルカリ性の液でロイコ体に戻る例を示している[5]。ただし、これは説明のための実験であり、財布の中で起きる変化の内訳を示すものではない。

6. きえにくく する ほうほうは あるの?

6. 消えにくい紙と、保管のくふう

6. 高保存タイプと保管

きえにくい かみも つくられて います。[2]

それでも、ずっと おいて おきたい レシートは、ひなたや あつい ところ、あぶらの つく ところを さけて、しまうのが よさそうです。[3]

色あせへの対策として、保存性を高めた感熱紙も開発されています[2]。メーカーの資料では、適切に保管すれば変色や退色をかなり防げるとされています[3]。

何年もつかは、紙の種類と置き場所で大きく変わります。長く取っておきたい記録なら、コピーをとる、写真に撮るといった手段も考えられます。

退色への対策として、高保存タイプの感熱紙が開発されている[2]。三菱製紙の資料も、適切な保管で変色・退色をかなり防げるとし、高保存性の製品があることを示す[3]。

保存できる期間は、紙の種類や環境で大きく変わる。

自分でも ためして みよう

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちの レシートを 1まい もらって、はさみで 2つに きります。1つは まどの ひなたに、もう 1つは ひきだしの 中に おいて、ときどき くらべて みましょう。すぐには かわらないかも しれません。かわらなくても、それも ひとつの けっかです。

出かけてできること

おみせで もらった レシートと、しばらく まえの レシートを ならべて、もじの 色の こさが ちがうか 見くらべて みましょう。ちがわなくても だいじょうぶです。

今日できること

レシートを1枚もらい、半分に切って、一方は窓の日なたに、もう一方は引き出しの中に置きます。数日ごとに見比べて、文字の濃さに違いが出るかを記録します。違いが出ないこともあり、変化がすぐに出ないこともあるので、変わらなかったときも結果として残します。火やアイロン、薬品は使いません。

出かけてできること

家にある古いレシートと最近のレシートを並べて、文字の濃さや色を見比べてみましょう。紙の種類や保管の仕方で差が出ないこともあります。

もっと調べたいとき

日本化学会「化学だいすきクラブ」の解説や、各メーカーの感熱紙のページに、発色のしくみが載っています。

今日できること

レシートを半分に切り、一方を日なた、もう一方を引き出しに置いて、数日ごとに比べる。結果は、変化した・しなかったのどちらも記録する。加熱や薬品は使わない。

資料を読むなら

  • 日本化学会「化学だいすきクラブ」:発色と退色のしくみの解説[2]
  • セラミックスアーカイブズ「サーマルプリントヘッド」:ヘッドの構造と用途[1]
  • 三菱製紙・京セラ・関東化学の各ページ:退色要因、ヒーター、色戻りの解説[3][4][5]

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料の一覧です。

  1. セラミックスアーカイブズ「サーマルプリントヘッド」(2007) https://www.ceramic.or.jp/museum/contents/pdf/2007_1_03.pdf (ヘッドの構造・利点・用途)
  2. 日本化学会 化学だいすきクラブ「感熱紙の秘密を探る」 https://kdc.csj.jp/learning/item_2224.html (発色のしくみ・色が消える理由)
  3. 三菱製紙「感熱紙」 https://www.mpm.co.jp/ip/thermal-tech.html (発色層・退色の要因)
  4. 京セラ「サーマルプリントヘッドとは」 https://www.kyocera.co.jp/prdct/thermal-printheads/possibilities-technology/detail/about.html (ヒーターの大きさ・温度)
  5. 関東化学 バーチャル実験室 Q27 https://www.kanto.co.jp/jikken/question/q27/explanation.htm (色が戻る反応の説明)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。