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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ゼリーは どうして、とける ものと とけない ものが あるの?

同じゼリーなのに、ゼラチンは口で溶け、寒天は夏でも形を保つのはなぜか

ゼラチンと寒天の違い ── 原料・温度・寒天の由来

分野:技術

なまの パイナップルを いれて ゼリーを つくると、ひやしても かたまらない ことが あります。かんづめの パイナップルなら、ちゃんと かたまります。

ふしぎな この ちがいから、ゼラチンと かんてんが、ぜんぜん ちがう ものだと わかって きます。いっしょに たしかめて みましょう。

生のパイナップルを入れたゼリーは、冷蔵庫に入れてもなかなか固まりません。缶詰のパイナップルなら固まります。同じ果物なのに、なぜでしょうか。

この小さな失敗をきっかけに、ゼラチンと寒天の原料、溶ける温度、それに寒天が京都の伏見で生まれたとされる話までを、資料をつき合わせて見ていきます。

ゼラチンと寒天は、どちらもゼリー状に固める材料だが、ゼラチンは動物由来のたんぱく質[1]、寒天は紅藻類由来の多糖で、たんぱく質ではない[2]。この原料の違いが、固まる・溶ける温度、生のパイナップルとの相性、酸への強さの違いとして現れる。

このメモでは、生パイナップルでゼラチンだけが固まらなくなる理由[6][3]から入り、温度の違い、そして寒天が1658年頃に伏見で生まれたとされる話[7]と、確かな記録として残る部分[8]を区別してたどる。

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1. なまの パイナップルを いれると、どうなるの?

1. 生のパイナップルを入れると、ゼラチンは固まりにくくなる

1. 生のパイナップルを入れると、ゼラチンのゼリーは固まらなくなる

ゼラチンで ゼリーを つくる とき、なまの パイナップルや キウイを いれると、かたまらなく なります[6]。

この くだものには、ゼラチンを こわして しまう ものが はいって いるからです。

ぐつぐつ にて からなら だいじょうぶです。かんづめも かたまります[6]。ねつを くわえると、こわす ちからが なくなると かんがえられます。

缶詰なら固まるという手がかり

ゼラチンメーカーの資料には、生のパイナップルやキウイフルーツにはゼラチンを分解する酵素が入っていて、ゼリーが固まらなくなると書かれています[6]。対策は、果物を一度煮るか、缶詰を使うことです。

缶詰は加熱されているので、酵素が働かなくなっていると考えられます。加熱すれば大丈夫、という点が、この現象を考える手がかりになります。

寒天ではどうなのか

ところが寒天のゼリーなら、生のパイナップルを入れても固まるといわれます[3]。同じ「固めるもの」なのに、なぜ違うのでしょうか。次の章で原料を見ます。

ゼラチンのゼリーに生のパイナップルやキウイフルーツを入れると、ゼラチンを分解する酵素のため固まらなくなる。煮沸するか缶詰を使えば固まる[6]。加熱すると酵素が働かなくなるためと考えられる。

国立国会図書館のレファレンス協同データベースに登録された事例でも、パイナップルとゼラチン・寒天の関係が扱われており、寒天はこの影響を受けないとされる[3]。なぜ寒天だけが影響を受けないのかは、原料の違いから説明できる(次章)。

2. ゼラチンと かんてんは、なにから できているの?

2. 動物のたんぱく質と、海藻の糖

2. 原料の違い ── たんぱく質(ゼラチン)と多糖(寒天)

ゼラチンは、うしや ぶたの ほねや かわから とった もの です[1]。かたい ぶぶんを ねつで やわらかく して、水に とけやすい たんぱくしつに した ものです。

かんてんは、てんぐさという 海に はえる くさ(かいそう)が もとです[2]。たんぱくしつでは なく、さとうの なかまが つながった ものです。

パイナップルの 「こわす もの」は、ゼラチンのような たんぱくしつを こわします。かんてんは たんぱくしつでは ないので、ゼラチンの ようには こわれません[3]。

たとえば、ひもで できた あみ と、さとうの つぶで できた あみを、ハサミが きる と おもって みて ください。ハサミは ひもだけ きれます。ただし 本当の パイナップルの 「こわす もの」は ハサミでは なく、たんぱくしつに はたらく 酵素こうそです。

ゼラチン:動物の骨や皮から

ゼラチンは、牛や豚など家畜の骨や皮に多いコラーゲンを加熱して構造をほぐし、水に溶けやすいたんぱく質にしたものです[1]。起源は古代エジプトの膠づくりといわれ、食用のゼラチンが作られるようになったのは1800年代に入ってからとされます[1]。

寒天:海藻の糖から

寒天の原料は、紅藻類のテングサやオゴノリです。主成分は2種類の糖がつながったもので、たんぱく質ではなく、食物繊維の仲間です[2]。国立国会図書館のレファレンス事例でも、ゼラチンはたんぱく質、寒天は炭水化物の一種と説明されています[3]。

だからパイナップルの影響が違う

パイナップルにはブロメリンというたんぱく質分解酵素があり、たんぱく質のゼラチンは分解されて粘りを失い、固まりにくくなります。寒天はたんぱく質ではないので、影響を受けないとされています[3]。

寒天にも苦手があり、酸っぱい状態で長く加熱すると、網目のつながりが切れて固まりにくくなるそうです。酸っぱい果汁は、火から下ろして冷ましてから加えると説明されています[3]。

ゼラチンは、動物の骨や皮に多い繊維状たんぱく質コラーゲンを加熱して構造を分解し、水溶性にしたもので、多くは牛や豚などの家畜から抽出される[1]。起源は古代エジプトの膠製造といわれ、1700年頃にヨーロッパで工業生産が始まり、1800年代に食用が作られるようになった[1]。コラーゲンの構造そのものは別のメモ(コラーゲンの話)で扱っている。

寒天は紅藻類のテングサ・オゴノリから作られ、D-ガラクトースとアンヒドロ-L-ガラクトースの2種類の糖でできた多糖で、たんぱく質ではない[2]。レファレンス協同データベースの事例では、ゼラチンはたんぱく質、寒天は炭水化物の一種と整理されている[3]。

パイナップルのブロメリンはたんぱく質分解酵素で、ゼラチンは加水分解されて固まらなくなる。寒天はたんぱく質ではないため影響を受けない[3]。ただし寒天にも弱点があり、酸性の状態で長く加熱すると網目のつながりが切れて加水分解が起き、固まりにくくなる。酸っぱい果汁は火から下ろして冷ましてから加える、とされる[3]。

3. くちの 中で とけるのは、どっち?

3. 口の中で溶けるか、夏でも形を保つか

3. 固まる温度・溶ける温度 ── ゲルの熱可逆性の差

ゼラチンの ゼリーは、ひやして かためます。ゼリーが とけはじめる のは、20〜30度 くらい と いわれます[4]。もの によって ちがいます。

人の 口の 中は、およそ 37度です。だから ゼラチンの ゼリーは、口に いれると、つるんと とけます[4]。チョコレートが 口で とける のと、すこし にて います。ただし チョコレートは あぶらの はなしで、しくみは ちがいます。

ゼラチンは、あたためると とけて、ひやすと また かたまります[1]。

かんてんは、ちがいます。にて とかした あと、ひやさなくても、へやの 温度で かたまります[2]。かたまった あとは、90度 くらいに ならないと とけません。なつの へやでも、かたちを たもちます[4]。

ゼラチン:体温より低い温度で溶ける

ゼラチンは、温めると溶け、冷やすと固まる性質を何度でも繰り返せるのが最大の特徴とされます[1]。固まる温度は5〜15℃ほど、できたゼリーが溶け始める温度は20〜30℃ほどと説明する資料があります[4]。資料によって数字に幅があるので、およその目安です。

口の中は約37℃です。ゼラチンのゼリーはそれより低い温度で溶けるので、口に入れるとなめらかに崩れるといわれます[4]。夏の暑い部屋に置くと溶けることがあるのも同じ理由です[5]。

寒天:固まる温度と溶ける温度が大きく離れる

寒天は、固まる温度がおよそ40℃、溶ける温度がおよそ90℃とされます。種類によっては100℃でも溶けないものがあります[2]。溶ける温度は、資料によって80℃台からあります。煮溶かした寒天は、冷蔵庫に入れなくても室温で固まります[2]。

固まる温度と溶ける温度がこれだけ離れているので、夏の室温でも形を保ちます[4]。同じゼリーでも、口の中で溶けるかどうかは、この温度の位置で決まっています。

数字を読むときの注意

ゼラチンには「溶かす温度」(40〜50℃で粉を溶かす)と「できたゼリーが溶け始める温度」(20〜30℃ほど)という2つの数字があります[5]。資料を読むときは、どちらの温度の話か確かめると混乱しません。

ゼラチンは温めると溶け冷やすと固まる(ゾル化・ゲル化)を可逆的に繰り返せる点が最大の特徴とされる[1]。固まる温度は約15℃、ゼリーが溶ける温度は25〜30℃とする資料があり、口腔内の約37℃より低いので、口に入れると体温でゲルが崩れ、なめらかに溶ける[4]。別の資料は、溶けたゼラチンが5〜10℃で固まるとし、夏場の室温でゼリーが溶けることがある、と書く[5]。数字に幅があるため、ここでは目安として扱う。

寒天の凝固点はおよそ40℃、融点はおよそ90℃で、種類により100℃でも溶けないものもある。煮溶かした寒天は室温で固まる[2]。融点を80〜85℃とする資料もあり[4]、約90℃前後と幅をもたせて読むのが妥当である。固まる温度と溶ける温度の差が大きいため、夏場の常温でも形を保つ[4]。

なお、粉のゼラチンを溶かす温度(40〜50℃とされる)と、できたゼリーが溶け始める温度(20〜25℃、20〜30℃など)は別の数字で、混同しやすい[5]。

4. かんてんは、どうやって うまれたの?

4. 置き忘れたところてんから生まれたとされる寒天

4. 寒天の由来 ── 伝承(1658年頃)と確かな記録(18世紀初頭)

むかし、京都の ふしみと いう まちに、りょかんの 主人が いたと つたえられます[7]。名前は みのや たろうざえもん と いわれます。

あるとき、ところてんを そとに おきわすれました。よるは こおり、ひるは とけて、水が ぬけて、かわいた かたまりに なったそうです。

それを にて とかして、ひやすと、においが なくて すきとおった ところてんに なりました。これが かんてんの はじまりと いわれます。ころは、1658年ごろと されます[7]。

ただ、これは つたえばなしです。たしかな きろくには、200年 いじょう あとの 本に、ふしみで かんてんを 作って いた ことが 書かれて います[8]。

置き忘れたところてん

こんな話が伝わっています。寒天は1658年頃、京都・伏見の旅館の主人だった美濃屋太郎左衛門が、外に置き忘れたところてんから思いついたとされています[7]。ところてんは夜の寒さで凍り、昼の日差しで溶けることを繰り返して水分が抜け、干物のようになりました。それを煮溶かして冷やすと、においがなく透き通ったところてんになった、という話です[7]。

伝承と確かな記録

この話は企業の解説が伝える伝承で、発見者や年が確定しているわけではありません。京都市の資料は、18世紀初めに編まれた『和漢三才図会』に、寒天を伏見の里で作っていると書かれていることを確かな記録として挙げ、江戸時代初期には伏見で主に作られていたとしています[8]。名前は黄檗宗の隠元禅師が付けたという伝承もありますが、これも確かなものではありません[8]。

食べ物以外の顔

寒天は、大正9年(1920年)から生薬として『日本薬局方』にも載っています[2]。

寒天の始まりについては、こんな話が伝わっている。1658年頃、京都・伏見の旅館の主人・美濃屋太郎左衛門(みのやたろうざえもん)が、外に置き忘れたところてん(心太)が夜に凍り昼に溶けて水分が抜けたものを煮溶かして冷やし、においのない透き通ったところてんを得た、という話が伝わる[7]。ただし出典は企業サイトの解説で、発見者・年は確定した史実ではなく、「とされる」の範囲にとどまる。

京都市の観光サイトは、18世紀初頭に編纂された『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)の石花菜の項に「城州伏見の里にて之製す」とあり、江戸時代初期には伏見が主産地だったことを、確かな記録として示している[8]。命名を黄檗宗の隠元(いんげん)禅師とする伝承は、これに比べると裏づけが弱い[8]。

用途は食品にとどまらず、寒天は天然由来の医薬品(生薬)として、大正9年(1920年)から『日本薬局方』に収載されている[2]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの ゼリーの うらの ラベルを 見て みましょう。「げんざいりょう」に ゼラチンと かんてん、どちらが かいて ありますか。

食べくらべる ときは、口に いれて、とける はやさを かんじて みます。ほうちょうや ひは つかいません。買って きた ものを そのまま 食べます。

本で しらべるなら、「かんてんぱぱ」の ホームページや、日本ゼラチン・コラーゲン工業組合の ホームページが、日本語で 読めます。

今日できること:家にあるゼリーやようかんなどの原材料表示を見て、ゼラチンが使われているか、寒天が使われているかを探してみます。両方あれば、食べ比べて、口の中での溶け方や歯ごたえを比べます。火や刃物は使いません。

公式情報:伊那食品工業の「寒天ってなに?」「寒天の歴史」や、日本ゼラチン・コラーゲン工業組合の「ゼラチンって何?」は日本語で読めます。伝承と確かな記録が分かれる寒天の歴史は、京都市の観光サイトの「寒天発祥之地」も見比べてみてください。

寒天の科学的な説明は伊那食品工業の解説[2]、ゼラチンの由来と性質は日本ゼラチン・コラーゲン工業組合の解説[1]が日本語で読める。ゼラチンが固まらない原因は新田ゼラチンのページ[6]、パイナップルと寒天・ゼラチンの関係は国立国会図書館のレファレンス事例[3]にまとまっている。

温度の数字は資料で幅があり、日本寒天協会などの一次資料までは、このメモでは確かめていない。数字が必要なときは、ゼラチンの製品ごとの説明書きを直接見てほしい。歴史の部分は、企業の伝承[7]と、京都市の確かな記録[8]を読み比べると、伝承と記録の違いが具体的に分かる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:ゼラチン・寒天のメーカーや業界団体、国立国会図書館のレファレンス事例、京都市の観光サイトなどを使った。温度の数字は資料で幅があるため、本文では「およそ」で書いている。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 日本ゼラチン・コラーゲン工業組合「ゼラチンって何?」。https://www.gmj.or.jp/gelatin/introduction.html (ゼラチンの原料・起源・温めると溶け冷やすと固まる性質について)
  2. 伊那食品工業 かんてんぱぱ「寒天ってなに?」。https://www.kantenpp.co.jp/kanten/about/ (寒天の原料・成分・凝固点と融点・日本薬局方について)
  3. レファレンス協同データベース(国立国会図書館)「パイナップルとゼラチン・寒天」。https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000288396&page=ref_view (たんぱく質と炭水化物の違い・ブロメリン・寒天の酸への弱さについて)
  4. ことわり料理ノート「ゲル化の科学」。https://www.kotowari-cooking.com/note/cooking-methods/science/gelation (ゼラチンが口の中で溶けること・寒天が夏の常温で形を保つことについて)
  5. 料理日和「ゼラチンの特徴」。https://ryouribiyori.com/characteristics-of-gelatin/ (ゼラチンを溶かす温度と固まる温度の目安について)
  6. 新田ゼラチン「ゼラチンが固まらないときは?」。https://www.nitta-gelatin.co.jp/gyomuyo_top/knowledge/not-gelling.html (生のパイナップルやキウイでゼラチンが固まらないことについて)
  7. 伊那食品工業 かんてんぱぱ「寒天の歴史」。https://www.kantenpp.co.jp/kanten/history/ (寒天の発見の伝承について)
  8. 京都市公式 京都観光Navi「寒天発祥之地」。https://ja.kyoto.travel/tourism/single02.php?category_id=9&tourism_id=2265 (『和漢三才図会』の記録と隠元命名の伝承について)

なおした ところ

更新履歴

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