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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

でんちゅうの うえの きかいは、でんきを どうやって かえるの?

同じ電力を送るなら電圧10倍で損失は100分の1 ── 変圧器と、電池では働かない理由

変圧器の原理と送電 ── 巻数比、I²R損失、交流でしか働かない理由、1885年の閉じた鉄心

分野:技術

でんきを おくる とき、でんあつを 10ばいに すると、でんせんで なくなる ねつは 100ぶんの 1 に なる けいさんです。

でんあつを あげたり さげたり するのは、でんちゅうの うえなどに ある「へんあつき」です。でも、でんちの でんきでは うごきません。どうして でしょう。この きじを よむと、その わけと、1885ねんの はつめい、「ブーン」という おとの ひみつが わかります。

電気を遠くへ送るとき、電圧を10倍にすると、送電線で熱になって失われる電力は100分の1になる計算です[1]。家のコンセントは100Vなのに、発電所から出る電気はずっと高い電圧で、途中で何度も上げ下げされているといわれます。

その上げ下げをするのが変圧器で、電柱の上にもついています。ところが、変圧器は電池の電気ではまったく働きません。なぜ、わざわざ上げて下げるのか。なぜ電池ではだめなのか。この記事を読むと、その理由と、1885年の発明、変圧器が「ブーン」と鳴る理由が分かります。

送電では、同じ電力を送るなら電圧を10倍にすると電流は10分の1になり、送電線の抵抗で失う電力(電流の2乗に比例)は100分の1になる[1]。これが、発電所から家まで電圧を何度も上げ下げする理由である。

では、その電圧をどうやって変えるのか。なぜ変圧器は直流では働かないのか。この記事を読むと、巻数比と電磁誘導、損失の計算、1885年の閉じた鉄心の特許、変圧器の音が電源周波数の2倍になる理由が分かる。

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1. でんちゅうの うえの きかいは、なにを して いるの?

1. 電柱の上の機器は、何をしているのか

1. 柱上変圧器 ── 高圧配電線から家庭用電圧へ

まちを あるくと、でんちゅうの うえに、きかいが ついて います。これは「ちゅうじょう へんあつき」と いいます[6]。

はつでんしょの でんきは、とても たかい でんあつで おくられて きます。それを、まちの へんでんしょで すこしずつ ひくく して、さいごに この きかいが、うちの コンセントの 100ボルトや 200ボルトに します[6]。

そう いわれると、ふしぎです。さいしょから 100ボルトで おくれば、いいのでは ないでしょうか。

町の電柱を見上げると、上のほうに機器がついています。これが柱上変圧器で、主に6600Vの高圧配電線から、家庭用の100Vや200Vに下げる役目をするといわれます。中には絶縁のための油が入っていると説明されています[6]。

発電所から出た電気は、高い電圧で送られたあと、変電所で段階的に下げられ、最後にこの機器で家庭向けの電圧になります。日本では発電所の送電に数十万V級の電圧が使われるといわれます[7]。

ここで疑問が出ます。最初から100Vで送れば、途中で何度も変える手間はいらないはずです。なぜ、わざわざ高くするのでしょうか。

電柱上に設置された柱上変圧器は、主に6600Vの高圧配電線から100〜200V程度へ降圧する屋外用の変圧器で、内部には絶縁油が入っていると説明される[6]。それより上流では、変電所が段階的に電圧を下げ、発電所からの送電には超高圧(50万V級など)が使われるといわれる[7]。

すると、素朴な疑問が出る。最初から家庭用の100Vで送れば、これほど多くの変圧器は要らないのではないか。この問いへの答えは、送電線そのものの性質にある。

2. どうして たかい でんあつで おくるの?

2. 高い電圧で送ると、なぜ熱で失う電気が減るのか

2. 損失は電流の2乗に比例する ── 電圧10倍で損失100分の1

でんせんにも、すこしだけ でんきが とおりにくい せいしつが あります。でんきが ながれると、でんせんが あたたまって、でんきが ねつに なって なくなります[1]。

おくる でんきの りょうを おなじに して、でんあつを 10ばいに すると、ながれる でんきの つよさは 10ぶんの 1 ですみます。すると、ねつで なくなる ぶんは、100ぶんの 1 に なります[1]。

たとえば、ほそい みちを おおぜいで とおると、ぎゅうぎゅうに なって たいへんです。でも、ひとが すこしなら、すいすい とおれます。でんきも、ほそく すこしずつ おくった ほうが、とちゅうで なくなりません。ただし でんきは ひとでは ないので、これは たとえです。

では、その でんあつは、どうやって かえるのでしょう。

送電線には電気の通りにくさ(抵抗)があり、電流が流れると熱が出て、電力が失われます。この損失は、電流が大きいほど増え、電流の2乗に比例します[1]。

送りたい電力は「電圧×電流」で決まります。同じ電力を送るなら、電圧を10倍にすると電流は10分の1ですみます。損失は電流の2乗に比例するので、10分の1の2乗、つまり100分の1になります[1]。

教材の計算例では、変圧器で電圧を上げて送ると、送電線での損失は送り出す電力のわずか2%になると説明されています[1]。これは学習用の数字で、実際の送電網の値ではありません。

電圧を上げ下げできれば、送電では高く、家では安全な低い電圧にできます。その役を、どういうしくみでこなしているのでしょうか。

送電線の抵抗をrとすると、電流Iが流れたときの損失はrI²で、電流が大きいほど発熱で電力を失う[1]。送る電力は電圧と電流の積なので、電圧をn倍にすれば、同じ電力に必要な電流は1/nになり、損失は1/n²になる。n=10なら1/100である。

J-Net21の数値例では、昇圧して送ると送電線の損失は送り出す電力(10.2W)の2%(0.2W)にとどまる[1]。ただしこれは教材用の計算で、実際の送電網の損失率を示す値ではない。

損失を減らすには昇圧が有利だが、家庭では高い電圧は使えない。そこで電圧を自在に上げ下げする装置が要る。次の問いは、その装置の中身である。

3. へんあつきの なかでは、なにが おきて いるの?

3. 巻数の比が、そのまま電圧の比になる

3. 理想変圧器の関係式 N₁/N₂=V₁/V₂=I₂/I₁

へんあつきの なかには、てつの わ(てっしん)が あって、2ほんの コイルが まいて あります[2]。

かたがわの コイルに でんきを ながすと、てっしんの なかに じりょくが うまれます。その じりょくが もう かたほうの コイルを とおると、そちらにも でんあつが うまれます[8]。2つの コイルは、でんきの みちとしては つながって いません。

コイルの まきかずが おおい ほうは でんあつが たかく、すくない ほうは ひくく なります。まきかずの わりあいが、そのまま でんあつの わりあいです。

はぐるまで たとえると、おおきい はぐるまに つなぐと ゆっくり で、ちからが つよく なります。でんあつと でんきの つよさも、いっぽうを あげると もう いっぽうが さがります。ただし ほんとうの はぐるまとは しくみが ちがいます。

変圧器は、鉄心に巻いた2つのコイルでできています。1次側のコイルに交流の電圧を加えると、鉄心の中に磁束が生じます。その磁束が2次側のコイルを通るとき、電磁誘導(ファラデーの法則)によって2次側にも電圧が生じます[8]。1次と2次は電気の通り道としてはつながっていません。

理想的な変圧器では、1次と2次の巻数N₁・N₂、電圧V₁・V₂、電流I₁・I₂の間に N₁/N₂=V₁/V₂=I₂/I₁ が成り立ちます[2]。巻数の比がそのまま電圧の比になり、電流の比は逆になります。たとえば2次側の巻数が10分の1なら、電圧も10分の1、電流は10倍です。実際には損失があるので、この関係は理想の場合の目安です。

電圧を下げれば電流は増えるので、「電力を保ったまま、電圧と電流を交換している」と考えると分かりやすくなります。では、この磁束は直流でも生じるのでしょうか。

変圧器は、鉄心に巻いた1次・2次の2つのコイルで構成される。1次コイルに交流電圧を加えると鉄心内に磁束が生じ、これが2次コイルを貫くとき電磁誘導の法則で2次側に起電力が生じる[8]。この二つのコイルは電気的に絶縁されている。電磁誘導そのものは、ファラデーが1831年に鉄の輪で調べたもので、本稿では扱わない。

理想変圧器では N₁/N₂=V₁/V₂=I₂/I₁ が成り立つ[2]。巻数比が電圧比に等しく、電流比は逆数になる。そのため、巻数比10:1の降圧では、2次側の電流は1次側の約10倍になる。実機では銅損・鉄損があり、この式は理想的な場合に限る。

ここで、磁束が「変化すること」が前提になっている点に注意したい。これが次章の主題、直流では働かない理由である。

4. どうして でんちでは うごかないの?

4. 変圧器が電池では働かない理由

4. 磁束の変化が必要 ── 直流では2次側に起電力が生じない

でんちの でんきを へんあつきに つないでも、でんあつは かわりません。

2つの コイルの あいだで でんあつが うまれるのは、じりょくが かわり つづけて いる ときだけだからです。でんちの でんきは、いつも おなじ むき、おなじ つよさで ながれます。じりょくも かわりません[2]。

いえに くる でんきは、むきと つよさが たえず かわる「こうりゅう」です。だから へんあつきが はたらきます。

では、この しくみを、はじめて じっさいに つかえる かたちに したのは、だれでしょう。

変圧器は、交流の電圧を変える機器です[2]。2次側に電圧が生じるには、鉄心の中の磁束が変化し続けることが必要だからです。

電池のような一定の直流では、磁束が変化しないので、2次側には電圧が生じません。ただし、スイッチを入れた瞬間は磁束が変わるので、ほんの一瞬だけ電圧が出ます。「ずっと出ない」というのが正確です。

この変圧器を、実際に使える形にした人たちがいます。

変圧器は交流電源の電圧を変える機器で[2]、2次側の誘導起電力は磁束の時間変化に比例する。一定の直流では磁束が変化しないため、定常状態では2次側に電圧が生じない。スイッチを入れる・切るなど電流が変化する瞬間にだけ、過渡的に電圧が出る。

では、この装置を実用の形にしたのはだれか。次の章で、その経緯を追う。

5. 1885ねん、てつの わを とじた 3にんは だれ?

5. 1885年、鉄心を輪にして実用にした3人

5. ガンツ社の特許(1885年)── 閉じた鉄心・並列接続・自由な変圧比

1885ねん、ハンガリーの ブダペストの ガンツしゃで はたらく 3にんの ぎじゅつしゃが、へんあつきの とっきょを だしました[3]。

ブラーティが「てっしんを わに して とじよう」と かんがえ、ジペルノウスキーが「へんあつきを ならべて つなごう」と ていあんし、デーリが じっけんを した と つたえられます[4]。

この とき はじめて「へんあつき(トランスフォーマー)」と いう ことばも つかわれました[3]。

この 3にんの へんあつきは、とじて いない てっしんの そうちより、こうりつが よかったと いわれます[4]。

1885年の1〜3月、ハンガリー・ブダペストのガンツ社の技術者3人(ジペルノウスキー、デーリ、ブラーティ)が、変圧器の特許を出願しました。内容は、並列接続、自由に選べる変圧比、閉じた鉄心の3つです。「変圧器(transformer)」という語も、このときに初めて使われました[3]。

役割は、ブラーティが閉じた鉄心、ジペルノウスキーが並列接続を提案し、デーリが実験を担当したとも伝えられます。開いた鉄心では電圧を安定して調整できないと判断し、新しい変圧器は、ゴーラールとギブスの開いた鉄心の装置より効率がよかったとされます[4]。

巻数比の大きい変圧器が使えるようになり、送る側の電圧を、使う側よりずっと高くできました。これが、実用的な送電・配電につながったといわれます[4]。

鉄心が「開いて」いると、磁束が外へ漏れ、電圧の安定した調整が難しい。1885年1〜3月、ブダペストのガンツ社の技術者(ジペルノウスキー、デーリ、ブラーティ)は、並列接続・自由に選べる変圧比・閉じた鉄心の変圧器について特許を出願した。「変圧器(transformer)」の語もこのとき初めて使われた[3]。

役割分担は、ブラーティが閉じた鉄心、ジペルノウスキーが並列接続の提案、デーリが実験を担当したとも伝えられる。ゴーラールとギブスの開いた鉄心の装置と比べて効率が高かったという記述がある[4]。

高い巻数比の変圧器を使えるため、供給網の電圧を負荷側よりはるかに高くできた[4]。第2章の損失の議論と、ここで結びつく。

6. へんあつきは、どうして「ブーン」と なるの?

6. 変圧器が「ブーン」と鳴る理由は、電気の周波数の2倍

6. 磁わい(磁気ひずみ)と鉄心の積層 ── 音が電源周波数の2倍になる理由

へんあつきの ちかくで、「ブーン」という ひくい おとを きいた ことは ありませんか。

これは、てっしんの うすい てっぱんが、じりょくで ほんの すこし のびたり ちぢんだり するからです[5]。

その おとの たかさは、でんきの むきが かわる かいすうの 2ばいの たかさ です。ひがし にほんでは 1びょうに 100かい、にし にほんでは 120かい ふるえます[5]。

ちなみに てっしんは、あつい かたまりでは なく、うすい てっぱんを かさねて います[2]。

変圧器の「ブーン」という音の主な原因の一つは、鉄心の鋼板が磁気で伸び縮みする磁わい(磁気ひずみ)です。巻線などの振動も関わります。この音は、電源周波数の2倍の成分を持ちます。50Hzなら100Hz、60Hzなら120Hzです[5]。

日本の交流の周波数は、東日本で50Hz、西日本で60Hzだといわれます[7]。そのため、同じ変圧器でも、地域によって音の高さが少しちがうはずです。

鉄心は、表面を絶縁した薄い鋼板を重ねたものや、帯状の鋼板を巻いたものが使われます。これは、鉄心の中に生じる渦電流による損失を減らすためです[2]。

変圧器の可聴音の主因の一つは、鉄心の鋼板が磁界の変化で伸縮する磁わい(磁気ひずみ)である。電流の向きが1周期に2回反転するのに伴い、磁束の変化も2回起こり、音は電源周波数の2倍の成分を持つ。50Hz系で100Hz、60Hz系で120Hzである[5]。

日本では周波数は東日本で50Hz、西日本で60Hzといわれる[7]。ただし境界の地域の詳細は扱わない。

鉄心は、渦電流損を減らすため、表面を絶縁処理した薄い鋼板を積層したもの、帯状の鋼板を巻いた巻鉄心などが使われる[2]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちで つかって いる スマートフォンの アダプターを 見て みましょう。「にゅうりょく」と「しゅつりょく」の でんあつが かいて あります。さわる ときは、コンセントから ぬいて からに します。

出かけてできること

でんちゅうを 見あげて、うえの きかいを さがして みましょう。ちかづき すぎず、さわらないで ください。しずかな ところでは「ブーン」と きこえる ことが あります。

こうしきの 情報じょうほう

「そうでん」「へんでんしょ」という ことばで、でんりょく がいしゃの ホームページを しらべて みましょう。

今日できること

家にあるACアダプターの表示を読み、入力と出力の電圧を比べる。使うときはコンセントから抜いてから手に取る。

出かけてできること

電柱の上を見上げて、変圧器らしい機器を探す。近づきすぎず、触れない。静かな場所なら「ブーン」と聞こえることがある。

公式情報

資源エネルギー庁のエネルギー教育サイトや、お住まいの地域の電力会社の資料で、送電と変電所の説明を読める。

今日できること

ACアダプターの定格表示(入力電圧、出力電圧・電流)を読み、入出力の電力がどう釣り合っているかを考える。電源を抜いてから扱う。

出かけてできること

電柱上の変圧器を観察する。近づかず触れない。静かな場所で音の高さを聞き、東日本・西日本のどちらかで違いがあるか考えてみる。

公式情報

J-Net21の「変圧器の役割」(中小機構)は日本語で、損失の計算例が載っている。資源エネルギー庁のエネルギー教育サイトでは、送電電圧や周波数の説明が読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

今回は、損失の計算は中小機構の解説、1885年の特許は学術誌の要旨、仕組みと音は百科事典と業界誌を突き合わせた。

  1. J-Net21(中小機構)「変圧器の役割」 https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1228.html (送電損失の計算例)
  2. Wikipedia日本語版「変圧器」 https://ja.wikipedia.org/wiki/変圧器 (巻数比・交流・鉄心の構造)
  3. BME Periodica「Centenary of the Transformer」(要旨) https://pp.bme.hu/ee/article/view/4637 (1885年の特許・語の初出)
  4. Wikipedia英語版「Ottó Bláthy」 https://en.wikipedia.org/wiki/Ottó_Bláthy (3人の分担・効率の比較)
  5. T&D World「Why Transformers Hum」 https://www.tdworld.com/grid-innovations/article/20964143/the-quiet-life (ブーン音と周波数)
  6. パナソニック電設資材「柱上変圧器」 https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/skill/dictionary/pole-mounted.html (柱上変圧器)
  7. 資源エネルギー庁 エネルギー教育サイト https://energy-kyoiku.meti.go.jp/assets/59/m_asuene_p26-27.pdf (送電電圧・周波数の補助)
  8. Wikipedia英語版「Transformer」 https://en.wikipedia.org/wiki/Transformer (電磁誘導のしくみ)

なおした ところ

更新履歴

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