1. 250トンの 水は どこに のって いるの?
1. 250トンの水は、何に支えられているのか
1. 雲の水の質量と、同体積の空気の質量の比較
夏の 空の 雲は、たて・よこ・高さが 1キロメートルほど あります。この 大きさの 雲ひとつに、水が 250トンほど 入って いると いう 計算が あります[2]。
ところが、おなじ 大きさの 空気は、もっと 重いのです。1立方メートルの 空気は 1キログラムほど。雲の 中の 水は、1立方メートルに 0.25グラムほどなので、空気の ほうが 4000ばい 重い ことに なります[2]。
たとえば、水を 入れた ふうせんが、水中で ふわっと うく ところを 思い うかべて ください。まわりの 水が、ふうせんを ささえて います。雲の 水も、まわりの 空気に ささえられて いるように 考えられます。ただし これは たとえです。本当は、雲の つぶは ゆっくり おちて いるので、その 話は つぎの 章で します。
夏に見る積雲は、幅も高さも約1キロメートル、体積は約10億立方メートルです。水は1立方メートルあたり約0.25グラムふくまれるので、雲全体の水は約2億5000万グラム、つまり約250トンになります[2]。雷雲なら1立方メートルあたり約2グラムで、約200万トンという計算もあります[2]。
ただし、これは典型例の概算です。すべての積雲が250トンというわけではなく、水の量が違えば、見積もりも変わります。
では、まわりの空気はどうでしょう。低い雲と同じ体積の空気は、1立方メートルあたり約1キログラムで、雲の水の約4000倍の重さです[2]。水のつぶは、そのまわりの空気に支えられている、と説明されています。
ただし「支えられている」は、わかりやすくしたたとえです。実際には、空気の抵抗や上向きの風が、つぶの落ちる速さをとてもゆっくりにしています。では、支えられているなら、雲のつぶはぴたりと止まっているのでしょうか。実は、そうでもありません。
積雲を幅・高さ約1km、体積約10億m³とみなし、含水量を約0.25g/m³とすると、雲の水は約2.5×10⁸g、すなわち約250トンになる。雷雲は約2g/m³で約200万トンの見積もりもある[2]。ただしこれは典型例の概算で、含水量の前提が違えば結果も変わる。
一方、低い雲と同体積の空気は約1kg/m³で、水の0.25g/m³の約4000倍の質量がある[2]。上の1km³の雲なら、空気だけで約10⁹kg(約100万トン)になり、水はその一部にすぎない。この比較から、雲の水はまわりの空気に支えられていると説明される[2]。
ただし「支えられている」は比喩で、実際には空気抵抗と上昇気流が雲粒の落下を遅らせている。では、水のつぶ1つ1つは静止しているのか。この問いが次の章につながる。
2. 雲の つぶは、じつは おちて いる
2. 雲のつぶは、ゆっくり落ちている
2. 雲粒の終端速度 ── ストークスの式による見積もり
雲は、とても 小さな 水の つぶが あつまって できて います。ひとつぶの よこはばは、0.02ミリメートルほどです[3]。人の かみの 毛よりも ほそい です。
この つぶは、空気より 重いので、本当は おちて います[1]。でも、ゆっくりです。ふつうの 雲の つぶは、1びょうに 1センチメートルほど しか 下がらない という 計算が あります[5]。本に よっては、もっと ゆっくりの ものも あります。
雲の 高さから 地面まで おちるのに、何日も かかる ほどです[4]。
雲を作る水のつぶ(雲粒)は、直径が約0.02ミリメートルほどです。人の髪の毛の太さ(約0.07ミリメートル前後)よりも細いつぶです[3]。
水は空気より重いので、雲粒はふつう浮いていられません[1]。実際には、ゆっくり落ちています。空気の抵抗とつり合って、それ以上は速くならない速さを終端速度といいます。雲粒の終端速度は、静止した空気の中でミリメートル毎秒〜センチメートル毎秒の程度で、半径10マイクロメートルのつぶなら、秒速約1センチメートルです[5]。教材によって3ミリメートル毎秒という値もあり、つぶの大きさによって変わります。
この速さだと、雲の高さから地面まで落ちるのに数日かかる、と説明されています[4]。つまり「落ちない」のではなく、「落ちるのがあまりにもゆっくり」なのです。では、そのゆっくりな落下は、何がじゃまをしているのでしょう。
雲粒の直径は1μm〜数十μm、ふつうは約20μm(0.02mm)で、髪の太さ(約0.07mm前後)より小さい[3]。直径と半径は取りちがえやすい。半径10μmの粒は直径20μmである。
ストークスの式 v = 2r²(ρ水−ρ空気)g / (9μ) に、r=10μm、ρ水≈1000kg/m³、μ≈1.8×10⁻⁵Pa·s、g=9.8m/s²を入れると、v≈1.2cm/sとなる(筆者計算)。この値は、半径10μmで約1〜1.2cm/sとする教材[5]とほぼ一致する。教材により3mm/sという値もあり[4]、粒径の取り方で幅が出る。
この速さは半径の2乗に比例する。半径が10倍になれば理論上は速さが100倍になるが、大きい粒にはこの式は成り立たない。この1cm/s前後という遅さは、雲の高さから落ちるのに数日かかる速さでもある[4]。
では、粒が落ちる速さより速い「上向き」の流れがあれば、粒はどうなるのか。
3. 上にむかう 風が、つぶを とどめる
3. 上向きの風が、つぶをその場にとどめる
3. 上昇気流と雲粒の収支 ── 落下速度との比較
空には、上に むかって ふく 風が あります。これを 上しょうき流と いいます[1]。
雲の つぶは 1びょうに 1センチメートルほど おちて いきます。でも、おなじ ときに 空気が それより 速く 上に うごいて いれば、つぶは 地面から 見ると、おちずに その 場に とどまったり、上へ はこばれたり します[1][4]。
エスカレーターを 下りに のぼると、足を うごかしても その 場に とどまって しまいますよね。雲の つぶも、それと にて います。ただし 空気の 流れは、エスカレーターのように いつも 一ていでは ありません。
雲粒が落ちる速さよりも、空気が上へ動く速さのほうが大きければ、雲粒は上へ運ばれます。落ちる速さと同じくらいなら、その場にとどまります。上向きの空気の流れを、上昇気流といいます[1][4]。
下りのエスカレーターを、同じ速さでのぼり続けると、その場にとどまります。雲粒と上昇気流の関係は、このイメージに似ています。ただし本当の空気の流れは、場所や時間によって速さが変わります。雲全体で見れば、粒が出たり入ったりしています。
気象庁のこどものページでは、小さな水のつぶは、上昇気流があると落下せずに空気中に浮かぶことができる、と説明されています[1]。
ところで、上昇気流の中で落ちきれなかった粒もあれば、気流からはみ出て下へ出ていく粒もあるでしょう。その粒はどうなるのでしょうか。
4. おちた つぶは、雲の 下で どうなるの?
4. 雲から出た粒は、乾いた空気の中で消える
4. 雲底より下での蒸発 ── 雲の底が平らな理由の一説明
雲の つぶが 雲の いちばん 下より さらに 下へ おちて しまうと、まわりの 空気は かわいて います。空気が どれだけ しめって いるかを しめす 数字を 湿度と いい、雲の 中では 100%ですが、雲の 下では それより ひくく なります[4]。
かわいた 空気に 入ると、水の つぶは 蒸発して、見えなく なります[4]。
ぬれた タオルを 外に ほすと、かわくのと にています。ただし 本当は、雲の つぶは とても 小さいので、あっという間に 消えます。
一方、雲の 上の ほうでは、あたらしい つぶが できつづけて います[4]。
雲粒が雲の底より下へ落ちると、湿度が100%未満の空気に入ります。すると粒は蒸発し始めます[4]。雲の底は、粒が蒸発する高さにできる、と一般には説明されます。実際に高さを測った値ではなく、モデルによる説明です。
雲の中では、粒が落ちていく一方で、上のほうでは新しい粒ができ続けています[4]。この「できる」と「消える」がつり合っている間、雲はそこにあるように見えます。
ここまでの話をまとめると、雲粒は「落ちている」けれど、落ちた先で消え、上でまた生まれる、という入れ替わりの中にあります。雲を一つのかたまりと見るより、粒の出入りが続く流れと見るほうが近いようです。
それでは、粒が消える前に、十分に大きく育ってしまったらどうなるのでしょう。
5. 雨が ふり出すのは、どんな とき?
5. 雨が降り出すのは、つぶが育って上昇気流に支えられなくなるとき
5. 降水の開始 ── 雲粒から雨粒への成長(直径100倍・体積約100万倍)
雲の つぶが 大きく 育つと、上しょうき流では ささえきれなく なります。すると 雨と なって おちはじめます[6]。
ふつうの 雨つぶの よこはばは 2ミリメートルほどで、雲の つぶの 100ばいです。重さは およそ 100万ばいに なります[3]。
大きな 雨つぶは、1びょうに 11メートルほどで おちます[5]。雲の つぶの 1000ばいほどの 速さです。
雨が ふると、つめたい 空気が 下に ながれ、かわいた 空気が 雲に 入ります。小さな 水の つぶが 蒸発して、あたらしい つぶも できなくなると、雲は 消えて しまいます[6]。
雲のつぶが育って大きくなると、上昇気流では浮かんでいられなくなり、雨となって落ち始めます[6]。
直径約0.02ミリメートルの雲粒が、直径約2ミリメートルの雨粒になるには、直径で100倍、体積で約100万倍の成長が必要です[3]。最大級の雨粒の落ちる速さは、秒速約11メートルで、雲粒の約1000倍です[5]。ここまでくると、上昇気流では支えきれません。
雲のつぶが雨粒になる道すじは、おもに2つあります。つぶどうしがぶつかって合体する「併合」と、氷の結晶が成長する道すじです。暖かい雲では、併合が降水サイズをつくる唯一の過程です。併合が起こるには、少なくとも一部の粒が約20マイクロメートルまで育つ必要があります[5]。
雨が降ると下降流が生まれ、上空の乾いた空気が雲に入ります。小さな水てきが蒸発し、新しい水てきもできなくなると、雲は消えます[6]。
雲粒が成長して大きくなると上昇気流で支えられなくなり、降水として落下し始める[6]。直径約0.02mmの雲粒が典型の雨粒(直径約2mm)になるには、直径で100倍(体積で約100万倍)の成長が必要である[3]。この「100万倍」は体積の比で、直径の比ではない。
最大級の雨粒の終端速度は約11m/sで[5]、雲粒の約1cm/sと比べると約1000倍の差になる(11÷0.01≒1100)。したがって、粒が育ってある大きさを超えると、落下速度が上昇気流に対して大きくなり、支えきれずに雨として落ち始める。これは降り始めの条件の一つで、氷晶の成長なども関わる。
成長の道すじは、衝突併合と、氷晶の成長の2つである。併合は暖かい雲で降水サイズの粒をつくれる唯一の過程で、併合が起こるには少なくとも一部の雲粒が約20μmに育つ必要がある[5]。
雨が降ると下降流が生じ、上空の乾いた空気が入って小さな水滴が蒸発する。新しい水滴ができなくなると、雲は消える[6]。雨は、雲が自分の収支を崩す出来事だとも読める。
6. 空を 見て たしかめて みよう
6. 空を見て、粒が消える場所を想像する
6. 出口 ── 観察の視点と資料の読みどころ
外で、雲の ある 日に 空を 見て みましょう。かならず、太ように 目を むけないで ください。
まず、雲の 下の ほうが たいらに 見える ところを さがします。そこが、雲の つぶが 消える たかさかも しれません。つぎに、5分 おきに 見て、雲の 形が どう かわるかを くらべます。
雲が 大きく なる ところと、うすく 消える ところが、あるでしょうか。もっと 知りたく なったら、気象庁の こどものページを 開いて みて ください[1][6]。
雲のある日に、外で空を見てみましょう。太陽は直接見ないでください。
雲の下のふちが平らに見える場所を探して、5分おきに同じ方向を見ます。ふちが消えたところと、新しく育ったところはあるでしょうか。それが、粒が消える場所と、できる場所のヒントになるかもしれません。ただし、見えている形がそのまま粒の動きを表すとは限りません。
もっと読むなら、気象庁のこどものページ[1][6]が日本語で読めます。雲の重さの計算はReading大学のブログ[2]で、粒の落ちる速さはUW-Madison[4]やNWSの教材[3]で見られます。
雨が降り出すのは、粒が育って、上昇気流に支えられなくなるときです。空を見ながら、そのようすを想像してみてください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:気象庁のこどものページ、大学の気象教材、教科書の公開版、Reading大学の研究ブログを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 気象庁 こどものページ「どうして雲はういているの?」。https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a2_01.html (雲のつぶと上昇気流について)
- University of Reading Research Blog「How much does a cloud weigh」。https://research.reading.ac.uk/research-blog/?p=20824 (雲の水の量と空気の重さの比較について。一例の概算)
- NWS Houston 教材 Cloud precipitation。https://www.weather.gov/media/zhu/ZHU_Training_Page/clouds/cloud_precipitation/cloud_precipitation.pdf (雲粒と雨粒の大きさについて)
- UW-Madison 教材 Concept for the Day: Clouds。https://www.aos.wisc.edu/~hopkins/online/cod/cod07t.htm (落下の遅さと雲底での蒸発について)
- Stull, Practical Meteorology 7.06(LibreTexts)。https://geo.libretexts.org/Bookshelves/Meteorology_and_Climate_Science/Practical_Meteorology_(Stull)/07%3A_Precipitation_Processes/7.06%3A_Collision_and_Collection (終端速度と粒の合体について)
- 気象庁 こどものページ「雨が降ったとき、雲はどうなっているの?」。https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a1_05.html (雨が降るときと雲が消えるときについて)
なおした ところ
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