このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

277回やって 1ぴき ── ドリーは どうやって うまれたの?

277回の挑戦で、生きて生まれたのは1頭だった ── クローン羊ドリーの作り方

体細胞核移植と、277分の1の羊 ── クローン動物はどう作られ、なぜ「完全なコピー」にならないのか

分野:生きもの

1996ねんに うまれた 羊の ドリーは、277回 ためして、生きて うまれた たった 1とうの 子羊でした[1]。どうして そんなに むずかしいのでしょう。

この メモでは、クローンの 作り方、せいこうが すくない わけ、そして おなじ いでんの 動物でも そっくりに ならない ことが あるのを、しらべた 人たちの 話から しることが できます。

1996年に誕生したクローン羊のドリーは、277回の試みのうち、生きて生まれた1頭でした[1]。成功率にすると、およそ0.4%(1÷277)です。

大人の体の細胞から動物を作れるとして、なぜここまで難しかったのでしょうか。作り方の仕組み、成功が少ない理由、同じ遺伝情報でも見た目や中身が完全には同じにならない例、サルや冷凍された牛の細胞への広がりが分かります。

ドリーは、277回の核移植のうち、生きて生まれた1頭の子羊だった[1]。1÷277で、およそ0.4%にあたる。それでも、大人の体細胞から個体が生まれたことは、発生の考え方に大きな答えを出した[2]。

なぜここまで成功率が低いのか、作られた個体はドナーと何が同じで何がちがうのか。一次資料の要旨や公的機関の資料から、手順・低効率の理由・「完全なコピーではない」例・サルや冷凍保存組織への展開が分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. ドリーは どんな 羊だったの?

1. ドリーは、どんな細胞から生まれた羊だったのか

1. 6歳の羊の乳腺細胞から生まれたドリー ── 277回の試み

ドリーは、1996ねん7がつ5にち、イギリスの ロスリンけんきゅうじょで うまれました[1]。

もとに なったのは、6さいの 羊の おっぱいを つくる ぶぶんの 細胞さいぼうです。からだの 細胞さいぼうから、羊が まるごと 1とう うまれたのです。

でも、ここまでに 277回 ためしました。生きて うまれたのは、ドリー 1とうだけでした[1]。

では、どんな ほうほうで つくったのでしょう。その まえに、「からだの 細胞さいぼうから、もう 1ぴき つくれるのか」を ためした、むかしの 人の 話を します。

6歳の羊の乳腺から

ドリーは、1996年7月5日にスコットランドのロスリン研究所で生まれました。イアン・ウィルムットとキース・キャンベルたちのチームが、6歳のフィン・ドーセット種のメス羊の乳腺の細胞を使ってつくりました[1]。

試みは全部で277回でした。そのうち、生きて生まれた子羊はドリー1頭です[1]。発表は1997年2月27日で、イギリスの科学雑誌Natureに論文が載りました[1]。

体の一部の細胞から、新しい個体が丸ごと生まれる。その考え方自体は、ドリーより前にも試されていました。次の章では、カエルを使った先駆けの実験を見ます。

ドリーは1996年7月5日、ロスリン研究所のイアン・ウィルムットとキース・キャンベルらのチームによって誕生した。ドナーは6歳のフィン・ドーセット種のメス羊の乳腺細胞で、277回の試みから生きて生まれた子羊は1頭だけだった[1]。発表は1997年2月27日、Natureに載った論文による[1]。

277は試みの数であり、成功率はおよそ0.4%(1÷277)という計算になる。ここで次の問いが生じる。成体の分化した細胞の核は、個体全体を作る力をまだ持っているのか。この疑問は、ドリーの30年以上前から、カエルで検討されていた。

2. 大人の 細胞さいぼうに、からだを つくる 力は のこって いるの?

2. 大人の細胞の核は、体を作る力を残しているのか

2. ガードンのカエル実験から、分化した細胞の核を考える ── 分化は元に戻せないのか

からだを つくる ほうほうは、たくさんの 本が そろった 本だなに にています。ふつうの 細胞さいぼうは、じぶんの しごとの 本だけを ひらいて います。たとえば 皮ふの 細胞さいぼうなら、皮ふの 本です。

ほかの 本は、もう すてて しまったのでしょうか。それとも、とじて あるだけで、まだ のこって いるのでしょうか。ただし ほんとうは、本ではなく、かくの 中の いでんの じょうほうの ことです。

1962ねんごろ、イギリスの ジョン・ガードンは、カエルの ちょうの 細胞さいぼうの かくを、かくを ぬいた 卵たまごに いれました。すると、げんきに およぐ オタマジャクシが できました[3]。

のこって いたのです。この しごとで、ガードンは 2012ねんに、日本の やまなか しんやさんと いっしょに ノーベル しょうを もらいました[3]。

それでは、羊のような 動物でも、大人の 細胞さいぼうで できるのでしょうか。ドリーは、その 答えの 1つに なりました。

カエルでの先駆け

細胞は、成長のとちゅうで、皮膚や筋肉などそれぞれの働きを持つ細胞に分かれていきます。そのとき、使わない遺伝情報は捨てられてしまうのか、残っているのか。

ジョン・ガードンは、1962年ごろ、カエルの腸の上皮細胞の核を、核を取り除いた卵に入れました。すると、元気に泳ぐオタマジャクシが育ちました[3]。体の細胞の核にも、体を作るのに必要な遺伝子が全部残っていることを示した最初の成功例とされます[3]。ガードンは2012年に、山中伸弥とともにノーベル生理学・医学賞を受けています[3]。

羊でも同じことがいえるのか

ウィルムットらの1997年のNature論文は、成体の乳腺、胎児、胚の3種類の細胞から子羊が生まれたと報告しました[2]。論文は、大人の細胞から子羊が生まれたことは、細胞が特定の働きを持つ過程で、発生に必要な遺伝物質が元に戻せないほど変わってしまうわけではないことを確かめた、と述べています[2]。

では、その細胞の核を、どんな手順で卵に入れるのでしょうか。

ジョン・ガードンは1962年ごろ、カエルの腸の上皮細胞の核を、核を除いた卵に入れ、泳ぐオタマジャクシを得た。体細胞の核にも発生に必要な遺伝子がすべて残っていることを示した最初の成功例とされる[3]。2012年に山中伸弥とともに、細胞が初期化されて多能性をもつことの発見でノーベル生理学・医学賞を受けた[3]。

では、哺乳類ではどうか。Wilmutらの1997年のNature論文は、成体の乳腺・胎児・胚の3種類の細胞から子羊が生まれたと報告した[2]。成体の細胞から子羊が生まれたことは、分化の過程で発生に必要な遺伝物質が不可逆的に変化するわけではないという確認になる[2]。このとき、ドナー細胞を休止状態(分裂を止めた状態)にする手順が使われた[2]。

3. クローンの 羊は どうやって つくるの?

3. 核を入れかえた卵を、母羊の子宮へ戻す

3. 体細胞核移植の手順 ── 核を抜いた未受精卵、電気刺激、子宮への移植

つくりかたは、4つの だんかいに わけられます。

まず、もとに したい 動物の 細胞さいぼうを とって、その 中の かくを とりだします。つぎに、べつの 動物の 卵たまごから、かくを ぬいて おきます。

ぬいた 卵たまごに、とりだした かくを いれます。そして 電気で かるく しげきすると、かくと 卵たまごが くっつきます。

できた 小さな いのちを、お母さんに なる 羊の おなかに もどすと、赤ちゃんが うまれます[4]。

うまれた 動物の かくの いでんの じょうほうは、もとの 動物と おなじに なります。

4つの手順

体細胞クローンの作り方は、次の流れです[4]。

  • 元になる個体(ドナー)の皮膚や筋肉などの体細胞、またはその核を取り出す
  • 別の個体から、受精していない卵を取り、核を抜く
  • 核を抜いた卵に、ドナーの細胞(核)を入れ、電気などの刺激で融合させる
  • 育った胚を、メスの家畜の子宮に移して、出産させる

生まれた個体は、ドナーと同じ遺伝情報を持ちます[4]。ただし、ここでの「同じ」は核の中の遺伝情報についてです。それ以外の部分は、5章で取り上げます。

手順だけを聞くと簡単そうですが、ドリーは277回のうち1頭でした。なぜここまで低いのでしょうか。

体細胞核移植(SCNT)の手順は、食品安全委員会の評価書Q&Aによれば、ドナー個体の皮膚・筋肉などの体細胞(またはその核)を、核を除いた未受精卵に移植し、電気刺激などで融合させ、発生した胚をメスの家畜の子宮に移植して出産させるというものだ[4]。生まれた個体は、ドナーと同じ核の遺伝情報をもつ[4]。

この手順では、ふつうは精子と卵が出会って始まる発生を、体細胞の核と卵の組み合わせに置きかえている。そのため、体細胞の核が、受精卵の核と同じように発生をたどれるかどうかが、成否を分ける。次の章はその点である。

4. どうして ほとんど しっぱいするの?

4. なぜ、クローン動物は生まれにくいのか

4. 低い効率と再プログラム化 ── 全能性の回復という説明

クローンの 牛や ぶたは、生まれる まえや、生まれた すぐ あとに しんで しまう ことが、おおいと されます[4]。

げんいんは、くわしく わかって いません。いま 考えられて いるのは、こうです。ふつうの 卵たまごは、からだの どんな ぶぶんにも なれる じょうたいに あります。でも、かくを いれかえた 卵たまごは、そこまで、もどりきれないのかも しれません[4]。

この 「なんにでも なれる ようす」を、ぜんのうせい と いいます。

ちなみに、クローンの 牛や ぶたから うまれた 子は、ふつうに 生まれた 子と おなじ ように 生まれます。しんで しまう わりあいも、ふつうと おなじだと されます[4]。

全能性が戻りきらない?

体細胞クローンの牛や豚では、出生の前後に死亡する割合が高いことが報告されています[4]。原因は、核を移した胚が、ふつうの受精卵のように何にでもなれる状態(全能性)を、十分に取り戻せないことによると考えられています[4]。断定ではなく、現時点での説明です。

なお、体細胞クローン牛・豚の子(後代)は受精によって生まれます。そのため、出生前後の高い死亡率は見られないとされています[4]。

このように、クローンは今も手間のかかる技術です。それでも生まれてきた個体は、元の個体と完全に同じなのでしょうか。

体細胞クローンの牛・豚では、出生前後の死亡が高い頻度で認められる。食品安全委員会は、この原因を、移植した核を持つ胚(再構築胚)が全能性を十分に取り戻せないことなどによると考えている。あくまで推測的な説明である[4]。

一方、体細胞クローン牛・豚の子は受精を介して生まれるため、出生前後の高い死亡率は見られない[4]。この資料では、体細胞の核を卵の中で発生できる状態に戻す過程が、死亡率の高さに関係すると説明されている。

ただし、生まれた個体が元の個体と「同じ」といえるのは、どの部分までか。次の章で、羊と猫の例から考える。

5. クローンの 動物は、そっくり おなじに なるの?

5. 同じ遺伝情報でも、完全なコピーにはならない

5. ミトコンドリアDNAとクローン猫CC ── 「同じ遺伝子」の範囲

2001ねん、アメリカで、世界で はじめて クローンで うまれた 家で かう ペットの ねこが 知らされました。名前は CC です。

もとの ねこの レインボーは、オレンジ・くろ・しろの 三毛ねこでした。ところが CCには、オレンジ色が なく、しまの もようでした[5]。かくの 中の いでんの じょうほうが おなじでも、見た目が そっくりに なるとは かぎりませんでした。

もう 1つ、見えない ちがいも あります。細胞さいぼうの 中には、エネルギーを つくる、ミトコンドリアという 小さな ぶひんが あります。これにも、少しの DNAが あります。

ドリーを ふくむ、かくを うつして うまれた 10とうの 羊を しらべると、ミトコンドリアの DNAは、ぜんぶ かくを ぬかれた 卵たまごの ほうから 来て いました[6]。

だから、「ぜんぶ おなじ」では ありません。

クローン猫CCの毛色

2001年12月、アメリカのテキサスA&M大学が、世界で初めてクローンされた家庭のペット、猫のCC(カーボン・コピー)の誕生を発表しました[5]。遺伝上の母レインボーは三毛(オレンジ・黒・白)でしたが、CCはオレンジ色のないトラ(タビー)模様でした[5]。同じ遺伝子でも、見た目が同じになるとは限らなかった例です。

見えない違い:ミトコンドリアのDNA

細胞の中のミトコンドリアは、エネルギーを作る小さな部品で、少しだけ独自のDNAを持ちます。ドリーと、ほかの核移植で生まれた羊の合計10頭を調べた研究では、ミトコンドリアのDNAはすべて、核を抜かれた卵(受容卵)に由来していました。体細胞のドナー由来のものは見つかりませんでした[6]。

つまり核のDNAはドナー由来、ミトコンドリアDNAは卵由来で、この研究では「遺伝的キメラ」のような状態と表現されています[6]。

そして、この方法は羊や牛にとどまりません。2018年には、人に近いサルでも試されました。

ここまでの手順で生まれた個体は「核のDNAが同じ」だが、「全部同じ」ではない。2001年12月、テキサスA&M大学は、世界で初めてクローンされた家庭のペット、猫のCCの誕生を発表した。遺伝上の母レインボーは三毛(オレンジ・黒・白)だったが、CCはオレンジ色のないタビー模様で、同じ遺伝子でも見た目は同じにならなかった[5]。原因は、この資料では示されていない。

もう1つの違いは細胞内小器官にある。Evansらの1999年の研究では、ドリーを含む核移植由来の羊10頭のミトコンドリアDNAは、すべてレシピエントの核除去卵に由来し、体細胞ドナー由来の寄与は検出されなかった[6]。核DNAはドナー由来、ミトコンドリアDNAは卵由来という点で、本物の核クローンでありながら「遺伝的キメラ」ともいえる[6]。

6. サルでも クローンは できたの?

6. 2018年、サルでもクローンが生まれた

6. カニクイザルのSCNT ── 胎児細胞と成体細胞で異なった結果

2018ねん、中国の けんきゅうチームが、サルの 1しゅ、カニクイザルの クローンに せいこうしました[7]。ドリーと おなじ、体の 細胞さいぼうの かくを うつす ほうほうです。

赤ちゃんザルの 細胞さいぼうを つかった ときは、21ぴきの お母さんザルの うち 6ぴきが にんしん しました。げんきな 子ザルは 2ひき うまれました[7]。

大人の サルの 細胞さいぼうを つかった ときは、42ひき中 22ひきが にんしんして、2ひき うまれましたが、みじかい いのちでした[7]。

けんきゅうチームは、かくを いれた 卵たまごに ある くふうを して、にんしんする わりあいを 大きく ふやしました[7]。

では、もう この世に いない 動物を、のこって いた 細胞さいぼうから よみがえらせる ことは できるのでしょうか。

胎児の細胞では成功、大人の細胞では短命

2018年、中国科学院神経科学研究所のチームが、ドリーと同じ体細胞核移植で、カニクイザルのクローンに成功したと報告しました[7]。

胎児の線維芽細胞を使った場合は、21匹の代理母のうち6件で妊娠が確認され、元気な2匹が生まれました[7]。一方、成体の卵丘細胞を使った場合は、42匹中22件が妊娠し、2匹が生まれましたが短命でした[7]。したがって「サルのクローン=大人の細胞から」とはいえません。

Kdm4d mRNAとトリコスタチンAという処理を加えると、胚の発生と妊娠率が大きく改善したと報告されています[7]。

ここまで、生きている動物の細胞を使ってきました。では、もう亡くなった動物の細胞では、どうでしょうか。

2018年、中国科学院神経科学研究所のチームは、ドリーと同じSCNTでカニクイザルのクローンに成功した[7]。胎児の線維芽細胞をドナーにした実験では、21匹の代理母のうち6件で妊娠が確認され、健康な2匹が生まれた[7]。成体の卵丘細胞では、42匹中22件が妊娠して2匹が生まれたが、短命だった[7]。成体の細胞を使うと難しい、という点は、ドリーの時代から変わらない。

そこで鍵になったのが、胚の発生を助ける処理だった。Kdm4d mRNAとトリコスタチンAの処理で、胚の発生と妊娠率が大きく改善したと報告されている[7]。ただし本文は有料で、ここでは要旨の範囲で扱う。

ここまでは生きた個体の細胞を使う例だった。次の章では、すでに亡くなった牛の細胞が使われた例を見る。

7. なくなった 牛の、れいとう された 精巣せいそうから?

7. 冷凍の精巣から、「飛騨牛の父」をよみがえらせる

7. 冷凍精巣からの体細胞クローン ── 種雄牛「安福」と「望安福」

ぎふけんに、「ひだぎゅうの 父」と よばれた 牛が いました。名前は、やすふくです。1993ねんに なくなりました。

のこって いたのは、−80度の れいとうこで 10ねん いじょう ほぞんされた、精巣せいそうでした[8]。

けんきゅうチームは、そこから、生きて いる 細胞さいぼうを さがしだしました。ほんの 少ししか なかった 細胞さいぼうを、ふやして つかいました[8]。

2009ねん、やすふくと おなじ かくの いでんの じょうほうを もつ 子牛、のぞみやすふくが うまれました[8]。

「飛騨牛の父」と呼ばれる種雄牛の安福(やすふく)は、1993年に死んでいました。その精巣は、特別な処理をせず、−80℃の冷凍庫で10年以上保存されていました[8]。

岐阜県畜産研究所と近畿大学は、この冷凍精巣から生きた細胞を取り出しました。ほんの少数残っていた生きた細胞を培養で増やせたことが、この研究の鍵だったと報告されています[8]。

その細胞を使って、体細胞クローン牛の望安福(のぞみやすふく)が誕生しました。農林水産省の農林水産技術会議事務局は、この成果を2009年の農林水産研究成果10大トピックスの1つにえらんでいます[8]。

ここまで、羊・猫・サル・牛と見てきました。もっと調べたくなったとき、どこを見ればよいでしょうか。

「飛騨牛の父」と呼ばれる種雄牛安福は1993年に死亡していた。岐阜県畜産研究所と近畿大学は、特別な処理なしに−80℃の冷凍庫で10年以上保存されていた精巣から、少数残っていた生きた細胞を取り出し、培養で増やした。この培養の成功が研究の鍵だったとされる[8]。得られた細胞を使い、体細胞クローン牛望安福が誕生した[8]。

この成果は2009年の農林水産研究成果10大トピックスの1つに選ばれた[8]。前章までで見たとおり、核移植の効率は高くないが、貴重な個体の細胞が残っていれば、遺伝情報の核を次の世代に伝える選択肢になりうる。ただし、生まれた個体が「同じ」なのは核のDNAである点は、前々章のとおりだ。

8. もっと しらべたく なったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 出口 ── 資料の読みどころと、残る問い

この 話の 中で、「おなじ いでんしなのに、ちがって いる」と 思った ところは ありましたか。三毛ねこの レインボーと、しまもようの CC。さがして みると、ほかにも ふしぎが あるかもしれません。

図書館や インターネットで、「クローン」「体細胞さいぼう」を しらべると、日本語の 資料しりょうが 見つかります。おうちの 人と いっしょに 見て みましょう。

日本語で読める資料として、食品安全委員会の体細胞クローン評価書Q&A[4]や、農林水産技術会議事務局の10大トピックス[8]が公開されています。

身近な動物の「見た目が同じにならない」例を、本や図鑑で探してみるのもよいでしょう。なぜクローン猫CCの毛色が元の猫と違ったのかは、自分で調べてみたい次の問いです。

原典に当たるなら、ドリーはロスリン研究所の記録[1]とNature論文の要旨[2]、手順と安全性の評価は食品安全委員会のQ&A[4]が日本語で読める。ミトコンドリアDNAの由来は1999年のEvansらの論文の要旨[6]、サルは2018年のCellの要旨[7]、安福は農林水産技術会議事務局の資料[8]が出発点になる。

残る問いも多い。クローン猫CCの毛色の違いの原因や、近年のクローン家畜の食品としての扱いは、この記事の資料の範囲外だ。食品安全委員会のQ&Aも、当時の状況の説明である点に注意して読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:大学・研究機関・公的機関の資料と、論文の要旨、報道記事を使いました。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いています。

  1. University of Edinburgh「Cloning of Dolly the Sheep, 1996」。https://ourhistory.is.ed.ac.uk/index.php/Cloning_of_Dolly_the_Sheep,_1996 (ドリーの誕生と277回の試みについて)
  2. Wilmut et al. 1997, Nature 385:810 の要旨(Europe PMC)。https://europepmc.org/search?query=%22Viable%20offspring%20derived%20from%20fetal%20and%20adult%20mammalian%20cells%22 (3種類の細胞から子羊が生まれたことについて)
  3. PMC「Gurdon's nuclear transfer work」の解説論文。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3625362 (カエルの核移植とノーベル賞について)
  4. 食品安全委員会「体細胞クローン評価書Q&A」。https://www.fsc.go.jp/emerg/clone_qa.pdf (作り方と、出生前後の死亡について)
  5. NBC News「A year later, cloned cat is no copycat」。https://www.nbcnews.com/id/wbna3076908 (クローン猫CCの毛色について)
  6. Evans et al. 1999, Nature Genetics 23:90-93 の要旨。https://scholars.mssm.edu/en/publications/mitochondrial-dna-genotypes-in-nuclear-transfer-derived-cloned-sh-2/ (ミトコンドリアDNAの由来について)
  7. Liu et al. 2018, Cell の要旨(Europe PMC)。https://europepmc.org/search?query=%22Cloning%20of%20Macaque%20Monkeys%20by%20Somatic%20Cell%20Nuclear%20Transfer%22 (サルのクローンについて)
  8. 農林水産技術会議事務局「2009年農林水産研究成果10大トピックス」。https://www.affrc.maff.go.jp/docs/10topics/2009/attach/pdf/2009-4.pdf (安福と望安福について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。