このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

うちゅうの でんぱを とらえる、じめんに つくった おおきな アンテナは、はじめ なにを しらべる ため だったの?

宇宙の電波をとらえる巨大なアンテナ、アレシボ望遠鏡は、はじめ何を調べるために作られたのか

空の電離層を調べるはずの皿が、なぜ水星やパルサーへ向いたのか ── アレシボ電波望遠鏡

分野:宇宙・天文

うちゅうを みる 大きな おわんは、はじめ「地球の すぐ上の 空気の そう(でんりそう)」を しらべる ために かんがえられた、と しりょうに かかれて います。

どうして そんな ことに なったのでしょう。この きじを よむと、じめんの くぼみに おかれた おわんが、水星、まわる 星、ほかの わくせい、うちゅうへの 手紙に つかわれて いった ようすが わかります。

宇宙を観測したアレシボ望遠鏡は、もともと地球の電離層を調べる計画から生まれました。教授が調べたかったのは、地球のすぐ上にある、ごく薄い空気の層でした。

では、なぜ電離層を調べる計画が、水星や回る星、太陽系の外の惑星、宇宙への手紙の舞台になったのでしょうか。この記事を読むと、地面のくぼみに置かれた305mのおわんの工夫と、使い道が広がっていった道すじが分かります。

アレシボ電波望遠鏡の発想は、天文学のためではなく、高度約80km以上の電離層をレーダーで調べることにあった[1][2]。直径305mの固定した皿は、そのための道具として考えられた。

では、電離層のための設備が、なぜ水星の自転、連星パルサー、太陽系外の惑星、星団へのメッセージの舞台になったのか。この記事を読むと、固定した球面鏡という設計の特徴と、それが使い道を広げた経緯、2020年に役目を終えたあとの計画までが分かる。

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1. うちゅうを みる ぼうえんきょうなのに、しらべたかったのは どこ?

1. 宇宙を見る望遠鏡は、もとは地球の電離層を調べる計画だった

1. 天文学用ではなかった ── 電離層を調べる非干渉散乱レーダーの構想

アレシボの ぼうえんきょうを おもいついたのは、コーネル大学の きょうじゅ、ウィリアム・ゴードンさんです[1]。いまは「うちゅうを みる どうぐ」と して ゆうめいですが、ゴードンさんが しらべたかったのは、地球の すぐ 上の 空気でした。

地球の 上、やく 80キロメートルより たかい ところには、とても うすい 空気の そう、「でんりそう」が あります[2]。ここへ 電波を おくり、はねかえって きた 電波を うけとれば、でんしと いう ちいさな つぶの かずや おんどが わかる、と しりょうに あります[2]。

この はねかえりは、とても よわいはずです。それを うけとめる ために、大きな おわんが ひつように なりました。では、その おわんは、どこに どう おいたのでしょう。

教授が見たかったのは、星ではなかった

アレシボ電波望遠鏡を思いついたのは、コーネル大学で電気工学を教えていたウィリアム・ゴードン教授です[1]。目的は、レーダーを使って地球の電離層を調べることでした[1]。

電離層は、高さ約80キロメートルより上にある、ごく薄い空気の領域です[2]。ゴードン教授は、強い電波を空へ打ち上げ、電離層からわずかに返ってくる電波を受ける非干渉散乱レーダーという方法に目をつけました。この方法なら、電子の密度や温度などが分かる、と Physics Today は説明しています[2]。

弱い返りを受けとめるには、大きな受け皿が要る

返ってくる電波はかすかなものです。かすかな電波を集めるには、受け皿が大きいほど有利です。そこで計画は、とても大きなおわんを前提に進みました。

問題は、そんな巨大なものを、どこに、いくらで作るかでした。

宇宙を見るために建てられたはずの望遠鏡が、じつは宇宙を見るためではなかったとしたらどうか。アレシボ電波望遠鏡の発想は、コーネル大学の電気工学教授ウィリアム・ゴードンのもので、目的は、電波を使うレーダー技術で地球の電離層を調べることだった[1]。

電離層は、高度約80km以上の、きわめて希薄な大気の領域である[2]。ゴードンの関心はここにあり、使おうとしたのが非干渉散乱レーダーだった。強い電波を打ち上げ、電離層の電子から返る微弱な散乱波を受けると、電子の密度や温度などが分かる、とPhysics Todayは述べる[2]。

返りが弱い以上、受け止める面積を大きくするほど有利になる。ここから、巨大な反射面が構想の中心に置かれた。ただし、これほど大きな皿を自在に動かす構造にすれば、費用はかさむと考えられる。皿をどう置けば安く済むのかが、次の問いになった。

2. うごかせない おわんで、どうやって 空を みるの?

2. 動かせない巨大なおわんで、どうやって空を見るのか

2. 固定した球面の皿と吊るした受信機 ── くぼみを使う設計

おわんの ちょっけいは 305メートル。ふかさは 51メートルほどです[3]。ひょうめんには、アルミの いたが 38,788まい はられて いました[3]。

こんなに 大きな ものを 地面の 上に くみたてたら、とても おかねが かかります。そこで、プエルトリコの 北の ほうの、せっかいがんの 土地に ある もともとの くぼみに、おわんを おきました[1][2]。くぼみを つかった ので、けんせつが やすく すんだ、と しりょうに あります[1]。

でも、そのかわり おわんは うごきません。ふかい おさらで 雨水を あつめる ように、おわんは 電波を あつめます。あつまった 電波は、おわんの 上に つるした うけとりきに とどきます。この うけとりきを うごかして、まうえの まわり やく 20どの はんいを みました[1]。

ただし 電波は 水ではなく、おわんの かたちで はねかえって 1か所に あつまります。おわんを うごかさず、つるした ほうを うごかす のが この ぼうえんきょうの とくちょうです。

2016ねんに 中国の「ファスト」が 大きさで うわまわるまで、1まいの おわんと しては 世界一でした[3]。

くぼみに置けば、安く建てられる

プエルトリコ北部は、石灰岩が水に溶けてできたくぼみ(シンクホール)の多い地形です。1960年の夏、作業員と機械がそのくぼみのひとつに入り、建設が始まりました[2]。石灰岩の地形と天然のくぼみのおかげで、建設費が安く済んだと説明されています[1]。

皿の直径は305メートル、深さは約51メートルです[3]。広さは約18エーカーとされ[3]、平方メートルに直すと約7.3万平方メートルです。直径305メートルの円の面積を自分で計算しても、ほぼ同じ約7.3万平方メートルになります。表面は38,788枚のアルミ板で、1枚あたり約1.9平方メートルの計算です。

動くのは皿ではなく、吊るした受信機

皿は地面に固定された球面で、受信機は皿の上空に吊るされています。向きを変えるときに動くのは、皿ではなく吊るされた受信機のほうです。それで、電波が来る向きを、真上(天頂)のまわり約20度の範囲で変えられました[1]。

動かせる範囲は広くありません。その代わり、動かせない皿を地面に埋めるように置くことで、大きさを手に入れました。単一の皿としては、2016年に中国のFASTが上回るまで世界一でした[3]。

この道具が、電離層以外にも使えるとしたら。最初の「ほかの使い道」は、開所のすぐあとに来ました。

固定した皿で、どうやって空の向きを変えるのか。ETHWのマイルストーン資料によれば、反射面は地面に固定された球面(おわん型)で、受信機をその上に吊るして動かす方式をとり、ビームは天頂のまわり約20度の範囲に向けられた[1]。動くのは皿ではなく受信機側である。

この選択には、地形の事情があった。プエルトリコ北部のカルスト地形(石灰岩が溶けてできる)にあるシンクホールを使ったことで、建設費が安く済んだとされる[1]。建設は1960年夏に国防総省の資金で始まった[2]。その代わり、可動範囲は天頂付近に限られる。固定した大きさと引きかえに、見える空が狭いという条件をのんだ設計である。

寸法は、Cornell Chronicleによると、直径305m(1,000フィート)、深さ約51m、広さ約18エーカーで、表面は38,788枚のアルミ板だ[3]。直径305mの円の面積を計算すると約7.3万m²で、18エーカー(約7.3万m²)と合う。アルミ板1枚あたりは約1.9m²になる。運営は当初コーネル大学が担い、1970年からは全米科学財団(NSF)のための運営になった[3]。単一の皿としては、2016年に中国のFASTが上回るまで世界最大だった。「最大の電波望遠鏡」ではなく「単一の皿で最大」である点に注意したい。

ところで、この電離層のための皿に、ほかの天体を映してみたらどうなるのか。開所の直後から、その答えが出はじめた。

3. 電波を あてて はねかえりを みると、なにが わかったの?

3. 電波を当てて跳ね返りを調べると、水星の自転も小さな小惑星も調べられた

3. レーダーを惑星へ向ける ── 水星の自転周期と地球近傍小惑星

おわんで 電波を そらへ おくり、はねかえって きた 電波を うけとる。これが レーダーです。ゴードンさんの チームは、これを つかいました。

ひらいて まもなく、ペッティンギルさんの チームは、電波を 水星に あてました[2]。それまで、水星の じてんは 88日と かんがえられて いました。しらべると、やく 59日でした[2]。

ちいさな ほしも しらべました。地球の ちかくを とおる しょうわくせいは 300こ いじょう。ちいさい ものは はばが 50メートルほどの ものも、しらべられた と しりょうに あります[2]。

ここまでは、こちらから 電波を おくる はなしでした。では、星の ほうから くる 電波を うけとったら、なにが わかるのでしょう。

水星は、思ったよりずっと速く回っていた

開所の直後、ゴードン・ペッティンギルのチームが、このレーダーを水星に向けました。水星の自転は、それまで考えられていた88日ではなく、約59日だと分かりました[2]。自転の周期が公転周期の3分の2になっているという関係も、このとき見えてきました[2]。

小さな小惑星まで届くレーダー

レーダーは、その後も使われました。Physics Todayによると、地球の近くを通る小惑星300個以上が、このレーダーで調べられています。小さいものでは幅50メートルほどで、細かさは数メートルという見積もりです[2]。電離層のための道具が、惑星や小惑星の観測にも向いていたことになります。

これは、こちらから電波を出して返りを調べる使い方です。皿は、星が自分で出す電波を受けるのにも使えます。次の主役は、規則正しく電波を出す星でした。

電離層用のレーダーを惑星に向けたら何が分かるのか。開所の直後、ゴードン・ペッティンギルのチームは、このレーダーで水星の自転周期を測った。従来考えられた88日ではなく約59日という結果で、自転周期が公転周期の3分の2に当たるという関係も明らかになった[2]。

小惑星への利用も進んだ。Physics Todayは、300個以上の地球近傍小惑星がこのレーダーで調べられ、小さいものは幅約50m、分解能は数mに達したと述べる[2]。1990年代の改修では、皿の上約137mに吊るしたグレゴリー式の反射鏡系が加わり、使える電波の幅が広がった[2]。皿の寸法は変えず、受ける側を作りかえて性能を伸ばしたわけである。

ここまでは、こちらから電波を出して返りを読むレーダーの使い方だった。受け皿は、天体が自分で出す電波を受けることにも向く。次の主役は、規則正しく電波を出す星である。

4. 1びょうに 17かいも ぴっと 電波を 出す 星は、なにを おしえたの?

4. 1秒に約17回、電波を出す星の周期が、重力波の手がかりになった

4. 連星パルサーPSR B1913+16 ── 周期のずれ、軌道の縮み、1993年のノーベル賞

1974年の なつ、大学院生の ラッセル・ハルスさんは、1びょうに やく 17かい、ぴっ ぴっと 電波を 出す 星を みつけました[4]。こういう 星を パルサーと いいます。

ところが その ぴっの かんかくが、やく 8じかんの くりかえしで、みじかく なったり ながく なったり しました。ハルスさんは、この 星が もう 1つの 星と ぐるぐる まわりあって いるから、と みぬきました[4]。

きゅうきゅうしゃの サイレンは、ちかづくと たかく、とおざかると ひくく きこえます。それに にた ことが 電波でも おきて いました。ただし ほんとうは、おとが かわるのでは なく、電波が とどく タイミングが かわります。

この 2つの 星の まわる みちは、1年に 3.5メートルずつ ちいさく なって いると いわれます[4]。まわる 星は「じゅうりょくは」と いう なみを 出して、すこしずつ ちからを なくす と、じゅうりょくの りろんは いいます。その よそうと、はかった けっかは ほとんど おなじでした。1993年に、この はっけんに ノーベルしょうが おくられました[4]。

この ぼうえんきょうは、星からの 電波を うけとるだけでは ありませんでした。つぎは、同じ 年の 11月に この ぼうえんきょうが おくった「手紙」の はなしです。

点滅の間隔が、周期的に伸び縮みしていた

1974年の夏、大学院生だったラッセル・ハルスは、1秒に約17回の速さで電波を出す天体、パルサーを見つけました[4]。周期は59.03ミリ秒で、1を0.05903で割ると約16.9回になり、「約17回」と合います。

ところが、パルスの間隔が約8時間弱の周期で、短くなったり長くなったりしました。ハルスは、これをパルサーが別の星と回りあっているための、軌道運動によるドップラー効果だと見抜きました。公転周期は7.7519時間です[4]。これが、はじめて見つかった連星パルサー(PSR B1913+16)です[4]。

軌道が縮む量が、予測と一致した

この連星は、軌道の大きさ(長半径)が年に約3.5メートルずつ縮んでいます(周期は年に76.5マイクロ秒ずつ短くなる)[4]。一般相対性理論は、回る星が重力波を出してエネルギーを失うと予測します。観測値と予測値の比は0.997±0.002で、ずれは1パーセントよりずっと小さい値です[4]。

重力波が直接観測されたのは2015年なので、この発見は、直接観測の前の間接的な証拠にあたります。1993年、テイラーとハルスはこの発見でノーベル物理学賞を受けました[4]。

この資料はWikipediaで、一次資料でそろえた数字ではありません。数字は目安として読んでください。

さて、同じ1974年の秋、アレシボ望遠鏡は、電波を受けるのではなく、宇宙へ向けて送り出す役を果たしました。

規則正しく電波を出す星を、アレシボはどう捉えたのか。1974年夏、大学院生のラッセル・ハルスは、1秒に約17回の周期で電波パルスを出すパルサーを見つけた[4]。パルス周期は59.03ミリ秒で、1÷0.05903≒16.9から「約17回」と合う。

決め手は、パルスの間隔が一定でなかったことである。間隔は、約8時間弱の周期で短くなったり長くなったりした。ハルスはこの変化を、パルサーが相手の星とまわり合う軌道運動によるドップラー効果と解釈した。公転周期は7.7519時間だ[4]。これが最初の連星パルサー(PSR B1913+16)の発見となった。

では、この連星から何が引き出せたのか。軌道の長半径は年に約3.5mずつ縮み、周期は年に76.5マイクロ秒ずつ短くなる[4]。公転周期7.7519時間は約27,900秒なので、1年に周期の約3.6億分の1ずつ縮む計算である。一般相対性理論は、連星が重力波でエネルギーを失い軌道が縮むと予測する。観測と予測の比は0.997±0.002だった[4]。1993年のノーベル物理学賞(ハルスとテイラー)は、「重力の研究に新しい可能性を開く新型パルサーの発見」に対するものだった[4]。

ただし限界もある。ここで示されたのは重力波の間接的な証拠で、重力波そのものの直接観測は2015年のLIGOまで待つことになる。また、これらの数値の出どころは、一次資料ではなくWikipediaの記述だ。論文やノーベル賞の講演で確かめる価値がある。

時計のように正確なパルスは、天体の動きを測るだけではなかった。同じ1974年の秋、アレシボ望遠鏡は、受信ではなく送信の主役にもなった。

5. 1,679この「0」と「1」の 手紙は、へんじを まって いたの?

5. 宇宙へ向けて送った1,679ビットの絵は、返事を待つ手紙だったのか

5. 1974年のアレシボ・メッセージ ── 改修記念の「実演」と1,679ビット

1974年11月16日、アレシボでは、大きな かいしゅうを いわう しきが ありました。そこで うちゅうへ むけて、1,679この「0」と「1」の しるしが おくられました[5]。

これを 73ぎょう × 23れつに ならべると、人の すがたや DNA、たいようけいの えに なります[5]。73も 23も、1と じぶんでしか わりきれない かずです。

おくりさきは、ヘルクレスざの 星の あつまり、M13。きょりは 2万〜2万5千 ひかりねんと いわれます[5]。ひかりが 1年で すすむ きょりが 1ひかりねんなので、電波が とどくまで 2万年 いじょう かかる はずです。へんじも おなじだけ かかります。

ですから、へんじを まつ ための ものでは ありませんでした。「こんな ことが できます」と しめす、デモの ような ものでした[6]。

この 皿は、いろいろな 星の ことも、しらべつづけました。つぎは 1992年の はっけんです。

アレシボの大改修を祝う式典で

1974年11月16日、アレシボの大改修を記念する式典で、球状星団M13(ヘルクレス座)へ向けて1,679ビットのメッセージが送られました[5]。フランク・ドレイクが中心となり、カール・セーガンらが協力しました[5]。2つの音を切りかえる方式で、放送は3分弱でした[5]。

1,679は、23×73です。23×70=1610、23×3=69を足せば1,679になります。23も73も素数なので、1,679個を長方形に並べる方法は、1列に並べる場合を除くと、73行×23列か23行×73列の2通りしかありません。送られたのは73行×23列の絵で、人の姿、DNA、太陽系などが含まれます[5]。

これは「返事を待つ手紙」ではなかった

M13までの距離は、資料によって約2万1千光年から約2万5千光年とばらつきがあります[5][6]。光は1年で1光年進むので、少なくとも約2万年かかる計算です。返事が来るなら、同じだけかかります。

SETI研究所の資料は、これを「すぐ返事をもらうためではなく、アレシボ電波望遠鏡の大改修を示す、こんなことができるという実演」と位置づけています[6]。強さは、全方向に20兆ワットで放送するのと同じくらいと説明されています[6]。

パルサーの時計と、遠くへ送った数字の列。そのあと、この皿は、惑星探しにも使われました。

この皿は、受けるだけでなく送りもした。1974年11月16日、アレシボの大改修(アップグレード)を祝う式典で、球状星団M13(ヘルクレス座)へ1,679ビットのメッセージが送られた[5]。フランク・ドレイクが中心となり、カール・セーガンらが協力した[5]。二つの音を切りかえる信号で、放送は3分弱だった[5]。1,679÷約180秒でおよそ1秒に9〜10ビットという計算になり、情報量は小さい。

1,679=23×73であり、23と73はどちらも素数である。1と自分自身でしか割り切れない数の積なので、長方形に並べる方法は73行×23列か23行×73列に限られる。この性質を送り手が狙ったのかどうかは、資料には書かれていない。送られた図は73行×23列で、人の姿、DNA、太陽系などを含む[5]。

これは返事を求める手紙だったのか。SETI研究所の資料は、大改修を記念した実演という位置づけである[6]。M13までの距離は、Astronomy.comが約25,000光年、SETIの資料が約21,000光年とし、資料で食いちがう[5][6]。いずれにしても、電波の到着には2万年以上かかり、返信も同じだけかかる。強さは全方向に20兆ワットで放送するのと同等だという[6]。

受信と送信、どちらにも使える皿は、もうひとつの大きな発見につながった。パルサーの時計の正確さを、惑星探しに使う方法である。

6. パルサーの とけいで、ほかの わくせいが みつかったの?

6. パルサーの「時計」の乱れから、太陽系の外の惑星が見つかった

6. PSR 1257+12 ── パルス到着時刻の精密測定と最初の系外惑星

1992年、ウォルシュチャンさんと フレイルさんは、アレシボの おわんで、6.2ミリびょうごとに 電波を 出す パルサーを くわしく しらべました[7]。1びょうに 160かいほどです。

パルサーの ぴっは、とても せいかくな とけいの ようです。その とどく じこくが すこし ずれる ことから、「パルサーの まわりを、わくせいくらいの 大きさの ほしが 2つ いじょう まわって いる」と はっぴょう しました[7]。

おもさは 地球の 2.8ばいと 3.4ばい。1しゅうする 日かずは 66.6日と 98.2日でした[7]。

これは、たいようの ような 星の まわりでは なく、パルサーの まわりの はなしです。それでも、たいようけいの そとに わくせいが ある ことを はじめて たしかめた はっけんと される ことが あります。

時計の乱れを、惑星の引っぱりと読んだ

1992年、アレシボの305メートルの皿で、ウォルシュチャンとフレイルは、パルサーPSR1257+12のパルスの到着時刻を精密に測りました[7]。このパルサーは6.2ミリ秒ごとにパルスを出します。1を0.0062で割ると、1秒に約160回です。

パルスは時計のように正確なので、わずかなずれも見つかります。2人は、そのずれから、パルサーが惑星くらいの大きさの天体2つ以上に回られていると報告しました[7]。質量は地球の2.8倍と3.4倍、公転周期は66.6日と98.2日です[7]。

太陽のような星の惑星ではない

見つかったのは、太陽のような星ではなくパルサー(中性子星)のまわりの惑星です。それでも、太陽系の外の惑星の存在を初めて確かめた発見とされています[7]。

電離層から始まった皿は、ここまで来ました。この道具には、ひとつ大きな変化が待っていました。

パルサーの時計は、連星の軌道だけでなく、惑星も教えてくれるのか。1992年、ウォルシュチャンとフレイルは、アレシボの305mアンテナで、見つかったばかりの6.2ミリ秒パルサーPSR1257+12のパルスを精密に測り、パルサーが惑星サイズの天体2つ以上に回られていると発表した[7]。Natureの要旨による。

手がかりはパルスの到着時刻のずれである。時計のように正確なパルスが、決まった周期で少しずつ早まったり遅れたりするなら、パルサー自身が小さく揺れ動いていると考えられる。公転周期は66.6日と98.2日、質量は地球の2.8倍と3.4倍だった[7]。1÷0.0062≒161から、このパルサーは1秒に約160回パルスを出している。

ただし注意点が二つある。ひとつは、これが太陽のような恒星の惑星ではなく、中性子星の惑星だということ。もうひとつは「初めての系外惑星」という言い方が、資料では「確かめた発見とされる」という強さにとどまることだ。惑星の存在を示すのが、直接の撮像ではなく、パルスの時刻の精密な解析だった点も押さえておきたい。

このように、アレシボは使い道を広げながら半世紀以上働いた。では、その終わりはどう迎えたのか。

7. おわんが やくめを おえた あと、この ばしょは どうなるの?

7. 役目を終えたあとのアレシボは、学びの場に変わる計画だ

7. 2020年の解体決定と、STEM教育の拠点への転換計画

2020年、おわんの 上の うけとりきを ささえる ケーブルが きれ、あんぜんの ために かいたいが きまりました[8]。12月1日には、うけとりきの だいが おわんの 上に おち、ぼうえんきょうは はたらけなく なりました。けがを した 人は いませんでした[8]。

けれど、ここで すべてが おわった わけでは ありません。さいけんは せず、りかを まなぶ ばしょに かえる ほうしんだ、と つたえられて います[9]。アレシボでは 1972年から、学生の じっしゅうも つづけて きました[9]。

でんりそう、水星、パルサー、うちゅうへの 手紙。この 皿が のこした しごとは、いまも しりょうとして よめます。

役目を終えるまで

2020年、吊るされた受信機を支えるケーブルが8月と11月に切れ、NSFは11月19日に、安全のために解体すると決めました。12月1日の午前7時55分ごろ(現地)、約900トンの受信機の台が皿の上に落ち、望遠鏡は役目を終えました[8]。立入禁止の区域が設けられていて、けが人はいませんでした[8]。

これからは、学びの場として

NSFは、再建はせず、この場所を理系教育の拠点(STEM教育・普及のセンター)に変える方針だと伝えられています[9]。観測所は1972年から、学生の実習プログラムを続けてきました[9]。

電離層の研究から始まり、水星、パルサー、太陽系の外の惑星、宇宙への手紙へと、使い道は広がりました。皿の上の何が発見につながったのかは、資料から読みなおせます。

半世紀以上の運用は、どう終わったのか。2020年に補助ケーブル(8月)とメインケーブル(11月)が切れ、NSFは11月19日に安全のため解体を決定した。12月1日の午前7時55分ごろ(現地時間)、約900トンの受信機プラットフォームが皿に落ちた。NSFが立入禁止区域を設けていたため、けが人は報告されていない[8]。ケーブル断線の月は、二次資料にもとづく。

解体は終わりではなかった。NSFは再建ではなく、現地をSTEM教育・普及の拠点に変える方針を示した[9]。観測所は1972年から、学生の実習プログラムを続けてきた[9]。UCFは、現地の12m望遠鏡とライダー施設の修復を続けるとしている[8]。

電離層の研究に始まり、固定した大きな皿という設計が、水星、パルサー、系外惑星、星団へのメッセージへと使い道を広げた。その流れを、数字を自分の手で確かめながら読みなおすこともできる。

8. 305メートルと 1,679を、じぶんで たしかめよう

8. 305メートルと1,679を、自分の手で確かめる

8. 数字を検算し、一次資料と見くらべる

まず、305メートルを、あるいて かんじて みましょう。1歩が 50センチメートルなら、305メートルは 610歩くらいです。じぶんの 1歩は、ゆかの 上で 10歩 あるいて、すすんだ ながさを 10で わると わかります。その ながさで 305メートルを われば、歩数の めやすに なります。ひろい 公園や 校庭で、人や 車に きを つけて ためして みます。

つぎに、1,679を けいさんします。23×70=1610、23×3=69。あわせると 1,679です。1,679は、1と 23と 73と 1,679でしか わりきれません。だから 1れつに ならべる ほかには、73ぎょう × 23れつと 23ぎょう × 73れつの 2とおりだけです。

今日できる、数字の検算

直径305メートルは、広い公園や校庭で歩いて感じられます。大人の1歩を約60センチメートルとすると約500歩、自分の1歩が約50センチメートルなら約610歩です。安全のため、人や車の少ない広い場所を選んでください。

1,679の計算も、紙とえんぴつでできます。23×73を、23×70=1610と23×3=69に分けて足せば1,679です。1,679を割り切れるのは1、23、73、1,679だけなので、長方形に並べるには2通りしかないと分かります。ほかの数で、たとえば15を割り切れる数を探し、並べ方が何通りあるか比べるのもおもしろいでしょう。

円の面積も、筆算で確かめられる

皿の半径は152.5メートルです。152.5×152.5=23256.25に3.14をかけると、約73,000平方メートルになります。本文の「約7.3万平方メートル」と合うか、紙の上で見てください。

パルサーの時計の話は、ハルスの発見、軌道の縮み、1992年の惑星の3つが同じ考え方でつながっていました。もとの記事を読みたいときは、出典欄のPhysics Today(英語)が入口になります。

この記事の数字のうち、自分で検算できるものは次のとおり。直径305mの円の面積は約7.3万m²で、18エーカーと合う。1÷0.05903≒16.9、1÷0.0062≒161で、パルサーの周期から1秒あたりの回数が出る。27,900秒÷76.5マイクロ秒≒3.6億で、連星の周期の縮み方の大きさが分かる。1,679=23×73は、23×70=1610と23×3=69を足せば確かめられる。

円の面積は、半径152.5mを使えば筆算でも出せる。152.5×152.5=23256.25に3.14をかけて約73,000m²。18エーカーは18×4047≒72,800m²で、どちらもほぼ合う。

数字を拾って同じ計算をしてみると、資料が「分かった」と言う場合と「とされる」と言う場合の差が、見えてくる。もとの資料を読むなら、電離層の構想とくぼみの設計はETHWとPhysics Today、皿の寸法はCornell Chronicle、1992年の惑星はNatureの要旨、メッセージはSETI研究所の資料が入口になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

資料はすべて、記事の内容を支える範囲で使っています。パルサーの数値は二次資料(Wikipedia)にもとづくため、本文でも目安としています。

  1. ETHW, Milestones: NAIC/Arecibo Radiotelescope, 1963. https://ethw.org/Milestones:NAIC/Arecibo_Radiotelescope,_1963 (電離層を調べる構想、固定した球面と吊るした受信機、天頂まわり約20度)
  2. Physics Today (AIP), The Arecibo Observatory: Fifty Astronomical Years. https://physicstoday.aip.org/features/the-arecibo-observatory-fifty-astronomical-years (電離層とレーダー、1960年の建設開始、水星、小惑星、1990年代の改修)
  3. Cornell Chronicle, Some facts (and a little history) about Arecibo. https://news.cornell.edu/node/286125 (皿の寸法、アルミ板の枚数、運営、2016年のFAST)
  4. Wikipedia, PSR B1913+16. https://en.wikipedia.org/wiki/PSR_B1913%2B16 (連星パルサーの数値と1993年のノーベル賞。二次資料)
  5. Astronomy.com, Nov. 16, 1974, Arecibo sends a message. https://www.astronomy.com/today-in-the-history-of-astronomy/nov-16-1974-arecibo-sends-a-message (1,679ビットのメッセージ)
  6. SETI Institute, news archive. https://www.seti.org/news-archive/news-archive-detail?id=409 (メッセージは実演であったこと、20兆ワット相当)
  7. Wolszczan & Frail (1992), Nature, 要旨 (Penn State pure). https://pure.psu.edu/en/publications/a-planetary-system-around-the-millisecond-pulsar-psr1257-12/ (パルサーの惑星の発見)
  8. UCF, Arecibo Observatory's telescope collapses. https://www.ucf.edu/news/arecibo-observatorys-telescope-collapses/ (2020年の経過)
  9. Silicon Republic, Arecibo Observatory STEM education centre. https://siliconrepublic.com/?p=999377 (教育拠点への転換計画。報道)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

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