1. 1、3、5、7を たすと、どう なるの?
1. 奇数を足すと、いつも平方数になる
1. 奇数の和は、なぜいつも平方数になるのか
1、3、5、7、9。ひとつ おきの かずを 奇数と いいます。じゅんばんに たして みましょう。
1。1+3=4。1+3+5=9。1+3+5+7=16。1、4、9、16と、2かい かけた かずが ならびます。
小石で たしかめます。まず 1こ。つぎに、まわりに L字の かたちで 3こ ならべると、2×2の 正方形に なります。もう 1まい、5この L字を くわえると、3×3です[3]。
L字は 3こ、5こ、7こと ふえます。だから たし算が 正方形に なるのです。ただし これは 小石の えで たしかめた はなしで、えを かかないと ぴんと こないかも しれません。
1、3、5、7、9の5個の奇数を足すと25、つまり5×5です。実はこれが偶然ではないことは、碁石や小石を並べてみるとよく分かります。
まず点を1つ置きます。その右と下に、L字の形に点を3つ足すと、2×2の正方形になります。さらにL字に5つ足すと3×3、7つ足すと4×4です。正方形の外側に付け足すL字は、いつも奇数個の点でできています[3][10]。
このL字は「グノモン」と呼ばれます。1から順に奇数を足すことは、正方形をひと回り大きくしていくことなので、和が平方数になります。n番目の奇数までの和はn²です。
こうした点の並びで表せる数を図形数といい、ピタゴラス学派にさかのぼるといわれます[1]。では、正方形でなく三角形に点を並べたら、どんな数が出てくるのでしょうか。
1から奇数を並べて足していくと、1、4、9、16、25と、和は必ず平方数になる。n個目までの和がn²である(例:1+3+5+7+9=25=5²)[3][10]。数式で示すより、点の図のほうが理由が早く分かる。
点を1つ置き、その右と下に点を3つ足せば2×2になる。さらに5つ足せば3×3、7つ足せば4×4である。正方形を一回り大きくするために必要な点が、外側のL字(グノモン)であり、その点の数は新しい層ごとに奇数個ずつ増える[3]。層の数がnなら、できあがる正方形の一辺はnになる。ここが「奇数の和=平方数」の中身である。
点を規則的に並べたときの数を図形数といい、正方形のほか三角形のものが有名である。古代ギリシアのピタゴラス学派に由来し、数と図形を結びつけて調べる流れが生まれたとされる[1]。学派が小石を使って表したかどうかは、おそらくそうだったという推定にとどまる[2]。
では、点を正方形ではなく三角形に並べると、どんな数が現れるか。次の章で、同じ見方を三角形に使う。
2. 三角に ならべると、どんな かずが できる?
2. 点を三角形に並べると見える、三角数と平方数のつながり
2. 三角数の式 n(n+1)/2 は、図形を2つ合わせると導ける
こんどは 小石を 三角に ならべます。いちばん うえは 1こ、つぎは 2こ、その つぎは 3こと ふやして いきます。
ぜんぶで 1こ、3こ、6こ、10こ、15こに なります。これが 三角数です[4]。
10この 三角形は、むかしの 数学者たちに とくに だいじに されたと いわれて います[4]。
おもしろい ことが あります。6この 三角と 10この 三角を くっつけると、4×4の 正方形に なります。6+10=16です[4]。
1段目に1個、2段目に2個、3段目に3個と、点を積み上げていくと三角形になります。点の数は1、3、6、10、15…で、これを三角数といいます。4番目は1+2+3+4=10です[4]。
点が10個の三角形は、ピタゴラス学派にとって「完全な数」として大事にされ、テトラクテュスと呼ばれたといわれます[4]。宗教的な意味には深入りせず、ここでは「三角数の10」とだけ覚えておけば十分です。
三角数の中には、平方数が隠れています。連続する2つの三角数を足すと平方数になります。たとえば6+10=16=4²です[4]。三角形を2つ合わせて、斜めの線をなくすと正方形になる、と図で想像できます。
では、三角数が1000個目や100個目になったら、点を全部数えるしかないのでしょうか。
点を1個、2個、3個…と積むと三角形ができ、点の総数は1、3、6、10、15と増える。n番目の三角数はT(n)=1+2+…+n=n(n+1)/2で、4番目なら10になる[4]。点が10個の三角形は、ピタゴラス学派が「完全な数」として重んじ、テトラクテュスと呼んだと説明される[4]。ただし宗教的な意味づけは本稿の主題ではない。
式の理由は、同じ三角形を逆さにして隣に置くと分かる。三角数を2つ合わせるとn×(n+1)の長方形になる。三角形が1つ分の半分なので、T(n)=n(n+1)/2である。図形数の解説でも、三角数の2倍が長方形の数(矩形数)になることから導けるとされる[1]。
三角数と平方数も結びつく。連続する2つの三角数の和は平方数であり、たとえばT(3)+T(4)=6+10=16=4²である[4]。前章の「奇数を足すと平方数」と合わせると、同じ平方数が、L字の層でも、2つの三角形でも作れることが分かる。
式があれば、100番目の三角数は100×101÷2=5050と、一瞬で出せる。ではこの考えは、三角数以外の並びにも使えるのか。
3. 100ばんめの かずを、かぞえずに 出すには?
3. 差がいつも同じなら、100番目は数えなくても出せる
3. 等差数列の第n項と和 ── 逆順に並べて足すと公式になる
1、3、5、7…は、となりどうしの ちがいが いつも 2です。こうした ならびを とうさ すうれつと いいます。ちがいの ことを こうさと よびます[6]。
100ばんめを 1つずつ かぞえるのは たいへんです。そこで、さいしょの 1に、2を 99かい たします。1+2×99=199。100ばんめは 199です。
では 1から 100まで ぜんぶ たしたら? 1と 100、2と 99と、はしと はしを くみにすると、どの くみも 101に なります。くみは 50こ。101×50=5050です[6]。
1、3、5、7…のように、隣り合う数の差がいつも同じ並びを等差数列といい、その差を公差といいます[6]。この並びは、初項が1、公差が2です。
100番目は、初項に公差を99回足せば出ます。一般に、初項a、公差dなら、第n項はa+(n−1)dです。1+(100−1)×2で199になります[6]。「n−1」なのは、1番目に足す回数が0回だからです。
では、全部を足した和はどうでしょう。並びを逆さにして、元の並びの下に書き、上下で足します。どの組も初項と末項の和(a+最後の項)になり、それがn組できるので、和の2倍がn×(初項+末項)になります。2で割れば和が出ます[6]。
1から100なら、(1+100)×100÷2=5050です。奇数1、3、…、199の100個なら、(1+199)×100÷2=10000で、100²に一致します(前の章の規則を、自分の計算で確かめた例です)。
この「逆さにして足す」方法を、小学生のガウスが使ったという話があります。
隣り合う項の差が一定の数列が等差数列で、その差が公差である。初項a、公差dなら第n項はa+(n−1)dと表される。日本語版Wikipediaなど、項の番号を0から始める流儀もあるため、式の形は出典ごとに変わる点に注意が必要である[6]。奇数列1、3、5…は初項1、公差2で、第100項は1+99×2=199になる。
和の公式は、数列を逆順に並べ、元の数列と各項ごとに足して導く。どの組もa₁+aₙとなり、それがn組あるので、2S=n(a₁+aₙ)、よってS=n(a₁+aₙ)/2である[6]。1から100の和は100×101÷2=5050で、これは三角数T(100)と同じだ。実際、公差1の等差数列の和が三角数である。
前の章と結びつけると、奇数1、3、…、199の和は(1+199)×100÷2=10000=100²で、「n個の奇数の和=n²」と一致する。3つの見方(L字の点の層、三角形を2つ、等差数列の逆順和)が、同じ答えに行き着くことを検算で確かめられる。
この逆順の発想で1から100の和を求めたとされるのが、ガウスである。ところが、この逸話には別の版がある。
4. 小学生の ガウスは、どう やって たしたの?
4. ガウス少年の逸話は、版によって問題が違う
4. ガウスの逸話の諸版と、公式がガウス以前から知られていた事情
ドイツの 数学者 ガウスが 小学生の ころ、先生が 出した 「1から 100まで たしなさい」を、あっと いう まに といた、と つたえられて います[9]。
ガウスは、1と 100、2と 99と、101の くみが 50こと 気づいた、と いわれます。まえの 章の やりかたと 同じです。
ただし、この はなしは ほんとうかどうか、はっきりして いません。出した もんだいも、はなしの 本に よって ちがいます[7]。
この 計算の きまりは、ガウスより ずっと まえから、世界の いろいろな ところで 知られて いたと いわれます[8]。
ガウス(1777〜1855年)は有名な数学者で、小学生のころに、先生が出した「1から100までを足しなさい」を一瞬で解いた、と伝えられています。50組の和が101になることに気づいた、という話です[9]。
ただし、この逸話の信頼性は確かではないとされています[8]。問題も、版によって違います。ダニントンの伝記に基づく話では「1から100を足す」ですが、ベル(1937年)の本では81297+81495+81693…+100899という問題で、公差が198、100項が並びます[7]。
この問題でも、考え方は同じです。(81297+100899)×100÷2で、和は9109800になります(この計算は筆者によるものです)。年齢も、7歳、10歳など、出典によってまちまちです[9]。
もう1つ、「ガウスが等差数列の和の公式を発明した」は正しくありません。似た規則は、アルキメデスやディオファントス、中国の張丘建、インドのアーリヤバタらも扱っていたといわれ、ピタゴラス学派にさかのぼる説もあります[8]。逸話は少し不確かでも、「並びを工夫して見ると、数えなくても分かる」という見方のよさは、確かに伝わってきます。
ガウス(1777〜1855年)が小学生のころ、1から100の和を一瞬で出し、50組の101に気づいたという話は広く知られる[9]。しかしWikipediaは、この逸話の信頼性は不確かだと注記している[8]。
版を比べると、細部は大きく違う。ダニントン系の話は「1から100を足す」問題だが、E.T.ベル(1937年)の版は81297+81495+…+100899で、公差198の100項である。Science Newsの記事は、この版の違いと、先生が板を投げるといった描写も紹介している[7]。
この問題は、第1項と第100項の和が182196で、50組あるから9109800となる(筆者による計算。81297+99×198=100899で項数も確かめた)。ガウス少年が気づいたのが、1から100の問題でも、公差のある問題でも、同じ「組にして数える」発想である。年齢も、MacTutorでは7歳とする一方、10歳や3年生とする資料もある[9]。
さらに、等差数列の和の規則は、ガウスよりずっと前から世界各地で扱われた。アルキメデス、ディオファントス、中国の張丘建、インドのアーリヤバタらが似た規則を扱い、ピタゴラス学派にさかのぼる説もある。ただし、各人が同じ公式を述べたかどうかは、出典で一人ずつ確かめる必要がある[8]。
残る問いは、この規則がくらしの中でどこに現れるかだ。次の章で、リーグ戦の試合数を数える。
5. 三角に ならぶ かずを、見つけて みよう
5. 試合数と握手の数を、三角数で数えてみる
5. リーグ戦の試合数と握手の数 ── T(n−1) で数える
5チームが ぜんぶの チームと 1かいずつ しあいを するとき、しあいの かずは 4+3+2+1=10です[5]。
じっさいに 小石や コインを 5こ ならべて、線を ひいて、かぞえて みましょう。つぎの 日は、6チームで やって みましょう。
小石を ならべて、じぶんだけの かずの ならびを 作ってみても おもしろいです。三角でも 四角でも、すきな かたちで 1つめ、2つめ、3つめと 大きく して、こが いくつ ふえるか、えに かいて みましょう。ふえる かずに きまりが 見つかると、100ばんめも かぞえずに わかります。
5チームが、すべてのチームと1回ずつ対戦する総当たり戦をするとします。1チーム目は4チームと、2チーム目はまだ戦っていない3チームと、と数えていくと、4+3+2+1=10試合になります。nチームなら、試合数は三角数T(n−1)に等しくなります[5]。
握手の問題も同じ形です。n+1人が互いに1回ずつ握手をするとき、握手の数はT(n)です。10人なら9+8+…+1=45回です。
紙に点を丸く並べ、線で結んで数えてみると、三角数の並びが確かめられます。コインやおはじきを2種類の向きに並べて、自分で「三角数」と「平方数」の並びを作ってみるのもおもしろいでしょう。
数学の考え方のなかで、点を並べた正方形がどこまで大きくなるか、紙に描いて確かめてみましょう。
nチームの総当たりリーグ戦(全チームと1回ずつ対戦)の全試合数は、三角数T(n−1)に等しい。握手問題も同じ構造である。n+1人が互いに1回ずつ握手するとき、握手の総数はT(n)になる[5]。5チームなら4+3+2+1=10試合、10チームなら9+8+…+1=45試合と、足し算が三角数のn(n+1)/2で置き換わる。
手元の確認方法としては、紙に点を円形に打ち、各点を線で結び、線の本数を数える。点の数を3、4、5と増やすと、線の数は3、6、10と増えて三角数と一致する。自分の学校の部活の対戦数や、クラスの人数で握手の総数を計算してみるのも練習になる。
原典に当たりたい人へ。三角数・平方数の解説は図形数の項(出典[1])にあり、逆順に足す導出は高校数学Bの教科書的な資料(出典[6])が読みやすい。ガウスの逸話の版の違いは、Science Newsの記事(出典[7])が整理している。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
図は入れず、文章と計算で説明しました。ピタゴラス学派や各国の数学者に関する記述は二次資料によるもので、「といわれる」の範囲です。
- 図形数(用語解説) https://pedia.3rd-in.co.jp/wiki/%E5%9B%B3%E5%BD%A2%E6%95%B0 (図形数の定義とピタゴラス学派)
- Figurate number(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Figurate_number (小石を使った推定)
- 平方数(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%96%B9%E6%95%B0 (奇数の和と平方数)
- 三角数(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%A7%92%E6%95%B0 (三角数の式・テトラクテュス)
- Triangular number(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Triangular_number (総当たり戦と握手問題)
- 高等学校数学B/数列(Wikibooks) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E6%95%B0%E5%AD%A6B/%E6%95%B0%E5%88%97 (等差数列の一般項と和)
- Young Gauss(Science News) https://www.sciencenews.org/?p=26159 (逸話の版の違い)
- Arithmetic progression(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Arithmetic_progression (逸話の信頼性・ガウス以前の知識)
- Johann Carl Friedrich Gauss(MacTutor) https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Gauss/ (ガウスの生年と逸話)
- Odd Number Theorem(Wolfram MathWorld) https://mathworld.wolfram.com/OddNumberTheorem.html (最初のn個の奇数の和はn²)
なおした ところ
更新履歴
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