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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

ぎんこうは なぜ 会社に 大金を かして くれるの?

銀行はなぜ会社に大金を貸せるのか ── お金のつくり方と「安全の重ね着」

銀行の企業向け貸出 ── 預金との関係と、審査・保証・引当・自己資本・預金保険という重層構造

分野:技術

町の 小さな 工場が、新しい きかいを 買うために 1おく円 ほしいと ぎんこうに 相談しました。ぎんこうは その 1おく円を、どこから 出すのでしょうか。もし 工場が かえせなく なったら、ぎんこうに あずけた みんなの お金は だいじょうぶなのでしょうか。

この メモでは、この 2つの 問いの 答えを、じゅんばんに さがして みます。

町の小さな工場が、新しい機械を買うために1億円を借りたいと銀行に相談したとします。銀行はその1億円を、いったいどこから出すのでしょうか。もし工場が返せなくなったら、預金している人のお金は大丈夫なのでしょうか。

この記事では、日本銀行や金融庁などの資料をもとに、この二つの問いの答えを探していきます。

銀行は毎年、企業に数百兆円規模の貸出を行っている。預金者から預かったお金だけで、それが賄えるのだろうか。貸したお金が返ってこなかったとき、預金者のお金は守られるのだろうか。

この記事は、預金と貸出の関係についての二通りの説明と、返済能力の判定、担保・保証、貸倒引当金、自己資本、預金保険という複数の安全装置を、日本銀行・金融庁・イングランド銀行などの資料から整理する。

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1. ぎんこうには、お金が どのくらい あるの?

1. 預金と貸出 ── 数字で見る銀行のお金

1. 預金約1072兆円・貸出約680兆円 ── 銀行の規模(2026年8月)

ぎんこうは、人から お金を あずかって、お金が ほしい 会社や 人に かして、りそくを もらって います[1]。あずける 人は、お金を しまって おく 手間や しんぱいを へらせます。

2026年8月の ニュースでは、ぎんこうや しんようきんこに あずけられた お金は 1000ちょう円を こえて いました。かして いる お金は 680ちょう円ほどで、前の 年より 5%ちょっと ふえて いたと つたえられて います[2]。

「あずかった お金を かす」と いう せつめいは、わかりやすいですね。でも、もう ひとつ、ちがう 見かたも あります。ぎんこうが かすと、かりた 人の こうざに よきんが きろくされる、と いう ものです。どちらの 見かたでも、かえせる 見こみが ないと かせません。つぎの ところで 見て みましょう。

銀行は、預金として預かったお金を、お金を必要とする個人・企業・国や地方公共団体に貸し出し、借りた側は利息を払います[1]。預けるほうには、お金を自分で保管する手間や危険を避けられるという利点があります。

では、その規模はどのくらいなのでしょうか。日本銀行の統計を報じたロイターの記事によると、2026年8月の預金の月中平均残高は約1072兆円、銀行と信用金庫を合わせた貸出の月中平均残高は約680兆円で、貸出は前の年より5.4%増えました。銀行だけを見た貸出が600兆円を超えたのは、1991年7月以降で初めてと伝えられています[2]。なお、この「月中平均残高」は、月の中の毎日の残高を平均したものです[3]。

「預金を貸し出す」という説明は、銀行の姿をつかむには分かりやすい入口です。ただ、日本銀行やイギリスの中央銀行は、もう一つの説明も出しています。銀行が貸出を実行すると、借り手の口座に預金が記録される、という説明です。二つの説明は、銀行が預金を受け入れることと、返せる見込みや規制・監督という制約がかかることでは共通しています。

全国銀行協会は、銀行の役割を、預金として預かった資金を資金需要のある個人・企業・国・地方公共団体に貸し出し、借り手から利息を受け取ることだと説明している。預金者は保管の手間やリスクを避けられる[1]。

規模を確認しておく。日本銀行の貸出・預金動向を報じたロイターによれば、2026年8月の銀行・信金計の貸出は、月中平均残高(平残)で約680兆円(前年比5.4%増)、預金は平残で約1072兆円(同1.6%増)である。銀行計の貸出が600兆円台に乗せたのは、1991年7月以降で初めてとされる[2]。平残とは、月中の日々の残高の平均のことだ[3]。ここでの数字は日銀の原表ではなく報道を経由したものなので、約の値として扱う。

この「預金を貸し出す」という仲介の説明とは別に、貸出そのものが預金をつくるという説明が、中央銀行から出されている。貸出を実行すると借り手の口座に預金が記録される、という見方である。二つの説明は、預金の受け入れと、返済可能性・規制監督という制約を共通の前提とする。次章で見る。

2. かした お金は、どこから きたの?

2. 貸すと預金が生まれる ── もう一つの説明

2. 貸出が預金をつくる ── イングランド銀行(2014年)と日銀総裁講演(2024年)

イギリスの ちゅうおうぎんこうは 2014年に、「いまの 世の中の お金の おおくは、ぎんこうが 人や 会社に かす とき、つくられて いる」と せつめいしました[4]。

日本ぎんこうの 植田和男そうさいも、2024年12月の こうえんで、ぎんこうが かす ことで、しはらいに つかえる よきんを つくれると のべて います[5]。

スタンプカードに 少し にて います。おみせが スタンプを おすと、ポイントが ふえます。よそから ポイントを あつめて くる わけでは ありません。ただし、ぎんこうは ちがいます。かして お金を ふやす ときも、かえって くる 見こみや、きびしい 見はりが あるので、すきな だけ かせる わけでは ありません。

つまり、「あずかった お金を かす」のも、「かす ときに かりた 人の こうざに よきんが きろくされる」のも、どちらも ぎんこうの お金の うごきの 見かたです。じっさいには、かえせるか どうかの チェックが かかります。

そうさいは、この しくみは きびしい 見はりが ぜんていだと 言いました[5]。日本ぎんこうは 1957年から、ぎんこうに、あずかった お金の うち きまった わりあい いじょうを 日本ぎんこうへ あずけさせる きまりも つくって います[6]。

イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は、2014年の報告で、現代の経済にあるお金の大半は、銀行が貸出を行うことでつくられていると説明しました。銀行は、預金者から預かったお金をただ貸し出す仲介役ではない、とも述べています[4]。

日本銀行の植田和男総裁も、2024年12月の講演で、銀行の預金には信用創造の機能があり、貸出を行うことで支払いに使える預金をつくれると述べました。そのため、入金より先に支払いが必要になる大きな取引の資金需要にも、柔軟にこたえやすいそうです[5]。

この記事では、「預金を貸す」という説明と「貸出が預金をつくる」という説明を、どちらかを誤りと決めずに二つ並べておきます。同じ銀行のお金の動きを、別の順番で説明していると読めます。どちらの説明でも、銀行が預金を受け入れること、貸出を実行すると借り手の口座に預金が記録されること、返せる見込みや規制・監督という制約がかかることは共通しています。

ただし、銀行が好きなだけ貸せるわけではありません。総裁は、この機能の提供は厳格なリスク管理が前提で、銀行への規制や監督も厳しくなると述べています[5]。日本には、銀行が預金などの一定の割合以上を日銀に預ける準備預金制度もあります。1957年に始まり、その割合の変更は1991年10月が最後です[6]。

イングランド銀行は2014年第1四半期の季報で、現代経済のお金の大半は、民間銀行が貸出を行うことで創出されていると説明した。銀行は預金者から預かった預金をただ貸し出す仲介者として振る舞うのではなく、中央銀行のお金を何倍にも増やして貸出をつくるのでもない、という整理である[4]。

日本銀行の植田総裁も、2024年12月の講演「決済の未来と中央銀行の役割」で、預金通貨には信用創造機能があり、銀行が貸出を行うことで支払手段である預金を創出できると述べた。これにより、入金に先行して支払いが発生する大口決済などの資金需要に、柔軟に応えやすいという[5]。

前章の「預金を貸し出す」という説明と、この「貸出が預金を創出する」という説明のうち、どちらかを誤りとは断定しない。二通りの説明があるものとして、並べて整理しておく。両者は、銀行が預金を受け入れること、貸出の実行に伴って借り手の口座に預金が記録されること、返済可能性と規制監督が制約になること、という点では矛盾しない。

この機能には制約がかかる。総裁は同講演で、信用創造機能の提供は厳格なリスク管理を前提としており、銀行への規制監督も厳格になると述べている[5]。準備預金制度は、対象の金融機関に、受け入れている預金等の一定比率以上を日銀に預け入れることを義務づけるもので、1957年に導入された。準備率は1991年10月を最後に変更されていない[6]。

3. かえせる 会社か、どうやって 見わけるの?

3. 返せる会社かどうかを見きわめる ── 審査と5つの区分

3. 審査と債務者区分 ── 返済能力の判定から事業性評価へ

ぎんこうは お金を かす 前に、その 会社が かえせるかを しらべます。これを しんさと いいます。

きんゆうちょうの きまりの 本には、会社の お金の ようす、お金の まわり ぐあい、もうけを 出す 力 などを 見て、会社を 5つに 分けると 書かれて いました[7]。げんきな 会社から、もう かえせない 会社までです。いちばん げんきな なかまは、商売が うまく いって、お金の ようすに 大きな もんだいが ない 会社です。

この 本は、あとで なくなりました。2025年の きんゆうちょうの 文書は、「ぜんぶの ぎんこうに おなじ ことを おしつける きまりでは なく、ぎんこうが 自分で 考える ための ヒント」と いう 考えを 出して います[8]。

さいきんは、土地などの たんぽや 決算書の 数字だけでなく、会社の 仕事の 中身や、これからの のびしろを 見る 「じぎょうせいひょうか」という 考え方も、きんゆうちょうが すすめて いると いわれます[9]。

銀行は貸す前に、その会社が返せるかを調べます。これを審査といいます。金融庁の検査マニュアルには、債務者(借りる側)の財務状況、資金繰り、収益力などから返済能力を判定し、正常先・要注意先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先の5つの区分に分けると書かれていました[7]。元気な会社から、もう返せなくなっている会社までを、段階で見る考え方です。

いちばん元気な区分の「正常先」は、業況が良好で、財務内容にも特に問題がない債務者とされています[7]。

このマニュアルは、その後廃止されました。2025年に金融庁が出した文書は、自分たちの示す考え方を「従来の金融検査マニュアルのような一律の指針ではなく、金融機関の適切な判断を支える参考資料」と位置づけています[8]。

近年は、担保・保証や決算書に頼りすぎず、事業の内容や成長の見込みを評価して貸す「事業性評価」という考え方が、金融庁の方針として広まったといわれています[9]。

貸出の審査の基本は、返済能力の判定である。金融庁の金融検査マニュアルは、債務者区分を、債務者の財務状況・資金繰り・収益力等により返済能力を判定し、正常先・要注意先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先に区分することと定めていた。正常先は、業況が良好で財務内容にも特段の問題がない債務者を指す[7]。

現在、このマニュアルは廃止されている。2025年4月に金融庁が公表した「企業価値担保権付き融資の評価や引当の方法等に係る基本的な考え方について(案)」は、従来の金融検査マニュアルのような一律の指針ではなく、金融機関の適切な判断を支える参考資料だと述べる[8]。

この流れで語られるのが事業性評価だ。担保・保証や財務データに必要以上に頼らず、借り手の事業内容や成長可能性を評価して融資を判断する考え方で、金融庁が方針として打ち出したとされる[9]。

4. かえせなく なった とき、だれが たすけるの?

4. 万一のときの備え(1)── 保証と担保

4. 保証付融資と経営者保証 ── 信用保証協会・2013年ガイドライン・企業価値担保権

「しんようほしょうきょうかい」という ところが あります。会社が かえせなく なったとき、きょうかいが 代わりに ぎんこうへ はらって くれる ことが あります[10]。

かりた 会社は、その お礼として、ほしょうの お金を はらいます[10]。

会社の 社長さん 本人が、ほしょうに なる ことも あります。2013年に、社長さん 本人の ほしょうに たよらないで かりやすく する ガイドラインが 出されました[11]。

土地や たてものの かわりに、会社の 仕事ぜんたいの ねうちを たんぽに する、あたらしい しくみも あります。きんゆうちょうは 2025年4月に、その ときの ぎんこうの あつかい 方の 考えを あんとして 出しました[8]。

「信用保証協会」という組織が保証人になる、保証付融資があります。借りた中小企業の返済が滞ると、協会が代わりに銀行へ立て替え払い(代位弁済)をします。借りる側は、その対価として信用保証料を払います。法人の代表者以外の連帯保証人は、原則として必要ありません[10]。

会社の社長本人が、個人として保証人になることもあります。2013年12月に「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、金融庁は、経営者個人の保証に頼らない融資が広がる環境づくりを進めています。2022年12月には「経営者保証改革プログラム」も作られました[11]。

担保についても新しい動きがあります。不動産などの従来型の担保のかわりに、事業全体の価値を担保にする「企業価値担保権付き融資」で、金融庁は2025年4月に、銀行の査定や引当での扱い方の考え方を案として示しました[8]。制度がいつ始まるかは、この記事では確かめていません。

信用保証協会の保証付融資では、借り手の中小企業の返済が滞ったとき、協会が借主に代わって金融機関に立て替え払い(代位弁済)を行う。借り手は対価として所定の信用保証料を支払い、法人代表者以外の連帯保証人は原則不要とされる[10]。

経営者個人による保証については、「経営者保証に関するガイドライン」が2013年12月9日に公表された。金融庁は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を掲げ、2022年12月には経営者保証改革プログラムが策定されたとしている[11]。

担保のかたちも変わりつつある。事業性融資推進法に基づく企業価値担保権付き融資は、不動産などの従来型の担保に代えて、事業全体の価値を担保とする制度である。金融庁は2025年4月、その評価・引当の考え方(案)を公表し、金融機関が自己査定・償却・引当でどう扱うかが論点とされた[8]。制度の施行時期は、原文で確認できていないため、ここでは述べない。

5. かえって こなかった お金は、どのくらい ある?

5. 返ってこなかった分は、どのくらい? ── 貸倒れの備えと「1万円あたり5円」

5. 貸倒引当金と信用コスト率 ── 2024年度は地域銀行で0.05%

それでも、かえって こない お金は 出ます。ぎんこうは、その ときの ために、あらかじめ お金を とりわけて おきます。これを ひきあてと いいます[12]。

2024年度、かえって こなかった ときの ために ぎんこうが つかった お金は、かした お金 1万円 あたり、地いきの ぎんこうで 5円 ほどでした。大きな ぎんこうでは、ほとんど ゼロでした[13]。

この かずは、前の 年より すこし へって います。年に よって かわる かずです[13]。

りそくの 中には、こうした もしもの ときの ための お金も ふくまれて いると いわれます。

銀行は、貸した分が回収できなくなる危険に備えて、貸倒引当金を積みます。正常先と要注意先の債権では、区分ごとに、過去に貸し倒れた実績の割合や倒産する確率をもとに、見込まれる損失の割合を求めて引当を計上するとされています[12]。

では、実際にどのくらいの損失が出ているのでしょうか。日本銀行の資料は、貸倒れなどにかかったお金を貸出残高で割った「信用コスト率」を示しています。2024年度は、大手行が0bps、地域銀行が5bpsでした。1bps(ベーシスポイント)は0.01%なので、5bpsは0.05%、つまり貸出1万円あたり5円です[13]。前の年度より、どちらも下がっています。

この割合は年によって変わります。それでも、貸出残高に対する損失の費用の割合は、2024年度にはごく小さな値でした。貸倒れへの備えの費用は、貸出の利息に反映されているともいわれます。

銀行は、融資が回収できなくなるリスクに備えて貸倒引当金を積む。正常先・要注意先の債権については、区分ごとに過去の貸倒実績率または倒産確率に基づいて見込まれる損失率を求め、引当を計上する[12]。

日本銀行『金融システムレポート別冊 2024年度の銀行・信用金庫決算』(2025年7月)は、信用コスト率(信用コスト÷貸出残高)を、2024年度に大手行0bps(前年差▲14bps)、地域銀行5bps(同▲2bps)と示した。信用コストは、貸倒引当金純繰入額と貸出金償却などから取立益を引いたものだ[13]。

1bpsは0.01%であり、5bpsは0.5%ではなく0.05%、貸出1万円あたり5円にあたる。この値は年ごとに動き、2024年度は両者とも前年より小さかった[13]。

6. りそくは、なんの ために はらうの?

6. 利息の中身 ── 集める費用と貸す収入の差

6. 貸出利鞘 ── 貸出利回りと調達利回りの差、金利の決まり方

ぎんこうは、お金を あつめる ために かかった 分と、かして もらう りそくの ちがいで、もうけを 出します。この ちがいを りざやと いいます[13]。

2024年度は、円の きんりが あがりました。かした ときの りそくの ほうが、あつめる ときの お金の ふえ方より 大きく ふえたので、りざやは ひろがりました[13]。

りそくの わりあいは、もとに なる きんりに、会社ごとの うわのせを たして きめる ことが おおいと いわれます。かえせそうな 会社ほど、うわのせは 小さくなります[14]。

銀行のもうけの中心の一つは、貸出の利息と、お金を集めるためにかかる費用の差です。日本銀行は、貸したお金に対する利息の割合(貸出利回り)から、集めたお金にかかった費用の割合(調達利回り)を引いた差を、貸出利鞘として整理しています[13]。

2024年度は、円の金利が上がる中で、貸出利回りの上がり方が調達利回りの上がり方を上回りました。そのため、大手行も地域銀行も、貸出利鞘は広がったとされています[13]。

金利そのものは、基準になる金利(プライムレート)に、借りる会社の信用力や貸出条件に応じた上乗せを足して決めるのが一般的だといわれます。信用力が高いほど、上乗せは小さくなります[14]。これは民間の解説による説明です。

日本銀行の資料は、貸出利鞘を、貸出利回り(貸出金利息+手形割引手数料を貸出平残で割ったもの)と、調達利回り(資金調達費用を資金調達平残で割ったもの)の差として整理している。2024年度は、国内業務で円金利が上昇するなか、貸出利回りの上昇幅が調達利回りの上昇幅を上回り、大手行・地域銀行ともに貸出利鞘が拡大した[13]。

貸出金利の決め方については、基準となる短期・長期プライムレートに、借り手の信用力や貸出条件に応じたスプレッドを加えるのが一般的だとされる。資金調達コスト・経費・貸倒れリスク・利益の見込みが反映され、信用力が高いほどスプレッドは小さい、という説明が見られる[14]。ただし、これは民間の解説による説明である。

前章の信用コスト率と合わせると、利息は、資金調達費用・経費・想定される貸倒れの費用などをまかなう収入と考えられる。

7. ぎんこうが こまった ときは?

7. 銀行自身の体力 ── 自己資本と預金保険

7. 自己資本比率と預金保険 ── 損失の吸収と預金者の保護

ぎんこうには、じぶんの お金も あります。これを じこしほんと いいます。思っても みなかった 大きな そんが 出ても、あぶなく ならない ために、とりくずして 使える お金です[15]。

ぎんこうの じこしほんは、きまった わりあいより 下がっては いけません[15]。

それでも ぎんこうが つぶれた ときの ために、「よきん ほけん」と いう しくみが あります。りそくの つく ふつう よきんや ていき よきんは、1人 1つの ぎんこうに つき、1000万円と りそくまで まもられます[16]。

りそくの つかない ふつう よきんや、とうざ よきんなどは、ぜんぶ まもられます[16]。よきん ほけんは、ぎんこうが つぶれた ときに、あずけた お金を まもる しくみです。ぎんこうの そんに そなえる じこしほんとは、べつの せいどです。はじめの 問いの 答えは、この 2つを あわせて 考えます。

銀行は、想定外の大きな損失に直面しても経営危機に陥らないよう、取り崩して使える「自己資本」を持つことになっています[15]。

国際的な業務をする銀行では、自己資本比率を8%以上、国内だけで業務をする銀行では4%以上に保つ決まりです。ただし、この2つは計算の方法が違うので、数字だけを比べて優劣は言えません[15]。この比率の分母のリスクアセットは、持っている資産を危険度に応じた重みをつけて足したものです[13]。定義から考えると、貸出が増えたり、危険度の高い貸出が増えたりするほど、必要な自己資本は増える方向にはたらきそうです。

万が一、銀行がつぶれたときのために、預金保険制度があります。当座預金や利息のつかない普通預金など、決済用預金は全額が守られます。利息のつく普通預金や定期預金などは、預金者1人・1つの金融機関あたり、元本1,000万円までと破綻した日までの利息などが守られます。1口座ごとの上限ではありません[16]。

これを超える部分は、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われ、一部が減ることもあります[16]。預金保険は、銀行が破綻した場合に対象の預金を守る制度で、銀行の損失への備えである自己資本や引当とは別の制度です。最初の問い(預けたお金は大丈夫か)への答えは、この二つの備えを合わせて考えることになります。

日本銀行は、自己資本を、想定外の損失に直面しても経営危機に陥らないよう取り崩し可能となる資本と説明する。最低水準の自己資本比率は、国際統一基準行で8%以上、国内基準行で4%以上とされる。両者は算出方法が異なり、単純に比較して緩い厳しいとは言えない[15]。

自己資本比率の分母であるリスクアセットは、保有資産をリスクに応じたウエイトで合算したものである[13]。これを踏まえると、貸出が増えたり、リスクの高い貸出が増えたりすれば、必要な自己資本が増える方向に働くと推論できる。ただし、これは定義からの推論であり、資料が直接述べているわけではない。

預金保険制度では、当座預金や利息のつかない普通預金などの決済用預金は全額が保護される。利息のつく普通預金や定期預金などは、預金者1人・1金融機関あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護され、超える部分は破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われ、一部がカットされることがある[16]。

審査、担保・保証、引当、自己資本、預金保険という順に見てくると、貸出には、損失に備える複数の仕組みがある。預金保険は銀行の破綻時に対象の預金を守る別の制度であり、自己資本や引当とは役割が異なる。

8. じぶんでも しらべて みたく なったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

やって みよう

ニュースや しんぶんに 「よきん ざんだか」「かしだし ざんだか」と いう ことばが 出て きたら、かぞくと いっしょに、どちらが 大きいか 見て みましょう。ちかくの ぎんこうの ホームページに、じこしほん ひりつが のって いるか さがして みるのも、おもしろいかも しれません。

新聞やニュースサイトで「貸出残高」「預金残高」ということばが出てくる記事を探し、その数字が増えたのか減ったのか、理由がどう書かれているかを読んでみましょう。

近所の銀行や信用金庫のホームページに、決算をまとめた資料があれば、貸出の金額や「自己資本比率」が載っているか見てみるのも面白いでしょう。この記事で出てきた数字と、ちがう規模になっているかもしれません。

日本銀行の『金融システムレポート別冊 2024年度の銀行・信用金庫決算』は日本語の原文が公開されている。信用コスト率が大手行と地域銀行でどう違うか、前年からどう動いたかを、この記事の数字と照らして読める[13]。

ニュースで貸出残高と預金残高の数字を見かけたら、紙に書き出し、「預金を貸す」「貸出が預金をつくる」のどちらの言い方で説明されているかを、日本語の記事や日銀総裁の講演[5]と読み比べてみるとよい。「貸出が預金をつくる」という説明の原典は、イングランド銀行の2014年第1四半期の季報で、こちらは英語の資料になる[4]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:貸出・預金の数字(約680兆円・約1072兆円)は、日本銀行の原表ではなく、ロイターの報道(Yahoo!ニュース)を通して確認したもの。貸出金利の内訳は民間の解説による。日本語の資料は、金融庁・日本銀行・全国銀行協会・全国信用保証協会連合会などの公的機関の情報を使った。

  1. 全国銀行協会「経済活動と銀行の役割」. https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-h/3803/ (銀行が預金を貸し出し、借り手が利息を払うという説明について)
  2. ロイター(Yahoo!ニュース)「日銀貸出・預金動向8月」. https://news.yahoo.co.jp/articles/b8202ebf126036692f6bc89a874c14d2427f8c7b (2026年8月の貸出・預金の残高について。報道を経由した数字)
  3. 日本銀行「貸出・預金動向」の解説. https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exkasi.htm (貸出の定義と「平残」の意味について)
  4. Bank of England, Quarterly Bulletin 2014 Q1, “Money creation in the modern economy”. https://www.bankofengland.co.uk/quarterly-bulletin/2014/q1/money-creation-in-the-modern-economy (貸出によって預金がつくられるという説明について)
  5. 日本銀行 植田和男総裁講演「決済の未来と中央銀行の役割」(2024年12月4日). https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko241204a1.pdf (信用創造機能とリスク管理・規制監督について)
  6. 日本銀行「準備預金制度とは何ですか?」. https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/seisaku/b33.htm (準備預金制度の導入年と準備率の変更について)
  7. 金融庁「金融検査マニュアル(預金等受入金融機関に係る検査マニュアル)別表」. https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/manual_yokin/14.pdf (債務者区分の定義について。このマニュアルは現在は廃止されている)
  8. 金融庁「企業価値担保権付き融資の評価や引当の方法等に係る基本的な考え方について(案)」の公表(2025年4月). https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20250428-2/20250428-2.html (企業価値担保権付き融資と、一律の指針ではないという位置づけについて)
  9. EY Japan「金融機関による事業性評価について」. https://www.ey.com/ja_jp/technical/library/info-sensor/2018/info-sensor-2018-03-07 (事業性評価の考え方について)
  10. 全国信用保証協会連合会「初めての融資と信用保証」. https://www.zenshinhoren.or.jp/basic/ (保証付融資の仕組みと保証料、連帯保証人について)
  11. 金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」. https://www.fsa.go.jp/policy/hoshou_jirei/index.html (経営者保証ガイドラインの公表日と改革プログラムについて)
  12. 日本公認会計士協会「貸倒引当金の計上に関する検討」. https://jicpa.or.jp/specialized_field/publication/files/01444-004619.pdf (貸倒引当金の考え方について。抜粋の範囲で確認)
  13. 日本銀行『金融システムレポート別冊 2024年度の銀行・信用金庫決算』(2025年7月). https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb250725.pdf (信用コスト率、貸出利鞘、リスクアセットの定義について)
  14. 小谷野税理士法人のコラム(貸出金利の決まり方についての民間解説). https://koyano-cpa.gr.jp/nobiyo-kaikei/column/7174/ (金利の決まり方について。公的資料で内訳は確認できていない)
  15. 日本銀行「教えて!にちぎん」自己資本に関する国際統一基準と国内基準の違い. https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/pfsys/e25.htm (自己資本の説明と自己資本比率の最低水準について)
  16. 金融庁「預金保険制度」. https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/ (決済用預金と1,000万円までの保護について)

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