1. あせが ない 鳥は、くちを あけて なにを して いるの?
1. 汗のない鳥が、口を開けて速く息をしているのはなぜか
1. 汗腺がない ── 口を開けて息を速める開口呼吸と、体温42℃に達する種もある高さ
あつい 日、木の かげで 鳥が くちを あけて、はやく いきを して いることが あります。
鳥には、あせを だす ところが ありません[1]。だから くちを あけて いきを くりかえし、からだの ねつを そとに はこびだします[1]。ねつは、はいや、くうきの はいった ふくろを とおって でて いきます[2]。
しかも 鳥の なかには、からだの おんどが ふだんから 42どに なる ほど たかい ものも います[3]。あつい ところでは、おんどを たもつのが たいへんです。くちを あける だけで、ぜんぶ なんとか なるのでしょうか。
暑い日の公園で、木陰の鳥がくちばしを開けて、のどを小刻みに動かしていることがあります。あれは鳥の「息切れ」ではなく、体を冷やす工夫のひとつです。
人間は汗が蒸発するときに熱を奪います。鳥には汗腺がないので、その手が使えません[1]。代わりに、口を開けて息を速く繰り返します。熱は肺や気嚢という空気の袋を通って、体の外に運び出されます[2]。長岡市のトキの紹介資料でも、この呼吸を「開口呼吸」と呼んでいます[1]。
鳥にとって暑さは切実です。普段の体温が42℃に達するほど高い種もいて、暑い環境では体温の調節が大きな課題になります[3]。昼に活動する鳥は、実効温度が50℃を超える状況に耐えなければならないこともあるそうです[4]。では、口を開けて息をするのが、鳥の冷やし方のすべてなのでしょうか。
鳥が暑い日に口を開け、浅く速い呼吸を続けるのはなぜか。鳥には汗腺がなく、汗の蒸発で熱を奪う方法が使えないためである。そこで口を開けて呼吸を繰り返す「開口呼吸」で体温を下げる。長岡市のトキ紹介資料はこれをそう説明している[1]。熱は肺と気嚢を通り、息とともに体外へ運び出される[2]。
この方法が重要になる背景には、鳥の体温の高さがある。平常の体温が42℃に達するほど高い種もあり、高い周囲温度では体温調節が課題になる[3]。さらに昼行性の鳥は、周囲の実効温度が50℃を超える状況に耐える必要が生じうるとされる[4]。熱を捨てる手段が少ないと、体温が上がりやすくなる。では、開口呼吸が鳥の唯一の手段なのか。ところが資料を読み比べると、鳥によって主役の方法が違っている。
2. のどを ふるわせる 鳥や、ひふから ひやす 鳥も いるの?
2. のどを震わせる鳥、皮膚から冷やす鳥 ── 冷やし方は鳥によって違う
2. のど震わせ(ガラー・フラッター)・皮膚蒸発・開口呼吸 ── 種ごとに違う主役と、開口呼吸の効率
のどを ふるわせる 鳥が います。のどの なかの ちいさな ほねを ふるわせると、けっかんの おおい のどに ちが あつまって、ねつが にげます[2]。のどの きんにくと ひふを こまかく ふるわせて、みずが かわくのを たすける こともあります[3]。
けんきゅうでは、ヨタカは のどを ふるわせ、ハトは ひふから みずを かわかし、スズメの なかまは くちを あけて いきを する ほうが おおい、と まとめられて います[4]。
どの 鳥も おなじでは ありません。鳥の しゅるいに よって、よく つかう やりかたが ちがいます。
くちを あけて いきを する ほうほうは、ほかの ふたつより ききめが ひくい、とも いわれます[4]。
鳥の暑さ対策は、種によって主役が違います。ある研究論文は、水分を蒸発させて冷やす道すじを三つに分けて紹介しています。ヨタカなどののど震わせ、ハトなどの皮膚からの蒸発、スズメ目などの開口呼吸です[4]。「どの鳥も口を開けて息をする」わけではありません。
のど震わせ(ガラー・フラッター)は、のどの小さな骨を震わせる動きです。血管の多いのどに血が集まって熱が逃げます[2]。のどの筋肉や皮膚を細かく震わせ、蒸発を助けるとも説明されています[3]。
同じ論文は、開口呼吸の効率が、のど震わせや皮膚からの蒸発より低いとも述べています[4]。息を速くすると水分を多く使うという負担もあるようです[4]。それでも、冷やし方が一つではないと分かると、次の問いが出てきます。口や皮膚以外に、体のどこから熱を逃がせるのでしょうか。
鳥の冷却法は一つではない。論文は、蒸発による冷却の主な道すじを三つに分け、のど震わせは例としてヨタカ、皮膚蒸発はハト、開口呼吸はスズメ目を挙げている[4]。「鳥はみなパンティングする」と一般化するのは誤りで、主な方法は種で違う。
のど震わせ(gular flutter)では、のどの小さな骨(舌骨)を振動させる。のどには血管が多く、そこに血が集まるため血の熱が逃げる[2]。のどの筋肉と皮膚を細かく震わせ、蒸発を助けるという説明もある[3]。ただし舌骨の働きは二次資料の記述で、一次論文では確認していない。
では、なぜ種によって方法が分かれるのか。同じ論文は、開口呼吸の効率がのど震わせや皮膚蒸発よりかなり低いと述べる[4]。息を速める行為自体が水分を多く使う負担を伴う可能性もある[4]。効率の高い方法なら、同じ熱を逃がすのに使う水分が少なくて済む。しかし蒸発に頼る限り水は使う。では蒸発以外に、体のどこかから熱を逃がせないか。
3. オオハシの おおきな くちばしは、どうして ひやす ものに なるの?
3. オオハシの大きなくちばしは、体の「放熱器」になる
3. ココノオオハシのくちばし ── 血流の調節で熱を逃がす放熱器と、反応にかかる約10分
オオハシと いう 鳥は、からだに くらべて とても おおきな くちばしを もって います[5]。
あつい とき、この くちばしに ちが たくさん ながれます。すると くちばしから ねつが にげます[5]。ねつを そとへ すてる ラジエーターの ようです。ただし ほんとうは きかいでは なく、ちの ながれる りょうを かえる しくみです。
あしや くちばしのように、はねの ない ところは ねつを にがしやすい ところです。あかい ひかりを うつす カメラで しらべると、そう わかった という けんきゅうが あります[6]。
くちばしの ちの ながれる りょうは、まわりの おんどが かわって、すぐには かわりません。すこし じかんが かかります[5]。
ココノオオハシは、体に比べて非常に大きなくちばしを持っています[5]。この大きなくちばしは、暑さ対策の役にも立っているという研究があります。
実験室の温度が高いとき、オオハシはくちばしに流れる血を増やしました。すると、くちばしから余分な熱が逃げました[5]。くちばしは体の熱を外に出す放熱器として、血流の量を調整しながら使われているのです。羽毛がなく血管の多い脚やくちばしが「放熱器」として働くことは、赤外線サーモグラフィを使った研究でも示されています[6]。
この調整はすぐには終わりません。周りが25℃から10℃へ急に下がる実験で、くちばしの反応が落ち着くまでに約10分かかりました[5]。報道では、状況によって、くちばしが安静時の体の発熱量の25〜400%を逃がしたと伝えています[5]。条件で大きく変わる幅の広い数字で、報道記事の記述です。
ところで、口もくちばしも使わずに、脚を使って冷やす鳥がいます。しかも、脚に「ある物」をかけて。
くちばしを冷却に使う鳥の代表が、ココノオオハシである。体に比べて非常に大きなくちばしを持ち、研究室の温度が高いと、くちばしへの血流を増やして余分な熱を逃がした[5]。くちばしは血流量を変えられる放熱器として働く。
同じ考え方は、羽毛がなく血管の多い脚やくちばしが赤外線サーモグラフィで放熱器として働くという記述とも合う[6]。ただし反応は即座ではなく、周囲の温度を25℃から10℃へ急に下げた実験では、くちばしの血流が調整されるのに約10分かかった[5]。
放熱量について、報道は状況しだいで安静時の発熱量の25〜400%を逃がせたと伝える。条件によって幅が大きい、報道記事の数字として読むべきだろう[5]。
くちばしは、血流の調節だけで熱を逃がす。蒸発を使わないぶん、水は減らない。では脚はどうか。実は脚を冷やすために、水ではなくあるものを使う鳥が知られている。
4. コウノトリは、どうして あしに うんちや おしっこを かけるの?
4. コウノトリが脚に排泄物をかけるのは、体を冷やすため
4. 尿かけ冷却(urohidrosis)── コウノトリ類の脚への排泄と、起きる気温・起きない条件
コウノトリの なかまは、きおんが あがると、じぶんの あしに 排泄物を かけます。うんちや おしっこの ような ものです。これで あしの ひょうめんが ひえます[6]。みずが かわく ときに ねつを うばう ことを つかって います。
この けんきゅうは、コウノトリの なかまを たくさん しらべた ものです[6]。
かけて いる ところが よく みられた きおんは、シュバシコウという 鳥で およそ 27.7ど、べつの しゅでは およそ 33.5ど でした。鳥に よって ちがいます[6]。あしの ひょうめんの おんどは、さいだいで 6ど ぐらい さがる ことが ある、と されます[6]。
この ほうほうを つかう 鳥は、あまり おおくありません。のみ水に いつも ちかづける 鳥でないと できない、と いわれます[6]。
気温が上がると、コウノトリ類は自分の脚に排泄物をかけます。かけた排泄物から水分が蒸発するときに熱が奪われ、脚の表面温度が下がります。この冷やし方は「尿かけ冷却(urohidrosis)」と呼ばれ、コウノトリ類を対象にした研究で報告されています[6]。
この行動が観察事例の半数で見られた気温は、種によって違います。この論文では、シュバシコウで27.68℃、別の種(woolly-necked stork)で33.49℃とされ、その差は約5.8℃です[6]。気温だけでなく、日ざしが強く、湿度が高く、風が弱いほど、この行動は多く見られました[6]。33.49℃はコウノトリ類の中の一つの種の値で、すべての鳥の目安ではありません。
この冷やし方は鳥の中ではまれです。飲み水にいつも近づける鳥でないと成り立たないためで、コウノトリのほか、新世界のハゲワシ類、コンドル、カツオドリ類が行うとされます[6]。効果は、脚の表面温度で最大6℃ほどの低下とされています[6]。
体を冷やすのは、体の中の工夫だけではありません。鳥は行動でも暑さをかわしています。
脚への排泄で冷やす行動は、尿かけ冷却(urohidrosis)と呼ばれる。コウノトリ類は、環境の気温が上がると意図的に脚へ排泄し、蒸発の冷却で脚の表面温度を下げる。現生のコウノトリ類を対象にした論文が、この行動の広がりを示した[6]。
観察事例の50%で尿かけ冷却が見られた気温は種で異なり、シュバシコウの27.68℃からwoolly-necked storkの33.49℃までと報告されている(差は約5.8℃)。気温・日射・湿度が高く、風が弱いほど頻度が上がる[6]。この値はコウノトリ類の範囲で、すべての鳥の閾値ではない。
この行動が鳥でまれなのは、飲み水に常時アクセスできる鳥でなければ成立しないからで、コウノトリ類のほか、新世界のハゲワシ類、コンドル、カツオドリ類で知られる[6]。脚の表面温度の低下は最大で約6℃とされ、条件しだいで変わる[6]。
蒸発に水を使い、水場が要る。水のない場所の鳥は、どうしているのか。次は体の使い方ではなく、動き方を見る。
5. 木の かげで やすむのも、ひやす くふうなの?
5. 日陰で休む、水浴びをする ── 暑さをかわす行動も冷やし方のひとつ
5. 行動による暑さ回避 ── 日陰・水浴び・羽の使い方・活動時間帯
鳥は、からだの はたらきだけでは なく、うごきでも あつさを さけます。
ひかげで やすむ、みずあびを する、はねを ひろげたり ふくらませたり する。すずしい あさや ゆうがたに うごいて、ひるまは かげで ゆっくり する。たかい そらの すずしい ところまで、のぼる 鳥も います[2][1]。
くちを あけたり、のどを ふるわせたり、あしに かけたり。からだの なかの くふうと、うごきの くふうを、いくつも くみあわせて いるのです。
鳥は、体の仕組みだけでなく、動き方でも暑さを避けます。日陰で過ごす、水浴びをする、羽を広げたりふくらませたりする、涼しい朝夕に活動して日中は日陰で休む、上昇気流に乗って高く涼しい空へ上がる、といった例が資料にあります[2][1]。
鳥は、体の熱を逃がすだけでなく、暑さを受けにくい場所や時間を選ぶこともあります。開口呼吸・のど震わせ・くちばし・脚の工夫と、日陰や時間帯の選択が組み合わさって、暑い夏を乗り切っていると読めます。
体の構造や生理のほかに、行動も冷却の大きな部分を占める。日陰で過ごす、水浴びをする、羽を広げる、羽をふくらませる、涼しい朝夕に活動して日中は日陰で休む、上昇気流を使って高く涼しい空へ上がる、といった例が資料に挙がっている[2][1]。
こうした行動は、水の蒸発に頼る手段の負担を減らす可能性がある。開口呼吸が水分を使い、尿かけ冷却が飲み水に常時アクセスできる鳥に限られる点を踏まえると、熱をそもそも受けにくくする選択には合理性があると考えられるが、これは資料の事実を並べたうえでの筆者の解釈である。
ここまでの流れを整理すると、汗のない鳥は、①息と水分の蒸発(開口呼吸・のど震わせ・皮膚蒸発)、②血流の調節による放熱(くちばし・脚)、③排泄物の蒸発(コウノトリ類など)、④行動、を種ごとに組み合わせている。主役の方法は種で違う。
6. 暑い 日の 鳥を、そっと みて みよう
6. 暑い日の鳥を、離れた場所から観察してみる
6. 観察と読み比べの道すじ ── 鳥の「暑さの顔」をどう見分けるか
あつい 日に、こうえんや かわの ちかくで、鳥を さがして みましょう。くちを あけて いる 鳥、ひかげに いる 鳥、みずあびを して いる 鳥は いるかな。
ちかづきすぎると、鳥が おどろきます。とおくから、そっと みて ください。
じぶんも ぼうしを かぶり、みずを もって、あつく なったら すぐ やすみましょう。
みつけたら、どんな ようすで、どんな ばしょだったか、メモして みましょう。
暑い日に、公園や川辺で鳥を探してみましょう。口を開けて呼吸している、日陰に入っている、水浴びをしている、羽をふくらませている、といった姿が見つかるかもしれません。
鳥に近づきすぎないことが大切です。触ったりえさをやったりせず、遠くからそっと見ます。自分も帽子と水を用意し、暑くなったら涼しい場所で休みます。
見つけたら、鳥の名前、時刻、日なたか日陰か、近くに水場があるかを書き留めておくと、あとで資料と読み比べるときの手がかりになります。「口を開けていたのは、スズメ目のなかまだったか」「水辺の大型の鳥は脚をどうしていたか」と考えることもできます。
日本の鳥のトキについて、長岡市の資料[1]が開口呼吸を紹介しています。ほかの資料は英語や外国の研究で、先に日本語の資料から読むと流れがつかめます。
暑い日に近くの鳥を観察し、行動を記録すると、資料の記述と照らし合わせて読める。口を開けているか、日陰にいるか、水浴びや羽の動きはどうか、時刻と日なたか日陰か、近くの水場の有無を書き留める。鳥には近づかず、触れず、えさをやらない。自分も帽子と水分を用意し、暑さには無理をしない。
読み比べの観点は三つ。①日本の鳥の例として、長岡市のトキ紹介資料[1]は開口呼吸を短く紹介する。②キンカチョウの研究論文[4]は、のど震わせ・皮膚蒸発・開口呼吸の三つの道すじと、その効率の差を扱う。③コウノトリ類の論文[6]は、気温(27.68〜33.49℃)と、必要条件としての水場にふれる。
オオハシの研究は報道を通じて読んだもので、25〜400%という放熱の数字は条件つきの幅の広い値である。原典のScience誌の論文(2009年)に当たると、数字の条件が分かるはずだ[5]。ここで紹介した資料には、日本の鳥の例としてトキが出てくる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:自治体の紹介資料、動物園・自然保護団体の記事、学術論文、研究紹介記事を使った。何に使ったかは項目ごとに書いている。
- 長岡市「トキみ~て」(トキ情報PDF)。https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kurashi/cate09/toki_gakusyu/file/20240822.pdf (汗腺がないこと、開口呼吸について。自治体の紹介資料)
- Audubon「The Many Ways Birds Beat the Heat」。https://audubon.org/es/news/the-many-ways-birds-beat-heat (息を速める冷やし方、のど震わせ、暑さをかわす行動について。自然保護団体の記事)
- Smithsonian's National Zoo「How Do Birds Handle Heat」。https://nationalzoo.si.edu/animals/news/how-do-birds-handle-heat (鳥の体温、のど震わせの説明について。動物園の記事)
- Frontiers in Physiology 掲載のキンカチョウの熱鳴きに関する論文(PMC7609653)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7609653 (蒸発冷却の三つの道すじ、開口呼吸の効率、昼行性の鳥が耐える温度について。学術論文)
- Pesquisa FAPESP「Natural radiator」。https://revistapesquisa.fapesp.br/en/natural-radiator/ (ココノオオハシのくちばしの放熱について。研究紹介記事)
- Urohidrosis as an overlooked cooling mechanism in long-legged birds(PMC8501033)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8501033/ (コウノトリ類の尿かけ冷却、気温の目安、放熱器としての脚とくちばしについて。学術論文)
なおした ところ
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