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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

パンの みみは、どうして ちゃいろくて いい においなの?

パンの耳の香りは反応の途中で、茶色は最後にできる

パンの耳の褐変と香り ── メイラード反応の途中で香気成分、最後に褐色物質ができる

分野:自然

やいた パンの なかみは、ほとんど しろいままです。それなのに、みみだけは ちゃいろく なって、いい においまで します。

しかも、いい においは はんのうの とちゅうで、ちゃいろは いちばん さいごに できる らしいのです。どうして みみだけ なのでしょうか。その わけと、むかしの 人の はっけんが わかります。

食パンを焼いても、中身はほとんど白いままです。ところが耳だけは茶色くなり、香ばしいにおいまで出てきます。

しかも、香りのもとは反応の途中で、茶色い物質は最後にできるといわれます。なぜ耳だけで起きるのでしょうか。その理由と、100年以上前にこの反応に気づいた研究者の話が分かります。

パンの中身(クラム)は焼成中も約100℃にとどまり、ほとんど褐変しない。一方、耳(クラスト)は100℃を超えて茶色くなり、焼きたての香りも出る。色と香りにはメイラード反応が関わり、香気成分の元は中間段階、褐色物質は最終段階で生じるとされる[1]。

なぜ耳だけで反応が進むのか。この反応は何者が、いつ報告したのか。水分と温度の条件、反応の段階、色と香りの関係、1912年の報告について、論文と解説資料から分かる。

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1. なかみは しろいのに、みみだけ ちゃいろい わけ

1. 同じパンなのに、耳だけ茶色くなる理由

1. クラムは約100℃で止まり、クラストは100℃を超える

パンを オーブンで やくと、まわりから あつく なります。パンの 外がわの みずは、まず かわいて いきます。

みずが へった 外がわは、100ど(℃)を こえて、オーブンの 中の あつさに ちかづきます[1]。これが みみです。

いっぽう、なかみは みずが たっぷり のこり、100どの まわりで とどまります[1]。

では、みずが へって あつく なると、どうして ちゃいろに なるのでしょうか。

水が先に逃げた場所が、耳になる

パンを焼くと、表面の水分がまず蒸発し、その「蒸発の前線」が少しずつ内側へ進みます。水が抜けた外側の層は、温度が100℃を超えて、オーブンの温度に近づいていきます。この層が耳で、水分が少なくなります[1]。

内側の中身は、水分があまり変わらず、温度は100℃前後にとどまります[1]。「約100℃」は目安で、いつもぴったり100.0℃という意味ではありません。

水があるうちは、熱が水を蒸発させるのに使われるので、温度が上がりにくい。フライパンの水がなくなってから焦げ目がつくのと似ています。ただし、パンの中では水が動いたり、すき間があったりして、もっと複雑です。

では、100℃を超えると、なぜ茶色になるのでしょうか。

焼成中のパンでは、表面から水が蒸発し、蒸発の前線が内部へ進む。外層は水分が減って温度が100℃を超え、オーブン温度に漸近する。この層がクラストで、水分が少ない。内側のクラムは水分がほぼ変わらず、温度は100℃前後にとどまる[1]。「約100℃」は目安で、常に100.0℃ではない。

水があるあいだは、熱が水の蒸発に使われ、温度が頭打ちになる。この差が、同じパンの中に温度の違う2つの領域をつくる。では、100℃を超えた領域で何が起きて、色がつくのか。

2. ちゃいろの しょうたいは なに?

2. 茶色の正体は、糖とアミノ酸がつくる物質

2. 褐変の2つの経路 ── メイラード反応とカラメル化

パンの ちゃいろは、おもに ふたつの できごとで うまれると いわれます[2]。ひとつは、さとうの なかまが ねつで ちゃいろく かわる こと(カラメル)。もうひとつは、さとうと、からだを つくる もとになる アミノさんが、ねつで くっつく はんのうです[1]。

この はんのうを、「メイラードはんのう」と いいます。はんのうが すすむと、さいごに ちゃいろの おおきな つぶが できます[1]。

ブロックを つなぐ ようすに にて います。ちいさな ブロックが つながって、おおきな かたまりに なると、いろが ついて みえるのです。ただし ほんとうは、くっつき方は ひとつでは ありません。

色をつくる反応は2つある

焼いている間の色づきは、メイラード反応と、糖のカラメル化によるとされています[2]。日本語の解説でも、パンの焼き色(クラストカラー)はこの2つの反応でできると説明されています[5]。

カラメル化は、糖だけが熱で変わる反応で、窒素を含みません。一方メイラード反応は、還元糖というタイプの糖と、アミノ酸などアミノ基をもつ物質が結びつく反応です[1]。パンの表面では、この2つが重なって色がつくと考えられます。

茶色い物質は、最後にできる

メイラード反応には、初期、中間、最終の段階があります。最終段階で、分子の大きい茶色の物質、メラノイジンができます[1]。

焼成中の色づきは、メイラード反応と糖のカラメル化による[2]。パンの焼き色(クラストカラー)もこの2つで説明される[5]。カラメル化は糖のみが関わり窒素を含まない反応で、メイラード反応は還元糖とアミノ化合物の反応だ[1]。

メイラード反応は初期・中間・最終の段階に分けられる。最終段階で、中間生成物がさらに変化し、分子量の大きな褐色の物質、メラノイジンになる[1]。メイラード反応では、褐色のメラノイジンが最終段階でできる。では、同じ反応の「途中」には何ができるのか。

3. いい においは、はんのうの とちゅうで できる

3. 焼きたてのにおいは、反応の途中でできる

3. 香気成分はストレッカー分解など中間段階で生じる

はんのうは、いきなり ちゃいろく なる わけでは ありません。とちゅうで、においの もとにも なる ものが できます[1]。

だから、パンの みみが ちゃいろに なる ころ、いい においが して きます。においの もとは はんのうの とちゅうで、ちゃいろの つぶは おわりに できるのです。ほかの できごとも、においに かかわります。

においは、あつさや、くっつく アミノさんの しゅるいで かわります。パンを やく ときは、こげたような においや、カラメルの においが します。ナッツや、パンらしい においも あります[6]。

香りの元になる中間生成物

反応の中間段階では、ストレッカー分解という変化が起こり、これが香りの元になる物質を生みます[1]。つまり、においは反応の途中、茶色の物質は最後。香りは同じ反応の途中、色は最後の場面に出てきます。なお、パンの香りには、カラメル化など別の変化も関わると考えられます。

パンが茶色くなるころに香ばしいにおいが立つのは、このためだと考えられます。

香りの種類は、条件で変わる

反応する糖やアミノ酸の種類、温度によって、できる香りも変わります。パンの焼成では、焦げ臭、カラメル臭、ナッツのような香り、パンらしい香りが生じる、と説明されています[6]。同じ反応でも、条件が変わると、別の香りになります。

反応の中間段階で、ストレッカー分解が進み、その生成物が香り成分の元になる[1]。香りは中間段階、褐色物質は最終段階でできるため、色と香りは同じ反応の異なる段階の産物であり、焼成中に並行して現れる。ただし香りにはカラメル化など他の変化も関わると考えられ、メイラード反応だけで決まるわけではない。耳が色づく時期に香りが立つのは、この点で説明できる。

グルコースと反応するアミノ酸の種類や温度帯で、香りは変わる。パンの焼成では、焦げ臭、カラメル臭、ナッツ様、パン様の臭気が生じるとされる[6]。この種類の対応関係は、百科事典的な解説に拠る部分もあり、条件ごとの詳細な数字は、ここでは扱わない。

4. はじめに きづいた 人は、だれ?

4. この反応に気づいたのは、フランスの研究者だった

4. 1912年のメイラールの報告と、反応機構の解明

この はんのうは、いまから 100ねん いじょう まえ、1912ねんに、フランスの メイラールさんが ほうこくしました[3]。

メイラールさんは、さとうと アミノさんを いっしょに あたためると、ちゃいろく なる ことに きづいた 人です。この ほうこくは、のちに「メイラードはんのう」と よばれる ように なりました。

ただし、この ときは、なぜ おこるのかまでは、まだ くわしく わかって いませんでした。しくみが わかって くるのは、もっと あとの ことです。

しかも この はんのうは、たべものだけの はなしでは ありません。人の からだの 中でも おこると いわれます[3]。

1912年の報告

糖とアミノ酸を熱すると茶色くなる反応は、1912年に、フランスのルイ=カミーユ・メイラールが報告しました[3]。のちに、その名前をとってメイラード反応と呼ばれるようになります。

1912年は、あくまで「こんな反応がある」と報告された年です。反応がどんな段階を経て進むのかという細かい説明は、その後の研究で整理されていきました。

食べ物だけの話ではない

この反応は、食品の香り・味・見た目に関わるだけでなく、人の体の中でも起こるとされています[3]。

還元糖とアミノ化合物の反応は、1912年にフランスのルイ=カミーユ・メイラールによって記述された[3]。この反応は、食品の香り・味・外観に関わり、生体内でも起こる[3]。日本語の資料では、名前の表記が「メイラール」「マイヤール」「マヤール」とぶれるが、このメモでは「メイラール」に統一する。

注意したいのは、1912年が「報告の年」で、反応機構の説明の年ではない点だ。初期・中間・最終という段階の整理は、その後の研究で進んだ。

5. なん度で ちゃいろに なるの?

5. 何度で進む反応なのか ── 耳と中身を分けた温度

5. 反応が速く進む温度と、クラムが褐変しない理由

この はんのうは、140〜165どの あたりで、はやく すすむと、ふつうの せつめいで いわれます[4]。ただし これは めやすです。もっと ひくい おんどでも、とても ながい 時間を かければ すすみます。

みみは 100どを こえて、オーブンの あつさに ちかづきます[1]。だから、はんのうが すすみやすく なります。

なかみは 100どの まわりで とどまるので、いきおいよく すすむ 場所には なりません。これが、みみだけ ちゃいろい 理由の ひとつです。

140〜165℃が、反応の速い目安

メイラード反応は、およそ140〜165℃で速く進む、と一般的な解説では説明されています[4]。これは百科事典的な目安で、パンでの境目ではなく、「140℃にならないと全く起きない」という意味ではありません。常温でも反応は進みますが、長い時間がかかります。

耳と中身の差は、温度の差

耳の温度はオーブンの温度に近づくので、反応が速く進める温度帯に入ります。中身は100℃前後にとどまるため、速く進める温度帯には届きません[1]。

耳が茶色く香ばしくなるのは、水分が減って温度が上がった場所で、メイラード反応とカラメル化が進むから、と読めます。中身がほとんど白いままなのは、水がたくさんあって、温度が100℃付近で頭打ちになるからです。

メイラード反応は、およそ140〜165℃で急速に進むと、一般的な解説では説明される[4]。ただしこれは百科事典的な目安で、パンでの閾値ではなく、「140℃未満で全く起きない」という意味ではない。常温でも進むが、長い時間を要する。

クラストは水分が減って温度がオーブン温度へ近づくため、反応が速く進む温度帯に入る。クラムは100℃前後にとどまり、この温度帯に届かない[1]。耳が色づき、中身が白いままという観察は、水分と温度の差で説明できる。ただし、反応の速さは水の量にも左右されると考えられ、温度だけで決まるわけではない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの 人と いっしょに、トースターで 食パンを 1まい やいて みましょう。トースターの 中は あつく なるので、ひとりで ふれては いけません。

やく まえと あと、ちゃいろの ひろがり方を 見くらべます。みみと なかみの いろの ちがいを、見て みましょう。やけて きたら、においも かいで みます。

ちゃいろく なる ほど、においも かわって いくでしょうか。

家の人と一緒に、トースターで食パンを1枚焼いてみてください。トースターの中は高温で、やけどのおそれがあるので、取り出しは大人にしてもらってください。

焼く前と焼いたあとで、耳と中身の色の違いを見比べます。においも、焼く前と焼いたあとで比べると、変わっているでしょうか。

資料を読むなら、ブルーバックスの記事[5]が日本語で読めます。

家庭では、大人と一緒にトースターで食パンを焼き、焼く前と焼いたあとで、耳と中身の色を比べ、においの変化も記録できる。トースターの内部と取り出した直後のパンは高温なので、取り出しは大人がする。

資料を読むなら、褐変の定義と反応の段階は Giovanelli ら[1]、焼き菓子の褐変の総説は Purlis[2]、1912年の報告の位置づけは TU Dresden の解説[3]、日本語で読める解説は[5]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:パンの焼成と褐変の論文、メイラード反応の歴史の解説、日本語の解説記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Giovanelli ら, Foods 2021, 10, 417(パンの褐変とヒドロキシメチルフルフラール)。https://doi.org/10.3390/foods10020417 (耳と中身の水分・温度、メイラード反応の段階について)
  2. Purlis, E. (2010) Browning development in bakery products: A review, Journal of Food Engineering 99(3)。https://ri.conicet.gov.ar/handle/11336/135528 (焼成中の色づきの原因について)
  3. Baking, Ageing, Diabetes: A Short History of the Maillard Reaction(TU Dresden)。https://fis.tu-dresden.de/portal/de/publications/baking-ageing-diabetes(fdd89714-31a8-4cf4-b2e2-ec95553efb21).html (1912年のメイラールの報告について)
  4. Maillard reaction(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Maillard_reaction (反応が速く進む温度の目安について。解説記事)
  5. ブルーバックス(講談社)の記事、現代ビジネス掲載。https://gendai.media/articles/-/55656 (パンの焼き色とメイラード反応・キャラメル化について。日本語の解説)
  6. メイラード反応(Wikipedia 日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/メイラード反応 (パンの焼成でできる香りの種類について。解説記事)

なおした ところ

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