1. 球根は、どこが ふくらんだ ものなの?
1. 同じ「球根」でも、ふくらんでいるのは葉・茎・根のどこか
1. 「球根」は一つの構造ではなく、葉・茎・根のどれかが変化したものの総称である
チューリップの 球根を 思いうかべて ください。土の 中の まるい かたまりです。でも、ダリアや アイリスの 球根は、同じ 形では ありません。
球根は、冬や 夏の きびしい ときに、土の 中で 養分を ためて、休む ための ものです。この ふくらみが、花に よって ちがう ところです。葉が ふくらむ もの、茎が ふくらむ もの、根が ふくらむ ものが あります。
むずかしい 名前では、五つの 型に わけられます。鱗茎は、チューリップ・スイセン・ユリ。球茎は、クロッカス・グラジオラス。塊根は、ダリア。根茎は、アイリスと カンナ。もう ひとつ、塊茎という 型も あります。
名前は おぼえなくて だいじょうぶです。「同じ 球根でも、中みは ちがう」と 知って おけば、お店で 球根を 見る 目が かわります。
球根と聞くと、チューリップのような丸いかたまりを思い浮かべます。ところが、ダリアやアイリスの球根は、見た目も中身もそれとは別物です。
球根とは、気温や水分などの環境が厳しくなる時期に、地下に養分をためて休むために、丸く、塊に、あるいはいも状になった器官のことです[1]。園芸では、球根をつくる植物をまとめて球根植物と呼びます。つまり「球根」は、ふくらんだ場所を問わない、働きに注目した呼び名です。
その場所で、資料は球根を大きく五つの型に分けています[1]。短い茎に厚くなった葉がつく鱗茎(チューリップ・スイセン・ユリ・アマリリス)、茎そのものが球になる球茎(クロッカス・グラジオラス・フリージア)、茎が塊になる塊茎(アネモネ・カラジウムなど)、地下の茎が太る根茎(カンナ・ジャーマンアイリス)、根がいも状になる塊根(ダリア・ラナンキュラス)です。園芸店向けの別の資料も、鱗茎・球茎・塊茎・塊根を同じ考え方で整理しています[2]。アメリカのフロリダ大学の園芸解説でも、グラジオラスは球茎、アイリスとカンナは根茎、ダリアは塊根とされ、日英の資料で型が重なります[3]。
では、ふくらむ場所がちがうと、春の芽の出方も変わるのでしょうか。ダリアとアイリスで見てみます。
まず「球根」の定義を確かめておく。球根とは、多年生植物が気温・地温・水分・日照時間などの影響で休眠に入るとき、地下に養分をためて球状・塊状・いも状になった器官を指す。園芸では、これをつくる植物を球根植物と呼ぶ。ユリ科・ヒガンバナ科・アヤメ科などの単子葉植物に多いが、キク科などにもある[1]。つまり、分類は系統ではなく「地下に養分をためて休む」という働きにもとづく。
だから、ふくらんでいる部位は一つに決まらない。資料は五つの型に分ける[1]。鱗茎は、短縮した茎に肥厚した葉(鱗片)がつくもので、チューリップ・スイセン・ユリ・アマリリスが入る。球茎は茎が球状に肥大したもので、グラジオラス・クロッカス・フリージア。塊茎は茎が塊状になったもの、根茎は地下茎が太ったもので、カンナやジャーマンアイリス。塊根は根にいも状に養分がたまったもので、ダリアやラナンキュラスである。
注意したいのは、塊茎に入る花の例が資料によって少しずつ違う点だ(シクラメン・アネモネ・カラジウム・カラーなど)。一方、鱗茎・球茎・塊根については、国内の園芸資料[2]と、米国フロリダ大学IFASの解説(真の球根は「圧縮された地下の茎」で、ダリアは tuberous root、アイリスとカンナは rhizome、グラジオラスは corm)[3]で型が一致する。型が違えば芽の出る場所も違うはずだ。次に、根と茎の例を見る。
2. ダリアと アイリスは、どこから 芽が 出るの?
2. ダリアとアイリスは、芽の出る場所が球根の「ふくらみ」ではない
2. ダリアは塊根のくびれから、アイリスは根茎の上から:型が芽の出方を決める
ダリアの 球根は、さつまいもの ように、ほそ長い 根が 何本も あつまった 形です。ふしぎな ことに、芽は その ふくらんだ ところからは 出ません。根が 茎に つながって いる ところ(クラウンと いう 場所)から だけ 出ると いわれて います。
だから、芽の 出る ところが ついて いない 根は、そだたないかも しれません。
アイリスの 球根は、地面の 下を よこに のびる 太い 茎です。この 茎は、土に ふかく うめません。上の ほうが 少し 地面から 出るくらいに、あさく 植えると いわれて います。
ダリアは 根、アイリスは 茎。さわった 感じも 育てかたも、ちがうのです。
ダリアの球根は、さつまいもを細くしたような形の塊根が、束になったものです。ここで意外なのは、ふくらんだ根の部分からは芽が出ないことです。芽が出るのは、塊根が茎についている付け根(クラウン)からだけだと説明されています[4]。養分をためる場所と、新しい芽をつくる場所が別なのです。
そのため、ダリアの塊根を一つずつ切り離して植えるときには、クラウンが付いていなければ芽が出ないと考えられます。ふくらんだ部分は、芽が育つまでの食料庫の役目をする、というイメージです。原産地はメキシコとされています(南米の山地を含める資料もあります)。
一方、ジャーマン・アイリスは根茎の仲間です。地下を横に走る茎が太って、養分をためます[5]。植えるときは、根茎の上のほうが地表に出るくらい浅くします[5]。根茎は茎なので、深く埋めすぎると具合が悪いのでしょう。茎と根では、扱い方も変わるのです。
ここまで、根と茎の例を見てきました。残るのは葉です。チューリップのほかにも、葉がふくらむ球根はあるのでしょうか。
ダリアでは、芽の出る場所に特徴がある。地下には紡錘形の塊根が多数できるが、芽は塊根の肥大した部分からは出ず、塊根が茎に付着する部分(クラウン)からのみ発芽する[4]。養分の貯蔵と芽の形成が別の場所で行われるため、塊根だけを分けて植えれば育つとは限らない。原産地はメキシコとされるが、南米の山地まで含める資料もあり、日本への伝来年も資料により天保期とするものと1842年ごろとするものがあるため、ここでは断定しない[4]。
これに対し、アイリスの仲間のジャーマン・アイリスは根茎種で、地下を這う茎が太って養分をためる[5]。植え付けでは根茎の上部が地表に出るように浅く植える[5]。資料はその理由を書いていないが、地下の太い茎を土に深く埋めない扱いは、根のいも(塊根)と茎の違いが栽培に表れた一例と読める。
では、ここまで出てこなかった「葉」がふくらむ型、つまりチューリップのほかの鱗茎には、どんな特徴があるのか。ユリを例に、チューリップと比べる。
3. ユリの 球根は、チューリップと どこが ちがうの?
3. 葉が重なる鱗茎でも、ユリはチューリップとちがう
3. 鱗茎どうしでも違う:外皮のあるチューリップと、外皮のないユリ
チューリップの 球根は、かたい かわで つつまれて います。かわの 中には、葉が かわって できた うすい 板が かさなって います。かわは、中みを まもる やくめを して います。
ユリの 球根は、同じ 「葉が ふくらむ 型」ですが、このかわが ありません。たくさんの うろこのような 板が、むき出しで かさなって います。
そのため、ユリの 球根は かわきやすく、うろこも はがれやすいと いわれて います。
ユリの なかまの ヤマユリは、デンプンが 多くて にがみが ないので、食べられる 球根も あります。花だけでなく、食べものにも なるのです。
チューリップとユリは、どちらも鱗茎です。それでも作りは同じではありません。
チューリップの球根は、短くなった茎のまわりに、葉が変化して養分をためた鱗片がついています。いちばん外側の鱗片は木のように硬くなり、外皮として全体を包みます。こうした球根を有皮鱗茎といいます[6]。
これに対し、ユリの球根は外皮がない無皮の鱗茎です[7]。肥厚した鱗片が短い茎の上に重なり、むき出しの状態です。そのため乾燥しやすく、鱗片もはがれやすいと説明されています[7]。デンプンが多く苦味のないヤマユリなどは、食用にもなります[7]。
外皮の有無だけで、同じ「鱗茎」でも、扱い方や使い道が変わります。そして、ユリには、もう一つ意外な顔があります。かつて日本から、海外へ大量に送り出された花だということです。
4. りょうりの スパイスは、どんな 球根の 花から とれるの?
4. サフランの花から、香辛料はどうやってつくられるのか
4. 球茎から咲くサフラン:1gの香辛料に必要な花の数
サフランは、クロッカスと 同じ 「球茎」の 花です。秋の 十月から 十一月に 花が さきます。
この 花の 中に、赤い めしべが 三本 あります。人の 手で ひとつずつ つんで、すずしい ところで かわかすと、りょうりに 使う 赤い スパイスに なります。
1グラムの スパイスを つくるのに、花が およそ 140から 170りんも いると いう しりょうが あります。1りんから とれる めしべは、ほんの 少しだけ だからです。
花を 一つずつ つんで、めしべを 取る。気の 遠くなる 作業です。
花のめしべだけが、香辛料になる植物があります。それがサフランです。
サフランも球茎の仲間で、直径3.5cmほどの球茎から、10〜11月に花が咲きます[8]。花の中に3本ある赤いめしべを、一つずつ手で摘み取り、低温で乾燥させたものが香辛料や染料になります[8]。
ここで数字を確かめます。ヴァーモント大学の資料の要約によれば、1輪からとれる乾燥サフランは約0.006gで、1gつくるのに約167輪が必要です[9]。資料によって数え方に幅があり、1gには約140〜170輪が必要と見積もられています。
花を一輪ずつ摘み、赤いめしべだけを取り分けるのは大変な仕事です。その手間が、香辛料の価値に結びついているのでしょう。原産地は、地中海東部とする資料と、小アジアから南ヨーロッパとする資料があり、一つに決まっていません。
サフランも球茎をつくる花だ。直径3.5cmほどの球茎から、秋(10〜11月)に花が咲く[8]。赤い雌しべ(1輪に3本)を手で摘み、低温で乾燥させたものが香辛料・染料になる[8]。原産地は地中海東部とも小アジア〜南ヨーロッパとも言われ、資料間で一致しない。
ヴァーモント大学の資料は、1輪から約0.006gの乾燥サフランが得られ、1gに約167輪が必要としている[9]。資料によって値に幅があり、1gには約140〜170輪が必要と見積もられている。いずれも乾燥した重さからの見積もりである。
こうして見ると、球根は「花が咲く前の養分庫」であるだけでなく、人の暮らしに結びつく。では、日本の球根はどうだったのか。ユリは海を渡った。
5. 日本の ユリは、むかし 海を わたって いたの?
5. 日本のユリが、明治に海を渡った話
5. 日本特産のユリの球根は、いつ、どのように海外へ出ていったのか
日本には、およそ 15 しゅるいの ユリが あります。そのうち 7しゅるいほどは、日本にしか ない ユリです。ヤマユリ、ササユリ、テッポウユリ、オニユリ、スカシユリ、カノコユリなどです。
1862ねん、ジョン・ビーチと いう 人が、ヤマユリを ロンドンの てんじに 出しました。1873ねんの ウィーン万国はくらんかいの あと、商談が すすみ、ユリの 球根の 輸出が はじまったと いわれます。
明治の おわりごろには、2000万 球にも なったとされます。
鹿児島県の おきのえらぶじまでは、テッポウユリの 球根を 明治の ころから 昭和60ねんごろまで、外国へ 送って いました。
日本には、約15種のユリがあり、そのうち7種ほどは日本だけにしかない特産種だとされています。ヤマユリ・ササユリ・テッポウユリ・オニユリ・スカシユリ・カノコユリなどです[7]。
1862年にジョン・ビーチという人がヤマユリをロンドンの展示に出し、1873年のウィーン万国博覧会のあとに商談が進んで、球根の輸出が始まったといいます[7]。明治の終わりごろには、その数は2000万球にも達したとされます[7]。ただ、この数字は一つの百科事典に基づくもので、年によって差があるとも言われます。
輸出が長く続いた土地もあります。鹿児島県によると、沖永良部島ではテッポウユリの球根を明治時代から昭和60年ごろまで海外に輸出していました[10]。
外皮がなく、乾燥しやすい球根を、船で海外へ運ぶ。当時の人は、どんな工夫をしていたのでしょう。考えてみると面白い問いです。
日本には約15種のユリが分布し、うち7種ほどが日本の特産種とされる(ヤマユリ・ササユリ・テッポウユリ・オニユリ・スカシユリ・カノコユリなど)[7]。球根が貯蔵器官である以上、海外では、この特産種の球根そのものが商品になりうる。
実際、1862年にジョン・ビーチがヤマユリをロンドンの展示に出し、1873年のウィーン万国博覧会ののちに商談が進んで輸出が始まった。明治末には、その数が2000万球にも達したとされる[7]。ただし輸出量は資料により差があり、この数字は日本大百科全書の記述であって、他の統計との突き合わせはできていない。そのため、ここでは「とされる」にとどめる。
輸出の拠点の一つが、鹿児島県の沖永良部島である。同県の資料は、同島ではテッポウユリの球根を、明治時代から昭和60年ごろまで海外に輸出していたと記している[10]。つまり、数十年のあいだ、島の暮らしと球根が結びついていたことになる。
こうして、球根の型・サフラン・ユリを見てきた。最後に、これらの花を、いつ植えるのか、どう見分けるのかを考える。
6. 球根を 見つけたら、なにを たしかめる?
6. 球根を見かけたら、まず確かめたいこと
6. 球根を見かけたら:植える季節と、ふくらんだ場所を手がかりにする
球根には、植える 季節が 春・夏・秋と ちがう ものが あります。ここでは 春と 秋の れいを 見ます。ダリア・グラジオラス・カンナは 春。チューリップ・スイセン・クロッカス・ヒヤシンスは 秋です。
秋に 植える 球根は、冬の 寒さに あたってから、春に 目をさますと いわれて います。
やってみよう:花屋さんや ホームセンターで、球根の ふくろを 見て みましょう。「春植え」か「秋植え」かが 書いて あります。そして、「この 球根は 葉・茎・根の どこが ふくらんで いるのかな」と 考えて みましょう。
家に タマネギが あれば、おうちの 人と いっしょに、たてに 半分に 切って みましょう。ほうちょうは おとなが 使います。中心に、茎や 葉や 花に なる ところが あると いわれます。
植える季節でも、球根は分けられます。春植え・夏植え・秋植えがあり、ここでは春植えと秋植えの例を見ます。春植え球根は寒さに弱く、ダリア・グラジオラス・カンナなどです。秋植え球根は寒さに強く、チューリップ・スイセン・クロッカス・ヒヤシンスなどです[1]。秋植え球根は、寒さにあたったあとで春に目覚めると説明されています[11]。
やってみよう:花屋さんやホームセンターで、球根の袋を見てみましょう。品種名のほかに「春植え」か「秋植え」かが書いてあります。そして、その球根が葉・茎・根のどこがふくらんだものか、予想してみてください。予想が合っているかどうかは、この記事の五つの型の例で確かめられます。
もう一つ、家にタマネギがあれば、おとなといっしょに縦に切り、断面を見てみましょう。鱗茎はタマネギのような形で、割ると中心に茎や葉、花になる部分があると説明されています[2]。包丁はおとなが使います。
出典の資料は、どれもインターネットで読めます。
球根は、植え付け時期でも分けられる。春植え・夏植え・秋植えがあり、ここでは春植えと秋植えを取り上げる。春植えは耐寒性が弱く(ダリア・グラジオラス・カンナなど)、秋植えは耐寒性が強い(チューリップ・スイセン・クロッカス・ヒヤシンスなど)[1]。秋植えの球根は、寒さにあたった後に春に目覚める[11]。
ここから、観察の手がかりが二つ得られる。一つは植える季節で、これは寒さへの強さと対応する。もう一つは、ふくらんだ部位である。球根の袋の写真やラベルから、その花が鱗茎・球茎・塊茎・根茎・塊根のどれに当たるかを、予想してみるとよい。
また、タマネギのような形の鱗茎は、割ると中心に茎や葉、花になる部分があると説明される[2]。家にタマネギがあれば、おとなといっしょに縦に切って、断面を観察できる(包丁はおとなが使う)。
この記事で使った資料は、園芸の事典と栽培資料、米国の大学の解説が中心である。サフランの花の数は約140〜170輪という幅で示した。ユリの輸出量は一つの事典の記述による。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
事典・自治体・園芸会社・大学の解説を突き合わせて書きました。数字は目安として扱っています。
- コトバンク「球根」 https://kotobank.jp/word/%E7%90%83%E6%A0%B9 (球根の定義、五つの型、植え付け時期)
- コメリ「球根の基礎知識」 https://www.komeri.com/contents/howto/html/02250.html (型の整理、鱗茎の説明)
- UF/IFAS Gardening Solutions: Is This a Bulb? https://gardeningsolutions.ifas.ufl.edu/?p=5415 (英語の資料。型の対応の確認)
- コトバンク「ダリア」 https://kotobank.jp/word/%E3%83%80%E3%83%AA%E3%82%A2-3158668 (塊根と芽の出る場所)
- コトバンク「アイリス」 https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%82%B9 (根茎と植え付け)
- 富山県「球根栽培マニュアル」 https://www.pref.toyama.jp/documents/36022/kyuukon_manyuaru.pdf (チューリップの有皮鱗茎)
- コトバンク「ユリ」 https://kotobank.jp/word/%E3%83%A6%E3%83%AA-139546 (ユリの球根、日本の種、輸出)
- コトバンク「サフラン」 https://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3 (サフランの球茎と花)
- University of Vermont, Saffron by the Numbers https://www.uvm.edu/~saffron/pages/factsheets/SaffronbythenumbersJan2020.pdf (英語の資料。1gに必要な花の数の目安)
- 鹿児島県「えらぶゆり」 https://www.pref.kagoshima.jp/ag01/sangyo-rodo/nogyo/nosanbutu/brand/erabuyuri.html (沖永良部島の球根輸出)
- コメリ「チューリップの育て方」 https://www.komeri.com/contents/howto/html/02190.html (秋植え球根の目覚め)
なおした ところ
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